資産5,000万円で、投資のやり方は変えるべき? わたしは変えない
「資産5000万から投資人生が変わる」「5,000万円の壁を超える資産設計」。YouTubeで「資産5,000万円」と調べると、こんなタイトルの動画がずらりと並ぶ。
わたしの資産は、証券口座で2026年1月に5,000万円を超えた。気持ちや暮らしの変化は、準富裕層になった話や、見える景色は変わったのかという話で書いてきた。今回は、もう1つの「やり方」のほうだ。5,000万円を超えたら、投資のやり方は変えるべきなのか。
わたしは5,000万円を超えても、やり方を変えていない。高配当株をより増やすことを意識したのは、もっと前の3,000万円ぐらいのときだった。そして、わたしにとっての5,000万円は、計算のうえでは暮らせるけれど、気持ちのうえでは少し中途半端な金額なのかもしれない。
順番に見ていく。
1. YouTubeでは、何が言われているのか
まず、9本の動画で何が言われているかを、クロちゃん(わたしが使っているAI、Claude)に調べてもらった。
この6つに、わたしの場合を1つずつ当てはめてみる。
2. 「資産5,000万円は、全体の上位1割ほど」
出どころは、野村総合研究所の推計だ。世帯ごとに、預金や株などの金融資産から借金を引いた「純金融資産」を出し、5つの階層に分けている。
準富裕層は403.9万世帯で、全体の7.3%。その上の富裕層と超富裕層を合わせると569.2万世帯で、全体のおよそ1割になる。動画で言われる「上位1割」は、ここから来ている。
持っている資産の額で見ると、偏りはもっと大きい。5つの階層の資産を全部足すと1,795兆円。そのうち、上の3つの階層が802兆円と、およそ45%を持っている。全体の8割にあたるマス層の資産は711兆円で、4割ほどだ。
わたしは単身の世帯で、借金もないので、資産がそのまま純金融資産になる。
3. 「運用の利益で、生活の一部をまかなえる」
わたしの最低限の生活費は、月15万円、1年で180万円ほど。5,000万円を4%ルールで取り崩すと年200万円なので、計算のうえでは、まかなえる。
ただ、実際に毎年入ってくるお金は、そこまで多くない。
資産の大部分は、オルカン(全世界の株に投資する投資信託)やS&P500(アメリカの代表的な500社の株価指数。わたしはこれに連動する投資信託を持っている)といった投資信託だ。わたしが持っている投資信託は、分配金を出さずに中で再投資する方針なので、配当として入ってくるのは、高配当株や、アメリカの債券をまとめて持つETF(BND。ETFは証券取引所で売り買いできる投資信託)などの分になる。だから、5,000万円を超えても、実際の配当は年50万円ほど。4%ルールで暮らすには、投資信託を毎年少しずつ売って、取り崩すことになる。
5,000万円からではないけれど、3,000万円ぐらいから、インデックスの投資信託(株価指数に連動する投資信託)を土台にしたまま、高配当株をより増やして、キャッシュフロー(毎年入ってくるお金)を増やすことを意識した。
考えていたのは、収入が減ったり止まったりしても、資産を取り崩さずに生活が続けられるような設計だ。
9本の動画の中に、この考えとほぼ同じことを言っているものがあった。「売りたくない」と「売らずに済む」は別物だ、という話だ。どれだけ売りたくなくても、生活費が足りなくなれば売るしかない。だから、売らずに済む備えを先に作っておく。
わたしにとって、その備えが高配当株の配当と、生活防衛資金300万円だ。いまは日本の高配当株を121銘柄持っている。配当はいまのところ再投資しているけれど、いざというときは、取り崩さずに使えるお金になる。
高配当株を持つことが、効率の面では不利なことは承知している。オルカンのように、中で自動で再投資してくれるほうが効率的だ。NISAの外では、配当を受け取るたびに約20%の税金が引かれる。投資信託の中で再投資される分には、売るまで税金がかからない。受け取って買い直す手間もなく、お金が遊ぶ時間もない。
でも、わたしは性格上、取り崩しが苦手なことがわかっている。一度貯めると、減らしたくなくなる。だから、売らなくても強制的にお金が入ってくる高配当株が、わたしには相性がいいと思っている。
4. 「完全なFIREは厳しいが、サイドFIREなら現実的」
わたしは、サイドFIREをしている。最低限の生活費は年180万円で、5,000万円を4%で取り崩せば年200万円。取り崩しだけでも、生活はできる。余裕はないけれど、厳しいということもない。
家族のいる世帯で考えると、年200万円は厳しい。でも、それも暮らし方による。
FIREができるか、できないかは、人によって変わる。生活水準が高ければ、数億円持っていてもFIREは難しい。単純な話だ。
5. 「増やすより、減らさない。株以外にも分けて守りに入る」
9本のうち7本が言っていたのが、この「守り」の話だ。株だけでなく、債券や金、不動産にも分けて守りに入ろう、という主張だ。なかには、「5,000万円を超えると、投資のやり方が大きく変わる」と言い切る動画もあった。一方で、「無理にリスクを取らず、今までと同じでよい」という動画もある。
では、株・不動産・債券・金は、長い目で見るとどう動いてきたのか。50年分の値動きを並べてみた。不動産は、いろいろな不動産をまとめて持つ「REIT(リート)」で見ている。日本のREITは、指数が2003年からしかないので、アメリカのREITを使った。
グラフと表から読めることは、大きく3つある。
1つ目は、50年持ち続けたとき、いちばん増えたのはアメリカの株だったことだ。S&P500は279倍。物価の上がり分を引いても、1年あたり8%で増えている。
2つ目は、そのかわり、下がるときも大きいことだ。2008年のリーマン・ショックでは、S&P500もREITも1年で4割近く下がった。債券は、いちばん悪い年でも−18%で、下げは小さい。でも、物価を引くと1年あたり2.5%しか増えていない。守りにはなっても、増やす力は弱い。
3つ目は、始める年によって、順位が入れかわることだ。2000年から数えると、いちばん増えたのは金だった。2015年からでも、金がいちばん上にくる。日経平均は、バブルの頂点だった1989年から数えると、物価を引く前でも1年あたり0.7%しか増えていない。始める年を10通りに変えて試すと、S&P500がいちばん上になったのは、そのうち8通りだった。
物価の動きも見ておく。アメリカの物価は、50年で5.8倍になった。物価に勝ちやすかったのは、ここでもアメリカの株とREITだ。
物価に負けたものもある。国債は、2010年と2015年から数えると、物価に負けている。金利が低い時期から始めて、そのあと物価と金利が上がったためだ。日経平均も、バブルの頂点だった1989年から数えると、物価とちょうど引き分けだった。
10年だけ持った場合で見ると、S&P500、金、国債、日経平均のどれにも、物価に負ける10年があった。S&P500でも、1998〜2000年に始めた10年は負けている。金は、1979〜1994年に始めた10年がすべて負けだ。アメリカのREITには、負けた10年がなかった。
過去50年を見るかぎり、長く持つほど、いちばん増えやすかったのはアメリカの株だった。ただ、1年で4割近く下がることもある。その下げに耐えられるか、途中でお金を取り崩す予定があるかで、どれをどれだけ持つかは、人によって変わると思う。
わたしは、債券を増やして守りに入ろうと考えたことは全然ない。
BNDは持っている。もともとは守りのつもりで買い始めたけれど、いまは「守り」というより「気休め」に近い。最近のアメリカの債券には割安感があるとは思うけれど、それも割安感と利回りを見ての話だ。
守りのために債券を増やす必要は、子どもがいない独り身のわたしには、今のところないと思っている。1億円を超えたら少しは変わるかもしれないけれど、基本はオルカンやS&P500のような株でいい。
一方で、子どもがいて教育資金がいるなど、決まったタイミングでまとまったお金が必要な場合は、話がちがう。そのお金を、1年で4割下がるかもしれない株に置いておくのは向かない。現金や個人向け国債など、値動きが小さく、物価の上昇(インフレ)にもできるだけ負けにくいものが選択肢になる。
6. 「下がったときの金額が大きくなり、気持ちが揺れる」
5,000万円あれば、1%で50万円、10%なら500万円が動く。
わたしは、数%の動きで揺れることはない。コロナショックのときは、仕事が忙しすぎて、相場を放置できた。でも、また大きな暴落が起きたら、多少は動揺すると思う。
そこで狼狽売り(あわてて売ること)をしないために、生活防衛資金の300万円と、高配当株の配当金がある。暮らしのお金が別にあれば、下がった株を売って生活費にする必要はない。
配当金も、暴落のときは減るかもしれない。それでも、わたしは暴落のときにも減配(配当を減らすこと)をしてこなかった銘柄を選ぶようにしている。だから、年50万円ほどの配当への影響は、少なくて済むはずだ。
もう1つ、支えになっているのが仕事だ。仕事をまったくせず、資産の取り崩しだけで生活している人なら、下がったときはなおさら揺れることも考えられる。わたしの場合は、サイドFIREの前と同じぐらいのペースで働いているので、その点でも揺れは少ない。
7. 「貯めた人ほど、使えない」
9本のうち6本が言っていたのが、「貯めた人ほど、使えない」だ。貯める力が強い人は、使う段階になると、それが弱点になる。目標を上に直し続けて、いつまでも使えない人もいるらしい。
5,000万円を超えたら、これ以上増えた分は、ある程度使ってもいい。そう思っていた。でも、いざ5,000万円を超えて、総資産で6,000万円近くになっても、もう少し貯めようかなという自分がいる。
では、何に使うのか。自分がほしいものは、いまは特にない。自分に使うのは健康ぐらいで、今年は歯にお金をかけた。
使うなら、親孝行だったり、ちょっとしたプレゼントだったり、友人との時間や食事だったり。推し活や趣味は検討中だけれど、いまは愛犬のごまもちぐらいだ。
8. わたしの見方
その価値ははかり知れない。
それが、お金が払ってくれる最高の配当だ。
モーガン・ハウセル『サイコロジー・オブ・マネー』(原著2020年)
アメリカの作家モーガン・ハウセルの本『サイコロジー・オブ・マネー』の、「自由」についての章に出てくる言葉だ。お金がくれるいちばん大きなものは、物ではなく、自分の時間を自分で決められることだ、という意味になる。
わたしがサイドFIREを選んだのも、仕事を選べる自由がほしかったからだ。
わたしにとっての5,000万円は、4%ルールで暮らすには足りても、配当だけで暮らすにはまだ足りない。使ってもいいと思う一方で、まだ貯めたいとも思う。中途半端な金額なのかもしれない。
YouTubeでは「5,000万円を超えたら投資のやり方を変えよう」と言われることもある。でも、わたしは変えない。基本は、オルカンやS&P500、そして日本の高配当株。これで十分だ。
9. まとめ
- 資産5,000万円は全体の上位1割ほど。準富裕層は7.3%、その上と合わせておよそ1割で、資産ではおよそ45%を持っている
- 4%ルールなら年200万円で、わたしの最低限の生活費180万円をまかなえる。でも実際の配当は年50万円ほど。3,000万円ぐらいから、高配当株をより増やすことを意識した
- FIREができるかは人による。生活水準が高ければ、数億円あっても難しい
- 守りのために債券を増やそうと考えたことはない。基本はオルカンやS&P500のような株
- 数%では揺れない。大きな暴落に備えて生活防衛資金は300万円、仕事もサイドFIREの前と同じぐらいのペース
- 増えた分は使ってもいいと思う反面、まだ貯めたい。使うなら親孝行や友人との時間
・YouTubeの動画:「資産5,000万円」「準富裕層」をテーマにした9本(PIVOT、こみやまFP総合オフィス、いわいの早期リタイア&老後資金ch、ヨウヘイ(2本)、ぽんちよ、ちょーさん、大人の貯蓄革命、ゆっくりお金アカデミー)
・50年の値動き:Aswath Damodaran「Historical Returns on Stocks, Bonds and Bills」(S&P500、アメリカの10年国債、金、アメリカの物価)、FTSE Nareit All REITs、FRED「Nikkei Stock Average」、世界銀行(日本の物価)
・格言:Morgan Housel, The Psychology of Money(2020年), Chapter 7 "Freedom"




