キオクシアが決算で営業利益1兆3,000億円。買いたくなった自分を、止めた話
7月に一度書いたキオクシアの株価を、ここ数日ずっと見ていた。
6月に11万2,000円まで行った株価が、7月28日には5万円を割り、29日には3万8,380円。高値から3分の1だ。
そして7月31日、決算が出た。株価は+17.72%の4万6,500円まで急反発した。
数字を見た瞬間、買おうかなと思った。
この記事は、その気持ちと、それでも買わないと決めた理由の話だ。
1. 決算の中身が、想像以上だった
まず、出てきた数字から。
営業利益率75%。売上の4分の3が利益になっている。
しかも同じ日に、株主還元も出た。
- 自社株買い8,000億円(8月3日〜10月30日、約3,000万株)
- 1株を3株に分割(2026年9月30日)
- 2026〜2028年度に年平均4,700億円の設備投資
AI向けのデータセンター需要が、そのまま数字になっていた。
2. 正直に書く。買いたくなった
わたしはインデックスが土台で、個別株は日本の高配当株を持っているだけだ。値上がりを狙って買うことは、基本的にしない。
それでも、このときは頭の中で計算が始まっていた。
→ 1株あたり約1,537円。これで1四半期ぶん
2Qの純利益予想1兆2,800億円なら、1株あたり約2,335円
→ 上期だけで、1株あたり約3,900円
株価4万6,500円。仮に通期で8,000円なら…PERは6倍を切る
高値から3分の1まで下げたところに、この決算。
「安いのでは」と思ってしまった。これがスケベ根性というやつだと思う。
3. でも、その計算をやめた
やめたのは、2年前の決算を思い出したからだった。
純損益:2,437億円の赤字。2期連続かつ過去最大
原因は、NAND型フラッシュメモリの価格の大幅下落
同じ会社だ。
いま四半期で1兆3,262億円を稼いでいる会社が、わずか2年前には、過去最大の赤字を出していた。
メモリはシリコンサイクルと呼ばれる波の中にある。需要が強いと各社が増産し、増えすぎると価格が急落して赤字になる。そしてまた需要が追いついて、価格が上がる。
この波の振れ幅が、とんでもなく大きい。 2年で「過去最大の赤字」から「利益率75%」まで動く会社だ。
4. シクリカル株は、PERが低いときが危ない
ここで、知っておきたい原則がある。わたしがさっきやっていた計算そのものが、罠だったという話だ。
普通の成長株なら、PERが低い=割安でいい。でも、こういう市況で動く会社(シクリカル株)は逆になる。
| PERが低いとき | PERが高い・計算できないとき | |
|---|---|---|
| ふつうの株 | 割安のサイン | 割高のサイン |
| シクリカル株 | 好況のピークが近いサイン | 底が近いサイン |
理屈はこうだ。
好況のピークでは、利益が一時的に膨らむ。市場は「この利益は長続きしない」と分かっているので、そこに高い倍率をつけない。だからPERが低くなる。
逆に、不況のどん底では利益が消えるので、PERは高くなるか、赤字で計算できなくなる。そこが底だったりする。
つまり、わたしが「PER6倍を切る」と喜んでいたことは、割安の証拠ではなく、市場が『この利益は続かない』と見ている証拠かもしれない、ということだ。
5. わたしには、読めないことが多すぎた
じゃあ、どこがピークなのか。それが読めれば買えばいい。
でも、そのために何を当てないといけないかを並べてみて、諦めた。
②GAFAMなどのAI投資が、いつまで続くか。キオクシアの努力とは関係なく決まる
③サムスンなど競合が、どれだけ増産するか。供給が需要をわずかに超えただけで、価格は急落する
しかも、皮肉なことがある。
会社は2026〜2028年度に年平均4,700億円の設備投資をすると発表した。需要が強いのだから、当然の判断だ。でも各社が同じことをすれば、いつか供給が需要を追い越す。
好調だからこそ増産し、増産したからこそ崩れる。 これがシリコンサイクルの正体だった。
会社自身は「2027年はメモリ需要が供給を上回る」と見ている。でも、その先のことは誰も言っていない。
わたしの持ち方は、こういう理屈で立っている。
- 高配当株:配当をもらい続ける
- インデックス:長期なら右肩上がりだった、という歴史を信じる
どちらも、タイミングを当てる必要がない。
でもキオクシアは、当てないと報われない。わたしがいま買えば、それは投資というよりギャンブルだ。
だから、やめた。
6. そして、買わなくても、もう持っていた
ここが、いちばん腑に落ちたところ。
調べていて気づいたのだけれど、わたしはすでにキオクシアの株主だった。
2025年11月5日、キオクシアはMSCIのオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)に新規採用されている。 日本株の組み入れ数が純増するのは3年9カ月ぶりという、それ自体がニュースになった出来事だった。
そしてオルカンは、このMSCI ACWIに連動している。
時価総額が大きくなったから、指数が勝手に入れた
これから伸びれば比重が増えるし、しぼめば勝手に減る
→ わたしは、判断しなくていい側にいた
「参加しない」のではなく、「自分で選ぶゲームには参加しない」だけだった。市場全体としては、もう乗っている。
これに気づいたら、買いたい気持ちがすっと消えた。
7. まとめ
- キオクシアの1Q(2026年4〜6月)は、売上1兆7,671億円(+415.5%)、営業利益1兆3,262億円、営業利益率75%。自社株買い8,000億円と1株→3株の分割も同時発表
- 株価は7月31日に+17.72%の4万6,500円へ。6月の高値11万2,000円から3分の1まで下げた直後だった
- そして買いたくなった。上期だけで1株あたり約3,900円、通期8,000円ならPERは6倍を切る計算になる
- でも2年前(2024年3月期)、同じ会社が過去最大の2,437億円の赤字を出している。NAND価格の下落で
- そしてシクリカル株は、PERが低いときが好況のピークのサインになりやすい。割安の証拠ではなく、「この利益は続かない」と市場が見ている証拠かもしれない
- 買うなら、①NAND価格の天井 ②AI投資がいつまで続くか ③競合の増産を当てる必要がある。わたしには読めない
- わたしの持ち方は、高配当株=配当をもらい続ける/インデックス=長期なら右肩上がりだった歴史を信じる。どちらもタイミングを当てる必要がない。でもこの株は、当てないと報われない。わたしがいま買えば、それは投資というよりギャンブルになる
- しかも好調だから増産し、増産したから価格が落ちるのがシリコンサイクル。会社は2027年まで強気だが、その先は誰も言っていない
- そして気づいた。2025年11月にMSCI ACWIへ採用されたので、オルカン経由でもう持っていた。自分で選ぶゲームに参加しないだけで、市場全体としては乗っている
読めないことは、読まなくていい形にしておく。わたしにできるのは、それくらいだ。
・決算の数値:キオクシアホールディングス「決算説明資料」
・2024年3月期の赤字:EE Times Japan「キオクシアの23年度は過去最大の2437億円赤字」
・シクリカル株とPERの関係:日本経済新聞「PERが信頼できない景気敏感株」
・MSCI ACWIへの新規採用:日本経済新聞「MSCI、『全世界株』日本4銘柄追加 キオクシア・JX金属など」
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