なぜ、キオクシアは売られたのに株価が上がったの? 気になったので調べてみた
2026年7月、半導体大手の キオクシア で、「なんでだろう?」と思うことが起きた。
米投資ファンドの ベイン・キャピタルが、保有していたキオクシア株を全部売った というニュースが流れた。普通に考えれば、「大株主が全部売る」なんて悪材料に見える。ところが、その日のキオクシアの株価は 一時11.2%も上昇 した。
売られたのに、上がった。素朴に「なんで?」と思ったので、調べてみた。あわせて、逆の「買われて上がった」わかりやすい例(バフェットの日本株買い)とも比べてみる。
1. わかりやすい例:バフェットが買ったら、株価は上がった
まず、直感どおりの例から。2020年8月31日(バフェットがちょうど90歳になった翌日)、投資家ウォーレン・バフェット率いる バークシャー・ハサウェイ が、日本の5大商社(伊藤忠・三菱商事・三井物産・住友商事・丸紅)の株を 5%超保有していた ことが、大量保有報告書で明らかになった。じつは1年ほどかけて、コツコツ買い集めていたのだ。
これは分かりやすい。「世界的に有名な投資家が、すでに買い集めていた」 と後から分かって、それを知った ほかの投資家たちが「じゃあわたしも」と追随して買いに向かった。つまり、上がったのはバフェットの買いそのものではなく、それを知った市場の反応 だ。買っていたと判明した→(みんなが追随して)上がる。素直な反応だ。
2. 「なんでだろう?」の例:キオクシアは、売られたのに上がった
キオクシアは、もともと東芝メモリという名前だった半導体メーカー。2018年、ベイン・キャピタルがこの会社を約180億ドルで買収し、2024年末に東京証券取引所へ上場(IPO)させた。
ベインはIPO後も株を持ち続け、2025年11月・2026年2月と、段階的に売却を進めてきた。そして2026年7月、「もう全部売った」 と報じられた。
「大株主が全部手放した」というのは、ふつうに考えれば「もう見放されたのかな?」と不安になりそうな話だ。それなのに、株価はむしろ上がった。
3. 謎解き:株価が反応しているのは「取引そのもの」じゃない
ここが面白いところ。2つの例を並べてみると、じつは 同じ仕組み で動いていることが分かる。
株価が反応しているのは、「買った」「売った」という 取引の事実そのもの じゃない。「これから何が起きるかの見立てが、どう変わったか」 に反応している。
- バフェットのケース:「有名投資家がまとめ買いしていた」という 新しい好材料 が出た → 見立てが上向きに変わった → 上がる
- キオクシアのケース:市場はずっと 「ベインがいつかまた大量に売ってくるかもしれない」という不安(オーバーハングと呼ばれる) を抱えていた。それが「もう全部売り切った」と分かったことで、その不安のタネが消えた → 見立てが良くなった → 上がる
つまり、株価は「良いニュースか悪いニュースか」だけでなく、「不確実性が増えたか、減ったか」 にも反応する。この仕組みを知らないと、「売られたのに上がるなんておかしい」と混乱してしまう。
4. これは、誰にも予測できない「当てにいくゲーム」
こういう値動きは、大口投資家の思惑・需給・セクター全体のモメンタムが絡み合って決まる。短期的に「上がるか下がるか」を当てにいくゲーム だ。ファンドのプロであっても、次に何が起きるかは 予測できない。
わたし自身は、日本の高配当株を個別に持っている。でも実は、このゲームには参加していない。
5. わたしがやっているのは、「当てにいく」じゃない2つの投資
① インデックス(オルカン・S&P500):資産を最大化したいなら、これが最適解
インデックスは「当てにいく」投資じゃない。市場全体をまるごと買って、世界や米国の成長を丸ごと取りにいく、統計的にいちばん合理的な選択だと思っている。次にどの銘柄が跳ねるかを予想する必要がない。
② 日本の高配当株(個別):資産の最大化じゃなく、"金のニワトリ🐓"を育てる
もう一方は、日本の高配当株。これはインデックスとは目的が違う。資産を最大化するための投資じゃない。
わたしのスタンスはシンプルで、基本は売らない。ちゃんと選んだ株を、10年、20年という長い時間をかけて育てていく つもりで持っている(不正や大きな経営アクシデントがあれば、そのときは手放すこともある。詳しくは 高配当株の出口戦略 に書いた)。
良い会社を選んで長く持てば、株は 毎年、配当という卵を生んでくれる"金のニワトリ🐓" に育つ。しかも、本当に良い銘柄なら、卵(配当)だけじゃなく、ニワトリ自体(株価)も育っていく。増配と値上がり、両方が期待できるということだ。インデックスほどの値上がりは期待していないけれど、配当というキャッシュフローが、いまの暮らしを豊かにしてくれる。これが個別株を持つ、いちばんの理由だ。
つまり、キオクシアで起きたような「短期の値動きを当てるゲーム」には、そもそも参加していない。インデックスも高配当株も、予想に頼らない、じっくり育てる投資だ。
6. まとめ
- キオクシアは、ベインが全株売却したのに株価が 11.2%上昇。バフェットの商社株買いとは逆の反応だった
- 株価は「取引そのもの」より、「将来の不確実性がどう変わったか」 に反応する。悪材料の出尽くしも、株価が上がる理由になる
- こうした短期の値動きは、誰にも予測できない"当てにいくゲーム"
- わたしは、このゲームには参加していない。やっているのは2つ
- インデックス:資産を最大化したいなら、これが最適解
- 日本の高配当株(個別):資産最大化ではなく、良い会社を長く育てて配当という"卵"をもらう。基本は売らない
- どちらも、明日の株価を当てにいく投資ではない
キオクシアの一件は、「短期の値動きは、予測できない」ということを、あらためて教えてくれた。だからこそ、当てにいかない投資を選んでいる。これがわたしなりの、値動きとの距離の取り方だ。
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