資産5,000万円で「準富裕層」になった。それでも消えない「もっと」と、貯める・使うのバランスの話
2026年4月、目標にしていた資産5,000万円を達成した。よく見かける野村総合研究所の「富裕層ピラミッド」でいうと、わたしは準富裕層という階層に入ったことになるらしい。
貯金500万円から始めて8年。素直にうれしい。うれしいのだけど、達成してみて気づいたことがある。不安は消えていないし、「もっと」と思う気持ちも、正直まだある。
今日は数字の自慢でも、達成のノウハウでもなく、5,000万円の「その後」の心の話を書いてみたい。上を見るとキリがなくて、下を見ても仕方がない。じゃあ、わたしはどこを見て生きていくのか。そんな話だ。
1. 「準富裕層」とは何か。データで見てみる
まず、準富裕層という言葉の出どころから。野村総合研究所が定期的に発表している、世帯の純金融資産(保有する金融資産から負債を引いた額)による階層分けだ。最新の2023年推計では、こうなっている。
計算してみると、準富裕層より上(準富裕層+富裕層+超富裕層)は約569万世帯。全体の約5,570万世帯に対して、およそ10世帯に1世帯という位置になる。わたしは単身世帯なので、世帯=わたしひとり。ローンなどの負債もないから、資産約5,800万円がそのまま純金融資産になる。
数字の上では、たしかに「上位1割」だ。8年前、最初の5万円をおそるおそる投資したときのわたしに教えたら、たぶん信じない。
2. それでも「もっと」と思ってしまう。界隈の話
ところが、だ。
投資やFIREの界隈で情報のやりとりをしていると、感覚がバグってくる。資産1億円の人がごろごろいて、その人たちが「まだまだです」と言いながら、毎月せっせと入金を続けている。2億円あっても働き続けている人がいる。5,000万円なんて「これからですね」と言われる世界が、たしかにそこにある。
上には、上がいくらでもいる。
そして白状すると、わたし自身も「もっと」と思う気持ちがゼロではない。準富裕層の次は富裕層、つまり1億円。いまのペースならいつか届くかもしれない。そう考え始めた瞬間、5,000万円は「達成した目標」から「通過点のひとつ」に格下げされて、心は次の数字を追い始める。
これ、たぶんキリがないやつだ。1億円に届いたら、その界隈では2億円の人が「まだまだ」と言っているのだと思う。
3. 一方で、世間の実像はまったく違う
界隈の感覚のまま外に出ると、今度は逆方向にびっくりすることになる。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査」(2024年)によると、わたしと同じ単身世帯・30歳代の金融資産は、こうなっている。
中央値は、90万円。平均値が459万円まで上がるのは、一部の大きな資産を持つ人が引き上げているからで、「ふつうの30代単身」のリアルは中央値のほうに近い。しかも単身世帯の約3割は、金融資産を持っていないと答えている。
界隈では「これからですね」と言われる5,000万円が、世間の物差しでは中央値の60倍以上。同じ数字なのに、どちらの世界から見るかで、意味がまるで変わってしまう。
だからといって「自分は恵まれている、はい解決」とはならないのが、人間のやっかいなところだと思う。下と比べて得られる安心は、上と比べて生まれる焦りと同じくらい、あてにならない。比較は、上を向いても下を向いても、心の置き場所にはならない。
4. 上でも下でもなく、自分に聞くしかない
じゃあ、どこを見ればいいのか。
結局、聞く相手は他人ではなくて、自分しかないのだと思う。わたしは何がしたいのか。どう生きたいのか。何が幸せなのか。どこへ向かっているのか。5,000万円という数字は、この問いには1ミリも答えてくれない。答えられるのは自分だけだ。
それで、あらためて棚卸しをしてみた。いまのわたしの「幸せの中身」は、こんな感じだった。
- 心も体も、いまのところ健康であること
- 十勝の両親が、ふたりとも元気でいてくれること
- ごまもちと毎日散歩する時間があること
- 仕事を「やりたいかどうか」で選べるようになったこと
- いつか十勝で暮らすかもしれないという、楽しみな選択肢があること
並べてみて気づいたのは、このリストに「資産1億円」が入っていないことだ。5,000万円が5,800万円に増えても、このリストはひとつも増えなかった。逆に、ここにあるものはどれも、お金だけでは買えなくて、そしていま既に持っている。
「もっと」と思う気持ちを無理に消す必要はないと思う。でも、その「もっと」が何のためなのかを説明できないなら、それはたぶん、わたしの目標ではなくて界隈の空気を吸い込んだだけだ。
5. 貯める8年だった。これからは「使う」も練習する
そのうえで、反省がひとつある。
この8年、わたしは貯めることばかり練習してきた。固定費を削り、倹約し、余りを投資に回す。この回路はもう完全に身についていて、貯金100万円の頃から金銭感覚が変わっていないのが、ちょっとした自慢ですらあった。
でも最近、それは半分しか正解じゃなかったのかもしれない、と思い始めている。お金は道具で、道具は使って初めて意味がある。貯める練習を8年やったなら、使う練習もしないと、いつまでも「貯まっていく数字」を眺めるだけの人になってしまう。
使うといっても、散財したいわけじゃない。考えているのは、こういうお金の使い方だ。
幸い、わたしには配当というちょうどいい仕組みがある。元本を売らなくても、年に約49万円が果実として入ってくる。これまでは律儀に再投資してきたけれど、この果実の一部を「使う練習」に充てるのは、資産形成の航路を守ったまま、使うことも覚えられる、わたしなりのバランスの取り方かもしれない。
6. 5,000万円は、ゴールじゃなくて「問い」だった
まとめると、こういうことなのだと思う。
5,000万円を達成して、準富裕層という肩書きがついて、それでも不安や「もっと」が消えないのは、わたしが欲張りだからではなくて、数字はいくら積んでも「どう生きたいか」の答えにならないからだ。答えになれない以上、いくら足しても満たされない。当たり前の話だった。
だから5,000万円は、ゴールではなくて問いだったのだと思う。「目標を達成したあなたは、それで、どう生きたいのですか」という問い。この問いに向き合わずに1億円を目指すのは、たぶん同じ問いを先送りにするだけだ。
わたしのいまの答えは、こうだ。数字の目標としては、配当年間120万円をこれまでどおり淡々と目指す。でも人生の目標としては、健康と、両親と、ごまもちと、選べる仕事と、十勝の選択肢。この持ち点を守って、育てて、そして使っていく。上と比べない。下とも比べない。比べるのは、去年の自分の暮らしとだけ。
貯める練習は、もう十分やった。ここからは、貯めると使うのバランスを取りながら、「何のために」を更新し続ける番だと思っている。
まとめ
- 2026年4月に目標の5,000万円を達成。野村総研の分類(2023年推計)では「準富裕層」で、準富裕層以上は全世帯の約1割にあたる
- それでも不安と「もっと」は消えない。界隈には1億でも「まだまだ」と入金を続ける人がいて、上を見るとキリがない
- 一方で世間の実像は、30代単身の金融資産の中央値90万円(2024年調査)。同じ5,000万円でも、どちらから見るかで意味が変わる
- 比較は上を向いても下を向いても心の置き場所にならない。聞く相手は自分だけ。「幸せの棚卸し」をしたら、リストに1億円は入っていなかった
- この8年は貯める練習ばかりだった。これからは配当という果実の一部で「使う練習」を。両親が元気なうちの時間、健康、経験と思い出
- 5,000万円はゴールではなく「どう生きたいか」という問いだった。比べるのは、去年の自分の暮らしとだけ
関連記事
- サイドFIRE達成から2ヶ月。変わったこと、変わらなかったこと
- 資産5,000万円でサイドFIREした生活のリアル。月の収支・仕事量・心境を全部書く
- 資産1,300万円が、5年で4,886万円に。5年間を実数で振り返ってみた。
- 配当金で生活費をまかなう。コーヒー5杯分から、家賃以外を払えるまで
- 両親が歳をとっていく。でも『親のため』を一番の理由にしたくない【十勝計画②】




