両親が歳をとっていく。でも『親のため』を一番の理由にしたくない【十勝計画②】
十勝計画① のプロローグで、わたしには「いつか十勝に帰るかもしれない」という考えがある、と書いた。具体的に大きく動いたことはまだない。それでも、両親と話したり、最近あった出来事を振り返ったりするうちに、頭の中で「考えていること」は少しずつ増えてきている。今日はその記録。
最初にひとつ書いておきたい。わたしにとって、十勝に帰ることは「親のため」が一番の理由ではない。年末には帰るようにしているし、日々の連絡もとっている。サポートしたい気持ちはある。でも「親のために帰る」という構図にしたくない、というのが今の正直な気持ちだ。
それでも、両親が少しずつ歳をとっていく実感は、確実に強くなっている。
1. 母の膝と、新しい犬の話
いちばん気になっているのは、71歳の母の体調だ。
膝の調子があまり良くないらしく、以前ほど気軽に外出しなくなった。買い物や散歩に出る頻度も、少しずつ減ってきている。
母には犬を飼っていた時期があった。数年前にその子が寿命で旅立って以来、家には犬がいない。わたしから「もう一度、新しい子を迎えてみたら?」と提案したことがある。負担の少ない犬種なら、散歩も短くてすむし、一人でいる時間の話し相手にもなる。母の体や気持ちにとって、いいことは多いと思っている。
ただ、調べてみると、高齢者がペットを新しく迎えるのは、思っていたよりハードルが高い。
母も同じことを調べていたらしい。そこで突き当たったのが、もうひとつのハードル、後見人の物理的な距離 だった。わたしは東京、兄は札幌。十勝の家から見ると、どちらも遠い。いざというときに駆けつけて世話を引き受けられる人が近くにいないのは、後見人としては大きなネックになる。
それでも、シニア犬の譲渡 + わたしか兄による遠隔サポート のように、まったく道がないわけではないらしい。とにかく、まだ何も動いていないし、母と本気で相談したわけでもないけれど、もし母が望むなら、いっしょに考えていきたい、と思っている。
ちなみに父(74)のほうは、高血圧は前からあるけれど、体調自体は大きく変わっていない。毎日パークゴルフに温泉、サウナと、相変わらず忙しく外出している。父のことは、今のところそんなに心配していない。
2. ネット詐欺事件で気づいた「日常のサポート」
歳をとった両親に対して、自分の役割はもう始まっているな、と感じた具体的な出来事がある。介護じゃない。日常レベルの話だ。
ある日、母から連絡があった。
ネットで美容関連の商品を注文した。本人としては「1回だけ買うつもり」だったのに、届いたあとに気づいたのは、それが 毎月継続する定期購入契約 になっていたこと。やめようと電話をしてもつながらない。サイトに案内されていたLINEから手順通りに連絡しても、結局相手とはつながらず、まったく要領を得ない。解約は進まないまま、困り果てた母から、わたしに相談がきた。
調べてみると、同じような被害がたくさん見つかった。やめさせない設計が、明らかに意図的に組まれている。
わたしも母の代わりに電話を試みたけれど、やっぱりつながらなかった。
最終的に効いたのは、地元の消費生活センターに相談すること だった。母にすぐ向かってもらい、センターの方から業者に電話を一本入れてもらったところ、あっさり定期購入が止まった。
こちらが何度電話してもつながらなかったものが、消費生活センター経由だと一発で止まる。何がどう作用したのかはわからない。でも、それは、こういうトラブルがあまりにも多いことの裏返しなんだろう、と思った。
正直、すごく腹がたった。
ネットや携帯の操作にあまり詳しくない高齢者を相手に、わざと「やめさせない仕組み」を組んでいるビジネスがある。母はたまたまわたしに相談してくれたから解決できたけれど、「こんなこと相談するのが恥ずかしい」「自尊心を傷つけられた気がする」と感じて、誰にも言わずに泣き寝入りする高齢者は、きっとたくさんいる。これは氷山の一角だと思う。
そしてこの一件で、気づいた。両親に「すぐ介護が必要」なわけじゃない。それでも、こういう日常レベルのリスクから守る役割は、わたしにすでにある。
「サポート」って、介護とイコールじゃない。そのことに、この事件で初めて気づいた。
ちなみに、もし同じようなトラブルに当たっている人や、家族が当たっている人がいたら、迷わず 消費者ホットライン「188(いやや)」 に電話することをおすすめしたい。地元の消費生活センターに自動でつないでくれて、専門の相談員が動いてくれる。
母のケースでは、わたしから何度電話しても解約できなかったものが、センターから業者に電話を一本入れてもらうだけで止まった。自分で抱え込まず、専門の窓口に渡す という選択肢があることを、知っておくだけでも違うと思う。
正直に言うと、わたしは最初「自分が動けばすぐ解決する」と簡単に考えていた。でも、実際に動いてみるとまったくどうにもならなかった。もちはもちや、というか、頼れるものは頼る、というシンプルな話だったのかもしれない。母が言うには、センターの担当の方もとても親切に対応してくれたらしい。
3. それでも、「親のため」を一番の理由にしたくない
ここまで書くと、「だから親のために帰る」という流れになりそうだけれど、わたしの中ではちょっと違う。
正直に書くと、わたしは 「親のため」を、十勝に帰る一番の理由にしたくない。
サポートしたい気持ちはある。年に何度かは帰っているし、消費生活センターの件のように、必要なときには動く。でも、「親が老いていくから、わたしが帰る」という構図にすると、なんだか自分の人生が両親の老後に従属してしまう感じがする。それは、たぶん両親も望んでいない。
もうひとつ、書きにくいけれど、書く。
「東京で挫折して、親のところに逃げ帰った」みたいに見られたくない、というプライドがある。
たぶん、わたしの中の小さくて変なプライド。「サイドFIREしたんだから帰っても大丈夫」と数字をオープンにしたいわけでもない。それは、なんか違う。
そして、地元の友人に「フリーランス3年で帰ってきた」と思われるのも、ちょっと癪だ。何が癪なのか、自分でもうまく説明できない。でも、これも本音だ。
その「変なプライド」も含めて、いまのわたしを正直に書いておきたい。
だからわたしは、帰るとしたら、自立して、生きがいをもって元気に生活している自分 を見せたい。「親のため」じゃなくて、「自分が帰りたいから帰る」と、自信をもって言いたいんだと思う。
両親もきっと、それを望んでいる気がする。「あんたが選んだ道なら、なんでもいいよ」っていつも言ってくれる人たちだから。
4. ビズロケのプロフィールを更新した。兄にも、少し話した
そんな中で、ひとつだけ動いたことがある。
プロローグでも触れた、十勝の求人サイト 「ビズロケ」 のプロフィールを更新した。以前は登録だけしていたけれど、自分の経歴や、得意なこと、できる仕事の幅を、もう少し詳しく伝わるように書き直した。
帰る時期が決まっていない状態でプロフィールを充実させるのは、難しい部分もある。「いつから働けますか?」と聞かれても、今は明確には答えられない。それでも、まずプロフィールを整えておくこと自体が、自分にとっての「準備を始める」一歩になる気がした。
地元で仕事のめどを立てるのか、いまの東京の仕事をリモートで続けるのか。形はまだ模索中だけれど、最低限の収入を得ながら自立していること。それが、わたしが「胸を張って帰る」ための条件のひとつかもしれない。
それから、札幌に住んでいる兄には、「いつか十勝に帰るかもしれない」とだけ話した。時期も、はっきりした理由も、まだ伝えていない。それでも、兄の頭の片隅に「あずきが帰るかもしれない」という選択肢が入ったのは、わたしにとっては小さな前進だ。
両親には、まだ本気で話せていない。プロローグにも書いたとおり、口に出した瞬間にいろいろなことが現実になるのが、まだ少しこわい。
5. これからの「進行形」
時間軸の肌感は、相変わらず1〜3年くらい。具体的に何かが決まったわけじゃない。でも、わたしの中の「準備」のメーターは、確実に少しずつ動いている。
これから書こうと思っているテーマを、ここに置いておく。
- 帰るとしたら必要な資金の試算(家、車、生活費)
- 十勝でフリーランスを続ける現実(リモート、ネット環境、新しい仕事)
- 両親に「帰るかもしれない」と本気で話した日
- 母と、新しい犬の話の続き
書きながら、考えながら、進む。それしかできないし、たぶんそれでいい。
まとめ
- 母(71)の膝の不調が気になる。新しい犬を提案したが、高齢者がペットを迎えるのは現実的にハードルが高い。後見人を立てる + シニア犬の譲渡 が現実的な選択肢
- 母のネット定期購入トラブルで気づいた。両親への「日常のサポート」は、介護じゃないところで既に必要になっている
- それでも、「親のため」を十勝に帰る一番の理由にしたくない。「逃げ帰る」と思われたくないプライドもある
- 帰るとしたら、自立して生きがいをもって元気な自分を見せて、「自分が帰りたいから帰る」と言える形で
- ビズロケのプロフィールを更新した。兄にも少し話した。両親にはまだ本気で話せていない
- 時間軸は1〜3年。決まっていないことを、決まっていないまま書き続ける




