20代の負債が過去最高。3,000万円のローンを組む同世代と、賃貸のわたし
総務省の家計調査で、20代以下の世帯の負債が過去最高になったというニュースを見た。ローンを持っている世帯だけで見ると、平均は3,000万円を超える。
わたしは34歳で、賃貸派で、家を買っていない。だから同世代がローンを組んでいる話は、まったく別の人生の選択として、いつも気になっている。
先に書いておくと、この記事は「買った人」を心配したり、責めたりするために書くのではない。数字を追っていくと、買う判断もかなり合理的だと分かるからだ。ただ、いくつかの負担が同じ時期に重なる構造だけは、知っておく価値があると思った。
賃貸を選んだ同世代として、整理してみる。
1. 何が起きているのか
背景にあるのは、何度か書いてきた住宅価格の高騰だ。新築マンションの平均価格は9年連続で過去最高を更新している。総額が上がったぶん、返済期間を伸ばして月々の負担を抑える。それが50年ローンやペアローンの正体だ。
2. なぜ買うのか。責める前に、事情を見てみる
理由①:賃貸が、もう逃げ場になっていない
わたしは賃貸派だけど、その賃貸がいま高い。東京23区のシングル向け平均家賃は 21カ月連続で最高値を更新、23区のファミリー向け(50〜70㎡)は前年同月比で 10%超の上昇という調査もある。待つことのコストが、年々上がっているのだ。
理由②:インフレのとき、借金は目減りする
これは教科書的な話。物価も賃金も上がる局面では、金額が固定された借金は、実質的に軽くなっていく。同時に住宅という実物資産は値上がりする。インフレ下で長期の借入をして実物資産を持つ判断は、理屈のうえではむしろ合理的だ。
理由③:「総額6,000万円」ではなく「月17万円」で考えられる
50年ローンやペアローンの効果は、ここにある。総額は変わらなくても、月々の返済額は今の家賃と比べられる金額まで下がる。「家賃17万円を払い続けるより」という比較が成立してしまう。
こう並べると、個々の判断としては、かなり筋が通っている。わたしが同じ状況で、家族がいて、いまの家賃と見比べたら、同じ決断をするかもしれない。
3. でも、負担が重なる時期がある
危ういのは、判断そのものより 時期の重なり方 だと思う。
| 項目 | 起きること | 確かめること |
|---|---|---|
| ① 修繕積立金 | 段階増額で値上げ。首都圏平均は月13,910円(前年度比+5.6%)、築10年以内と築11〜20年で年4万円以上の差 | 長期修繕計画書で何年後にいくらになるか |
| ② ローン控除 | 13年で終了し、税金の戻りがなくなる | 控除が切れる年と、その後の手取り |
| ③ 変動金利 | 政策金利は2026年6月に1.0%と31年ぶりの水準。銀行の変動金利も段階的に上昇 | 金利が+0.5〜1%になった場合の返済額 |
| ④ 教育費 | 子どもの進学時期と重なりやすい | 投資を取り崩さずに払えるか |
とくに 修繕積立金は、借り換えでも固定金利でも逃げられない。金利は借り方を工夫できるけれど、こちらは管理組合の決定で上がっていく。しかも新築時に安く設定して後から上げる「段階増額方式」が多いので、購入時の資金計画表の数字は、将来の実額より低いことが多い。
4. 「借金しながら投資する」という構造
もうひとつ、投資ブログとして触れておきたいことがある。ローンを繰り上げ返済せずに、手元のお金をNISAに回すという選択が広がっていることだ。
これは一見、まっとうな判断に見える。実際、ローン金利が1%未満で、住宅ローン控除もあって、投資の期待利回りが3〜5%なら、返さずに運用したほうが数字上は有利だった。
でも、バランスシートで見ると 借金をして投資しているのと同じ構造になっている。そして、その前提が2025年から崩れ始めた。政策金利は31年ぶりの1.0%。ローン金利が上がれば、「借りて運用する」の有利さは薄れていく。
ここで見直したいのが、繰り上げ返済の価値だ。金利0.5%の時代には「返すより投資」がほぼ正解だった。でも金利が1%、1.5%と上がっていくと、繰り上げ返済は「その金利ぶんを確実に節約できる」運用という意味を持ってくる。投資の期待利回りは不確実だけれど、こちらは確実だ。金利が上がるほど、返済という選択肢の点数も上がっていく。
それ自体が悪いわけではない。ただ、高金利通貨の記事でも書いたとおり、大きく増える仕組みは、大きく減る仕組みでもある。
ちなみに、投資している人が一律に危ないという話でもない。ローンだけ抱えて金融資産ゼロの家計より、取り崩せる資産がある方が、むしろ強い。分かれ目は「投資しているかどうか」ではない。金利が上がっても、資産を売らずに返済を続けられるかどうか。そこだと思う。
5. 数字の裏側にある、もうひとつの話
最後に、調べていていちばん考えさせられた数字を書いておきたい。
「20代の持ち家率が過去最高」と報じられている。二人以上の世帯で見ると、2000年の19.7%から2025年には40.7%へ、20年あまりで倍増した。数字だけ見れば「若い世代が家を買うようになった」ように見える。
でも、同じ期間に 20代以下の夫婦世帯そのものが大きく減っている。その結果、持ち家世帯の"数"は、むしろ減っているという指摘がある。
ここが、いちばん重い話だと思う。20代で家を買っているのは、20代の平均像ではない。共働きで、それなりの年収があって、ペアローンを組める人たち。持ち家率の上昇は、若い世代が豊かになった証拠というより、買える層と買えない層が分かれた結果なのかもしれない。
6. 賃貸を選んだ、わたしの場合
わたしは家を買っていない。理由は前に書いたとおり、損得ではなく 小回りの良さ だ。フリーランスで働き方が変わり続けるし、この先何が起きるか分からないから、動ける状態でいたい。
その結果として、住まいにローンを使わないぶん、お金はインデックスの積立と日本の高配当株に回してきた。同世代がマンションという資産を持っているのに対して、わたしは金融資産を持っている。どちらが正解ということはないと思う。
ただ、今回数字を追ってみて、ひとつはっきりしたことがある。わたしが賃貸で払っている家賃も上がっているし、同世代が抱えているローンの金利も上がっている。どちらを選んでも、住居費が重くなる時代に入ったということだ。
だからこの記事の結論は、「買うな」でも「借り続けろ」でもない。選んだ側の負担が、この先どう変わるかを知っておくこと。それだけだと思う。
- 買った人:長期修繕計画と積立金の値上げ予定、変動金利ならいまの適用金利、控除が切れる年。この3つは一度確認しておきたい
- 借りている人(わたしを含む):家賃は上がり続ける前提で、住居費が家計に占める割合を見ておきたい
どれも高い確率で当たるかもしれない。でも、外れたときに耐えられる余白があるか。見るべきはそこなのだと思う。
7. まとめ
- 総務省の家計調査で、40歳未満の世帯の負債が1,882万円と過去最高(貯蓄994万円で888万円の負債超過)。ローンを持つ世帯だけなら2,927万円(+7.0%)
- 一方で 貯蓄も+14.6% と伸びており、借金と資産形成が同時に進んでいる
- 買う判断には理由がある。①賃貸も高い(23区シングルは21カ月連続で最高値)、②インフレ下では借金が実質目減りする、③50年ローンで「月◯万円」の比較ができる
- 危ういのは判断より 時期の重なり。買って10〜15年後に、修繕積立金の値上げ・ローン控除の終了・変動金利の上昇・教育費のピークが同時に来やすい
- ローンを残してNISAに回すのは実質的な借金投資。政策金利が31年ぶりの1.0%になり、前提は変わりつつある。ただし取り崩せる資産があること自体は強み
- 持ち家率40.7%(2000年は19.7%)の裏で、20代以下の夫婦世帯そのものが減っている。「若い世代が買えるようになった」というより「買える人だけが世帯を持てている」
- どちらを選んでも住居費は重くなる時代。「価格は下がらない・共働きは続く・金利は緩やかにしか上がらない」の3つに同時に賭けないことが、たぶん唯一の防衛策
・超長期ローンの動向:日本経済新聞「都内20代の住宅ローン『夫婦で超長期』2割弱に急増」ほか
・修繕積立金:東日本不動産流通機構の調査(2025年度)
・家賃の推移:アットホーム、各社の賃料調査(2026年)
・持ち家率の読み解き:荒川和久氏の分析(Yahoo!ニュース エキスパート)
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- 資産5,806万円のポートフォリオ。構成比・高配当株16銘柄・月別配当を公開します
- 東京・月15万円の生活費内訳。削るのではなく、使い方を決める
オルカン・S&P500の積立も、日本の高配当株も、SBI証券ひとつで管理可能。NISAと特定口座の使い分けもシンプル。わたしのメイン口座として8年以上愛用中。
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