話題の「オルカン高配当」、わたしは買わない。でも、この商品にしかないものがあった
9月30日に「オルカン高配当」という投資信託(投信)が出る。オルカンは、世界中の株にまとめて投資できる人気の投信で、その高配当版という名前だ。名前を見て、こう思った人もいるはずだ。
😊「なんか儲かりそう」
😌「オルカンって付いてるし、安心感がある」
👀「よく分からないけど、なんか面白そう」
わたしも気になったので、中身を調べた。結論から言うと、わたしは買わない。理由はあとで書くが、調べてみたら、「高配当」の意味が、わたしの思っていたものと違っていた。利回りは3.24%。わたしの日本の高配当株119銘柄の4.5%(いまの評価額に対して)より低く、米国の高配当ETF(証券取引所で売り買いできる投信)の定番、HDVやSPYDにも届かない。ただ、代わりに、この商品にしかないものが1つあった。
その中身を、順番に見ていく。
1. オルカン高配当とは。中身は「713社」
まず、商品の基本から。運用会社の発表資料(8月26日)にある事実だけを並べる。
2本立て 配当払出型(年4回の決算ごとに、受け取った配当を全額分配)と資産成長型(決算は年1回で、分配しない)
信託報酬(持っている間ずっとかかる手数料) 年0.165%。ふつうのオルカンは0.05775%
NISA 成長投資枠だけ(つみたて投資枠では買えない。ふつうのオルカンは両方で買える)
販売 SBI証券・楽天証券・マネックス証券
ひとつ、先に押さえておきたい。配当払出型の分配金は、713社から受け取った配当が元だ。ただし、それもファンドの資産の一部なので、払った分だけ基準価額(投信の値段)は下がる。運用の成果に上乗せされるお金ではない。運用会社の資料にも、そう書いてある。
肝心なのは、どうやって高配当の会社を選ぶかだ。これは運用会社ではなく、連動する指数が決めている。指数とは、値動きの目標になる銘柄リストのことで、作っているのはMSCIという米国の会社だ。
② 配当の持続性・成長性、財務の質でふるいにかける。不動産(REIT)は外す
③ 直近1年の株価が悪い会社も外す(減配しそうな会社を避けるため)
④ 残った中で、配当利回りが親指数の1.3倍以上の会社だけを採用
→ 残ったのは713社。オルカンの3分の1以下
単に利回りが高いだけでなく、配当の持続性や財務の質も考慮して選んだ、と運用会社は書いている。たしかに、②③④と、ふるいは3段ある。ただ、ふるいの結果として何が残ったかは、表を見ないと分からない。
2. オルカンから、何を抜いて、何を足したか
同じMSCIの資料で、ふつうのオルカンの指数と並べる。
一言で言うと、オルカンからハイテクを抜いて、石油と薬と日用品を足したのがオルカン高配当だ。
上位10社に、エヌビディアもアップルもマイクロソフトもいない。配当をあまり出さないからだ。代わりに上位10社に並ぶのは、エクソンモービル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、シェブロン、コカ・コーラ、P&G。オルカンの上位10社が全体の24%を占めるのに対して、こちらは上位10社で19%。1社の重さが軽いことも、ふるいの結果だ。
ここまで見ると、「オルカンの高配当版」というより、別の詰め合わせ(この記事では「パック」と呼ぶ)に見えてくる。米国の比率は11ポイント低く、日本は少しだけ多い。値段の物差しであるPERは16.5倍で、オルカンより2割以上安い。
3. 定番の高配当ETFと、同じ物差しで並べる
「高配当」と聞いてわたしが思い浮かべるのは、米国のHDV・VYM・SCHD・SPYDの4本だ。どれも、米国の高配当株を集めたETFだ。このブログでもHDVとSCHDは中身を見てきた。オルカン高配当を、この4本と同じ物差しで並べてみる。ただし、オルカン高配当はまだ設定前で、成績がない。そこで、連動する指数の数字(過去にさかのぼって計算したもの)で代用する。
この表から読めることは、3つある。
利回りは、5本の中で真ん中。SPYDの4.1%、HDVの3.3%には届かず、SCHDと同じくらいで、VYMより高い。「高配当」の看板としては、目立って高くはない。
10年の成績も、5本の真ん中。ただしSCHDの13.2%、VYMの11.8%には大きく負け、ふつうのオルカンの13.1%にも年2.8ポイント負けている。ハイテクが伸びた10年で、ハイテクを抜いたパックが負けるのは、当然といえば当然だ。
下げの年には、ふつうのオルカンより持ちこたえる。ただし、高配当5本の中ではいちばん弱い。2022年、ふつうのオルカンは18%下がった。オルカン高配当は6.7%の下げで済んだが、HDVは7%のプラス、VYMとSPYDはほぼ横ばい、SCHDも3%の下げだった。
3つを合わせると、こう見える。米国の4本、とくにSCHDとVYMは、値上がりと配当の両方を取りながら、揺れも小さい。SCHDの10年はふつうのオルカンと並び、2022年の下げはその5分の1で済んだ。持ちやすい詰め合わせだと思う。オルカン高配当は、この4本と同じ土俵に乗せると、利回りでも成績でも下げの小ささでも、特別なところがない。
表の右端に、この商品にしかないものがある。投資先が世界47か国、という列だ。米国のETF4本は、中身が米国の会社だけ。オルカン高配当は米国が52%で、残りの半分近くがスイス・英国・日本・フランスなどに散っている。上位10社にも、スイスのロシュが入っている。
これは小さな違いではない。米国の4本も、4章で並べる日本版SCHDも、配当の出どころは米国の会社だけで、円で受け取る額はドル円で決まる。オルカン高配当は、配当の出どころが47か国に散り、為替も1つの通貨に寄らない。この記事で並べた中で、それができるのはこの1本だけだ。
これが、冒頭で書いた「この商品にしかないもの」だ。わたしにとって、それが買う理由になったかどうかは、6章で書く。
4. 先日のSCHDの続き。日本版SCHDと比べる
先日、SCHDの中身を測ったときに、SCHDそのものは日本の証券会社では買えず、SCHDに投資する投信(SBI・楽天)を通す、と書いた。オルカン高配当の直接のライバルは、米国のETFよりむしろこの日本版SCHDだと思う。どちらも投信で、どちらも年4回の分配で、どちらもNISAの成長投資枠で持てるからだ。
並べると、選ぶ軸がはっきりする。米国の厳選100社か、世界の広い700社か。利回りは3本とも3%台前半で同じくらい(日本版SCHDの2本の差は、設定時期による基準価額の違いで、中身は同じ本家SCHDだ)。コストはオルカン高配当が0.04ポイントほど高い。
もうひとつ、分配の列で覚えておきたいことがある。SBI・SCHDは2026年6月の分配(第5期)が、前回の95円から90円に減った。本家SCHDの4〜6月の配当が前の年より3%少なかったからだ。分配は「本家の配当しだい」で、減ることがある。オルカン高配当の配当払出型も「受け取った配当を全額分配する」仕組みなので、713社の配当が減れば、分配も減る。この点は日本版SCHDと同じだ。
5. わたしの119銘柄と並べる
ここで、わたしの持ち物と並べる。8月末で119銘柄、評価額1,391万円の自前パックだ。配当利回りは、買った値段に対して4.81%、いまの評価額に対しては4.5%ほど。
利回りは、評価額に対して見ても、わたしのほうが1ポイント以上高い。コストもゼロだ。でも、これは「わたしのほうが上手い」という話ではない。わたしが自分で組んでいる理由が、そもそも違う。
わたしが119銘柄を自分で組んでいるのは、日本の高配当株に、これというパック商品がないからだ。HDVやVYMの日本版のようなものがあれば、それを買って任せるほうが楽だと思っている。でも日本株は市場の大きさもあって、納得のいく詰め合わせが見当たらない。それなら自分で作って管理したほうが、手数料もかからず、中身に納得できる。銘柄を選ぶ手間はあるけれど、株の勉強になるので、わりと楽しんでやっている。月に一度、全体のバランスを見る点検や、減配のニュースを追うのも、その手間のうちだ。
もうひとつ違うのは、通貨だ。わたしの119銘柄は円建てで、9月2日から3日にかけての4円の円高は、評価額に影響しなかった。オルカン高配当は中身のほとんどが外貨なので、円高になると、配当も評価額も、円に換算した額が減る。世界に散らす代わりに、為替の影響を受ける。
6. わたしは、どう見ているか
理由は3つ。
増やすのはオルカンの積立、受け取るのは日本の高配当株119銘柄。その2つを、もう別々に持っている
利回りは3.24%で、わたしの119銘柄の4.5%より低い。コストは年0.165%で、自作ならゼロ
この商品にしかない「47か国に散らす」は、ふつうのオルカンで足りている
ただ、調べてみて変わったことがある。「高配当」という言葉の中身だ。
冒頭の4つの声に、わたしが見た数字で返すと、こうなる。
答え 増やす力は弱い。10年の成績は、ふつうのオルカンに年2.8ポイント負けている
答え 利回りは3.24%。定番の高配当ETFと並べて、5本の真ん中
答え 中身はハイテク抜きの別のパック。安心の中身が、ふつうのオルカンとは違う
答え ここは当たり。この記事で並べた中で、配当の出どころを世界に散らしているのはこれだけ。2022年の下げも、ふつうのオルカンの4割弱で済んだ(ただし高配当5本の中ではいちばん下げている)
大きく増やす商品ではない。揺れを抑えながら、世界中から配当を集めてくる商品だ。それがこの商品の持ち味で、ほかにはない売りでもある。ただ、わたしがほしかったものは、そこにはなかった。
なぜそれを持っているのかを知れ
ピーター・リンチ『ワン・アップ・オン・ウォール街』(1989年)
リンチは、マゼラン・ファンドを13年間運用して年率29%の成績を残したファンドマネージャーだ。この言葉は、銘柄でも投信でも同じで、中身と理由を自分の言葉で言えないものは持つな、という意味で引用される。
オルカン高配当に当てはめると、答えはこうなる。何を持つか。ハイテクを抜いた世界の713社。なぜ持つか。増やすためではなく、揺れを抑えて配当を受け取るため。この2つに「そう、それがほしい」と自分の言葉で言えるかどうか。買うかどうかは、そこで決まると思う。
わたしは、2つめの問い「なぜ持つか」の答えが、もう埋まっている。増やすのはオルカン、受け取るのは119銘柄。だから買わない。何がほしいかが先に決まっていれば、話題の商品が出ても、迷わない。
7. まとめ
- オルカン高配当は9月30日設定。オルカンの2,458社をふるいにかけ、利回りが親指数の1.3倍以上の713社だけ。信託報酬0.165%
- 中身はオルカンからハイテクを抜いて、石油と薬と日用品を足したパック。利回り3.24%、米国52%
- HDV・VYM・SCHD・SPYDと並べると、利回りも10年の成績も真ん中。2022年の下げは、ふつうのオルカンの4割弱だが、高配当5本の中ではいちばん大きい
- 日本版SCHDとは「米国の厳選100社」か「世界の700社」かの違い。利回りは同じくらいで、コストは0.04ポイント高い
- わたしの119銘柄は利回り4.5%・コストゼロ・円建て。自作なのは、日本株に納得のいくパックがないから。手間は株の勉強になるので、楽しんでやっている
- わたしは買わない。増やすのはオルカンの積立、受け取るのは119銘柄と、もう別々に持っている
・2タイプの決算回数・分配方針・販売会社:Impress Watch(2026年8月26日)、CNET Japan(Yahoo!ニュース)、くらしとお金「eMAXIS高配当全世界株式とは?」
・指数の中身:MSCI「MSCI ACWI High Dividend Yield Index」ファクトシート、同「MSCI ACWI Index」ファクトシート(いずれも2026年8月31日時点、ドル建て・配当込み)。銘柄数713/2,458、利回り3.24%/1.56%、PER16.5/21.9、国別・業種別比率、上位10社、10年年率10.31%/13.12%、2022年−6.73%/−17.96%はここから
・HDV:iShares(75銘柄、経費率0.08%)。VYM:stockanalysis.com(615銘柄、経費率0.04%)。SCHD:先日の記事(103銘柄、経費率0.06%)。SPYD:State Street(79銘柄、経費率0.07%)
・ETF4本の利回り・10年年率・2022年:Yahoo Financeの分配込み月次データからわたしが計算した概算(利回り=2025年9月〜2026年8月の分配÷8月末価格、年率はドル建て)
・日本版SCHD:資産形成ゴールドオンライン「SBI・SCHDとは?」(2026年8月28日)(信託報酬0.1227%/0.1238%、設定日、SBI・SCHDの分配62→85→90→95→90円)、SBI・SCHD第3期分配金(利回り試算3.50%/3.19%)
・わたしの119銘柄の「評価額に対して4.5%」は、8月末の年間配当見込み(税引後497,161円)を税引き前に戻して評価額1,391万円で割ったわたしの概算。4.81%は買った値段に対する利回り
・リンチの言葉:Peter Lynch, One Up on Wall Street (1989)「Know what you own, and know why you own it.」。訳はわたし。マゼラン・ファンドの運用期間(1977〜1990年)と年率約29%は同書と各種資料による




