独身女性の老後資金、1,800万円では足りない——34歳フリーランスが本気で計算した『ギリギリの境目』
「新NISAで1,800万円を満額使えば、老後は安心」。最近よく聞く話だ。生涯投資枠が1,800万円なので、ここを埋めれば老後資金問題は片付く、というメッセージとして広まっている。
でも、わたしは少しもやっとしている。それは独身女性・フリーランスというわたし自身の立ち位置から見ると、その「安心」が本当に成り立つのか、自分で計算してみるまでは信じきれなかったからだ。
この記事では、30歳から48歳までの18年間で1,800万円を満額積み立て、年利4%で65歳まで運用した場合を実際に試算した。結論からいうと「数字上はギリギリ足りる、でも余裕はない」。なぜそう言えるのか、順番に書いていく。
なぜ独身女性の老後は「世間の目安」より厳しいのか
まず前提として、独身女性の老後が会社員夫婦よりタフになりやすい理由が、構造的に3つある。
特に③について補足しておくと、世間でよく聞く 「老後2,000万円問題」は夫婦世帯モデル で、年金を月22万円(夫婦合算)もらえる前提で計算されている。一方、独身の場合は年金1人分(月10〜15万円程度)だけ。独身の生活費は夫婦の約7割で済むけれど、年金は半分しかもらえない——この 「収入の落ち方が支出の落ち方より大きい」 のが、独身の老後が構造的に厳しい一番の理由だ。
つまり「老後2,000万円問題」の数字をそのまま当てはめても、独身女性の不足額はもっと大きくなる可能性が高い。1,800万円という数字を「みんなが言っているから安心」と受け取るのは、ちょっと危ない、というのがわたしの感覚だ。
計算してみよう——NISA 1,800万円を年利4%で運用したら、65歳でいくら?
ここからが本題。具体的な数字でシミュレーションしてみる。
順番にいこう。まずは資産がどう育つか。
ステップ1:48歳時点で約2,565万円
30歳から年100万円を年利4%で18年間積み立てると、48歳時点の評価額は 約2,565万円。元本1,800万円に対して、運用益が約765万円乗っている。
ステップ2:65歳時点で約5,000万円
そこから17年、追加拠出なしで年利4%のまま放置すると、65歳時点で 約5,000万円 になる計算。複利の効果で、2,565万円が約2倍に育つ。
5,000万円。一見、十分ありそうな数字に見える。でも本番は次のステップ。
取り崩しシミュレーション——月いくら使える?
5,000万円を65歳から90歳までの25年間、年利4%で運用しながら均等に取り崩していくとする。年金原資保険の計算式で出すと、
年金を月10.5万円にしたのはなぜか
年金は 月10.5万円 で設定した。これは女性の厚生年金(基礎年金込み)受給額の平均(約10.3万〜10.7万円)の中間値だ。
ちなみに男性の平均は約16.4万円で、女性の平均より6万円ほど高い。これは女性の方が平均賃金が低く、出産・育児で就業中断がある人も多いため、結果的に厚生年金の積み上げが少なくなることが原因と言われている。
あくまでこの記事はひとつの試算なので、わかりやすく 「平均値」を起点に置いている。本来であれば、ねんきん定期便で自分の見込み額を確認し、自分の働き方・収入・家族構成に合わせて計算するのがベストだ。
ここで共有したいのは具体的な金額の正解ではなく、「こういう前提で計算するとこうなる」という考え方の流れ。読み終わったあとに、自分の数字でぜひ計算し直してみてほしい。
31年後の生活費はいくらになる?
今34歳のわたしが65歳になるのは31年後。年2%のインフレが続いた場合、今と同じ暮らしをするのに必要な金額は約 1.85倍 になる。
なお、年2%という数字は 日本銀行が物価安定の目標として掲げている水準。実際にはこれより高い年も低い年もあるけれど、まずは政策上のベースラインを基準に試算しておくのがフェアだと思っている。長期で見ると、2%でも積み重なってかなりのインパクトになる。
フリーランスの老後試算記事にも書いたとおり、わたしは老後の生活費を月15万円+5万円のバッファ+インフレ年2% で見ている。体力低下による外注、便利な立地への引越し、家事代行——そういう変化を見越したバッファが+5万円分。
つまり31年後の必要額は 月36.9万円 が現実的なライン。
月37.2万円 vs 月36.9万円——「ギリギリ届く、でもバッファゼロ」の現実
数字を並べてみよう。
収支はほぼぴったり。 +0.3万円というバッファは、実質ゼロ と言っていい。
ただし、これはあくまで 「年利4%・インフレ2%・年金10.5万円」というひとつの想定 に基づいた試算。現実にはこの前提が良い方向に振れる可能性も十分ある。たとえば運用が年6%で回ればもっと余裕が生まれるし、賃金上昇に合わせて年金支給額が上振れすることもあるかもしれない。逆に、運用が想定より低かったり、長生きしたり、介護費がかさむ可能性もある——それは次のセクションで書く。
ちなみに「+α」を諦めて月15万円ベースのままなら、必要額は月27.7万円。この場合は月9.5万円のバッファができる。つまり「ぎりぎりの暮らしを覚悟するなら足りる、ふつうの老後を望むなら足りない」。これが、わたしの生活費をベースにした31年後の試算だ。
「数字では足りる」が安心にならない3つの不確実性
机上の計算は「成り立つ前提」で組まれている。でも現実には、その前提が崩れる可能性が常にある。わたしが「もう少し積み上げたい」と感じるのは、次の3つが頭にあるから。
特に ②長生き は独身女性にとって他人事じゃない。女性の平均寿命は約88歳、4人に1人は95歳まで生きる時代。25年想定で組んだプランが、30年・35年に伸びる可能性がある。資金が尽きた後は年金月10.5万円だけで暮らすことになるが、それは決して余裕のある暮らしではない。
そして ①運用未達 も大きい。年4%は長期平均としては現実的だが、リーマン級の暴落直後に取り崩しを始めると、回復前に資産を切り崩すことになり、想定より早く尽きてしまう(シーケンスリスク)。元々のバッファがほぼゼロなので、ここが少しでも崩れると一気に苦しくなる。
わたしの場合——東京を離れて十勝に帰るプラン
ここからは個人の話。
わたしは一度結婚していて、今は独身。再婚を考えているわけではないし、こればかりは縁なので未来はわからないけれど、今は独身を前提にプランを立てている。一人で老後を迎える前提で数字を組み立てるのは、思っていた以上に冷静で、不思議と落ち着く作業だった。
そしてもうひとつ、頭の中に置いているのが 十勝に帰るプラン。誰にも言っていないけれど、老後は実家の十勝に戻って両親の家で暮らす計画でいる。東京にいる理由が少なくなっていくなら、親戚や昔からの友人が多い地元のほうが、生活も心も充実すると思っている。
大学時代の友人たちは東京や関東に多いけれど、それは逆に 「観光に来てもらってもてなす方向」 で考えている。十勝の食材で料理を作って、温泉に連れて行って——そんな関係も悪くない。
ただし、この記事の試算はあくまで 賃貸ベース で計算している。実家に帰れる前提だと住居費がかなり浮くけれど、これは「もしものときの保険」にしておきたい。両親の状況、自分の体力、いろんなことが変わる可能性があるから、計画は 「賃貸でも回る」設計 にしておくのがフェアだと思っている。
「ギリギリ」を「余裕」に変えるために積み上げる
もう一度、最初の問いに戻ろう。新NISA1,800万円を満額使えば、独身女性の老後は安心か?
机上の計算では「ギリギリ届く、でもバッファゼロ」が答え。これは わたしの基準である月15万円+αのライフスタイル で計算した場合の結論。生活水準が違えば必要額も変わるので、最終的にはやはり自分の数字で確かめるのが一番だ。
その上で正直に言うと、+αを諦めれば足りるが、ふつうの老後を望むなら足りない。老後の30年をバッファゼロで過ごすのは、心が削れる暮らし方だと思う。
だからわたしは、「30歳〜48歳までにNISA枠1,800万円を満額使い切る」というラインを「最低限の合格点」 として捉え、その上にもう少しバッファを積み上げたいと思っている。そもそもこのライン自体、年100万円を18年続けないと到達しない数字なので、決して低いハードルではない。
具体的には、
インデックスの取り崩しだけに頼らず、高配当株で月々のキャッシュフローも作っていく。この二本立てが、わたしの戦略の中心だ。詳しくは配当金ロードマップに書いている。
まず自分の数字を出してみる
最後に、これだけはお伝えしたい。
「老後資金はいくら必要か」の答えは、年齢・職業・住む場所・寿命の想定で全く違う。世間の数字を信じる前に、自分の前提で計算してみることが何より大事だと思う。
数字を出すと、不安は 「課題」 に変わる。1,800万円で足りるか足りないかも、答えは人によって違う。わたしの場合は「ギリギリ届くが安心ではない、だからもう少し積み上げたい」が結論。あなたにとってのラインは、計算してみないと見えてこない。
- 独身女性の老後は「長生き・年金が薄い・収入は一人分」の3条件で世間の目安より厳しい
- 30歳〜48歳でNISA1,800万円を満額積立、年利4%で65歳まで運用すると約5,000万円
- 65歳から90歳まで運用しながら取り崩すと月約26.7万円。年金月10.5万円(女性の厚生年金平均)と合わせて月37.2万円
- インフレ後の必要生活費は月36.9万円(月20万円ベース+年2%×31年)。差額は+0.3万円で、ギリギリ届くがバッファゼロ
- +αを諦めれば足りる(月9.5万円バッファ)が、ふつうの老後を望むと足りない、というのがわたしの生活費をベースにした31年後の試算
- さらに「運用未達・長生き・介護費」の3リスクで、バッファゼロは簡単にマイナスに転じる
- 結論:1,800万円は「ギリギリ届くが安心ではない」が現実。だから50歳までに資産1億・年配当200万円を目指している
- 世間の数字を信じる前に、自分の前提で必ず計算する。不安は「課題」に変わる




