「4%ルールは日本では通用しない」は本当か。まだ1円も取り崩していないわたしの答え合わせ【サイドFIREの疑問③】
サイドFIREの話をすると、かなりの確率で言われることがある。
「4%ルールなんてアメリカの話でしょ。日本では通用しないよ」
たしかに、わたしも5,000万円という目標を4%ルールから逆算した。年間支出200万円 × 25年で5,000万円。この計算が大きく外れているなら、目標の置き方から考え直すことになる。
気になったので、いま専門家が何と言っているのかを調べてみた。そうしたら思っていた以上に、数字が割れていた。
でも先に書いておくと、わたしはそれで困っていない。理由も最後まで書く。
1. まず、いま数字がどれくらい割れているか
4%ルールの出どころは、1994年にウィリアム・ベンゲンという人が書いた論文だ。アメリカの大型株50%+中期国債50%で過去を検証し、いちばん条件の悪かった1966年に引退した人でも、年4.15%の取り崩しなら30年もった。これが「だいたい4%」の始まりだった。
ここで先に、よくある誤解をほどいておきたい。4%ルールは「毎年その時点の資産の4%を使う」という意味ではない。最初の年に4%を引き出し、翌年からはその金額を物価に合わせて増やしていくという考え方だ。資産が減った年も、同じ金額(+物価ぶん)を引き出し続ける前提になっている。だから厳しいときほど、割合としては4%を超えていく。
そのうえで、そこから30年たった今、数字はこうなっている。
2.5%から4.7%まで、ほぼ倍の開きがある。5,000万円に当てはめると、年125万円と年235万円。同じ資産なのに、暮らせる金額が110万円も変わる。
とくに驚いたのは、4%ルールを言い出した本人が、2025年に4.7%へ上げていたことだった。2025年8月に出した本のなかで、株55%・債券40%・現金5%という7種類に分散を広げて計算しなおしたら、最悪ケースでも4.7%までいけたという。しかも「4.7%は最悪の想定であって、ふつうはもっと使える」とまで書いている。
引き上げの理由が「相場を楽観的に見たから」ではなく「分散を広げたから」というのが、個人的にはいちばん納得がいった。
2. なぜ、ここまで割れるのか
同じテーマなのに答えが揃わない理由は、大きく3つあった。
① どの50年を切り取るか
過去のデータで検証する以上、「いつからいつまでを使うか」で結論が変わる。ベンゲンの結論を決めたのは1966年に引退した人のケースで、これはインフレの加速と低い債券利回りが重なった特殊な時期だった。その後、この組み合わせは再現していないとも指摘されている。
日本円で検証した試算が2.5%と厳しくなったのも、1970年からのデータを使っているからだ。1970年は1ドル360円で、そこから円高が進んだ期間をまるごと含んでいる。ドルの資産を円に換えて暮らす人にとって、これはいちばん苦しい50年だった。
いまは逆に、円安の局面にある。切り取る場所を変えれば、答えも変わる。
② 為替
これは日本特有の話だ。オルカンでも中身の6割超はドルの資産で、S&P500ならほぼ全部になる。取り崩すときに円高が来ていれば、同じ金額を売っても手にする円は減る。
③ 税金。ただし、よく言われる話は少し大げさ
「日本は20.315%の税金があるから、手取りで4%ほしいなら額面5%売らないといけない」。4%ルールが日本では無理だとされる理由として、いちばんよく挙がるのがこれだ。
ただ、この説明は少し大げさだと思う。
つまり「額面5%必要」が成り立つのは、買った値段がほぼゼロに近いくらい育ちきった場合だけだ。ふつうはもっと軽い。
もちろん税金がかかること自体は変わらないので、目安を少し厳しめに見ておく理由にはなる。ただ「税金があるから4%は無理」で話を終わらせるのは、雑だと思う。
3. で、わたしは実際どうしているか
ここが、この記事でいちばん書きたかったところだ。
わたしはまだ、1円も取り崩していない。
4%ルールに当てはめれば、年233万円までは使える計算になる。でも実際に資産から受け取っているのは配当だけで、金額にすると年49万円。総資産の0.8%だ。いちばん厳しい2.5%と比べても、その3分の1以下しか動かしていない。
暮らしを支えているのは、この配当と仕事の収入だ。サイドFIREは働き続ける前提なので、生活費の全部を資産に払わせる必要がない。
そもそもわたしが完全FIREではなくサイドFIREを選んだのは、働かなくていい状態がほしかったからではない。フリーランスとして、仕事を選べる自由がほしかったからだ。受けたい仕事を受けて、条件の合わない仕事は断れる。その後ろ盾として資産がある、という順番になっている。
だからわたしにとっての資産は、いま使うためのものというより、仕事がなくなっても最低限は暮らしていけるという土台に近い。普段は手をつけない。
「4%か、3.9%か、2.5%か」という論争は、資産を取り崩して暮らす人にとっての問題だ。わたしにはまだ、その場面が来ていない。
4. それでも4%ルールを参考にしている理由
いま使っていないなら、もう気にしなくていいのかというと、そうでもない。
わたしが4%ルールを見ているのは、いつか働けなくなった日のためだ。病気になる、仕事が来なくなる。そういう日が来たときに、資産だけでどこまで暮らせるのか。その見当をつけるための目安として、いまも参考にしている。
そして、目安である以上、わたしは厳しいほうを見ておく。
これは性格の話だと思う。わたしはけっこう臆病で、生活防衛資金を20ヶ月分も持っているし、暴落が来たときの想定もリーマン級まで書き出さないと落ち着かない。だから4.7%という明るい数字を見ても、「じゃあ274万円使える」とは考えない。2.5%だとどうなるかを、先に見る。
だから「日本では通用しない」と言われても、そんなに困らない。もともと当たると思って使っていないからだ。
5. ただし、臆病になりすぎないようにしている
安全側に寄せるのは自分の性格に合っているけれど、寄せすぎるのも違うと思っている。
「2.5%が安全なら、もっと貯めてからにしよう」「まだ足りない、もう1年働こう」。この方向は、いくらでも進める。数字にはきりがないので、慎重さは無限に伸ばせてしまう。
でも人生は有限だ。
ファイナルファンタジーに、ラストエリクサーという最高級の回復アイテムが出てくる。強力なぶん「ここぞという場面まで取っておこう」と思うのだけど、その場面がなかなか来ない。そして一度も使わないまま、クリアしてしまう。
リベ大の両学長がよく話している「ラストエリクサー問題」だ。お金でも、同じことが起きる。
安全と安心ばかりを積み上げて、結局使わないまま終わってしまう。それは、資産が尽きるのとは別の種類の失敗だと思う。34歳のいま行ける場所と、64歳で行ける場所は、たぶん同じではない。
6. 当たっていると思う部分
最後に、この批判の当たっているところも書いておきたい。
「日本では通用しない」は、まったくの言いがかりではない。為替も税金も日本の物価も、もとの研究には入っていない。アメリカに住んでドルで暮らす人の数字を、そのまま円の暮らしに持ってくるのは、たしかに雑だ。
そして、わたしが取り崩していないのはまだ働けているからでもある。働けなくなった日には、この論争がいきなり自分ごとになる。そのときに「4%だと思ってました」では遅い。
だから今のうちに、厳しいほうの数字で確かめておく。いまの資産をそれぞれの取り崩し率に当てはめると、こうなった。
いちばん厳しい2.5%だと、最低限の暮らしにも34万円届かない。3.9%なら足りるので、どの数字を採るかで結論がひっくり返る。
この34万円が、いまのわたしに残っている穴だ。配当を育てているのも、高配当株を売らない前提で持っているのも、働けるうちにここを縮めておきたいからだ。
4%ルールは、わたしにとって使う道具ではなく、確かめるための物差しになっている。
まとめ
- 4%ルールの数字は、いま2.5%〜4.7%まで割れている。提唱者ベンゲンは2025年に4.7%へ上方修正、モーニングスターは3.9%、日本円で検証した試算では2.5%
- ベンゲンの引き上げは相場への楽観ではなく、7資産まで分散を広げた結果。「4.7%は最悪ケースで、ふつうはもっと使える」とまで書いている
- 割れる理由は①どの期間を切り取るか ②為替 ③税金。とくに日本円の試算が厳しいのは、1ドル360円からの円高期をまるごと含んでいるから
- よく言われる「税金があるから額面5%売る必要がある」は少し大げさ。課税されるのは値上がりした部分だけで、買値がゼロに近いくらい育ちきった場合の話。NISA内は非課税
- わたしの実際: 総資産5,831万円に対して取り崩しは0円。配当493,251円(総資産の約0.8%)と仕事の収入で暮らしている
- 「4%か2.5%か」は取り崩して暮らす人の問題。働き続けるサイドFIREでは、まだ出番が来ていない
- それでも参考にしているのは、働けなくなった日の見当をつけるため。臆病なので厳しいほうの数字で確かめる。いまの資産で2.5%だと年146万円で、最低限の生活費180万円には34万円届かない。この34万円が、いま残っている穴
- ただし臆病になりすぎない。温存しつづけて結局使わずに終わる「ラストエリクサー問題」は、お金でも起きる。備えるのは資産のほうで、暮らしのほうは縮めすぎない
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