普通預金が34年ぶりの0.5%に。それでも100万円は、1年で1万5,000円ぶん目減りする
9月18日、日銀(日本の中央銀行)が、世の中の金利のもとになる政策金利を1.0%から1.25%に上げた。その日の夕方に、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行が、普通預金の金利を0.4%から0.5%に上げると発表した。1992年8月以来、約34年ぶりの水準だ。ニュースを見て、こう思った人もいるはずだ。
🤔「34年ぶり! 預金でもお金が増える時代になったんだ」
😤「日銀は物価2%が目標らしいけど、金利も2%まで上がるの?」
🏠「このまま預金に置いておいて、いいの?」
わたしの預金は、生活防衛資金(何かあったときのための、すぐ使えるお金)の300万円。普通預金の金利は、いま0.4%だ。金曜(9月18日)の日銀の記事で「預金の金利がどうなるかは、各銀行の発表を待つ」と書いた。その発表が、その日のうちに出た。わたしが使っているドコモSMTBネット銀行も、10月1日から0.5%に上げると発表している。
結論から言うと、0.5%になっても、預金は物価に負けている。100万円を1年預けて増えるのは、税引き後で約4,000円。同じ1年で、物価は1.9%上がっている。通帳の数字は増えるのに、買えるものは約1万5,000円ぶん減る。そして普通預金の金利は、この2年間、5回の利上げのたびに、日銀の政策金利の「4割」だった。同じ割合のままなら、政策金利が2.5%になっても、普通預金は1.0%だ。だからわたしは、預金を「増やす場所」とは考えていない。順番に見ていく。
1. 決まったこと。100万円で、いくら増えるか
1つ目の声、「100万円預けたら、いくら増えるの?」。
税金 利息からは、約20%の税金が自動で引かれる。5,000円 × 20.315% = 約1,016円
手取り 約3,984円。いまの0.4%(手取り約3,187円)より、年に約800円多い
100万円で、年に約4,000円。2024年の春まで、普通預金の金利は0.001%だった。100万円で年10円、手取りは8円。そこから見れば、たしかに500倍だ。
ただ、1つ気になることがある。同じ日に、借りる側の金利は0.25%上がったのに、預ける側の金利は0.1%しか上がっていない。これは4章で見る。
2. 0.5%は、物価に勝っているのか
2つ目の声、「預金でもお金が増える時代になったんだ」。数字は増える。問題は、そのお金で買えるものが増えるかどうかだ。
9月18日、預金金利の発表と同じ日の朝に、総務省が8月の物価(消費者物価指数)を発表している。1年前と比べて1.9%の上昇だった。去年100万円で買えた買い物かごが、いまは101万9,000円する、ということだ。
この先の1年も、物価が同じ速さで上がるとして、計算してみる。
通帳の数字は、約4,000円増える。でも、同じものを買うには約1万9,000円よけいに要る。差し引き、約1万5,000円ぶん、買えるものが減っている。
金利が0.4%から0.5%になって変わったのは、この「足りないぶん」が約1万5,800円から約1万5,000円になった、ということだ。負ける幅が、年800円ぶん小さくなった。勝ちに変わったわけではない。
3. 「金利も2%まで上がるの?」
3つ目の声。これは、わたし自身が金曜に、日銀の植田総裁の会見を聞いて思ったことだ。日銀は「物価が毎年2%くらいずつ、ゆるやかに上がる状態」を目標にしている。それなら、金利も2%を目指しているのだろうか。
調べると、日銀が数字の目標を置いているのは物価だけだった。金利には「ここまで上げる」という目標がない。かわりに目安にしているのが、景気を温めも冷やしもしない「ちょうど真ん中の金利」だ。日銀の今年3月の推計では、年1.1%〜2.5%。幅が広いのは、誰にも正確には測れないからだ。いまの1.25%は、この幅のいちばん下に入ったところになる。2%は幅の中にあるけれど、そこを目指すと決めているわけではない。
だから日銀は、金曜の発表文で、利上げのあとも「緩和的な金融環境は維持される」と書いた。お金を借りる人にとって、まだ借りやすい金利だ、という意味だ。
大事なのは、その裏側。金利が物価の上がり方より低いあいだは、借りる人が得をして、預ける人が損をする。100万円を借りて1年後に返すとき、物価が2%上がっていれば、返す100万円の値打ちは2%軽くなっている。預ける側から見れば、返ってくる100万円で買えるものが減っている。「まだ借りやすい」は、預ける側から見ると「まだ、預けても物価に負ける」という意味になる。9月17日の記事で見た、貸す側と借りる側の話と同じだ。
日銀は発表文で「引き続き政策金利を引き上げ」ていくと書いている。どこまで、いつまでに上げるのかは、わたしには分からない。先を予想するつもりもない。ただ、仮に上がったとして、わたしの普通預金の金利がどうなるかは、過去の記録から見当がつく。
4. 普通預金の金利は、5回とも政策金利の「4割」だった
5回とも、ぴったり4割。残りの6割は、預金の金利には回ってこない。なぜ4割なのか、銀行は理由を発表していない。分かるのは数字だけだ。銀行が日銀に預けているお金(決まった額を超えるぶん)に付く利息は年1.25%で、預金者に払うのは0.5%。差は0.75%ある。もちろん銀行は、そこから店舗や人の費用を払い、定期預金にはもっと高い利息を払っている。
1章で見たとおり、借りる側の金利は0.25%まるごと上がった。預ける側は0.1%。上がり方に差があることは、知っておきたい。
もう1つ、日銀と銀行のあいだには、時間の差もある。日銀の新しい金利は9月24日から。3行の普通預金は11月2日からで、発表から約6週間かかる。わたしの銀行は10月1日からで、少し早い。
では、この「4割」が続くとしたら。
政策金利が2.5%のとき 普通預金は 1.0%(手取り約0.80%)
日銀が目安にしている幅の、いちばん上まで政策金利が上がったとしても、普通預金は1.0%。手取りの0.8%では、物価の目標2%の半分にも届かない。
普通預金は、いつでも引き出せて、元本が減らない。その便利さの代金として、金利が低い。わたしはそう受け取っている。
5. わたしの300万円は、どうするか
4つ目の声、「このまま預金に置いておいて、いいの?」。わたしの場合で答える。
わたしの預金300万円は、生活防衛資金だ。フリーランスなので、病気やけがで動けなくなったときのために、1年あまり暮らせるお金を、すぐ引き出せる形で持っている。
この300万円を、2章と同じ計算にかける。
同じものを買うのに、よけいに要るお金(物価+1.9%) 5万7,000円
差し引き 年に約4万5,000円の目減り
年に約4万5,000円。わたしはこれを、「いつでも使えるお金を持っておくための、安心の値段」だと思っている。8月の記事では年3万5,000円、9月の記事では年3万7,000円と書いた。あれは個人向け国債と比べた数字。今回は物価と比べた数字だ。動けなくなっても、積み立ててきた株を安値で売らずにすむ。そのための値段だ。
個人向け国債(国にお金を貸して、利息を受け取る商品。元本は国が返す)に移すことも、8月と9月に調べた。9月募集分は、5年間利率が変わらないタイプ(固定5年)が2.24%で、手取りは約1.78%。半年ごとに利率が変わるタイプ(変動10年)が1.95%で、手取りは約1.55%。普通預金よりはずっと物価に近いけれど、それでもまだ1.9%には届いていない。それに、買ってから1年は引き出せない。生活防衛資金の役目とぶつかるので、わたしは買っていない。
これは、わたしの場合の話だ。いくらを「守るぶん」にするかは、暮らし方や仕事で変わる。わたしが300万円に決めた理由は、生活防衛資金の記事に書いた。
置くのは、生活防衛資金の300万円だけ。目減りするぶんは、安心の値段。300万円を超えるぶんは、オルカン(全世界の株に分散する投資信託)の積立や、日本の高配当株に回している。こちらも、物価に負けない保証はない
0.5%は34年ぶりの高さ。でも、物価が1.9%上がる年の0.5%より、物価が動かない年の0.001%のほうが、買えるものは減らない
ウォーレン・バフェット(米フォーチュン誌、1977年)
アメリカの投資家、ウォーレン・バフェットの言葉だ。9月18日に、96歳で自分の会社バークシャー・ハサウェイの会長を退いた。その人が49年前、アメリカの物価が年6%台で上がっていたころに書いた文章だ。利息に税金がかかり、残ったお金の値打ちは物価が削る。税金は法律で決まるけれど、物価のほうは誰の許可もなく取っていく。
1章と2章の計算は、この文章の小さな実例だ。100万円を1年預けたとき、税金で減るのは約1,000円。物価で減るのは約1万9,000円ぶん。額で見ると、物価のほうが約19倍大きい。
34年ぶりの0.5%を、わたしは悪いニュースだとは思わない。年に800円でも、増えるほうがいい。ただ、預金の役目は変わらない。300万円は、これからも普通預金に置いておく。増やすためではなく、守るために。
わたしの預金は、生活防衛資金の300万円だけ。オルカンの積立も、BND(米国債券ETF)も、日本の高配当株119銘柄も、8年以上SBI証券の口座です。
SBI証券の公式サイトを見る →6. まとめ
- 三菱UFJなど大手3行の普通預金が0.4%→0.5%に(11月2日から)。1992年以来34年ぶり。100万円で、手取りは年約4,000円
- 物価は1年で1.9%上昇。100万円を1年預けると、買えるものは約1万5,000円ぶん減る
- 日銀の目標は物価の2%だけで、金利に目標はない。いまの1.25%は「まだ借りやすい」金利。預ける側から見ると、まだ物価に負ける
- 普通預金の金利は、この2年で5回とも政策金利の4割。同じ割合のままなら、政策金利2.5%でも預金は1.0%
- わたしの300万円は年に約4万5,000円の目減り。これは、いつでも使えるお金を持つための安心の値段。動かさない
- わたしにとって預金は守る場所。300万円を超えるぶんは、預金に置いていない
・過去の改定:三菱UFJ銀行の発表(2024年7月31日、2025年1月24日、12月19日、2026年6月16日)
・物価:総務省統計局「消費者物価指数 全国 2026年8月分」(総合+1.9%、生鮮食品を除く総合+1.7%)
・日銀:「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)。銀行が日銀に預けたお金(決まった額を超えるぶん)に付く利息1.25%も同じ資料。日銀レビュー「自然利子率の動向と金融緩和度合いの評価」(2026年3月)。年1.1%〜2.5%は、この資料の推計値(物価を引いた金利でマイナス0.9%〜プラス0.5%、6つのモデル)に、物価の目標2%を足した数字。足し算は、同じ資料の注にある考え方に沿って、わたしがした
・個人向け国債の利率:9月3日の記事(財務省、2026年9月募集分)
・バフェットの言葉:Warren E. Buffett "How Inflation Swindles the Equity Investor"(Fortune、1977年5月)。訳はわたし
・手取りの利息、目減りの額、4割の掛け算はクロちゃん(Claude)に計算してもらった目安




