十勝で、映像の仕事は続けられるのか。リモート・AI・地元の仕事について考えてみた【十勝計画④】
- 1. いつか十勝に帰る日のために。34歳・東京フリーランスがいま考えていること【十勝計画①】
- 2. 両親が歳をとっていく。でも『親のため』を一番の理由にしたくない【十勝計画②】
- 3. 東京から十勝へ。Uターン費用を試算したら、障壁はお金じゃなかった【十勝計画③】
- ▶ 4. 十勝で、映像の仕事は続けられるのか。リモート・AI・地元の仕事について考えてみた【十勝計画④】
十勝計画③では、帰るのにかかるお金をぜんぶ数字にしてみた。結論は、お金は帰れない理由にならない。そして、残った宿題がふたつ見えた。ひとつは両親に「帰るかもしれない」と本気で話すこと。もうひとつが、十勝で仕事をどう作るかだ。
今日は、その「仕事」のほうに向き合ってみる。わたしは映像プロデューサーとして10年以上やってきた。その仕事を、東京を離れた十勝で続けられるのか。正直、いちばん気が重いテーマだった。でも、ひとつずつ考えていったら、思っていたより悲観する話ではなかった。
1. 映像の仕事は、どこまでリモートでできる?
まず、自分の仕事の中身を分解して考えてみた。映像プロデューサーの仕事は、撮影現場に立っているイメージを持たれがちだけど、実際の時間の多くはその前後にある。企画を立てる、構成を組む、台本を書く、スケジュールと予算を管理する、編集の方向を出す。このあたりは、PCとネットさえあれば、十勝だろうが東京だろうが変わらない。
実際、いまもリモートで回している仕事はある。③でも書いたとおり、東京の案件をリモートで続けられる分が月5〜10万円、ゼロの月もあるくらいの見積もりだ。打ち合わせはオンラインで足りるし、素材のやり取りもクラウドで完結する。
問題は撮影だ。ロケやスタジオ撮影は、さすがに現地に立たないといけない。そして今のクライアントは、ほとんどが東京の会社だ。だから「ぜんぶリモート」は無理がある。
ただ、ここで現実的に考えないといけないのが、その飛行機代を誰が負担するかだ。とかち帯広空港から羽田まで約1時間半。距離としては、通えなくはない。でも、わざわざ北海道から来るわたしの交通費まで見込んで予算を組んでくれるクライアントは、そう多くないだろう。
だから現実的には、北海道に移ったら、撮影現場の仕事はなかなかやりにくくなると考えておいたほうがいい。そう割り切ると、十勝で続けられるのは、企画や構成といった準備段階、ディレクターとのやりとり、編集の品質管理、そしてお客様対応。つまり撮影現場の外側の仕事が中心になっていく。
ただ、それはそれでデメリットもある。現場の外側の仕事だけになると、クライアントからは「気軽に頼みづらい存在」になるのも否めない。何かあったときにすぐ現場へ駆けつけられる人のほうが、頼む側としては安心だからだ。そこは、移住の代償として受け止めておく必要がある。
ついでに、いまの働き方の話も書いておきたい。じつは今のわたしは、編集の作業そのものはあまり受けないようにしている。編集を始めると、あっという間に時間が溶けて、肝心の管理業務が疎かになるからだ。わたしの強みは、手を動かす編集よりも、全体を管理するほうにある。上がってきた編集をチェックし、事前にテイストやトンマナをエディターと共有しておく。そうやって複数の案件を同時に回すほうが、自分の価値を出せると思っている。
でも、北海道に帰ることを前提にすると、この方針も変わってくる。管理業務も「現場に来られる人」が優先されるとなると、いっそ編集の仕事を積極的に取りにいくのもありだと思っている。編集なら、リモートでまったく支障なく進められるからだ。実際、いまもエディターとはZoomで画面を共有しながら、細かいところまで打ち合わせしている。昔のように編集室へ二人で入って作業する、という形は、もうほとんどなくなった。だから十勝にいても、編集を軸にした関わり方なら、十分やっていけるはずだ。
それに、これは本音だけど、編集はもともと大好きな作業だ。いまは時間管理のために控えているだけで、本当はやりたい。そう考えると、編集を増やすという方針転換も、わたしにとってはむしろ大歓迎だったりする。
これは、地味だけど大きい。そもそも仕事で東京に出る機会は、十勝に帰った場合、相当に少なくなることが想定される。でも、もし行くことがあっても、いまは東京でひとりで留守番しているごまもちを、十勝では実家の家族が見てくれる。わたしが家を空けても、ごまもちはひとりじゃない。仕事を続けるうえで、これはかなり心強い前提だ。
2. 地元に、映像の仕事はあるか
東京の仕事をリモートで続けるだけじゃなく、十勝で新しく仕事を作れるかも考えたい。
調べたり、地元の知り合いに聞いたりして感じたのは、地方こそ「動画で発信したいのに、作れる人が身近にいない」というギャップがあること。自治体の観光PR、農業や食の生産者の紹介、地元企業の採用動画やSNS用のショート。需要の芽は、たしかにある。東京のように映像制作会社がひしめいているわけじゃないぶん、経験のある人間が一人いるだけで重宝される場面はありそうだ。
②でも書いたとおり、わたしはビズロケのような地元の仕事を探す仕組みで、十勝側の仕事も少しずつ覗いている。もちろん、単価は東京より下がるだろう。でも③で見たように、十勝は生活コストも低い。東京の単価で消耗するより、十勝の単価でちょうどいい、というバランスは十分ありえる。
ただ、ここはまだ不安が残る。地元でゼロから信頼を積むには時間がかかるし、すぐに仕事が降ってくるなんて甘い世界でもない。でも、やれることはきっとあるはずなので、引き続き情報収集しながら、自分にあったスタイルを探していきたいと思う。
3. AIが、地方フリーランスの背中を押す
そして、ここでいちばん大きいのがAIの存在だ。AIは、フリーランスができることの幅を、ぐっと広げてくれる。働く場所の制約も、その分だけ小さくなった。
たとえば、いまのAIにお願いできることを挙げてみると、こんな具合だ。
フリーランスとしては、できることが単純に広がっているし、もちろん相談相手にもなってくれる。
数年前まで、映像の仕事は人手とチームありきだった。企画も編集も、人を集めて、分業で回す。でも今は違う。以前の記事で書いたとおり、企画に2日かけていたものが30分になり、ふだんの仕事の多くをAIに手伝ってもらっている。一人でできる範囲が、明らかに広がった。
一人で回せる範囲が広がると、その分、人との連携にかかる手間も減る。リモートで働くフリーランスにとっては、これはかなりポジティブだ。企画、構成、編集ディレクション。その多くをAIと二人三脚で進められるなら、拠点が十勝でも成り立つ気がする。数年前なら、少しハードルが高く感じていたことも、いまはAIが頼もしく背中を押してくれる。
もちろん、対面で会うことの大切さも、わたしは十分わかっているつもりだ。実際に会って話すことで、理解がぐっと深まる場面は結構ある。ただ、それが現実的にむずかしくなるなら、使えるツールはフルに活用して、対面で会えないハンデをどうカバーするかを考えていきたい。
そもそも、フルで稼がなくていい
ここまで「仕事をどう作るか」を書いてきたけれど、いちばん大事な前提を最後に置いておきたい。
わたしはサイドFIREの状態にある。資産は約5,800万円で、そこから配当が月約4万円入ってくる。③で見たとおり、十勝での生活費は月10万円弱。つまり、仕事で生活費を全部稼ぐ必要がない。
これは、地方で仕事を考えるうえで、想像以上に効いてくる。フルで稼がなくていいなら、「食べるための仕事」を無理に取りにいかなくていい。リモートで続く東京の仕事を細く持ちつつ、十勝で面白そうな仕事だけを選ぶ。そういう働き方ができる。8年かけて資産を積み上げてきたのは、こういう選択肢を手に入れるためだったのかもしれない。
十勝で、好きな映像の仕事を、無理のないペースで続ける。お金のためじゃなく、やりたいから続ける。そう考えたら、いちばん気が重かった「仕事」のことも、意外とゆったり構えていいのかな、と気持ちが軽くなった。
残るのは、両親に本気で話すこと。いちばん簡単そうで、いちばん難しい最後の一歩。それは、もう少し先で書こうと思う。
まとめ
- 残った宿題は「十勝で仕事をどう作るか」。映像プロデューサーの仕事を、東京を離れて続けられるかを本気で考えてみた
- 企画・構成・編集など撮影現場の外側の仕事はリモートで完結する。撮影は移住後やりにくくなる(飛行機代を負担してくれるクライアントは少ない)が、編集はリモートで支障なく、むしろ積極的にやる手もある
- 東京に出て家を空けても、十勝なら実家の家族にごまもちを見てもらえる。これも仕事を続ける心強い前提
- 地方こそ「動画を作れる人が身近にいない」需要がある。単価は東京より下がるが、生活コストも低いのでバランスは取れる。地元の仕事はビズロケなどで探し中
- AIで一人でできる範囲が広がり、場所の制約が小さくなった。数年前なら「無理」だった地方×映像が、現実的になった
- 何より、サイドFIRE資産+配当があるからフルで稼がなくていい。「食べるための仕事」ではなく「やりたい仕事」を選べる
- 仕事の不安はだいたい消えた。残るのは、両親に本気で話すこと。最後の一歩は、次回以降で




