フリーランス映像プロデューサーの仕事——華やかじゃないけど、わたしは好きでやっている
「映像プロデューサー」と聞くと、なんとなく華やかな印象を持たれることが多い。テレビ番組、CM、有名タレント——そんなイメージかもしれない。
でもわたしの実態はちょっと違う。お客様はほとんどが企業で、扱うのはセミナーのライブ配信、企業VP、採用動画、イベント記録、ブランディング動画あたり。クリエイティブ系ではあるけれど、サラリーマン的に動く部分も多くて、地道な現場が中心だ。
今日はそういう「華やかじゃない映像制作」のリアルを、案件規模・単価・1日の流れ・年収・しんどさまで含めて書いてみる。これから映像系のフリーランスになるか迷っている人や、プロデューサーって何してるの?と気になっている人に届けばうれしい。
まずは結論:地道だけど、好きな仕事
最初に結論を書いておく。
派手なものはほぼない。撮影現場よりも、見積エクセルとメールの返信に時間を使っている日のほうが圧倒的に多い。
それでも、地道だけどわたしは好きな仕事だ。なぜそう言えるのか、順に書いていく。
1. 扱っている案件のジャンル
直近1年でわたしが多く扱ったものを順に並べると、こんな感じになる。
- 講義・セミナーのライブ配信、オンデマンド配信
- 企業VP(会社紹介・事業紹介)
- 採用動画
- イベント記録(社内行事・式典など)
- ブランディング動画
TV業界ではないし、ミュージックビデオやCMのような華やかな案件もほぼない。お客様は企業がほとんどで、目的は「社内向け」「採用向け」「お客様向け」の業務的な動画が中心だ。
たとえば工場や商業施設のマニュアル動画。あるいは、大学や企業が主催するセミナーのライブ配信。スタッフは2〜4名程度、低予算で小規模なものが多い。
ただ、お客様が企業ということもあって金額的には安定しているし、変なクレームや割に合わない仕事は少ない印象だ。納期も極端に短いものは少ないし、夜中まで撮影が続くようなことも基本的にない。派手じゃないけれど、健全で続けやすい領域だと思っている。
2. 1案件の規模感と単価
具体的な数字を書いておく。フリーランスで映像系を考えている人にとっては、ここがいちばん知りたい部分だと思う。
1案件あたりのプロデューサーフィーは、軽いセミナー配信なら5万円のこともあるし、企画から納品まで長くついた案件なら50万円ということもある。平均すると1本あたり10万円前後、というのがわたしの肌感覚だ。
これを5〜10本同時に回して、年商700〜900万円。経費(外注費・交通費・通信費・機材など)を引いた所得が300〜400万円というのが、いまのわたしの数字感になる。
ちなみに、進行中の案件は納品完了まで売上ゼロだ。1ヶ月まったく入金がない月もあれば、複数の案件が同時に納品される月は売上が大きく振れる。月単位の波はかなり大きい。だから生活費は月初に固定額を口座に移してならしているし、生活防衛資金300万円を別口座に置いている。このあたりは 生活防衛資金300万円のリアル のほうにまとめてある。
3. プロデューサーが実際にやっていること
「プロデューサー」という肩書きは便利だけれど、実際の業務範囲は会社や個人によってかなり違う。わたしの場合は 「なんでもやる」スタイル だ。書き出してみるとこんなにある。
- 企画立案、構成案づくり
- 台本・ナレーション原稿の作成
- 見積もり、予算管理
- スタッフィング(監督・カメラマン・編集マン・MAなどへの声かけ)
- スケジュール管理
- クライアント窓口(連絡・会議・要件整理)
- 現場進行(撮影立ち会い、収録立ち会い)
- 経理、請求書発行
- 営業、新規開拓
- 案件によっては撮影や編集まで自分で
大きな制作会社のプロデューサーはここまで全部やらない。営業は営業、経理は経理、台本はディレクター、と分業されている。でもフリーランスで小〜中規模案件を回すスタイルだと、結局ぜんぶ自分がやることになる。
ここがフリーランス映像プロデューサーの一番の特徴かもしれない。「動画をつくる」ことよりも、「動画ができる仕組みを回す」ことに時間を使っている——そんな感覚だ。
4. 1日・1週間の流れ
平均的な稼働時間は、いまは 1日5時間 × 週5日 くらい。会社員時代より明らかに短い。
ただし、これはあくまで平均だ。撮影日やナレーション収録日になると、移動も含めて拘束時間が一気に伸びる。地方撮影だと前後の移動で丸一日つぶれることもある。
在宅と現場の比率は おおよそ8:2。
| 在宅でやっていること | 現場でやっていること |
|---|---|
| クライアントとのメールやり取り | 最初の打ち合わせ(リアル開催のとき) |
| スタッフへの連絡・調整 | 撮影立ち会い |
| 見積もり作成 | ナレーション収録立ち会い |
| 台本・構成案づくり | MA(音声整音)立ち会い |
| 編集チェック・フィードバック | セミナーや講義の配信現場 |
| 経理・請求 |
ピーク時にしんどくなるのは、こういうタイミングだ。
- 見積もりが立て込む(複数案件のキックオフが重なる)
- 撮影が連続して入る(時間が拘束されて、進行業務が後回しになる)
- 編集で苦戦する(クライアントの意図とこちらの仕上がりがうまく噛み合わない)
逆にヒマな時期もちゃんとある。そんなときは、終了案件の整理や改善案を持ってお客様を訪問したり、純粋に休んだりしている。
5. フリーランスとして良かったこと
数字や業務だけだと味気ないので、ここからは「やってみてどうだったか」を書く。
案件ごとにチームを組むので、フリーでも仕事のチャンスがある
映像制作はそもそも案件ごとにチームを編成する文化がある業界だ。だから フリーランスでも仕事を得るチャンスは比較的多い と感じている。一度信頼を得ると次の案件も声がかかりやすく、継続案件として続いていくこともある。良いループに入れれば、フリーでも安定的に回していける。
機材投資がほとんどいらない
これは個人的にいちばんありがたい部分かもしれない。
カメラマンやエディターさんは、商売道具に 数百万円の投資 が必要なことも多い。カメラ本体・レンズ・三脚・照明・周辺機材で数百万円、移動のための車も必須、編集マンなら高スペックなPC——どれも安くない。しかも機材は陳腐化していくから、定期的な買い替えも必要になる。
ところがプロデューサーは、極論、体ひとつで仕事ができる。わたしの仕事道具は M4 MacBook Air 1台と、家のサブモニターだけだ。これだけで年商700〜900万円の仕事が回せる。
ちなみにクライアントは機材費をあまり理解してくれないことも多いので、カメラマンやエディターさんと一緒に仕事をするときは、機材分の費用をきちんと積んで請求するようにしている。プロデューサーがそこを軽く見積もってしまうと、現場の人たちが疲弊してしまうので。
地方の現場が、地味に楽しい
これは完全に個人の好みの話だけれど、工場や支社の撮影で 普段なら絶対行かないような地方に行ける のが地味に好きだ。
宮古島に日帰り撮影で行ったこともあるし、離島に小型機で撮影に向かって、嵐で閉じ込められたこともある。普通に生活していたら絶対行かない場所に、仕事として行けるのはちょっと得した気分になる。
セミナーで偉い先生方の話を聞くのも結構好きだ。正直、内容に集中できているとは言いがたいけれど、知らない世界の最前線にちょっと触れられる感覚があって、それが楽しい。
6. しんどいところ・人にすすめにくいところ
良いところばかり書いても嘘っぽくなるので、しんどい部分も正直に書いておく。
安定的に仕事を得続けるのが、結局いちばん難しい
継続案件があるとはいえ、企業の予算は年度ごとに変わる。今年100万円使ってくれたお客様が、来年は0円ということもある。営業を止めると、半年後にじわじわ効いてくる タイプの不安定さがある。
これは映像に限らずフリーランス全般の話だけれど、「次の仕事はどこから来るんだろう」という感覚は、3年やっても完全には消えていない。
AIに仕事を取られそうな気配が、確実にある
いまのところ、わたしの仕事はまだAIに置き換えられていない。けれど、近いうちに影響を受けるであろう領域がいくつもあるのは感じている。
- 台本・ナレーション原稿の下書き
- 簡単な編集の自動化
- セミナー動画のチャプター分け・要約
- 短尺動画のテンプレート量産
「全部AIで作ります」というサービスもすでに出てきている。クオリティはまだ追いついていないけれど、低単価の仕事から順に置き換えられていくのは時間の問題だと思っている。
だから正直なところ、いまから映像系フリーランスを目指す人に「絶対おすすめ」とは言いにくい。少なくとも、AIで何が変わりつつあるかを見ながら、自分のポジションを更新し続ける覚悟は必要だ。
7. それでも、わたしは好きでやっている
ここまで書いてきて、「地道」「派手じゃない」「AIに取られそう」と、あまり良いことを書いていないように見えるかもしれない。
でも実際のところ、わたしはこの仕事が好きだ。
クライアントの伝えたいことを整理して、形にする過程は単純におもしろい。チームでものをつくる感覚も好きだし、撮影で地方に行く非日常も気に入っている。完成した動画がお客様の社内で使われたり、セミナー参加者に届いたりするのを見ると、地味だけれど確かな手応えがある。
これからフリーランスで映像系を考えている人に伝えたいのはこんなところだ。
- 派手な業界ばかりが映像じゃない。企業向けの安定した領域もちゃんとある
- プロデューサーは身軽。機材投資が少ない分、はじめやすい職種でもある
- ただし AIで景色が変わりつつあるので、自分の立ち位置は常に見直す前提で
- 継続案件と信頼の積み重ねが、結局いちばん効く
数字としては年商700〜900万円・所得300〜400万円という、ぱっとしない規模感かもしれない。でも、好きな仕事を、好きな働き方で、ある程度の自由とともに続けられている。それでいまのわたしには十分だ。
まとめ
最後にこの記事のポイントだけまとめておく。
- わたしの仕事は 企業向け中心の映像プロデューサー。セミナー配信・VP・採用動画・イベント記録などが中心
- 1案件の制作費は20〜200万円、プロデューサーフィーは5〜50万円。これを5〜10本同時に回している
- 年商700〜900万円、所得300〜400万円。月の波はかなり大きい
- 業務範囲は企画から請求まで全部。プロデューサーというより「全部係」に近い
- 機材投資がほとんどいらないのが、フリーランスとして大きなメリット
- 一方で、安定的に仕事を取り続けることと、AIによる業界変化はずっと課題
フリーランス映像プロデューサーという仕事の輪郭が、少しでも伝わっていたらうれしい。お金の話としては、フリーランス1年目の壁 や フリーランスのお金の管理 も書いているので、興味があれば併せてどうぞ。




