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HDVは、資本コストを超える会社を先に選ぶETFだった。中身を測ったら+8.3ポイント。でも5番目のファイザーは割れていた
投資2026-08-23📖 約13分で読めます

HDVは、資本コストを超える会社を先に選ぶETFだった。中身を測ったら+8.3ポイント。でも5番目のファイザーは割れていた

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📚 SERIESETFの中身を測る(全3回)
  1. 1. HDVは、資本コストを超える会社を先に選ぶETFだった。中身を測ったら+8.3ポイント。でも5番目のファイザーは割れていた
  2. 2. SCHDの中身を測ったら+9.3ポイント、HDVより上だった。でも6割は同じ会社で、差をつけたのは「持っていない業種」だった
  3. 3. HDVもSCHDも、VYMの中にいた。604社の中身を測ったら、3本の違いは「どれだけ絞るか」だけだった
ごまもち
🐾 ごまもち
もってないのに、はかるの?🐾
あずき
あずき
持ってないからこそ、中身を知りたいの。好きなのに買えていないETFだから。

JTを測った記事を書いたあと、ふと思った。ROIC−WACCという物差しは、ETFにも当てられるのだろうか。

ETFそのものには当てられない。ETFは会社の詰め合わせで、営業利益も投下資本も持っていないからだ。でも中に入っている会社1社1社には、ROICもWACCもある。組み入れ比率で加重平均すれば、「このカゴの中身は、全体として資本コストを超えているのか」は出せる。

1本目はHDV。好きなのに買えていない米国の高配当ETFだ。利回りが下がって、円安も重なって、いまも買えていない。持っていないからこそ、中身を一度ちゃんと見ておきたかった。

測ってみたら、HDVの中身は日本の平均とは別世界だった。そして、HDVという商品の選び方そのものに、この物差しが組み込まれていた。

1. この記事の測り方

ETFの中身を測るシリーズは4本の予定で、測り方は毎回同じにする。先に書いておく。

📐 ETFの中身の測り方(このシリーズ共通)
構成銘柄運用会社が公表している保有一覧(HDVはiShares・2026年8月20日時点)から、銘柄と組み入れ比率を取る
ROIC1社ずつ、営業利益×(1−実効税率)÷投下資本。直近3年の平均で見る。JTで学んだとおり、単年は一時要因で簡単にひっくり返るから
WACCETF自体の値動きから実測した市場との連動度(β)、米10年国債の利回り4.74%、市場の上乗せ5.5%で組む。個別ではなくカゴ全体でひとつ
加重平均組み入れ比率で加重。ただし極端な会社が平均を押し上げるので、中央値(組み入れ比率で重みづけ)も必ず添える
測れないもの銀行・保険はROICという物差しが合わないので除く(HDVでは8社・4.0%)。そしてROICが高い=買い時ではない。稼ぐ力の話であって、値段の話ではない
決算数値はYahoo Financeの財務データ(各社の直近3期・おおむね2023〜2025年度)、構成銘柄はiSharesの公表CSV、国債利回りは2026年8月21日の米10年債。ROIC・WACCの出し方には流儀があり、ここでの計算は簡便法です

2. HDVの選び方は、最初から「資本コストを超える会社」だった

測る前に、HDVがどうやって75社を選んでいるのかを調べた。

HDVが連動するのはモーニングスターの配当フォーカス指数で、ルール文書によると銘柄はこの順番でふるいにかけられる。

🔍 HDVが75社を選ぶ順番
他社がマネしにくい強み(モーニングスターのいう「堀」)がある会社だけ残す。堀の評価でnarrow以上
財務が健全な会社だけ残す。倒産までの距離(Distance to Default)が、同じ地域・業種のなかで上位半分
残ったなかから配当利回りの高い順に75社
組み入れ比率は、その会社が払っている配当の総額で決める(時価総額ではない)

そして①の「堀」がある会社とは何か。モーニングスターは株式リサーチの方法論で、超過利益をこう定義している。

超過利益とは、投下資本利益率(ROIC)が、その会社の資本コスト(WACC)を上回ること(We define excess profits as returns on invested capital, or ROICs, above our estimate of a firm's cost of capital, or WACC)

この超過利益が少なくとも10年続くと見込めば「狭い堀(narrow)」、20年なら「広い堀(wide)」。堀とは、ROIC−WACCがプラスを続けられる見込みのことだった。

つまりHDVは、前の記事で覚えたROIC−WACCという物差しで、最初にふるいにかけているETFだった。高配当を選ぶ前に、資本コストを超える見込みの会社だけを残している。

高配当ETFというと「利回りの高い順に並べただけ」のものも多い。HDVはそこが違う。利回りは③、つまり最後の条件だ。

3. 測ったら、+8.3ポイントだった

では実際の中身はどうか。75社を1社ずつ測って、組み入れ比率で加重した。

⚖️ HDVの中身を、日本・米国の平均と並べる
ROIC
WACC
HDVの中身(加重平均)
15.1%
6.7%
+8.3pt
HDVの中身(中央値)
11.2%
6.7%
+4.4pt
米国の主要企業の平均
12.5%
7.3%
+5.3pt
日本の主要企業の平均
6.37%
6.41%
−0.04pt
日米の平均は経産省「成長投資ガイダンス データ集」(2020〜2024年平均)。HDVは直近3期の平均で、WACCは実測β0.46から。期間と方法が違うので、目安として並べています。差は丸める前の値で計算しているので、表の引き算とは0.1ポイントずれることがあります(スマホでは横にスクロールできます)

HDVの中身は、加重平均でROIC 15.1%。WACCが6.7%なので、差は+8.3ポイント

日本の主要企業の平均がマイナス0.04ポイントだったことを思うと、同じ物差しで測っているのが不思議なくらい離れている。米国の主要企業の平均(+5.3ポイント)と比べても高い。HDVが「堀」で先に絞っているぶんだと思う。

中央値は11.2%で、平均より4ポイント低い。これはROICが極端に高い会社(あとで出てくる)が平均を持ち上げているからで、真ん中の会社で見ても+4.4ポイント。日本平均の上にいる。

組み入れの上位10社も並べておく。

🏢 HDVの上位10社と、そのROIC(3年平均)
銘柄
比率
ROIC
エクソンモービル
8.1%
10.0%
アッヴィ
6.2%
16.1%
シェブロン
6.2%
7.2%
ベライゾン
5.6%
8.8%
ファイザー
4.6%
6.3%
メルク
4.4%
15.1%
ホーム・デポ
4.3%
28.1%
P&G
4.3%
18.7%
フィリップ・モリス
4.3%
28.8%
コカ・コーラ
4.1%
16.0%
比率はiShares公表の2026年8月20日時点。HDVのWACC 6.7%を下回るのは、この10社のなかではファイザーだけ(スマホでは横にスクロールできます)

4. でも、中身の15%は割れていた

ここまでだときれいすぎるので、割れている側も見る。

75社のうち、3年平均のROICがWACCの6.7%に届いていないのは21社、組み入れ比率で14.7%あった。中身はこうだ。

📉 HDVのなかで、資本コストを割っている14.7%の中身
公益 6.6%電力・ガス16社(サザン・デューク・WECなど)。ROICは4.5〜6.3%
ヘルスケア 6.4%ファイザー(4.6%・ROIC 6.3%)とメドトロニック(1.8%・6.6%)
その他 1.7%キンダー・モルガン、キューリグ・ドクターペッパーなど
ファイザーはこの3年、法人税が戻ってくる側(マイナス)だったので、実効税率は米国の法定税率21%で置いています。税金ゼロで計算すると7.9%で、WACCをわずかに上回ります。つまりファイザーの「割れ」は置き方で変わる際どい位置で、はっきり下にいる公益とは違います

電力やガスは規制で料金が決まっていて、もうけが資本コスト並みに抑えられるのが制度の設計だ。ROICがWACCの少し下に張りつくのは、壊れているのではなく、そういう業種だということ。

引っかかったのはファイザーだ。組み入れ5位、4.6%。「資本コストを超える見込みの会社だけ残す」はずのHDVで、5番目の会社が直近3年ではWACCに届いていない。

理由は、物差しの向きが違うことだった。モーニングスターの「堀」はこれから10年・20年の見込みで判断する。わたしが測ったのは直近3年の実績だ。ファイザーはコロナのワクチンと治療薬で膨らんだ利益が2023年以降しぼんで、投下資本は買収で増えたまま。過去3年で切り取ると沈んで見えるが、モーニングスターは「堀はまだある」と見ている、ということになる。

どちらが正しいかは、わからない。JTでは測る年で答えが変わった。ここでは、どっちを向いて測るかでも変わる。物差しの癖として覚えておきたい。

それでも、割れているのが約15%。日本の主要企業は投下資本の65%が価値を減らす事業に置かれていた。比べる土俵は違うけれど、この差は大きい。

5. HDVの中身で稼いでいたのは、たばこと家の修理だった

セクターごとに見ると、HDVの顔がもう少し見えてくる。

🧩 セクター別の比率と、加重平均ROIC
セクター
比率
ROIC
ヘルスケア
25.0%
11.6%
生活必需品
23.0%
21.5%
エネルギー
21.3%
9.2%
一般消費財
8.3%
31.2%
公益
7.3%
5.6%
通信
5.6%
8.8%
金融
4.6%
資本財
3.8%
24.2%
金融は10社・4.6%。うちブラックストーン・PNCなど8社(4.0%)はROICという物差しが合わないので除外し、セクターのROICは「—」にしています(スマホでは横にスクロールできます)

いちばんROICが高いのは一般消費財の31.2%で、中身はホーム・デポ(28.1%)・マクドナルド(26.6%)・スターバックス(45.6%)。次が生活必需品の21.5%で、ここはアルトリア(40.1%)とフィリップ・モリス(28.8%)、つまりたばこだ。

JTを測ったときにROIC 10.1%で「すごい」と書いたけれど、米国のたばこ会社は、その3倍も4倍もあった。たばこは設備も在庫も軽くて、値上げが効く。資本をあまり使わずに稼ぐ商売の典型なのだと、並べてみてわかった。

逆に、HDVで2番目に大きいエネルギー(21.3%)は、ROIC 9.2%と平均を下げている側にいる。エクソン10.0%・シェブロン7.2%で、石油は掘る設備にお金がかかる。HDVの顔はエクソンとシェブロンだけれど、中身で稼いでいるのは、たばこと家の修理だった

6. で、買えていないHDVはどう見えたか

測って変わったことと、変わらなかったことを分けておく。

📋 測ってわかったこと
HDVは選び方そのものにROIC>WACCが組み込まれているETF。高配当ETFのなかでも、この点は珍しいと思う
実測でも加重平均+8.3ポイント、中央値+4.4ポイント。日本平均とは別世界
ただし約15%は直近3年で割れている。公益は制度どおり、ファイザーは「未来の見込み」と「過去の実績」のずれ
ROICが高い会社の集まりは、たいていそのぶん高く買われている

「好きなのに買えていない」理由は、利回りが下がったことと円安だった。その理由は、今回の物差しでは何も変わらない。中身が良いことと、いまの値段で買うことは別の話だ。

変わったのは、好きな理由に数字がついたこと。「財務が健全で配当が続く優良企業を集めたETF」という説明は前から知っていた。でもいまは、資本コストを超える見込みの会社を先に残して、そのなかから配当の多い順に選んでいる。実測でも15.1%稼いでいる、と言える。

2本目はSCHD。選び方がHDVとは違う高配当ETFだ。

ごまもち
🐾 ごまもち
じゃあ、かうの?🐾
あずき
あずき
それはまだ別の話。中身がいいのと、いま買うのは違うから。

チャーリー・マンガーが1994年、USCビジネススクールの講演でこう話している。

長い目で見れば、株のリターンは
その会社が資本で稼ぐ利回りと、そう変わらない
Over the long term, it's hard for a stock to earn a much better return than the business which underlies it earns.
チャーリー・マンガー(1994年・USCビジネススクールでの講演「Elementary, Worldly Wisdom」

同じ講演でマンガーは、こう続けている。資本に対して6%しか稼げない会社の株を、どんなに安く買ったとしても、40年持てばリターンは6%前後に落ち着く。安く買えた得は1回きりで、長く持つほど薄まり、残るのは会社の稼ぐ力だけになるからだ

HDVの中身は、加重平均で15.1%。長く持つほど効いてくる数字ではある。好きな理由は、数字で裏が取れた。

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この記事の構成銘柄と比率は、運用会社が毎日公表しているものです。特別な情報は使っていません。HDVはSBI証券なら特定口座で買えます(毎月分配になったため、新NISAの対象外です)。わたしが8年使っているメイン口座です。

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まとめ

🐾 この記事のまとめ
  • ETFそのものにROIC−WACCは当てられないが、中身の会社を加重平均すれば測れる。HDVの75社を3年平均で測った
  • HDVの選び方は、モーニングスターの「堀」(=ROICがWACCを上回る見込み)で先に絞り、そのあと配当利回り順。物差しが最初から組み込まれていた
  • 実測は加重平均ROIC 15.1%・WACC 6.7%で+8.3ポイント、中央値でも+4.4ポイント。日本平均の−0.04ポイントとは別世界
  • ただし約15%は直近3年で資本コスト割れ。公益は制度どおり、5位のファイザーは「未来の見込み」と「過去の実績」のずれ
  • 中身で稼いでいるのは、たばこ(アルトリア40.1%)と家の修理(ホーム・デポ28.1%)。2番目に大きいエネルギーは9.2%で平均を下げている側
  • この物差しは値段を見ていない。好きな理由ははっきりしたが、買えていない理由は変わらない

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⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の学習記録であり、特定のETF・銘柄への投資を推奨・勧誘するものではありません。構成銘柄と比率はiShares公表データ(2026年8月20日時点)、各社の決算数値はYahoo Financeの財務データ(2023〜2025年度)、日米平均は経済産業省「成長投資ガイダンス データ集」、国債利回りは2026年8月21日の米10年債によります。ROIC・WACCの算出は簡便法で、前提(β・リスクプレミアム・負債コスト)の置き方で結果は変わります。金融セクターはROICの性質上、計算から除いています。過去の実績は将来の成果を保証しません。米国ETFは為替変動の影響を受けます。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。
TAGS#ETF#米国株#高配当株
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