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JTは価値を生んでいるか。測ったらROIC10.1%。でも1年前に測っていたら、逆の記事を書くところだった
サイドFIRE2026-08-22📖 約12分で読めます

JTは価値を生んでいるか。測ったらROIC10.1%。でも1年前に測っていたら、逆の記事を書くところだった

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📚 SERIES持ち株を測る(全1回)
  1. 1. JTは価値を生んでいるか。測ったらROIC10.1%。でも1年前に測っていたら、逆の記事を書くところだった
ごまもち
🐾 ごまもち
もってるかぶ、ぜんぶはかるの?🐾
あずき
あずき
ぜんぶは無理だけど、まずは大きいところから。1社目はJTにした。

前の記事で、ROIC−WACCという物差しを覚えた。会社が集めたお金の仕入れ値(WACC)と、そのお金で稼いだ売値(ROIC)。差がプラスなら価値を生んでいて、マイナスなら、黒字でも集めたお金の期待に届いていない。

日本の主要企業の平均はマイナス0.04ポイント。10年かけて改善しても、まだ資本コストを超えられていなかった。

覚えた物差しは、自分の持ち物に当ててこそ意味がある。ということで、保有している日本株を1社ずつ測るシリーズを始める。

1社目はJT(日本たばこ産業・2914)。自分で選んで買った銘柄のひとつで、「タバコってどうなのかな」と迷いながら買った会社だ。喫煙者は年々減っていて、縮小していく産業かもしれないという不安は、当時の記事にそのまま書いてある。

その迷いに、今回は数字で向き合ってみる。

1. JTは何で稼ぐ会社か。1分で

測る前に、中身をひとことで。

🚬 JT(2914)のいま
稼ぎ頭たばこ。それも海外が主戦場。2007年に英ギャラハーを約2.2兆円で買収して以来、世界で売る会社になった
売上収益3兆4,677億円(2025年12月期・前年比+13.4%)
医薬事業手放す方向が決まり、決算では非継続事業に分けられた。たばこへの一本化が進む
のれん2兆9,231億円。買収を重ねてきた歴史が、そのまま帳簿に積んである
決算の数字はJT「2025年12月期 決算短信」(2026年2月12日公表)より。以下この記事の決算数値はすべて同じ出所です。ギャラハーの買収額は当時の報道によります

のれんというのは、会社を買収したときに払った「実際の資産より高く払ったぶん」のこと。あとで効いてくるので、2.9兆円という数字だけ覚えておいてほしい。

2. まずROIC。売値のほうを測る

ROICは、集めたお金で税引き後にどれだけ稼いだか。分子は営業利益から税金を引いたもの、分母は有利子負債+資本で、会社に入っているお金の合計だ。

決算短信から数字を拾って、順番に計算する。

🧮 JTのROIC(2025年12月期)
営業利益8,670億円
実効税率32.3%(法人所得税 2,387億円 ÷ 税引前利益 7,398億円)
税引き後の稼ぎ8,670億円 ×(1 − 0.323)= 5,870億円
有利子負債1兆6,787億円(社債・借入金の流動+非流動)
資本4兆1,154億円
投下資本1兆6,787億 + 4兆1,154億 = 5兆7,941億円
ROIC5,870億 ÷ 5兆7,941億 = 10.1%
営業利益は継続事業(たばこ・加工食品。医薬を除く)のもの。ROICの計算方法には流儀がいくつかあり、ここでは調達サイド(有利子負債+資本)で投下資本を取っています。丸めた表示値で計算しているため、端数は最大0.1ポイントずれます

ROICは10.1%。日本の主要企業の平均が6.37%なので、それを大きく上回る。

ここで1章の「のれん2.9兆円」が効いてくる。投下資本5兆7,941億円のうち、のれんが50.4%を占める。つまりこの10.1%は、買収に高値を払ったぶんも全部背負ったうえでの数字だ。のれんを外して本業の資産だけで測れば、もっと高く出る。ここは正直、すごいと思った。

3. 次にWACC。仕入れ値のほうを測る

WACCは、株主と銀行が期待している利回りの加重平均。前の記事では日本平均の6.41%を使ったけれど、今回はJT自身の数字で組んでみる。

🧮 JTのWACC(試算)
国債の利回り2.85%(10年・財務省 2026年8月20日)
JTのβ0.55(TOPIXに対する連動度。日次5年・1,221本で計算)
株主の期待2.85% + 0.55 × 5.5% = 5.88%(市場全体の上乗せを5.5%として)
銀行・債券の期待税引き後で約1.7%(調達金利を2.5%と置いた)
重みづけ時価総額 約12.4兆円(2026年8月21日終値・88%): 有利子負債 1兆6,787億円(12%)
WACC5.88% × 88% + 1.7% × 12% = 約5.4%
WACCは前提の置き方で動きます。市場全体の上乗せ(リスクプレミアム)を5〜6.5%で振っても5.2〜5.6%の範囲でした。調達金利の2.5%は円建てと外貨建て社債のまざり具合からの目安で、負債の重みが12%しかないので結果への影響は小さいです

JTのWACCは約5.4%。日本平均の6.41%より低い。βが0.55、つまり市場が揺れてもJTはその半分くらいしか揺れないので、株主の期待がそのぶん低くなる。たばこは景気で売れ行きが変わりにくい、という性質がここに出ている。

4. 差は+4.7ポイント。日本平均のはるか上だった

数字がそろったので、並べてみる。

⚖️ ROIC − WACC で並べる
ROIC
WACC
JT(2025年)
10.1%
5.4%
+4.7pt
日本の主要企業の平均
6.37%
6.41%
−0.04pt
米国の主要企業の平均
12.5%
7.3%
+5.3pt
日米の平均は経産省「成長投資ガイダンス データ集」(2020〜2024年平均・マッキンゼー委託調査)。JTだけ2025年単年・自前のWACCなので、厳密には同じ土俵ではありません。JTに日本平均のWACC 6.41%を当てても+3.7ポイントです

+4.7ポイント。日本平均(−0.04ポイント)のはるか上で、米国平均(+5.3ポイント)に迫る。

金額にすると、投下資本5兆7,941億円 × 4.7% = 約2,700億円。株主と銀行の期待をまるごと差し引いたうえで、1年でこれだけの価値を上乗せしたことになる。

縮小していく産業かもしれない、と迷いながら買った会社が、価値を生む力では日本平均どころか、米国平均に迫る水準だった。

5. ところが、1年前に測ると答えが逆になる

ここで終わればきれいな記事だけれど、この計算にはつづきがある。

同じ計算を、1年前の決算(2024年12月期)でやってみる。

🔁 同じ計算を、2024年12月期で
営業利益3,142億円(2025年の8,670億円の4割以下)
税引き後の稼ぎ3,142億円 ×(1 − 0.225)= 2,435億円
投下資本1兆7,268億 + 3兆8,487億 = 5兆5,755億円
ROIC2,435億 ÷ 5兆5,755億 = 4.4%
ROIC − WACC4.4% − 5.4% = マイナス1.0ポイント

マイナス1.0ポイント。資本コスト割れだ。

もしわたしが1年前にこのシリーズを始めていたら、「JTは集めたお金の期待に届いていない会社」という記事を書くところだった。同じ会社なのに、測る年で答えが逆になる。

原因は、カナダの訴訟だった

2024年の営業利益が沈んだ主な理由は、カナダ子会社の喫煙訴訟に関する引当金だ。2025年3月に包括和解が裁判所に承認され、決算短信にもその経緯が明記されている。引当金(流動)の残高は1,959億円から328億円へと大きく減った。和解が進み、支払いの段階に入った形だ。

つまり2024年のROIC 4.4%は、数十年分の訴訟の決着が1年に凝縮された数字で、たばこ事業の稼ぐ力そのものではない。逆に2025年の10.1%には、その反動も少し乗っている。

だから、2年で均してみる。

📐 2年平均でみると
税引き後の稼ぎ(5,870億+2,435億)÷ 投下資本(5兆7,941億+5兆5,755億)= ROIC 7.3%。WACC 5.4%との差は+1.9ポイント。訴訟の重い年を丸ごと入れても、プラスは守られていました

経産省が日米欧の比較を5年平均でやっていた理由が、ここでわかった。単年のROICは、訴訟・減損・税金の一時要因で簡単にひっくり返る。1年の数字で会社を判断してはいけない。自分で測ってみて、いちばん覚えておきたい教訓はこれだった。

6. 配当は、どこから出ていたのか

高配当株として持っている以上、ここがいちばん知りたいところだ。

💰 JTの配当(1株あたり)
2024年
2025年
2026年(予想)
年間配当
194円
234円
242円
配当性向
192.2%
81.4%
75.4%
決算短信の「配当の状況」より。2025年の期末配当は、訴訟の和解などの一時影響を除いた利益(4,886億円)に配当性向85%を当てて決めた、と会社自身が説明しています

見てほしいのは2024年の配当性向192.2%。その年の純利益は1,792億円しかないのに、3,445億円を配った。稼ぎの2倍近い配当だ。

ふつうなら、これは危険信号として教科書に載る数字だと思う。でも5章を通ったあとだと、読み方が変わる。沈んだのは訴訟の一時要因で、たばこ事業のお金を生む力は崩れていなかった。実際、その沈んだ年でも営業キャッシュ・フローは5,141億円入ってきている。会社は一時要因として扱って配当を守り、翌年には234円へ、+20.6%の増配までした。

ROIC−WACCがプラスの会社の配当は、価値を生んだ中から出ている。逆にこれが恒常的にマイナスの会社の高配当は、稼ぎが株主の期待に届かないまま配りつづけている。---

7. で、わたしはどうするか

測ってわかったことを、自分の持ち方に引きつけて整理する。

📋 測ってわかったこと
JTの本業はのれん2.9兆円を背負ってROIC 10.1%。価値を生む力は米国平均に迫る
ただし単年の数字は当てにならない。2024年だけ見れば資本コスト割れ。2年で均して+1.9ポイント
配当は価値を生んだ中から出ている。訴訟の年の配当性向192%も、一時要因とわかれば読み方が変わる
この物差しが答えていないのは将来。ROICは過去の成績

わたしは売らない主義なので、この結果で何かを売り買いすることはない。動かすのは、次に買い足す先を考えるときの順番だけだ。そこにROIC−WACCという列がひとつ増えた。

そして最後の1行が、たぶんいちばん大事だ。この物差しは過去を測るもので、「縮小していく産業かもしれない」という買ったときの迷いには、直接は答えていない。値上げでどこまで持つのか、加熱式やその先で何を育てられるのか。それは決算の別の場所と、これからの決算で確かめていくしかない。

物差しは万能ではない。でも、迷いながら持っているのと、測って持っているのとでは、ぜんぜん違う

ごまもち
🐾 ごまもち
はかったら、あんしんした?🐾
あずき
あずき
安心というより、持ってる理由を自分の言葉で言えるようになった感じかな。

ウォーレン・バフェットが1993年、学生に「投資のリスクをどう測るのか」と聞かれて、こう答えている。

リスクとは、自分が何をやっているのか
分かっていないことから生まれる
Risk comes from not knowing what you're doing.
ウォーレン・バフェット(1993年・コロンビア大学ビジネススクールでの発言

買った理由なら、ずっと言えた。配当の実績と安定性。でも「この会社は集めたお金の期待を超えているのか」と聞かれたら、少し前までのわたしは答えられなかった。いまは、2年分の数字つきで答えられる。

このシリーズは、それを1社ずつ増やしていく。

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この記事の数字は、JTが公表している決算短信から拾っただけです。特別な情報は1つもありません。保有銘柄の決算を確認して、配当金を受け取る。その口座としてわたしが8年使っているのがSBI証券です。

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まとめ

🐾 この記事のまとめ
  • 保有株をROIC−WACCで1社ずつ測るシリーズの1本目。JT(2914)を決算短信から測った
  • ROICは10.1%、WACCは約5.4%で、差は+4.7ポイント。日本平均(−0.04pt)のはるか上、米国平均(+5.3pt)に迫る。のれん2.9兆円を背負ってこの数字
  • ところが2024年で測るとROIC 4.4%で資本コスト割れ。カナダ訴訟の決着が1年に凝縮された数字で、2年平均では+1.9ポイント。単年で会社を判断してはいけない
  • 訴訟の年の配当性向192.2%は、一時要因とわかれば読み方が変わる。翌年は234円へ+20.6%の増配。配当は価値を生んだ中から出ていた
  • この物差しは過去の成績。たばこの縮小という将来の問いには答えない。そこは決算の別の場所で確かめていく

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⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の学習と保有記録であり、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨・勧誘するものではありません。決算数値はJT「2025年12月期 決算短信」(2026年2月12日公表)、日米平均は経済産業省「成長投資ガイダンス データ集」(2026年7月21日公表・マッキンゼー委託調査ベース)、国債利回りは財務省公表値によります。ROIC・WACCの算出方法には複数の流儀があり、この記事の計算は簡便法です。とくにWACCは前提(β・リスクプレミアム・調達金利)の置き方で変わります。計算結果は過去の実績にもとづくもので、将来の業績・配当を保証しません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。
TAGS#高配当株#日本株#配当投資
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