6年半でマンションは1.5倍、株は2.3倍、REITは2割安。なぜREITだけ置いていかれたのか
「不動産高騰でもREIT低迷。市場創設25年、成長阻む制度が足かせ」。今朝の日経に、こんな見出しがあった。REITは、あとで説明するけれど、ひとことで言えば「ビルの家賃を受け取る権利を小さく分けて、証券取引所で売り買いできるようにしたもの」だ。日本でこの市場ができたのが2001年9月10日。ちょうど25年になる。この数年、マンションの値段は上がり続けた。ところが、REITの値段は、今年に入って13%下がっている。日本株が史上最高値をつけている横で、だ。こう思った人も、いるはずだ。
🤔「そもそも、REITって何?」
😤「毎年5%も配ってくれるなら、お得じゃないの?」
🏠「マンション、そろそろ下がるんじゃないの?」
わたしは、REITを持っている。個別の銘柄ではなく、日本のREITをまとめて持てるETF、NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信(1343)だ。ETFは、株と同じように証券取引所で売り買いできる投資信託のこと。だから、家は買わないけれど、REITを通してビルの家賃は受け取っている。
結論から言うと、わたしは持ち続ける。そして、この記事のいちばん大事なところは、REITが「稼いだ家賃を、ほぼ全部配る大家さん」だということ。だから分配金が高い。そして同じ理由で、自分の力で新しいビルを買って大きくなることができない。不動産が上がってもREITが上がらない理由は、金利と、この決まりの中にある。
順番に見ていく。
1. そもそもREITとは。家賃をほぼ全部配る大家さん
2つ目の声から。「REITって何?」
ビルを1棟買うには、何十億円もいる。ふつうの人には無理だ。そこで、大勢の投資家からお金を集めて、まとめてビルを買い、入ってくる家賃を出した額に応じて分ける。この仕組みがREIT(リート、不動産投資信託)。ひとりひとりは、出した額のぶんだけ、家賃を受け取る権利を持つ。この権利は、株を1株、2株と数えるように、1口、2口と数える。
ビルを買う オフィス、マンション、物流倉庫、ホテル、商業施設など
家賃をもらう 入っている会社や人から、毎月家賃が入る
分ける 家賃から、管理費や借金の利息を引いた残りを、投資家に「分配金」として配る
権利は売り買いできる 株と同じように、証券取引所で毎日値段がつく
大事な決まりが1つある。REITは、利益の90%を超える額を投資家に配れば、法人税がかからない。ふつうの会社は、もうけの3〜4割を税金で払ってから配当を出す。REITはそれがないぶん、配当(分配金)が高くなる。1年分の分配金を値段で割ったものを「分配金利回り」と呼ぶ。いま日本のREIT全体の平均は5.23%(9月11日)。日本株の配当利回りの平均の、倍以上だ。
わたしが持っている1343は、日本に上場している58本のREITを、まとめて1本にしたETFだ。分配金は年4回。直近1年の分配金から計算した利回りは4.88%(9月10日。計算のもとが違うので、全体の平均5.23%とは少しずれる)で、持っているだけでかかる費用は年0.17%。東証に上場しているREITを全部、大きさの割合で持つ、という買い方だ。
本数 58本(2026年8月末)
大きいもの 日本ビルファンド 7.1%、ジャパンリアルエステイト 5.8%、日本都市ファンド 5.5%、野村不動産マスターファンド 4.4%、GLP 4.3%
偏り 上位10本で46%。いちばん小さいものは0.1%
中身の物件 オフィス、住宅、物流倉庫、商業施設、ホテルなど、58本が持つ約4,900件
REITは「お金を借りて、ビルを買って、貸す」商売だ、ということは、8月の不動産株の記事でも書いた。ここを覚えておいてほしい。あとで効いてくる。
「家賃を受け取る権利」と聞いて、「みんなで大家さん」を思い出した人もいるはずだ。成田空港のそばの開発地などに出資を募り、去年7月から分配金が止まり、今年9月1日に大阪府と東京都が事業の許可を取り消した商品だ。3万7,000人以上から2,000億円超を集め、2026年3月末で約2,881億円の債務超過(借金のほうが財産より多い状態。集めた額より大きい)と報じられている。名前は似ているけれど、中身は違う。
上場しているREITでも、値段は下がる。この記事はまさにその話だ。でも「下がった」と毎日分かることと、「止まった」とあとで知ることは、別のことだ。
2. ビルは上がり、REITは下がった
1つ目の声、「不動産が上がってるなら、REITも上がるでしょ?」。2019年の終わりを起点にして、3つを並べてみる。
マンションの値段は1.5倍。REITは2割安。株は2.3倍。同じ日本の中で、ここまで開いた。
REITの世界には、これを1つの数字で表す物差しがある。NAV倍率という。NAVは、いまREITが持っているビルを全部いまの値段で売って、借金を返したら手元に残る額。「解散したときの値打ち」だ。その値打ちに対して、市場でいくらの値段がついているかが、NAV倍率。1倍なら値打ちどおり。1倍より小さければ、値打ちより安く売られている。
ニッセイ基礎研究所の計算では、2026年3月末のNAV倍率は0.86倍。100円の値打ちがあるものが、86円で売られている。しかもこの1倍割れは2022年12月から続いていて、今年3月末で40か月。リーマンショックのとき(59か月)に次ぐ長さで、コロナのとき(10か月)よりずっと長い。ただし、過去2回と決定的に違うことがある。リーマンのときは、REITが持っているビルの値段そのものが、ピークから22%下がった。今回は、ビルの値段は上がり続けている。上がっているビルを持つ大家さんが、値打ちより14%安く売られている。これが「不動産高騰でもREIT低迷」の中身だ。
3. なぜ下がったのか。金利と、売っている人
理由は2つある。
1つ目は、金利。 8月の不動産株の記事と同じ話だ。REITはお金を借りてビルを買う。金利が上がれば、家賃から引かれる利息が増えて、配れる分配金が減る。それだけではない。国にお金を貸すと、いちばん安全に利息がもらえる。その利率が「10年国債の利回り」で、9月11日で2.98%。REITの分配金は、この安全な利息よりどれだけ多いかで魅力が決まる。REITの分配金利回り5.23%との差は、5.23 − 2.98 で2.25ポイント。ニッセイ基礎研究所によると、過去の平均は3.5ポイントあった。国債が3%くれるなら、5%のREITは、そんなに魅力的でもない。
買った 投資信託。買った額が売った額より1,093億円多い(買い越し)。2月の693億円は月として過去最多
結果 東証REIT指数は、1〜6月で−10.3%(分配金込みで−8.2%)
2つ目は、売っている人。 日本のREITは、売買の6割を海外投資家が占める。今年3月、中東(イラン)の情勢でインフレの心配が強まり、アメリカの金利は「下がる」から「上がるかも」に変わった。海外の投資家は、日本のREITを買うお金を、アメリカの国債と比べている。アメリカの金利が上がれば、日本のREITを売ってそちらに戻す。それで4月から売り続けた。買っていたのは、投資信託。新NISA(税金がかからない投資の枠)を使い切った人が、分散のためにREITの投信を買った、と見られている。つまり、海外が売って、日本の個人が買った半年だった。
4. 成長を阻む制度。「ほぼ全部配る」の裏側
ここが、日経の記事の本題だ。
REITは、ほとんど貯めずに、利益の大半を配る。すると、どうなるか。手元にお金が残らない。 ふつうの会社なら、もうけの一部を貯めておいて、次の工場や店を出す。REITにはその貯金がない。新しいビルを買いたければ、また投資家から新しくお金を集める(増資する)か、銀行から借りるしかない。
ここに、2章のNAV倍率が効いてくる。
法人税がかからない代わりに、貯金ができない
投資家に新しい口を売って(増資)、そのお金でビルを買う
100円の値打ちの口を86円で新しく売ると、100円ぶんのビルを買うために口を多めに売ることになる。いまの投資家の1口あたりの取り分が減る。だから増資できない
値段が値打ちを割った2022年12月から、この状態が続いている
つまり、高い分配金と、自分で大きくなれないことは、同じ決まりの表と裏なのだ。値段が値打ちを上回っているあいだは、この決まりはうまく回る。増資して、ビルを買って、家賃が増えて、また値段が上がる。日銀が金利を大きく下げていた2013年からの数年は、そうだった。金利が上がって値段が値打ちを割った瞬間に、同じ決まりが足かせに変わる。
REITの側も、何もしていないわけではない。持っているビルには、買ったときより値上がりして、売れば出る利益(含み益)が市場全体で6.3兆円ある。ビルを少しずつ売ってその利益を分配金に上乗せしたり、自分の口を市場で買い戻して口数を減らし、1口あたりの取り分を増やしたりしている。業界団体の不動産証券化協会は今年7月、国への要望に「新NISAの『つみたて投資枠』で、東証REIT指数に連動する商品を買えるようにしてほしい」を入れた。海外の投資家が売るぶんを、日本の個人の積立で受け止めたい、ということだ。
5. 「マンション、そろそろ下がるんじゃないの?」
4つ目の声。ここは、反対側も書いておきたい。
日経の見出しは「不動産高騰」だ。新築は、不動産経済研究所によると首都圏の平均が今年上半期に1億135万円で、初めて1億円を超えた。ただ、高騰の勢いは、少なくとも東京の中古マンションでは止まりかけている。
2026年5月 1億2,849万円(ここが高値)
2026年6月 1億2,741万円。26か月ぶりに前の月より下がった
2026年7月 1億2,724万円。もう1か月続けて下がった
値下げした住戸の割合 1年前の36.7%から46.7%へ
1年足らずで2割上がったあと、2か月続けて少し下がり、値下げする売り手が増えている。「暴落」ではない。「上がりきって、足踏み」。いまは、そう見ている。
ここで、2章のNAV倍率(値打ちより14%安い)をもう一度思い出してほしい。ニッセイ基礎研究所の計算では、これはビルの値段が9%下がることを、市場が先に値段に入れてしまった(織り込んだ)水準だ。14%と9%が違うのは、REITが借金もしているから。ビルが9%下がると、借金は減らないので、REITの値打ちはそれより大きく減る。REITが持っているのはオフィスや倉庫が中心で、23区の中古マンションそのものではない。でも、不動産の値段は同じ金利の風を受ける。マンションがこれから1割下がるとしても、REITの値段には、その下落がもう入っている。ビルの値段とREITの値段は、同じ方向に動くけれど、同じ速さでは動かない。REITのほうが、先に動き、大きく動く。今回は、先に下がった。
6. わたしは、どう見ているか
3つ目の声、「毎年5%も配ってくれるなら、お得じゃないの?」に答えながら、わたしの見方を書く。理由は3つ。
高配当株と同じで、値段が上がることを期待して持っているのではない。値段が下がっても、分配金が減らなければ、買った理由は壊れない
ここは正直に書く。REITは半年ごとに決算がある。今年7月に決算を迎えた15本については、真ん中の値で3%弱の減配(分配金が減ること)が3月時点で予想されていた(アイビー総研)。金利が上がって利息が増えたぶんだ。1343の直近の分配金も、100口あたり2,060円と、前の3回より少ない。「減配」は、わたしがいちばん重く見るところだ
5%の分配金は、国債が3%くれる世界では「そこそこ」だ。国債が2%に戻れば「お得」に戻る。それは日銀と海外の投資家が決めることで、わたしには読めない。読めないものを当てにして、買い増しはしない
「安くなったから買い増そう」とは思わない。高配当株を買い増すときのわたしのルールは「割安なときだけ」で、値打ちより14%安いREITは、割安に見える。でも、いま安い理由は金利で、金利の先は読めない。なので、買い増しはしない。
ジョン・スチュアート・ミル『経済学原理』(1848年)第5編第2章
イギリスの経済学者の言葉だ。ミルは、社会が豊かになると地主の取り分が勝手に増えることを、不公平だと言いたくてこう書いた。それから180年近くたって、日本のREITは、眠っているあいだに下がっている。地主が眠っているあいだに豊かになれたのは、金利が低く、値段が値打ちを上回っていた時代の話だった、ということかもしれない。
それでも、家賃は入ってくる。REITを持つということは、ビルの値段の上げ下げを当てるゲームではなく、家賃を受け取る側に座ることだと、わたしは思っている。座る席の値段が下がっても、家賃は入ってくる。
わたしがやることは変わらない。1343は持ったまま。見るのは値段ではなく、分配金がまだ持つ理由になるか。それだけだ。
オルカンの積立も、日本の高配当株119銘柄も、8年以上SBI証券の口座です。値段ではなく、分配金や配当が減るかどうかを見ています。
SBI証券の公式サイトを見る →7. まとめ
- REITは、大勢でお金を出してビルの大家さんになり、家賃を分配金として受け取る仕組み。利益の90%超を配れば法人税がかからず、分配金が高い(5.23%)
- 2019年末からマンションの値段は+50%、株は+134%。REITは−18%、今年に入ってからも−13%
- REITの値段は、持っているビルの値打ち(NAV)より14%安い。1倍割れは2022年12月から続く
- 下がった理由は、金利(国債3%との差が縮んだ)と、売買の6割の海外投資家の売り
- 成長を阻む制度とは、「ほぼ全部配る」から貯金がなく、値段が値打ちを割ると増資もできないこと。高い分配金と大きくなれないことは表と裏
- 東京23区の中古マンションは2か月続けて小幅に下落。REITはビルの9%下落を先に織り込んだ安さ
- わたしは1343を持ち続ける。見るのは値段ではなく、分配金がまだ持つ理由になるか
・25年の歩み・制度:MUFG不動産研究所「J-REIT市場創設25周年」(2026年9月)(58銘柄・資産25兆円、NAV倍率1倍割れで増資がしづらく外部成長が減速、2013年からの公募増資による物件取得)、三菱UFJ信託銀行「J-REIT投資の魅力」(2023年10月)(配当可能利益の90%超を配る導管性要件、法人税は約30〜40%、内部留保ができないため増資が不可欠)
・NAV倍率:ニッセイ基礎研究所「NAV倍率1倍割れが長期化するJ-REIT市場」(2026年5月8日)。0.86倍、14%ディスカウント、9%の下落を織り込む水準、1倍割れ40か月(2026年3月末時点)、リーマン時は不動産22%下落、イールドスプレッド過去平均3.5%、含み益6.3兆円はここから
・売買の主体:マネクリ「2026年上半期の投資家動向」(アイビー総研 関大介氏、2026年7月23日)、上半期−10.3%はニッセイ基礎研究所(2026年7月8日)。減配予想はJAPAN-REIT.COM(2026年3月27日)
・利回り・金利:分配金利回り5.23%・10年国債2.98%はstock-marketdata.com(9月11日)、日本株の配当利回り平均(プライム全銘柄2.25%)は日経の国内株式指標(9月11日)、1343の利回り4.88%(9月10日基準)・分配金(100口あたり)・信託報酬0.1705%はNEXT FUNDS公式
・みんなで大家さん:時事通信「出資金3.5億円の返還命令」(2026年6月10日)、業務停止(2024年6月17日)・分配金停止(2025年7月30日から)・3万7,000人超・2,000億円超・債務超過約2,881億円(2026年3月末、第28期決算公告)・許可取り消し(2026年9月1日)は各報道。J-REIT全体の物件数4,872件は不動産証券化協会「ARES J-REIT Databook」(2024年12月末)
・業界の要望:不動産証券化協会「令和9年度制度改善要望・税制改正要望」(2026年7月13日)。NISAつみたて投資枠の指定インデックスに東証REIT指数を追加する要望
・不動産の値段:国土交通省「不動産価格指数」(季節調整済み、2025年12月分まで)、東京カンテイ「中古マンション価格および各指標の推移」(2026年8月24日)、不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向 2026年上半期」
・値動きの計算:Yahoo Financeの1343・1348の終値からクロちゃん(Claude)に計算してもらった(2026年9月11日まで)
・ミルの言葉:John Stuart Mill, Principles of Political Economy, Book V, Chapter II, §5(Econlib収録の原文で確認)。訳はわたし




