東京海上が15分割と、初めての優待を発表した。わたしに届くのは、早くて2030年だった
8月25日、東京海上ホールディングスが、株式の15分割と、初めての株主優待の導入を発表した。
東京海上は、117銘柄のなかで20株だけ、単元未満で持っている株だ。
分割はいい。でも、優待には少しモヤっとした。わたしは優待を目的にしない派だからだ。
その「いらない派」のところに、優待が向こうからやってきた。どう受け取ればいいのか。発表の原典を開いて、順番に考えてみた。
1. 何が発表されたか
発表は、取引が終わったあとの8月25日夕方。中身は大きく2つある。
・1株を15株に分割。基準日は9月30日、効力は10月1日
・株を買うのに必要な最低額が、約74万円から約5万円になる
② 初めての株主優待
・100株以上を3年以上持ち続けた株主に、電子マネーなどを贈呈
・初回は7,500円相当、翌年以降は毎年2,500円相当
・最初の基準日は2027年3月31日
発表の題名には「配当予想の修正」という言葉も入っているけれど、減配ではない。1株が15分の1になるので、1株あたりの配当も15分の1にそろえただけだ。ここは読み間違えやすいので、先に書いておく。
2. 分割で、何が変わって、何が変わらないか
その前に、東京海上がどういう会社かを、ひとことだけ。
時価総額は約14.3兆円で、日本の会社の中でも上位の大きさ
配当は7期連続の増配予想(2027年3月期245円)。利回りは3%台で、高配当株としても人気の銘柄のひとつ
株式分割は、ピザの切り方を変えることだと思っている。8枚切りを120枚切りにしても、ピザは大きくならない。
わたしの20株で、実際に数えてみる。
評価額も、配当も、1円も変わらない。変わるのは切り方だけ。
それでも、変わることが2つある。
ひとつは、買いやすさ。単元(100株)で買うなら、必要なお金は約74万円から約5万円になる。単元未満株なら、1株約494円から買える(リアルタイムで売買できないなどの制約はある)。
もうひとつは、わたしが単元株主になる。20株は単元未満で、議決権がなかった。300株は3単元。株主総会で票を持つ株主になる。分割のおまけとしては、ちょっと面白い変化だと思う。
3. 初めての優待。わたしは、いらない派だった
さて、優待だ。
わたしは高配当株を117銘柄持っているけれど、優待を目的に選んだ株は1銘柄もない。理由は単純で、株主への還元は配当がいちばん公平だと思っているからだ。配当は1株持っていれば1株ぶん、誰にでも同じ割合で届く。優待は「100株以上」のような線を引くので、線の内側と外側で不公平になる。モノでもらうより、お金でもらって好きに使いたい、というのもある。
その考えで選んできた117銘柄のひとつが、初めての優待を作った。中身は電子マネーなので、モノよりは配当に近い。金額は、初回7,500円、以降は年2,500円。わたしの配当が年約4,900円なので、2,500円は配当の半分ほどだ。
もらえるなら、もらう。でも、そのために何かをすることはない。そう思いながら条件を読んでいて、ひとつ気づいたことがある。
4. わたしの3年の時計は、2030年から
優待の条件は「100株以上を、3年以上継続保有」。この「3年」の数え方が、発表の原典にきっちり書いてある。
・「100株以上を保有する株主として」同一の株主番号で連続7回以上記載されること
・売却などで連続が途切れたら、それまでの期間は通算しない
ポイントは「100株以上を保有する株主として」のところだ。
わたしはいま20株。これまでの名簿には「100株未満の株主」として載ってきた。つまり、何年持っていても、この時計はまだ動いていない。
分割で300株になって、初めて「100株以上の株主」になる。分割の効力は10月1日なので、最初にカウントされる名簿は2027年3月31日。そこから連続7回、名簿に載り続けると、7回目は2030年3月31日になる。
2027年9月〜2029年9月 2〜6回目
2030年3月31日 7回目。ここで初めて「3年以上継続保有」
初回の7,500円が届くのは、早くて2030年
いま単元未満で持っている人も、同じはずだ。分割で株数の条件には入るけれど、3年の時計は分割後のゼロから。優待が目当てなら、ずいぶん気の長い話になる。
わたしは優待が目当てではないので、これで困ることは何もない。売らないと決めている株の隣で、時計が勝手に回るだけだ。
5. なぜ、いま優待を作ったのか
面白いのは、会社側の事情のほうだ。
日経の記事によれば、東京海上は政策保有株を2030年3月までに解消する方針を掲げている。政策保有株というのは、取引先の会社どうしがお互いの株を持ち合う、昔ながらの仕組みだ。これがなくなると、黙って長く持ってくれる株主が、ごっそりいなくなる。
代わりの長期株主として期待されているのが、個人だ。15分割で買いやすくして、入口を広げる。優待に「3年」の条件をつけて、長く持つほど得な形にする。発表の文面にも「短期的な保有ではなく、長い時間軸で支えていただきたい」とはっきり書いてある。
つまりこれは、株主の入れ替え工事だ。持ち合いの企業から、個人の長期株主へ。個人向け国債の記事で見た「日銀の代わりに家計に国債を持ってほしい」と、同じ形をしている。大きな持ち手が抜けるとき、その席は個人に回ってくる。
6. わたしは、どう見ているか
やることは、変わらない。売らない。買い増しは、割安と判断できたときだけ。
ただ、この発表で東京海上という会社の考えは、少し分かった気がする。7期連続の増配(2027年3月期の予想245円まで)に、初めての優待。株主への返し方を厚くしながら、返す相手を「長く持つ個人」に寄せようとしている。配当がほしくて持っているわたしは、たまたまその真ん中にいる。
死などの重大な事由がなければ解消できない
恒久的なものにしてしまうことは、
現代の弊害への有効な処方箋になるかもしれない
ケインズは、90年前にこう書いた。株が簡単に売り買いできるせいで、みんな長期の価値ではなく短期の値動きばかり見てしまう。いっそ結婚のように、簡単には解消できないものにしてしまえば、と。
ただ、ケインズ自身が、このすぐあとで「それはそれで困ったことになる」と続けている。いつでも売れるという安心があるから、人は株を買える。縛れば長期になるが、縛ると誰も入ってこない。
東京海上の「3年で7,500円」は、この間を取った仕掛けなのだと思う。縛りはしない。でも、長くいた人にだけ、少しだけ返す。
わたしはといえば、縛られる前から、売らないと自分で決めている。だから優待の3年は、あってもなくても同じだ。それでも、同じ方向を向いた仕掛けが増えるのは、悪い気はしない。長く持つと決めた人にとって、居心地のいい株が1つ増えた。それくらいの受け取り方で、ちょうどいいと思っている。
わたしの東京海上20株も、単元未満株で買ったものです。10月の分割後は1株約500円になるので、さらに小さく積めるようになります。メイン口座はSBI証券で、8年以上使っています。
SBI証券の公式サイトを見る →7. まとめ
- 東京海上が15分割(10月1日効力)と初の株主優待を発表。最低投資額は約74万円から約5万円に
- 期末配当の「修正」は分割にあわせた調整で実質同額。減配ではない。分割で評価額も配当も1円も変わらない
- わたしの20株は300株になり、単元未満株主から議決権を持つ株主になる
- 優待は100株以上×3年で初回7,500円、以降年2,500円の電子マネー。ただし3年は「100株以上の株主として名簿に連続7回」で数えるので、いま単元未満のわたしの時計は分割後のゼロから。初回は早くて2030年
- 背景には政策保有株を2030年3月までに解消する方針。持ち合いの企業から個人の長期株主への、株主の入れ替え工事
- わたしは優待を目的にしない。売らない・買い増しは割安のときだけも変わらない。時計は勝手に回してもらう
・きっかけになった記事:日本経済新聞「東京海上、株式を15分割 長期株主向けの優待も導入」(2026年8月25日)。最低投資額の変化と、政策保有株を2030年3月までに解消する方針の背景はここから
・配当の実績と予想:2026年3月期218円、2027年3月期予想245円(7期連続増配の予想)。ダイヤモンド・ザイほか
・株価と評価額:8月25日終値7,408円。保有分の数字はわたしの口座の記録です。「初回は早くて2030年」は開示の定義をわたしが読み解いた概算です
・ケインズの言葉:John Maynard Keynes『The General Theory of Employment, Interest and Money』(1936) 第12章




