「AIで映像の仕事はなくなる」は本当か。単価は変わらず、企画は2日が30分になった
「生成AIで、映像の仕事はなくなる」「単価が下がって食えなくなる」。そういう話を、最近よく耳にする。
わたしはフリーランスの映像プロデューサーで、サイドFIREしながら今も現役で仕事を受けている。だから当事者として、いちばん正直なところを書いておきたい。
結論から言うと、わたしの場合、単価はほとんど変わっていない。代わりに激変したのは、1本の仕事にかかる「拘束時間」のほうだった。今日はその話を、具体的な数字で書いてみる。映像×AI×FIRE、というテーマで書く連載の1回目にしたい。
まず、わたしの1案件の中身
わたしがよく受けるのは、5分くらいの動画の仕事だ。だいたいこんな流れになる。
企画(骨子はお客様からもらう)→ 台本作成 → 撮影 → 編集 → MA(音の仕上げ)→ 納品。このうち、わたしのメイン業務は企画と台本作成で、撮影はディレクション、編集はやらない(監修はする)。プロデューサーとして全体を回す立場だ。
数字だけ見ると、拘束されている時間は意外と少なく見えるかもしれない。でも、ここに表に出てこない作業がたっぷりあった。それが企画と台本作成だ。
AIが変えたのは「拘束時間」だった
わたしのメイン業務、企画と台本作成。ここがAIで激変した。
企画は、お客様からもらった骨子をAIと共有して、壁打ちをしながら方向性を固めていく。ある程度まとまったところで、A4一枚くらいの企画書にまとめてもらう。この作業が、30分くらいで終わる。
前は、なんだかんだで半日から1日かかっていた。頭の片隅でぼんやり考えている時間まで含めると、実質2日くらいのボリュームだったと思う。それが、30分だ。
インタビューがある案件だと、ヒヤリングシートやQ&Aも作る。これも企画をAIと共有してあるから、趣旨に沿った質問を一瞬で出してくれる。もちろん多少の調整は必要だけど、作業量は段違いに減った。
そして台本作成。インタビューの回答をAIに共有して、企画をもとに台本へ落とし込んでもらう。前は、回答を読み込んで、企画と照らし合わせて、言葉をつないでストーリーを組み立てていた。これが地味に重くて、2日くらいかけていた(ずっと考えているわけじゃなくて、別の作業や進行管理をはさみながら、詰まったら離れて、の繰り返し)。それが今は、1時間くらいで、ある程度の形になる。
つまり、わたしの場合は「AIで単価が下がった」のではなく、「同じ単価のまま、自分の時間が空いた」というのが実態に近い。
空いた時間が、好循環を生んでいる
この「空いた時間」が、わたしにとっては何より大きい。
拘束時間が減ったぶん、自分に余白ができた。その余白で、こうしてブログを書けているし、他の仕事も受けられる。時間が空く → 収入源を増やせる → 暮らしが安定する、という好循環が生まれている。
これは、わたしがやっている 複数の仕事を組み合わせる働き方 とも、サイドFIREの暮らし とも、きれいにつながっている。労働時間を切り売りするのではなく、同じ稼ぎを少ない時間で回せるようになると、その差分がまるごと「自由」になる。
サイドFIREって、お金の話だと思われがちだけど、実は時間の使い方の話でもある。AIは、わたしのその部分を、静かに後押ししてくれている。
AIは、いつでも相談できる「超優秀な部下」でもある
もうひとつ、作業時間とは別に大きいのが、いつでも気軽に相談できるということ。
超優秀な部下が、24時間そばにいてくれる感じに近い。何を聞いても、極端に偏らない中庸な答えを返してくれる。たぶん、多少はわたしに忖度している部分もあると思う。でも、それも含めてすごく助かっている。
以前、チームの若いメンバーへの対応で、わたしが少しモヤモヤしていたことがあった。そのときAIに相談したら、わたしにはなかった発想で助言をくれた。あの一言がなかったら、わたしは感情的な対応をしていたかもしれない。
仕事の効率だけじゃなくて、こういうときにそっと寄り添ってくれる存在があるのは、ひとりで動くフリーランスにとって、想像以上に大きい。
映像業界はこれから変わる。わたしのスタンス
映像業界は、ここから大きく変わると思っている。このあたりは 映像プロデューサーとAIの話 にも書いた。だから「単価は変わっていない」というのも、あくまで今のわたしの話で、ずっとこのままだとは思っていない。
それでも、わたしのスタンスはシンプルだ。AIと上手に付き合いながら、仕事を効率化していく。もし単価が下がるなら、そのぶん本数を増やす。あるいは、自分にしか出せない付加価値で勝負できるポジションを探していく。
それが具体的に何なのかは、まだわからない。でも、アンテナを張って情報を集めながら、その都度やり方を更新していくしかないんだと思う。「AIで仕事がなくなる」と身構えるより、「AIで空いた時間で、次に何をするか」を考えるほうが、ずっと前向きだ。少なくとも今のわたしには、その向き合い方が合っている。
- フリーランス映像プロデューサーのわたしの場合、AIが来ても単価はほとんど変わっていない(5分動画・制作2〜3ヶ月・ギャラ15万円くらい)
- 激変したのは「拘束時間」。メイン業務の企画が実質2日→約30分、台本が約2日→約1時間に
- 空いた時間が好循環を生む。ブログや他の仕事を受けられ、サイドFIREの暮らしを支えている。サイドFIREは時間の使い方の話でもある
- AIは作業を速くするだけでなく、いつでも相談できる「超優秀な部下」。感情的にならずに済んだ助言もあった
- 業界はこれから変わる。わたしは効率化+本数、または付加価値ポジションで対応していく。「仕事がなくなる」より「空いた時間で次に何をするか」を考える




