TOPIXは年初来高値。その4日後、不動産株がそろって年初来安値をつけた
「不動産株が相次ぎ年初来安値」というニュースを読んだ。
株式市場は好調だと思っていたので、あれっと思った。調べてみたら、同じ週に正反対のことが起きていた。
1. 4日ちがいで、高値と安値
まず、この4日間を並べてみる。
8月18日 三井不動産・三菱地所・住友不動産がそろって年初来安値
相場が悪いのではない。TOPIXは高いところにいて、不動産だけが沈んでいる。
年初からの動きを並べると、差がはっきりする。
TOPIXが年初から18.5%上がっているのに、三井不動産は18.4%下がっている。その差は37ポイント。
不動産各社の高値は、2月から3月上旬に集まっている。そこから半年で、3割前後を落としたことになる。
2. 下がっている理由は金利。ただし、効き方が2つある
売られている原因は、報道でもはっきりしている。金利だ。
2026年1月5日 一時2.125%(27年ぶりの高さ)
2026年8月18日 一時2.945%(約30年ぶりの高さ)
1年で1.5%から2.9%へ、ほぼ倍になった。1996年以来の水準だという。
上がっている背景は、2つあるという。
② 国の借金が増えそう 消費減税で税収が減るぶん、国債をたくさん発行することになる
②が分かりにくいので補うと、国債も買い手がいて成り立つ商品だ。たくさん出回れば買い手が足りなくなるので、利回りを高くしないと売れなくなる。その利回りが長期金利にあたる。
では、なぜ金利が上がると不動産だけが売られるのか。理由は2つある。
② 物件が売れにくくなる ローンを組んで買える人が減るので、値段も下がる
不動産は、借金の量がとにかく大きい業種だ。ビルを建てるにも、マンションを仕込むにも、先に何百億円と借りる。金利が1%上がれば、そのぶんがまるごと費用に乗る。
しかも同時に、買い手のほうも金利で減る。売る先が細れば、在庫の値段も下がる。
REIT(不動産に投資する投資信託のようなもの)も、年初来で11.3%下がっている。借りて買って貸すという点は同じなので、同じ逆風を受ける。
3. これは、会社だけの話ではない
ここまでは企業の話だ。でも同じことが、家を買った人にも起きる。
借入5,000万円を35年で返す場合、金利によって毎月の返済額はこう変わる。
1.0%から4.0%になると、月の返済は8万円増える。総額では3,370万円の差だ。同じ家、同じ借入額なのに。
もちろん、変動金利がいきなり4%になるわけではない。いまの変動金利は1%台前半で、8月もソニー銀行は据え置き、楽天銀行は少し上げた、という水準だ。
4. すぐには効かない。でも、消えたわけではない
変動金利には、返済額が急に増えないようにする仕組みがある。
125%ルール 見直すときも、前の返済額の1.25倍まで
これがあるので、金利が上がってもすぐには家計に来ない。
ただし、2つ注意がある。
ひとつは、この仕組みがない銀行もあること。ソニー銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行は採用していない。これらは金利が上がるとそのまま返済額が上がる。
もうひとつは、返済額が変わらないだけで、借金が減るわけではないこと。ここがいちばん分かりにくいので、中身を割ってみる。
毎月の返済は、利息と元本(借金そのものの返済)に分かれている。金利が上がると、利息のほうが増える。返済額は同じなので、そのぶん元本に回る額が減る。
金利1.0%なら、毎月9.9万円ずつ借金が減っていた。それが2.0%になると5.8万円、3.0%では1.6万円しか減らない。
そして4.0%になると、マイナスになる。利息が16.7万円で、返している14.1万円を超えてしまうからだ。毎月2.6万円ずつ、借金のほうが増えていく。年にすると約31万円だ。
計算すると、分かれ目は金利3.4%あたりだった。そこを超えると払っても元本には届かず、足りないぶんは「未払利息」として積み上がっていく。いまの変動金利とは2ポイント以上の開きがあるので、すぐに届く数字ではない。
払っている額は同じなのに、借金だけが減らなくなる。5年ルールは、これを5年間見せないでいてくれる仕組みだ。減らなかったぶんは、あとから返済額に乗ってくる。
5. わたしは借りていない。でも、持ってはいる
わたしは賃貸派なので、住宅ローンは持っていない。この金利上昇で返済が増えることはない。
でも、他人事でもなかった。
日本の高配当株を117銘柄持っているなかに、不動産も入っている。今回の下げは、わたしの持ち株にも入っている。
そのなかで不動産だけが高値から3割前後下げていた
→ 全体が上がっていても、沈んでいる場所はある
117銘柄でリスクを計算したとき、答えは「数」ではなかった。中身がどれだけ散らばっているかのほうが効く、というのがそのときの結論だった。
今回はその実例だと思う。指数だけ見ていたら、この3割は見えない。
6. 「金利のある世界」にいるということ
金利がこの先どこまで上がるのか、わたしにはわからない。3%で止まるのか、もっと行くのか。専門家の見方も割れている。
ただ、わからないことと、何もできないことは別だと思う。
自分がいまどこにいるかを知ることだ。
どこへ向かうのかは、正確にはわからなくても
ハワード・マークス(2001年 オークツリーのメモより)
金利の行き先はわからない。でも、自分のローンが変動か固定か、いま何%か、金利で沈む業種をどれだけ持っているかは今日わかる。どれも調べるだけなら5分で終わる。
長いあいだ、借りるのがほとんどタダで、預けても増えない世界だった。それが当たり前だと思っていた。
7月に銀行株の記事を書いたとき、「金利のある世界」が戻ってきたと書いた。あのときは、貸す側が儲かるという話だった。
今度は借りる側に来ている。
不動産株が3割下げたのも、返済の中身が変わっていくのも、その入口で起きていることだ。これから何が起きるかは、わからない。
それでも、いまどこにいるかは確かめておきたい。
7. まとめ
- 8月14日にTOPIXが年初来高値。その4日後の8月18日、三井不動産・三菱地所・住友不動産がそろって年初来安値をつけた。年初来ではTOPIX +18.5%、三井不動産 −18.4%で、相場が悪いのではなく不動産だけが沈んでいる
- 高値からの下落は住友不動産−38.0%、三井不動産−32.7%、三菱地所−32.2%。各社の高値は2月から3月上旬に集まっている
- 原因は金利。長期金利は2025年8月の1.5%台から、8月18日には一時2.945%へ。約30年ぶりの高さで、1年でほぼ倍になった
- 不動産に効く理由は2つ。①借金が大きいので利払いが増える ②ローンで買える人が減るので物件も売れにくくなる。同時に来るので下げ幅も大きい
- REITも年初来−11.3%。借りて買って貸す構造は同じなので、同じ逆風を受けている
- 会社だけの話ではない。5,000万円を35年で借りると、金利1.0%と4.0%で月の返済は8万円、総額では3,370万円ちがう
- 変動金利には5年ルール・125%ルールがあるので急には来ない。ただし採用していない銀行もあるし、返済額が同じでも元本の減りが遅くなるだけで、消えるわけではない
- わたしは賃貸派なのでローンはないが、117銘柄のなかに不動産も入っているので他人事でもない。指数だけ見ていたら、この3割は見えなかった
- 金利1.0%と4.0%では、返済の中身も変わる。同じ14.1万円を払っても借金が減る額は9.9万円→マイナス2.6万円。金利3.4%を超えると、払っても借金が増える(未払利息)
- 7月に銀行株の記事で「金利のある世界が戻ってきた」と書いたのは貸す側の話だった。今度は借りる側に来ている。行き先はわからないが、変動か固定か、いま何%か、金利で沈む業種をどれだけ持っているかは今日わかる
・長期金利の水準:日本経済新聞「長期金利上昇、一時2.945% 財政懸念や日銀利上げ観測で」/同「長期金利上昇、一時2.125% 日銀利上げ加速観測で債券売り」
・株価とリターン:Yahoo Finance の日次終値からわたしが計算しました(2026年8月18日終値まで)。TOPIXは連動ETF「NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信」(1348)、東証REIT指数は「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信」(1343)の終値を使っています
・住宅ローンの返済額:わたしが計算した概算です(元利均等・35年・ボーナス返済なし・諸費用は含まず)
・変動金利の水準:モゲチェック「住宅ローン金利2026年8月の最新動向」
・5年ルール/125%ルール:モゲチェック「住宅ローン変動金利の5年ルール・125%ルールとは?」/三菱UFJ銀行「住宅ローンの5年ルール・125%ルールについて」
・5年ルール/125%ルールを採用していない銀行:長岡FP事務所「5年・125%ルールなしの変動金利住宅ローンもある・ネット銀行主要3行を徹底解説」
・ハワード・マークスの言葉:Oaktree Capital「You Can't Predict. You Can Prepare.」(2001年11月20日)
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わたしは日本の高配当株を117銘柄持っています。単元未満株なら1株から買えるので、少しずつ業種を散らしていけます。メイン口座はSBI証券で、8年以上使っています。
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