配当を確定申告すると国保が上がる。フリーランスの「申告する・しない」の分かれ道
毎年6月になると、国民健康保険の保険料決定通知が届く。前年の所得をもとに「今年はいくら」と決まった金額が、ここで通知される。
この金額、じつは配当を確定申告するかしないかで変わる。会社員のときはまったく意識しなかったところだけど、フリーランスで国保に入っていると、ここの判断ひとつで年間の保険料が数万円単位で動くことがある。
しかも厄介なのが、「所得税が還ってくるからお得」と思って確定申告したら、住民税と国保のほうで逆に取られて、トータルで損していた、というパターン。わたしが調べていちばん「これは知らないと危ないな」と思ったところなので、正直に書いておく。
まず前提:配当は「申告しない」を選べる
意外と知られていないけれど、特定口座(源泉徴収あり)で受け取った上場株式の配当は、確定申告をしなくていい。
証券口座で配当を受け取るとき、すでに約20%(所得税15.315%+住民税5%)が天引きされている。これで納税はいったん完結しているので、確定申告に含めるかどうかは自分で選べる、という仕組み。これを申告不要制度という。
念のため言っておくと、申告しないことは抜け道でもグレーでもなくて、もともと法律で用意されている正規の選択肢。税金は源泉徴収ですでに納め終わっているので、後ろめたさを感じる必要はまったくない。ここがこの記事のいちばん大事なポイント。
多くの人は「確定申告したほうが還付があってお得」と聞いて、なんとなくBを選ぶ。でも国保に入っているフリーランスは、ここで一度立ち止まったほうがいい。
罠:申告すると、国保と住民税に跳ね返る
国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算される。だから配当を確定申告して所得に乗せると、その分だけ翌年の国保が上がる。
整理すると、配当を確定申告したときに動くお金は3つある。
つまり、所得税の還付という「目に見える得」に気を取られていると、住民税と国保という「あとから来る損」を見落とす。とくに国保は所得割の率が大きいので、ここがトータルの勝ち負けを決めることが多い。
いくら変わるのか(わたしの数字で試算)
数字がないとピンと来ないので、わたしの状況に近い形で並べてみる。課税所得400万円のフリーランス(国保に加入)が、特定口座で配当を50万円受け取った年を想定して、「申告しない場合」と「総合課税で申告する場合」を比べたのがこの表。国保の所得割はおおむね10%前後(自治体で7〜12%ほどの幅)として計算した概算で、実際の率はお住まいの自治体で変わる。
申告すると、所得税は約2.7万円戻ってくる。ここだけ見ると「やっぱり申告したほうが得」に見える。でも同時に、住民税が約1.1万円、国保が約5万円ふえる。差し引きすると、申告したほうが約3.4万円も多く払うことになる。所得税の還付という「目に見える得」が、住民税と国保にのみ込まれてしまうわけ。
しかも配当が大きくなるほど、この差は開く。仮に配当が100万円なら、国保だけで約10万円ふえる計算。わたしの国保は今でも年35万円ほど(課税所得400万円ベース)あるから、そこにわざわざ配当を乗せて増やす理由がない、と思っている。国保の中身はフリーランスの国民健康保険を安くする方法に詳しく書いた。
「所得税だけ住民税と分ける」裏技は、もう使えない
ここで歴史の話を少し。
じつは数年前まで、所得税は総合課税で申告して配当控除をもらい、住民税のほうは申告不要にする、という合わせ技ができた。こうすると所得税の還付だけ取って、住民税と国保は上げずに済む、という「いいとこ取り」が可能だった。
でもこの裏技は2023年分(令和6年度の住民税)から封じられた。今は所得税と住民税で別々の課税方式を選べなくなっていて、所得税で配当を申告したら、住民税も自動的に同じ扱いになる。
だからいまは、「申告する」=「国保も住民税も一緒に上がる」の一発勝負になっている。所得税の還付だけをつまみ食いすることはできない。封じられたのはこの「いいとこ取り」の合わせ技のほうで、そもそも申告しないという選択そのものは、今も普通にできる。ここを古い情報のまま判断すると痛い目を見るので、注意してほしいところ。
しかも2026年、国保はさらに重くなっている
タイミングの話もしておく。国保の負担は、年々じわじわ上がっている。
2026年度(令和8年度)も、保険料の上限が引き上げられた。所得の高い人にかかる上限が最大110万円まで上がり、さらに「子ども・子育て支援金」分が新しく国保に乗ることになった。
つまり、国保はこれからも上がりこそすれ下がらない前提で考えたほうがいい。そういう流れの中で、わざわざ配当を申告して所得割を増やすのは、よほどの理由がない限りもったいない、というのがわたしの感覚だ。
わたしの判断:特定口座の配当は申告しない/NISAを優先
ここまで読むと「じゃあ配当は絶対に申告しないほうがいいの?」と思うかもしれないけれど、そこまで単純な話でもない。申告したほうが得になる人もちゃんといる。
だから結論は「申告するな」ではなくて、所得税の還付だけで決めず、国保と住民税まで足してから決める。これに尽きる。
そのうえで、いまのわたし自身はこうしている。
- 特定口座の配当は、基本的に申告しない。源泉徴収のまま完結させて、国保を上げない。
- そもそもNISAを優先して埋める。NISAで受け取る配当は非課税で、確定申告もいらないし、国保にもいっさい影響しない。配当を増やしたいなら、まずはNISA枠から、というのがわたしの順番。
NISAの配当が国保に響かないのは、けっこう大事なポイント。高配当株を「税金も社会保険料も気にせず」持てる枠は、NISAが一番きれい。だからわたしは高配当株はまずNISAで、という方針にしている。このあたりはNISAで高配当株を買うときに知っておきたいことにも書いた。
ちなみに、いま特定口座で持っている株は、売らずにそのまま持ち続けるつもり。NISAを埋め終わったら、特定口座での買い増しもそのとき改めて考える、という順番で動いている。
まとめ
配当の確定申告は、所得税だけ見ると「やったほうが得」に見える。でもフリーランスで国保に入っていると、住民税と国保まで含めると逆になることがある。判断は必ず3つ足し算してから。
- 特定口座(源泉徴収あり)の配当は、確定申告しない(申告不要)ことも選べる。申告しなければ国保の計算に入らない
- 確定申告すると、所得税は戻ることがあるが、住民税と国民健康保険料が増える。とくに国保の所得割が大きい
- 課税所得400万円・特定口座の配当50万円で試算すると、申告で所得税は約2.7万円戻るが住民税と国保で約6万円ふえ、差し引き約3.4万円の損になりやすい(国保の所得割10%・自治体で変動)
- 「所得税は申告・住民税は申告不要」のいいとこ取りは2023年分から封じられた。今は申告すると国保も住民税も一緒に上がる一発勝負
- 2026年度から国保の上限が最大110万円に上がり、子ども・子育て支援金分も新設。国保は年々重くなっている
- 申告したほうが得な人もいる(所得が低い年・損益通算したい年など)。だから所得税だけで決めず、国保と住民税まで足してから判断する
- わたしは特定口座の配当は申告しない。配当を増やすならNISAを優先(NISAの配当は非課税で国保にも影響なし)
配当を申告するかどうかは、所得税・住民税・国保を合わせて見て決めるのが大事。freeeなら年間の所得が見える化されるので「今年は申告したほうがいいか」を判断しやすくなります。青色申告65万円控除もインボイス対応もサイト内で完結。わたしも3年使い続けている定番ソフト。
freee 会計の公式サイトを見る →



