HDVもSCHDも、VYMの中にいた。604社の中身を測ったら、3本の違いは「どれだけ絞るか」だけだった
- 1. HDVは、資本コストを超える会社を先に選ぶETFだった。中身を測ったら+8.3ポイント。でも5番目のファイザーは割れていた
- 2. SCHDの中身を測ったら+9.3ポイント、HDVより上だった。でも6割は同じ会社で、差をつけたのは「持っていない業種」だった
- ▶ 3. HDVもSCHDも、VYMの中にいた。604社の中身を測ったら、3本の違いは「どれだけ絞るか」だけだった
ETFの中身を測るシリーズの3本目。1本目はHDV、2本目はSCHDだった。今回はVYM(バンガード・米国高配当株式ETF)。HDV、SCHDと並んで、わたしが好きな米国の高配当ETFの3本目だ。
VYMは604社を持つ。HDVの75社、SCHDの99社と比べると桁が違う。純資産は1,007億ドル、経費率は0.04%。VYMは本体(ETFそのもの)を日本の証券会社で買えて、四半期分配なので新NISAの成長投資枠でも買える(新NISAは毎月分配型を対象外にしている)。HDVの解説記事で、わたしはVYMをこう書いた。「参加条件のゆるい、クラスのみんなで頑張る運動部」。
測ってみたら、そのクラス全体の成績は+6.5ポイント。HDVの+8.3、SCHDの+9.3より下で、3本でいちばん低かった。資本コスト(WACC)を割っている会社も22.6%で、いちばん多い。
でも、そこで終わる話ではなかった。銘柄を突き合わせたら、HDVの99.5%、SCHDの98.6%が、VYMの中に入っていた。選抜チームのメンバーは、ほぼ全員このクラスにいた。
1. 測り方は前回と同じ。ただし、測れない部分が大きい
測り方はシリーズで統一している。詳しくはHDVの記事の1章に書いたので、要点だけ。
先に断っておきたいのは、測れない部分の大きさだ。HDVは4.0%、SCHDは8.0%だったのが、VYMは19.4%。VYMの最大セクターは金融の21.7%で、そのほとんどが銀行と保険。この記事の数字は、VYMの8割について言えることだと思って読んでほしい。
2. VYMの選び方には、「稼ぐ力」の条件がない
HDVは「堀」(ROICがWACCを上回り続ける見込み)と財務で絞ってから、配当利回り順に75社。SCHDは10年連続配当と4つの指標の点数で100社。では、VYMはどうやって604社を選んでいるのか。
VYMが連動するのはFTSE RussellのFTSE高配当利回り指数。ルール文書(v2.4・2025年10月)の選び方は、拍子抜けするほど短い。
つまりVYMは、「配当を払っている米国株の、利回りが高いほうの半分」をそのまま全部持つETFだ。HDVの「堀」も、SCHDの「ROE(自己資本利益率)」も「キャッシュフロー÷負債」もない。稼ぐ力の条件はゼロで、あるのはREITと無配を外すことだけ。
だから中身は「高配当株のほぼ全体」に近い。
ひとつ、時価総額で比率を決める副作用も先に書いておく。VYMの1位はブロードコム(7.35%)。AI半導体の会社で、配当利回りは0.7%ほどしかない。境目には余裕があるので、いったん入った会社は利回りが下がってもすぐには外れない。そこへ株価が上がって時価総額が膨らんだぶん、比率だけが大きくなった。高配当ETFの顔が、利回り1%を切る半導体会社になっている。
3. 測ったら+6.5ポイント。3本でいちばん低い
381社を1社ずつ測って、組み入れ比率で加重した(大きく持っている会社ほど重く数える)。比率で並べたときのちょうど真ん中の会社の値を「中央値」として添える。3本を並べる。
加重平均はROIC 14.6%、WACC 8.1%を引いて+6.5ポイント。中央値は13.1%で+5.0ポイント。3本でいちばん低いけれど、米国の主要企業の平均(+5.3ポイント)とは同じくらいで、日本の平均とは相変わらず別世界だ。高配当の会社をまとめて持ったときの稼ぐ力は、米国の平均並み。そう読める。
上位10社も並べておく。
上位10社を足しても26.1%。604社に散らばっているので、1社の影響が小さい。そして上位10社のうち2社が銀行で測れない。これがVYMの顔だ。
4. 割れているのは22.6%。3本でいちばん多い
3年平均のROICがWACCの8.1%に届かないのは137社。組み入れ比率で18.0%、測れた分に対して22.6%だ。HDVの14.7%、SCHDの7.6%より多い。
公益とエネルギーは、HDVのときと同じ話だ。VYMらしいのは資本財の2.8%のほう。RTX(旧レイセオン)が5.2%、3Mはマイナス1.5%。3Mは耳栓の訴訟で2023年に巨額の和解金を積んだ年が入っていて、3年平均でもマイナスに沈んでいる。SCHDは4つの指標で、HDVは「堀」で、こういう会社を入口で落としていた。VYMは落とさない。配当を払っていて利回りが上位半分なら、稼ぐ力に関係なく入るからだ。
割れが22.6%と多いのは、選び方の帰結そのものだと思う。絞らなければ、全体の割れ率がそのまま出る。
5. HDVもSCHDも、丸ごとVYMの中にいた
ここが今回いちばん書きたかったところだ。3本の銘柄を突き合わせた。
HDVもSCHDも、ほぼ丸ごとVYMの中に入っていた。2章で見た選び方を思い出すと、当たり前ではある。VYMは「配当を払っていて利回りが上位半分」の会社を全部持つ。HDVもSCHDも、その母集団から自分の基準で選び出している。運動部でいえば、クラス全員がVYMで、HDVとSCHDは、そのなかから選んだ選抜チームだ。
では、選抜されたメンバーと、されなかったメンバーで、稼ぐ力はどれだけ違うのか。VYMを2つに割ってみた。
選抜された側のROICは16.0%、されなかった側は13.6%。絞ると2.3ポイント上がって、割れは4.4ポイント減る。HDVとSCHDがやっている「選ぶ」という仕事の効き目が、だいたいこのくらいだと思う。
ただ、選抜された側でも割れが20.0%ある。HDV単体では14.7%、SCHD単体では7.6%だったのに、なぜ増えるのか。理由は資本コストの線の高さだ。VYMは線が8.1%で、HDVの6.7%やSCHDの7.6%より上にある。同じ会社でも、VYMの物差しで測ると割れやすい。どのETFに入っているかで、同じ会社の合否が変わる。これは物差しの癖として覚えておきたい。
セクターごとの数字も置いておく。
ROICが高いのは、ここでも一般消費財(25.1%)と生活必需品(19.1%)。スターバックス45.6%、アルトリア40.1%、コルゲート37.1%、ロウズ33.9%。HDVで見た「たばこ(アルトリア)と家の修理(ホームセンターのロウズ)」は、VYMでも変わらない。でもVYM全体のなかで、この2つのセクターは合わせて14%しかない。稼ぐ力の高い業種が薄く、金融・IT・資本財が厚い。それが平均を米国並みに引き戻している。
6. で、3本を測り終えてどう見えたか
好きな3本を、同じ物差しで測り終えた。わかったことを並べる。
VYMに投資する投信(SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド)もある。買いやすさでは3本のなかでいちばんだ。
わたし自身は、3本とも持っていない。積立はオルカン(全世界株式のインデックス投信)、高配当は日本株で119銘柄を自分で組んでいる。SCHDを買えていない理由はドルが高いことで、VYMも同じだ。ドルが高いという理由は、この物差しでは変わらない。
ただ、3本の並べ方は、わたしのなかでこう決まった。クラス全員がVYMで、HDVとSCHDはそこからの選抜チーム。クラスごと持つなら+6.5、選抜チームを持つなら+8〜9。代わりに選抜チームには、持たない業種ができる。どちらが良いかは、選ぶ側の好みだと思う。
4本目はS&P500。高配当という縛りを外したら、中身はどう見えるのか。
VYMを運用するバンガードの創業者、ジョン・ボーグルは、インデックス投資を勧める本でこう書いている。
干し草の山ごと買え
ジョン・C・ボーグル(『The Little Book of Common Sense Investing』2007年)
VYMは、この言葉をそのまま形にしたETFだと思う。高配当という干し草の山を、針を探さずに丸ごと買う。ボーグルの会社の商品らしい設計だ。
ただ、測ってみると、その山の22.6%は、資本コストを割っていた。針を探さないと決めるなら、そこごと持つことになる。HDVとSCHDは、針を探しているのではなく、山をふるいにかけて小さくしている。どちらも間違いではない。VYMのように山ごと持つか。HDVやSCHDのように、ふるいにかけて小さくした山を持って、稼ぐ力(ROIC)を2〜3ポイント高くするか。後者を選ぶなら、公益や資本財を持たないといった業種の偏りも、一緒に引き受けることになる。3本を測って残ったのは、その選択だった。
今回測ったのも、中身の会社に稼ぐ力があるかどうかだけだ。VYMをいまの値段で買うのが得かどうかは、前回までと同じで、この記事では測っていない。
VYMは四半期分配なので、SBI証券なら米国ETFとしてそのまま成長投資枠で買えます(HDVは毎月分配になったので対象外)。この記事の構成銘柄と比率は、Vanguardが公表しているもので、特別な情報は使っていません。わたしが8年使っているメイン口座です。
SBI証券の公式サイトを見る →まとめ
- VYM(測れた381社・79.4%)は+6.5ポイント(14.6%−8.1%)。HDV+8.3、SCHD+9.3より下で、米国の主要企業の平均並み
- 選び方は、配当を払う米国株を予想利回り順に並べて上位半分をそのまま全部。稼ぐ力の条件はゼロ。1位は利回り1%を切るブロードコム
- 割れは22.6%と3本で最大。公益・エネルギーに加えて、RTXや3M(マイナス1.5%)など資本財が入る
- HDVの99.5%、SCHDの98.6%がVYMの中にあった。クラス全員がVYMで、2本は選抜チーム。選ぶとROICは2.3ポイント上がり、割れは4.4ポイント減る
- 金融21.7%は物差しの外。数字はVYMの8割についての話。値段は見ていない
- 本体を日本の証券会社で買えて、新NISAの成長投資枠でも持てる
関連記事
- SCHDの中身を測ったら+9.3ポイント、HDVより上だった。でも6割は同じ会社で、差をつけたのは「持っていない業種」だった
- HDVは、資本コストを超える会社を先に選ぶETFだった。中身を測ったら+8.3ポイント。でも5番目のファイザーは割れていた
- HDVとは?米国高配当ETFの中身・利回り・VYMとの違いをわかりやすく解説
- 話題の「オルカン高配当」、わたしは買わない。でも、この商品にしかないものがあった
- JTは価値を生んでいるか。測ったらROIC10.1%。でも1年前に測っていたら、逆の記事を書くところだった




