SCHDの中身を測ったら+9.3ポイント、HDVより上だった。でも6割は同じ会社で、差をつけたのは「持っていない業種」だった
- 1. HDVは、資本コストを超える会社を先に選ぶETFだった。中身を測ったら+8.3ポイント。でも5番目のファイザーは割れていた
- ▶ 2. SCHDの中身を測ったら+9.3ポイント、HDVより上だった。でも6割は同じ会社で、差をつけたのは「持っていない業種」だった
- 3. HDVもSCHDも、VYMの中にいた。604社の中身を測ったら、3本の違いは「どれだけ絞るか」だけだった
ETFの中身を測るシリーズの2本目。1本目はHDVだった。今回はSCHD(シュワブ・米国配当株式ETF)を測る。
SCHDは米国の高配当ETFのなかでも最大級で、純資産は1,121億ドル、経費率は0.06%。ただしSCHD本体は、日本の証券会社では買えない。日本で買えるのは、SCHDに投資する国内の投資信託だ。楽天投信の「楽天・SCHD」と、SBIアセットの「S・米国高配当株式100」の2本があって、どちらも新NISAの成長投資枠の対象になっている。HDVは本体を買えるけれど、毎月分配になったので新NISAでは買えない(新NISAは毎月分配型を対象外にしている)。
測ってみたら、SCHDの中身は、稼ぐ力(ROIC)から資本コスト(WACC)を引いた差が+9.3ポイント。HDVの+8.3ポイントより上で、資本コストを割っている会社は組み入れ比率で7.6%と、HDVの半分だった。
ただ、ここで終わると「SCHDのほうが上」という話になる。中身を並べてみると、そう単純ではなかった。6割は同じ会社だったからだ。
1. 測り方は前回と同じ
測り方はシリーズで統一している。詳しくはHDVの記事の1章に書いたので、ここでは要点だけ。
2. SCHDの選び方には、資本コストという言葉がない
HDVは、米国の投資調査会社モーニングスターがいう「堀」(他社がマネしにくい強み)、つまりROICがWACCを上回り続ける見込みで最初にふるいにかけるETFだった。SCHDはどうか。
SCHDが連動するのはダウ・ジョーンズ米国配当100指数。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの解説ペーパー(2015年12月)によると、選び方はこの順番だ。
並べてみると、SCHDの選び方には資本コストという言葉が出てこない。代わりに入っているのが④の4つの指標だ。
このうち「稼ぐ力」を見ているのはROE。ROEは株主のお金(自己資本)に対して、いくら稼いだかで、ROICと似ているけれど、借金を増やすと数字が膨らむ癖がある。SCHDはそこを「キャッシュフロー÷総負債」でもう一度ふるいにかけていて、借金で膨らんだROEを別の指標で打ち消す設計に読める。
つまりHDVは「資本コストを超える見込み」を直接見て、SCHDは「稼ぐ力と借金の軽さ」を点数で見ている。入口は違う。では出口、つまり実際の中身はどう違うのか。
3. 測ったら+9.3ポイント。真ん中の会社が強い
99社を1社ずつ測って、組み入れ比率で加重した(大きく持っている会社ほど重く数える)。あわせて、比率で並べたときのちょうど真ん中の会社の値を「中央値」として添える。HDVと並べる。
加重平均はROIC 16.8%、WACC 7.6%を引いて+9.3ポイント。HDVより1ポイント上だった。
もっと差が出たのは中央値だ。HDVは中央値11.2%で、平均との差が4ポイントあった。たばこ(アルトリア)や家の修理(ホーム・デポ)のような極端に高い会社が平均を押し上げていて、真ん中の会社はもっと普通だったということだ。SCHDは中央値が15.1%で、平均との差は1.7ポイントしかない。一部の会社が引っぱっているのではなく、真ん中の会社が普通に強い。ROEで点数をつけて上から100社、という選び方の効きかたが、ここに出ていると思う。
上位10社も並べておく。
4. 割れているのは7.6%。半分がシェブロンで、フォードは0.2%だった
割れている側も見る。3年平均のROICがWACCの7.6%に届かないのは8社。組み入れ比率で見ると、偶然だけれどこちらも7.6%だ。HDVの14.7%の、ほぼ半分になる。
シェブロンはHDVでも3位で、あちらでも割れていた。前回と同じ話だ。
引っかかったのはフォードだ。3年平均のROICが0.2%。資本コスト7.6%どころか、ほぼゼロ。SCHDの入口は「10年以上、配当を払い続けている」だった。フォードはそれを満たしている。でも配当を10年払い続けることと、資本コストを超えて稼ぐことは、別の話だった。配当の連続は、稼ぐ力の証明にはならない。この物差しで見ると、それがはっきりする。
とはいえ、割れているのは7.6%。HDVの半分で済んでいる理由は、フォードのような会社が少ないからではない。公益をほとんど持っていないからだ。HDVは電力・ガスを18社・7.3%持っていて、そのうち16社・6.6%が割れていた。SCHDは公益が1社・0.1%。電力会社は規制で利益が抑えられていてROEが低く、そのうえ借金も重い。SCHDの4つの指標のうちROEと「キャッシュフロー÷総負債」の両方で点数が伸びず、上位100社に入りにくいのだと思う。
割れている会社が少ないのは、選び方の結果ではある。ただ、それは「持っている会社が強いから」というより、「割れやすい業種を、最初から持っていないから」だった。HDVとの差は、何を持っているかより、何を持っていないかで生まれていた。
5. 6割は同じ会社だった
ここまで読むと、SCHDとHDVはずいぶん違うETFに見える。でも銘柄を突き合わせると、話が変わる。
入口の選び方がまるで違うのに、出口はこれだけ重なる。「10年配当を続けていて、稼ぐ力があって、借金が軽い」大型株は、どの物差しで選んでもだいたい同じ顔ぶれになるということだと思う。
違いは残りの4割にある。SCHDだけが持っているのは、ADP(ROIC 37.1%)、ファスナル(31.1%)、アクセンチュア(25.7%)、クアルコム(24.9%)、テキサス・インスツルメンツ(18.6%)。資本財(機械や業務サービスなど、会社向けの業種)とITの、工場や設備をあまり使わずに稼ぐ会社だ。HDVだけが持っているのは、エクソン(10.0%)、ファイザー(6.3%)、サザンやデュークの公益。資本が重い会社が多い。
セクターごとに並べると、それがそのまま出る。
ROICが高いのは資本財(25.8%)、IT(22.4%)、一般消費財(21.8%)。HDVでいちばん高かったのは一般消費財の31.2%とたばこの生活必需品だったけれど、SCHDは資本財とITという、HDVにほぼない業種が稼いでいる。アルトリア(40.1%)はどちらにも入っていて、たばこの強さは変わらない。
いっぽうで、SCHDでもいちばん大きいヘルスケア(21.5%)はROIC 12.0%と、平均を下げている側だった。1位のアボット(9.5%)と3位のアムジェン(10.5%)が、WACCは超えているものの高くはない。SCHDの顔はアボットとメルクだけれど、中身で稼いでいるのはADPとファスナルだった。前回の「顔と中身が違う」は、SCHDでも同じだった。
6. で、日本からも買えるSCHDはどう見えたか
測ってわかったことを分けておく。
非課税で持てるかどうかが、いまの日本では2本のいちばん大きな違いかもしれない。
わたし自身は、SCHDもHDVも持っていない。積立はオルカン、高配当は日本株で119銘柄を自分で組んでいる。SCHDを買えていない理由はドルが高いことで、それはこの物差しでは変わらない。ただ、中身については、こう言えるようにはなった。6割は同じ。残りの4割で、SCHDは資本を使わずに稼ぐ会社を、HDVは資本が重くて配当が多い会社を持っている。
3本目はVYM。好きな3本の、残りの1本だ。そのあとで、高配当という縛りを外したS&P500を測る。
ジョエル・グリーンブラットは、資本利益率と益回りの2つだけで銘柄を選ぶ「魔法の公式」を書いた本で、こう言っている。
安い値段(益回りの高い値段)でだけ買い続ければいい
ジョエル・グリーンブラット(『The Little Book That Beats the Market』2005年)
2つの言葉を説明しておく。資本利益率は、事業に使っているお金(工場・在庫・設備など)に対して、1年でいくら稼いだか。この記事でずっと測ってきたROICと同じ考え方で、「良い会社か」を見る物差しだ。益回りは、株価に対して1年でいくら稼ぐか。PERをひっくり返した数字で、PER10倍なら益回り10%。100万円ぶんの株を買えば、その会社が年に10万円稼いでくれる、という意味になる。こちらは「安いか」を見る物差しだ。
SCHDの4つの指標は、よく見るとこの2本立てに近い。ROEが「良い会社」の側、配当利回りが「安い値段」の側。ただしROEは資本利益率の親戚だけれど、分母が自己資本だけで借金を含めない。配当利回りは益回りの親戚だけれど、稼いだ利益のうち配当に回した分しか数えない。似た形をしているけれど、同じ物差しではない。だから、ROICがほぼゼロのフォードでも、10年配当が続いていてROEや利回りの点数が足りれば通る。
今回測ったのは「良い会社」の側だけだ。もう片方の「安い値段」の側、つまりSCHDをいまの値段で買うのが得かどうかは、前回と同じで、この記事では測っていない。中身が良いことと、いま買うことは別の話だ。
SCHDそのものは日本の証券会社では買えませんが、SCHDに投資する投信(SBI証券なら「S・米国高配当株式100」)を通じて中身をそのまま持てます。この記事の構成銘柄と比率は、Schwabが毎日公表しているもので、特別な情報は使っていません。わたしが8年使っているメイン口座です。
SBI証券の公式サイトを見る →まとめ
- SCHD 99社を3年平均ROICで測ると+9.3ポイント(16.8%−7.6%)。中央値でも+7.5ポイントで、真ん中の会社が強い
- 選び方は10年連続配当→キャッシュフロー÷負債・ROE・配当利回り・5年の配当成長率の点数で上位100社。資本コストという言葉は出てこない
- 割れは7.6%とHDVの半分。半分はシェブロン、フォードはROIC 0.2%。10年連続配当は稼ぐ力の証明にならない
- 割れが少ない理由は公益をほぼ持っていないから(0.1%。HDVは7.3%持っていて、うち6.6%が割れ)
- 6割はHDVと同じ会社。残り4割で、SCHDは資本財・IT(ADP 37.1%)、HDVはエクソン・ファイザー・公益を持つ
- 日本ではSCHDに投資する投信(楽天・SBI)で新NISAでも持てる。HDVは対象外なので、違いはそこかもしれない。値段は見ていない
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