「資産が増えると見える景色が変わる」は本当か。変わったのは500円のパンくらいだった
「資産1,000万円で世界が変わる」「3,000万円から複利が効きはじめる」「5,000万円で人生がバグる」。
この手の記事や動画をよく見かける。読むとたしかにおもしろい。ただ、書いている人がその段階を実際に全部通ってきたのかどうかは、読んでもよくわからないことが多い。
わたしは大学生のころに貯めた100万円から、いまの5,831万円まで、その途中の段階を全部通ってきた。だから答え合わせができる。
先に結論を書いておくと、言われているほどの段差は、感じなかった。生活はほとんど変わっていない。変わったことを数えてみたら4つしかなくて、しかもその筆頭が1個500円のパンだった。
1. まず、いつどこを通ったか
記憶と記録をつき合わせて、節目に到達した時期を出してみた。
1,000万から2,000万に30ヶ月、そこから3,000万までは11ヶ月。たしかに後半のほうが速い。この部分は、世間で言われている「増えるほど加速する」と合っている。
ただ、きれいに加速したわけではない。3,000万から4,000万だけは14ヶ月かかっていて、前より遅い。この手の記事だと、きれいな右肩上がりの階段で描かれることが多いけれど、実際は行ったり来たりしている。
2. 世間の言い分と、答え合わせ
よく見かける「各段階の景色」を集めて、自分に当てはまったかどうかを並べてみた。
○がついたのは100万円と3,000万円だけだった。しかも100万は投資を始めるより前の話だ。
とくに違和感があったのが「お金に追われる感覚が消える」で、これは1,000万でも5,000万でも消えていない。暴落が来て何年も停滞する可能性はいつでもあるし、仕事をやめたら生活はカツカツになる。そこは今も同じだ。
3. はっきり覚えている金額は、2つだけ
節目は7回あったけれど、「達成した」と感じた記憶が残っているのは2,000万円と5,000万円だけだった。あとは気づいたら超えていた、という感じに近い。
2,000万円(2023年6月)
このときのことはよく覚えている。2,000万円貯まってから独立しようと思っていたのに、待ちきれずにエイヤーで会社を辞めたので、到達したのは独立して3ヶ月後だった。順番が逆になった。
そのとき考えていたのは、こういうことだ。
2,000万あれば4%で年80万円。あとはバイトでも何でもやれば、なんとかなるでしょ
5,000万円(2026年1月)
こちらは当初からの目標だった金額で、アッパーマス層から準富裕層に変わる線でもある。
4%で年200万円。細々とやっていけば、なんとかなる
十勝に帰ってのんびり暮らすこともできるな、と妄想したのを覚えている。大きな後ろ盾を持った瞬間という感じで、選択肢がぐっと広がった。
書き出してみて気づいたのだけど、この2つは金額そのものを喜んでいない。どちらも「その金額だと何ができるようになるか」に置きかえて考えている。しかも2回とも4%ルールで計算していた。
覚えているのは金額ではなく、選べるようになったことのほうだった。
4. で、実際に変わったのは
これで贅沢できる、浪費しても大丈夫。そういう感覚は、いまだにまったくない。
そのうえで、変わったと言えるのは4つだけだった。
書き出すと、我ながら地味だ。5,000万円を超えて増えた贅沢の筆頭が、1個500円のパンである。しかも買うときは今でも「高いな」と思っている。
逆に、変わらなかったものもはっきりしている。金銭感覚も、服も、欲しいものも同じだ。高級なものが食べたいという気持ちも出てこなかった。おいしいものは食べたいと思うけれど、それは高級とは違う話だと思っている。
並べてみて、はっきりした。増えたぶんのお金は、ぜんぶ「消えるもの」に向かっていた。パンは食べたら終わり。食事も、会って別れたらその時間ごと消える。プレゼントにいたっては、手元にすら残らない。
反対に、まったく手が伸びなかったのが「残るもの」だった。服、時計、車。
そして残るものは、たいてい人から見えるものでもある。誰かに見られて、はじめて値打ちが出る。
わたしは昔から、そこに気持ちが動かなかった。だからこれは、資産が増えて残るものが要らなくなったという話ではなくて、もともと「見せるため」のものに興味がなかっただけだと思う。
自分が本当に満足できるものは何かを突きつめていくと、人と過ごす楽しい時間だったり、おいしい食事だったり、あとから思い出になることだったりする。増えたぶんの行き先がそちらに向いたのは、資産がそう変えたというより、もともとそこにしか向いていなかったからかもしれない。
だからこれは、お金の話というより何に満足する人間なのかという話なのだと思う。資産はそれを変えなかった。はっきりさせただけだった。
5. 変わったのは、お金が増えたからなのか
ここも書いておきたい。この4つの変化は、資産が増えたから起こったこと、というだけではないと思っている。
もちろん、資産が増えて気持ちに余裕が出てきたことは大きい。配当が入るようになったことも大きい。でも同じくらい、年齢を重ねたことが効いている気がする。
友人と食事をしているとき、あと何回こういう楽しい食事ができるんだろうと考えることが増えた。20代のころは思わなかったことだ。プレゼントを買うようになったのも、たぶんそこから来ている。
だから「資産が増えたから使えるようになった」というより、使う理由のほうが先に変わったのかもしれない。お金はそれを止めなくなっただけ、という順番のほうが近い気がする。
6. 1億円になったら、変わるのか
これもよく聞かれそうなので、いまの予想を書いておく。
たぶん、変わらないと思う。
ただ、安心感が増すのはたしかだ。半分になるような暴落が来ても大丈夫と思えるようになるので、そこは今と違うかもしれない。もしかしたら、そこで初めて違う景色が見えるのかもしれない。
でも、暮らしのほうが変わる気はしない。5,000万を超えても500円のパンで喜んでいる人間が、1億で急に変わるとは思えない。
7. 景色を変えるのは、金額ではなかった
ここまで書いてきて、自分の答えははっきりした。
変わったものがあるとすれば、それは金額ではなく積み上げてきたという実績のほうだった。
もらったお金ではなく、0から積み上げてここまで来たという経験。これがいちばんの宝物になっている。金額そのものは、その結果として付いてきた数字にすぎない。
26歳の自分に読ませるなら
500万円だったころの自分に、この記事を読ませられるとしたら、伝えたいことはひとつだけだ。
資産形成は、つらいものではなくて楽しいものだ。
節約、我慢、というイメージがつきまとうけれど、実際にやってみると違った。ライフプランを考えたり、支出を最適化したり、投資を勉強したり、暴落を経験したり。わたしはもともと新しいことを体験するのが好きなので、この8年は挑戦の連続で、ずっとおもしろかった。
資産形成はよく登山にたとえられる。登山はつらいだけの修行ではない。途中の植物や景色を眺めたり、一緒に登る人と励まし合ったりしながら、楽しく頂上を目指すものだ。
頂上だと思っていた場所から見えた景色は、思っていたほどではなかったかもしれない。でも、登っている途中の景色は、ずっとわたしをワクワクさせてくれた。
まとめ
- 100万(大学生)→500万(2018年・投資開始)→1,000万(2020年12月)→2,000万(2023年6月)→3,000万(2024年5月)→4,000万(2025年7月)→5,000万(2026年1月)と通ってきた
- 加速はしているがきれいな右肩上がりではない。2,000万→3,000万は11ヶ月なのに、3,000万→4,000万は14ヶ月かかっている
- 世間で言われる「各段階の景色」で当てはまったのは100万(急な出費に対応できる)と3,000万(複利を実感)だけ
- 「お金に追われる感覚が消える」は、1,000万でも5,000万でも消えていない。暴落も停滞もありうるし、働かなければ生活はカツカツ
- 達成を覚えているのは2,000万と5,000万の2回だけ。しかも金額ではなく「4%で年80万/年200万あればなんとかなる」というできるようになったことで記憶している
- 実際に変わったのは有名店のパン・友人との食事・友人へのプレゼント・誘いに出るようになったことの4つだけ。金銭感覚も欲しいものも変わっていない
- ブランドや時計のような「見せるため」のものには、もともと興味がなかった。本当に満足できるものを突きつめると、人と過ごす時間やおいしい食事に行き着く。資産はそれを変えず、はっきりさせただけだった
- しかもそれは資産だけが理由ではない。「あと何回こういう食事ができるか」と考えるようになった年齢の変化も大きい
- 1億円になってもたぶん変わらない。安心感は増すと思うけれど
- 景色を変えるのは金額ではなく積み上げてきたという実績。0から積み上げた経験そのものが宝物になる
関連記事
- 貯金500万→5,463万までの8年。34歳フリーランスの資産形成ロードマップ
- 「4%ルールは日本では通用しない」は本当か。まだ1円も取り崩していないわたしの答え合わせ【サイドFIREの疑問③】
- 「サイドFIREは高収入じゃないと無理」は本当か。貯金500万円の会社員から始めたわたしの答え合わせ【サイドFIREの疑問①】
- フリーランスのサイドFIRE 完全ロードマップ。貯金500万から8年でたどり着いた全ステップ




