好きなのに買えていないHDV。15年ぶん答え合わせをしたら、勝ち負けの話ではなかった
HDVは、わたしが好きな米国の高配当ETFだ。中身が財務の健全な大型株で固められていて、商品としての完成度が高いと思っている。
それなのに、いまも買えていない。いちばん大きい理由は利回りが下がったことだ。
分配金は増えている。それなのに株価がそれ以上に上がったので、利回りは4.07%から2.73%まで落ちた。株価は2023年末の$20.40から4割以上上がっている。
商品が悪くなったわけではない。人気が出て、値段が上がっただけだ。ただ配当をもらう目的で買う立場からすると、同じ配当を得るのに、より多く払わないといけないということになる。
もっとも、これは買う瞬間だけを見た話でもある。いま2.73%で買っても分配金が増えていけば、払った値段に対する利回りは年々上がっていく。そこも調べた。
米国ETFの分配金は、ちゃんと増えている。円で受け取る額なら、この10年の円安が上乗せされてもっと速い。ただHDVはドル建てで年3.1%と、この3本ではいちばん遅い。円建てでそろえてもHDV5.3%に対してSCHDは13.0%で、差は大きい。それどころかHDVの2025年の分配金は$0.782で、前年の$0.823を下回っている。ペースが遅いというより、直近は減っている。
ただし増配が遅いことと、受け取れる額が少ないことは別だ。いまの利回りはHDVが2.73%で、VYMの2.19%より高い(SCHDは3.06%で、こちらはHDVより上だ)。少なくともVYMに対しては、伸びが遅くても受け取る割合は大きい、という関係になっている。
では、いま2.73%で買ったらどうなるか。ドル建ての年3.1%が続けば、払った値段に対する利回りは10年で約3.7%、15年で約4.3%。円安も続いて円建ての年5.3%で増えるなら、10年で約4.6%、15年で約5.9%になる。2.73%は、ずっと2.73%のままではない。
比べる相手がいないと不公平なので、自分の日本株も同じように測った。1株あたりの配当は年13.0%のペースで増えていた(2015→2025年。2015年に配当を出していて比べられた113銘柄・評価額の97%)。円で受け取る額どうしならSCHDの13.0%と並ぶが、SCHDのほうは中身の10.6%に円安が乗った数字だ。こちらは為替の上乗せがないかわりに、いま持っている銘柄だけを並べた数字という別の下駄がある。113社のうち減配は1社だけ、という時点で良く出すぎている(この話は3章で書く)。
ただ、買う側から見れば円安は追い風ではない。ドルで見て高くなったものを、さらに高い円で買うことになる。増配を待つ前提でも、いますぐ買う理由にはならなかった。
なお2026年6月にHDVは毎月分配へ変わり、新NISAの成長投資枠からも外れたが、これはわたしが買えていない理由ではない(6章で書く)。買えずにいたあいだ、わたしは代わりに日本の高配当株を買い続けてきた。2026年7月末で117銘柄・1,315万円になっている。
それでよかったのか。
前回、資産全体のリスクを計算したときの道具がそのまま使えるので、15年ぶん答え合わせをしてみた。
先に言っておくと、勝ち負けの話にはならなかった。
1. まず、5年で切る
最初に5年で計算した。円に直して、分配金も再投資したものとして比べている。
わたしの日本株がいちばん上に来た。
ここだけ見ると「日本の高配当株の勝ち」と書きたくなる。でも、ここで止めるのはずるいと思った。
この5年、日本株は数字だけ見れば良かった。日経平均が34年ぶりの高値を更新したのもこの間だ。
ただ、上の表のTOPIXは18.7%。円建てのVYM(21.1%)やHDV(20.9%)より下だ。円で見るかぎり、この5年に強かったのはむしろ米国の高配当ETFのほうだった。
つまりわたしが一番上に来たのは、日本株の追い風というよりわたしの銘柄の並べ方のせいが大きい。この話は3章で書く。
なので、期間を伸ばした。
2. VYMとはほぼ互角、HDVとは2.2ポイント差
さかのぼれるところまで戻して、15年で計算し直した。
15年で見ると、わたしの日本株18.7%、VYM18.1%。
並べてみると、VYMとの差は5年で0.4ポイント、10年で0.5ポイント、15年で0.6ポイント。3年だけ1.5ポイント開くが、あとは1ポイント未満だ。わたしは5年の表を見て「勝った」と思いかけたけれど、そもそも圧勝でも何でもなかった。
ただしHDVは違う。10年で2.6ポイント、15年で2.2ポイント開いている。VYMとはほぼ互角、HDVとは差がある。ここは分けて書いておきたい。
そして順位は入れ替わる。10年で切ると、SCHD(17.8%)のほうがわたし(17.2%)より上だ。3年で切れば、TOPIX(23.6%)がわたし(23.1%)を上回る。
もうひとつ、小さく見える差も年数が積み重なると効いてくる。年0.6ポイントの差は、15年たつと最終的な金額が8%ちがう。年2.2ポイントなら32%だ。「1ポイント未満」は、無視していい差という意味ではない。そしてこれは負けている側にも同じように効く。10年で切ると、SCHDがわたしより0.6ポイント上だ。同じ0.6ポイントでも積み上がる年数が10年なら5%で、15年の8%より小さくなる。しかもこのときは、下駄を履いているわたしのほうが下にいる。
3. その数字は、良く出すぎている
もうひとつ、書いておかないといけないことがある。
この18.7%という数字は、実際より良く出ている。
理由は単純で、いま持っている117銘柄を、そのまま15年前から持っていたことにして計算しているからだ。
とくに3つ目が大きい。いまの117銘柄は「いまの時点で、配当も財務も良いと評価されている会社」だ。15年前のわたしが同じ顔ぶれを選べたはずがない。当時の情報で選んでいたら、そのあとうまくいかなかった会社も混ざっていたはずだ。
つまりこの計算は、15年前のわたしが未来を知っていて、勝ち残る会社だけを選べた場合の数字になっている。現実には、そんなことはできない。
過去の売買記録も残っていないので、これは直しようがない。だから「わたしが15年で18.7%を出した」ではなく「いま持っている銘柄を15年前から持っていたら18.7%だった」という数字として読んでほしい。
下駄の大きさは測れない。ただVYMとの0.6ポイントくらいなら、簡単に埋まってしまう幅だとは言える。だから「VYMに勝った」とは書けない。
そしてこの下駄は、HDVとの2.2ポイントにも同じだけ乗っている。本当の差はもっと小さいはずだ。2章で書いた「15年で32%ちがう」も、上限に近い見積もりとして読んでほしい。
そう考えると、VYMの18.1%やHDVの16.5%のほうが、よほどすごい。ETFは決めたルールで機械的に銘柄を入れ替えているだけで、未来を知って選んだわけではない。下駄を履かせた数字と、履かせていない数字が並んでいるのがこの表だ。
もう1社はJAL(日本航空)で、これは自分で外した。2010年の経営破綻で上場廃止になり、2012年に再上場しているので、上場していない期間があるからだ。
10年で計算するときも同じで、2016年より後に上場した2社は外している(使えたのは115社・評価額の99%)。3年と5年は117社すべてが使えた。
20年でも計算できたが、そこまで戻ると当時上場していた銘柄が94社(評価額の78%)まで減るので、15年を上限にした。
4. リスクの差は小さく、為替はむしろ味方だった
リターンが互角なら、次に見るのは揺れ方だ。
わたしがいちばん低く出た。日本株のほうがずっと穏やかなはずだと思って計算に入ったので、差が1.1〜1.3ポイントしかないのは拍子抜けだった。
ただしこれは円建てでそろえた場合の話だ。商品そのもの(ドル建て)で見ると、あとで出てくるとおりHDVもVYMも13.0%で、わたしの14.1%より低い。円建てで上に出ているぶんは中身が荒いからではなく、為替が2ポイントほど上乗せされているからだ。中身だけで比べれば、揺れが小さいのはHDVのほうだった。
ついでに言うと、ETFと指数の揺れはHDV15.2%、TOPIX15.3%、VYM15.4%でほぼ横並びだった。0.1〜0.2ポイントの違いに順番の意味は持たせられない。ただ、財務の健全な大型株で固めるという設計が、少なくとも余計な揺れを生んでいないことは確認できた。
しかも、これは言い切れる差ではない。15年ぶんの月ごとのデータ(180か月)から出したリスクは、1本あたり±0.7ポイントくらいの誤差を持つ。1.1〜1.3ポイントという差は、その誤差と同じくらいの大きさしかない。順番はこうなったけれど、はっきり離れているとは言えない。
そしてこの14.1%にも、3章と同じ下駄が乗っている。いま持っている銘柄(15年では110社)を過去に当てはめた数字なので、途中で大きく崩れた銘柄が入っていない。実際に持っていた顔ぶれで測れば、もう少し荒かったはずだ。ETFの15.2%や15.4%は、その下駄を履いていない数字だ。
ここで、為替の話を書いておきたい。米国のETFを円で持つと、為替の振れが上乗せされる。
商品そのものはドルで13.0%しか動いていない。それが円で持つと2ポイントほど上乗せされる。資産全体のリスクを計算した記事でも、米国債券BNDがドルなら年率6.2%しか動かないのに、円で持つと8.6%になることを書いた。同じことが高配当ETFでも起きている。
ただしここで為替を悪者にするのは、フェアではない。この15年、ドル円は77円から160円になった。円で見たリターンは、そのぶん押し上げられている。
為替は揺れを2ポイント増やしたが、リターンは5.5ポイント押し上げた。2章で見たVYMの18.1%も、中身の12.5%に円安が乗った数字だ。為替は不利にも有利にも働く。この15年に関しては、はっきり米国ETFの味方だった。
ただし77円は、戦後でいちばん円が高かったころの値段だ。15年という区切りの取り方そのものが、為替の追い風をいちばん大きく見せる形になっている。ここから先も同じ追い風が吹く、という話ではない。
そしてこれは日本株側にも同じことが言える。2011年は震災の直後で、日本株も歴史的に安い時期だった。15年という区切りは、日本株にとっても安いところから数え始める形になっている。起点が動けば、どちらの数字も動く。
では日本株のほうが穏やかなのかというと、そうとも言えない。TOPIXも15.3%あって、円建てのVYM(15.4%)とほとんど変わらないからだ。
ではわたしの14.1%が、そのTOPIXよりさらに低いのはなぜか。銘柄数ではない。TOPIXのほうが、わたしの銘柄よりずっと多くの会社を抱えている。
言い切れる理由はない。ただ117銘柄だけを測ったとき、日本の高配当株ETF2本より自分の117銘柄のほうがリスクが低く出たのと、同じ傾向ではある。高配当株は、値動きの穏やかな業種に寄りやすいのだと思っている。
ただしこれは日本株に限った性質ではない。HDVもVYMもドル建てなら13.0%で、同じことが起きている。日本株だから穏やか、という話ではない。
ここでも、はっきりした勝ち負けは出なかった。
5. 最後に残ったのは、配当がまるごと残るかどうか
そしてここが、今回いちばん書きたかったところだ。
相場の勝ち負けは、どこで期間を切るかで変わる。税金は変わらない。金額としては大きくないけれど、毎年かならず同じ向きに効く。ここまで並べてきたリターンはすべて税引き前の数字で、ここからさらに引かれる。
米国のETFの分配金には、アメリカと日本で二重に税金がかかる。
実際の数字で見てみる。HDVの直近1年の分配金は1株$0.794、株価は$29.07なので利回りは2.73%。わたしの日本の高配当株は4.82%だ。
これを税引き後に直すと、こうなる。
いまから選べる組み合わせで比べると、日本株のNISAが48,200円、HDVの特定口座が19,593円。2.5倍の差になる。申告して外国税額控除が満額使えても21,770円までで、それでも2.2倍だ。
もっとも、これは1年ぶんの配当だけを切り取った数字で、この倍率がそのまま実力の差になっているわけではない。差の中身は、分けて考えたほうがいい。
差の大部分は、利回りの違い(4.82%対2.73%)から来ている。でもこの4.82%は、わたしが選んだ117銘柄の利回りでしかない。同じ「日本の高配当株」でも、選ぶ銘柄が変われば3%台にも5%台にもなる。つまりこの差は、わたしの場合の数字だ。
もうひとつ。受け取る配当が多いことと、資産が増えることは別の話だ。VYMの利回りは2.19%で、わたしの4.82%より2.6ポイントも低い。それでも15年リターンは18.1%で、わたしの18.7%とほとんど変わらない。アメリカの会社は配当のかわりに自社株買いでお金を返すことが多く、そのぶんは配当ではなく株価に乗る。しかも値上がり分は、売るまで税金がかからない。配当だけを並べると、米国ETFは実際より不利に見える。
税率の差は、思ったほど効かない
ここで表をもう一度見てほしい。特定口座どうしなら、引かれる税金は日本株のほうが多い(9,792円対7,727円)。税率は日本株のほうが軽いのに、配当の額が大きいぶん、払う金額は増える。
そして税率差の8ポイントが効くのは配当の部分だけだ。HDVの利回りは2.73%なので、資産全体に対しては年0.22%ぶんにしかならない。毎年かならず引かれるという意味では軽くないが、期間の切り方で1ポイントも2ポイントも動くリターンの差に比べれば、勝ち負けをひっくり返すほどの大きさではない。
さらに言えば、28.28%は動かせない数字でもない。特定口座なら、アメリカの10%は申告で取り戻せる余地がある。
つまりこの差の大きいほうは利回りの違いで、そこは銘柄の選び方しだいで動く。では相場にも銘柄にも関係なく残るものは何かというと、NISAの枠のなかでだけ、日本株の配当は0円にできるという一点だけだった(値上がり益のほうは、どちらもNISAなら非課税になる)。
そしてこれも、大きさは測れる。米国ETFをNISAに入れた場合に残るのはアメリカの10%だけなので、資産全体に対しては年0.27%ぶん(2.73%の10%)だ。表のHDV・NISAの行の−2,732円が、それを100万円あたりの金額にしたものになる。最後まで残るというだけで、大きさとしてはこの程度である。
6. NISAでは取り戻せない。でも、損なのは特定口座のほうだった
二重課税には、取り返す方法がある。確定申告で外国税額控除を使うと、アメリカで引かれた10%を日本の税金から差し引ける。
ただし、これには大きな注意がある。
NISAは日本の税金を消してくれるけれど、アメリカの税金には手が届かない。しかも消してくれたせいで、取り返す道までふさがってしまう。
ここまでだと「NISAは不利」に見える。でも金額で見ると、逆だった。
HDVの100万円あたりの受取額を、多い順に並べるとこうなる。NISAが24,588円、特定口座で外国税額控除まで使えて21,770円、特定口座のままなら19,593円。いちばん多いのはNISAだ。
HDVはもうNISAで買えないので、これは選べる選択肢の比較ではなく、税金の重さを見るための並べ方だ。それでも、この順番には意味がある。
理由は単純で、アメリカの10%より、日本の20.315%のほうが大きいからだ。NISAはその大きいほうを消してくれる。特定口座に移せばアメリカの10%は申告で取り戻せる余地があるけれど、今度は日本の20.315%がかかるので、引かれる合計はかえって増える。
つまり「控除が使えないからNISAは損」ではない。損なのは、むしろ特定口座のほうだった。
それでも、わたしは特定口座で買うつもりだった
理由は税金ではなく、枠だ。
個別株をNISAに入れられるのは、生涯の枠1,800万円のうち成長投資枠の1,200万円までしかない(買ったときの値段で数えるので、評価額1,315万円がそのまま枠を使い切っているという意味ではない)。わたしはそこを、利回り4.82%の日本株に使っている。
100万円ぶんの枠で消せる税金は、日本株なら9,792円まるごと。HDVは4,995円だ(特定口座なら7,727円引かれるところ、NISAだと2,732円ですむ。アメリカの10%は枠に入れても消えない)。限られた枠は、配当の多いほうに使う。それだけの理由だった。
ただしこれは配当だけを見た計算だ。NISAは値上がり益も非課税にするので、消せる税金の総額は配当の多さだけでは決まらない。現にVYMは利回り2.19%でも、15年リターンはわたしとほとんど変わらない18.1%だった。だからこれは「日本株のほうが枠に向いている」という一般論ではなく、配当を受け取りながら持ち続けたいわたしの都合の話だ。増やして最後に売るつもりなら、答えは変わる。
だから「NISAで買えなくなった」ことは、わたしにとっては決め手ではなかった。もともとNISAで買うつもりがなかったからだ。
なおフリーランスの場合、申告すると国民健康保険料が上がることがあるので、取り戻せる金額と見比べる必要がある。
7. 米国高配当ETFは、どれもよく似ていた
もうひとつ、値動きがどれくらい似ているかも並べておきたい。
HDV・VYM・SCHDはおたがい0.89〜0.94。ほとんど同じ動きをしている。
組み入れている銘柄も本数も、この3本は同じではない。それでも値動きはここまでそろう。同じ「米国の大型株のうち配当が高いもの」という似た池から選んでいるからだ。
オルカンとS&P500が0.97でほぼ同じものだったのと同じ構造だ。値動きがそろうので、リスクを下げる目的で何本も並べても、そこは効きにくい。
ただし「どれも同じ」という意味ではない。2章の表を見ると、10年ではHDV14.6%、SCHD17.8%で3ポイント以上ひらいている。逆に5年で切ればHDV20.9%、SCHD18.2%で順番が入れ替わり、3年でもHDVが上だ。同じ方向に動くことと、同じだけ増えることは別だ。
だからといって「1本に絞るべき」という話でもない。どちらが上かは期間で入れ替わるのだから、当てにいかずに複数持つのは選ばないという選び方として筋が通っている。減らせるのは値動きではなく、外したときの後悔のほうだ。
一方、日本の高配当株とは0.46だった。
これは「まったく別々に動く」という意味ではない。0に近ければ無関係だが、0.46はそこそこ一緒に動いているほうだ。
ただ0.89〜0.94とは、はっきり違う。
ひとつ注意しておきたい。0.46は「半分は別の動きをする」という意味ではない。相関は割合ではないので、そういう読み替えはできない。言えるのは「米国の高配当ETFどうしはほとんど同じ動きで、日本の高配当株はそれよりはっきり違う動きをしている」というところまでだ。
それと、この数字は直近5年の平均で、リターンやリスクを測った15年とは期間が違う。暴落のときは世界中の株が一緒に下がりやすいので、ふだんの0.46が非常時にもそのまま効くとは思わないほうがいい。
8. 条件が違えば、答えはHDVになる
ここまで、わたしの日本株が上に来る場面が多かった。それでもHDVが劣っているという話ではまったくない。ここまでの数字は、わたしの住所と口座の都合で決まっている。
理由を並べておきたい。
SCHDの記事でも書いたけれど、アメリカに住んでドルで暮らしているなら、わたしは間違いなく買っている。日本に住んで円で暮らしているから、日本の高配当株を選んでいる。それだけの話だ。
現にSCHDは、10年で切ればわたしより上に来る。わたしがHDVを買えていない理由は、商品の出来ではなく、これから買う側の条件のほうにある。いまの利回りの低さ、買うときの円安、そして配当がまるごと残らないこと。この15年で見れば円安は持っていた人の味方だったけれど、まだ持っていないわたしには、買う値段を押し上げる側にしか働いていない。
9. で、これからどうするか
答え合わせをしてみて、いまのやり方を変える理由は見つからなかった。
円で暮らしているわたしには、円で受け取れる配当のほうが管理しやすかった。為替も乗らないし、NISAの成長投資枠を使えば配当は丸ごと受け取れる(受取方法を「株式数比例配分方式」にしていれば、という条件はつく)。
ただ、まったく逆の考え方もある。生活費が円だからこそ、円の価値が下がったときに困らないようドルの資産を持っておく、という発想だ。輸入品や電気代が上がる場面では、ドル建ての配当がそのぶんを埋めてくれる。為替の振れを「よけいなリスク」と見るか「備え」と見るかで、答えは反対になる。
そしてわたしは、どちらかに寄っているわけでもない。資産の内訳を見れば、S&P500とオルカンで65.1%、ドル建ての資産は全体の70.6%ある。日本の高配当株は22.9%だ。むしろドル側に寄っている。すでにドルが7割あるので、これ以上ドルを増やす理由も薄い。
HDVについては、好きなので、これからもチェックは続ける。利回りが戻るか、円高が進めば購入を考えるかもしれない。
まとめ
- HDVは好きだが、利回りが下がったことで買えていない。株価は2023年末の$20.40から4割以上(2020年末からは66%)上がり、利回りは4.07%から2.73%へ。そこに円安が重なる
- 増配を待つ前提でも、いますぐ買う理由にはならなかった。分配金が増えるペースはSCHD年10.6%、VYM年5.0%、HDV年3.1%(2015→2025年、ドル建て)。円で受け取る額には円安が乗り、SCHDは年13.0%。わたしの日本株も年13.0%だったが、113社のうち減配は1社だけという時点で、こちらにも生き残りバイアスがかかっている
- 2026年6月の毎月分配化でNISAの対象外になったが、もともと特定口座で買うつもりだったので決め手ではない。理由はNISAの成長投資枠を、利回りの高い日本株に使いたいから
- 5年で見るとわたしの日本株21.5%、VYM21.1%、HDV20.9%でわたしがいちばん上に来る。ただし同じ5年のTOPIXは18.7%で、円で見れば強かったのはむしろ米国ETFのほう。ここで止めるのはずるい
- 15年で見るとわたしの日本株18.7%、VYM18.1%でほぼ互角。HDVは16.5%で2.2ポイント差。10年で切ればSCHD(17.8%)のほうが上ですらある
- ただしわたしの数字はいま持っている銘柄を過去に当てはめたもの。手放した銘柄も上場廃止した会社も入っていない(生き残りバイアス)。上ぶれの大きさは測れないので、VYMとの0.6ポイントは簡単に埋まる幅。「勝った」とは書けないし、HDVとの2.2ポイントも本当はもっと小さいはず。逆に10年で切ればSCHD(17.8%)がわたし(17.2%)より上で、このときは下駄を履いているわたしのほうが下にいる
- リスクの差も小さかった。15年でわたし14.1%、HDV15.2%、TOPIX15.3%、VYM15.4%。ぶれ幅が±0.7ポイントあるうえ、この14.1%にも同じ下駄が乗っている。そもそもドル建てで見ればHDVもVYMも13.0%で、商品そのものはわたしより穏やかだった。円建ての順番は、為替が乗ったあとの話
- 為替は不利にも有利にも働く。円で持つと値動きは2ポイントほど荒くなるが、この15年はドル円が77円→160円になり、リターンを5.5ポイント押し上げた。VYMの18.1%は、ドル建て12.5%に円安が乗った数字。ただし77円は戦後でいちばん円が高かったころで、15年という区切り自体が追い風を大きく見せている
- 米国ETFの配当はアメリカ10%+日本20.315%で実効28.28%。ただし効くのは配当部分だけなので資産に対しては年0.22%ぶん。期間の切り方で動くリターンの差に比べれば、順位をひっくり返す大きさではない
- それでも最後まで残るのは配当をまるごと非課税にできるかどうか。日本株はNISAに入れれば0円。米国ETFはNISAでもアメリカの10%が残り、特定口座で控除を満額使っても日本の20.315%が残る。どちらの置き場所でもゼロにはならない。ただしNISAが消すのは配当だけではないので、値上がりで増えるタイプなら枠の価値の測り方は変わる
- NISAでは外国税額控除が使えない。日本の税金がゼロだと差し引く相手がいないためだ。ただし金額で見るとNISAのほうが多い(24,588円対21,770円)。アメリカの10%より日本の20.315%のほうが大きいので、損なのはむしろ特定口座だった
- 100万円あたりの年間受取額は、いま選べる組み合わせで日本株NISAが48,200円、HDV特定口座が19,593円(外国税額控除が満額使えれば21,770円)。ただし差の大半は利回りの違いで、しかも配当が多い=もうかる、ではない(VYMは利回り2.19%で2.6ポイント低いのに、15年リターンはほぼ同じ)
- HDV・VYM・SCHDはおたがい0.89〜0.94でほぼ同じ動き。何本持っても分散にはなりにくい。ただし10年ならSCHD17.8%・HDV14.6%、5年なら逆にHDV20.9%・SCHD18.2%。同じ動きでも増え方は同じではないし、どちらが上かは期間で入れ替わる
- HDVが劣っているわけではない。ここまでの数字はわたしの住所と口座の都合で決まっている。アメリカに住んでドルで暮らすなら、わたしは買っている。円の価値が下がることに備えてドルを持つ、という逆の考え方も成り立つ
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