アメリカが3年ぶりに利上げ。減ったものと増えたものを整理する
今朝3時、アメリカの中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)が、政策金利を0.25%上げて3.75〜4.00%にした。利上げは2023年7月以来、3年ぶりで、投票する12人の全員一致。先週の物価の発表のあと、市場は9割超の確率で予想していた。それでも、アメリカの10年国債の利回りは5.0%に乗り、ドル円は1ドル156円台まで円安に動いている。こう思った人も、いるはずだ。
🤔「そもそも、利上げって何?」
😤「日本も明日、利上げでしょ。わたしの資産はどうなるの?」
🏠「先週『円高で170万円減った』って言ってたよね。戻ったの?」
わたしの持ち物で、この利上げに関係するのは3つ。オルカン(全世界の株に分散する投資信託。中身の6割がアメリカ)、S&P500(アメリカの株500社の投資信託。積立は止めて持っているだけ)、そしてBND(アメリカの債券をまとめて持つETF。ETFは証券取引所で売り買いできる投資信託で、株と同じように「口」で数える)を229口。生活防衛資金の300万円は円で持っていて、これは動かない。
結論から言うと、わたしは何もしない。理由は、同じ利上げで、わたしの持ち物の中では逆のことが同時に起きているから。BNDはドルで見ると下がった。オルカンは円安で、円で見ると増えた。片方だけを見て動くと、もう片方で間違える。順番に見ていく。
1. そもそも「利上げ」とは。なぜ今、上げるのか
2つ目の声から。「利上げって何?」
政策金利は、銀行どうしが1日だけお金を貸し借りするときの金利で、中央銀行が決める。ここが上がると、銀行が企業や人に貸すときの金利も上がり、住宅ローンや会社の借金が重くなる。お金を借りにくくなれば、使うお金が減り、物の値段の上がり方(インフレ)がゆるむ。利上げは、景気を冷やしてインフレを抑える道具だ。
原油 イランをめぐる戦争で燃料が高い。ガソリンは前の年より27%高く、暖房などに使う燃料油は52%高い
FRBの見通し 今年のインフレ率(PCE)は3.7%。目標の2%から遠い
声明 「インフレは依然として高い」「物価の安定へ、より早く戻るために」利上げ
議長 ウォーシュ議長は会見で「インフレは高すぎる」。原油のような値上がりをFRBが止めることはできないが、「他の物の値段に広がらないようにはできる」
去年まで、市場は「次は利下げ」と見ていた。2月末のイランへの攻撃で原油が上がり、3月にはインフレの心配が強まって、「利下げ」から「利上げかも」へ見方が変わる。FRBは年に8回集まって金利を決める。7月の会合では3人が利上げを主張し、今回は投票する12人全員が賛成した。
2. 「予想どおりなら、何も起きないんじゃないの?」
1つ目の声。たしかに0.25%の利上げは、市場の9割超が予想していた。それでも動いた。理由は、利上げそのものより、この先の見通しが出たからだ。
もう1回上げる(4.00〜4.25%) 12人
もう2回上げる(4.25〜4.50%) 4人
→ 18人中16人が「年内にもう1回は上げる」と見ている
「今回の0.25%」は予想どおりでも、「年内にもう1回」は予想に入りきっていなかった。10年国債の利回りは、政策金利そのものではなく、「この先10年、金利がどうなるか」の市場の予想で決まる。だから、年内にもう1回という見通しが出ると、10年の利回りも上がる。市場はこう動いた。
10年国債の利回りが5%というのは、「アメリカにお金を10年貸すと、毎年5%の利息がもらえる」ということ。株の配当より高い。安全な国債がそれだけくれるなら、株を持たなくてもいい、と考える人が出てくる。だから株は売られやすい。アメリカの金利が上がれば、円を売ってドルで持ちたい人が増えるので、円安になる。8月末に159円だったドル円は、9月9日に153円まで円高になり(円高の記事で「170万円減った」と書いた日だ)、1週間で156円に戻った。
3. わたしの持ち物で、何が起きたか
3つ目の声と4つ目の声、「わたしの資産はどうなるの?」「戻ったの?」。持ち物ごとに数字を出す。
BNDは、今年に入ってドルで4%下がった。BNDの中身の半分近く(49%)はアメリカの国債や政府機関の債券で、10年国債の利回りのような長い金利が上がると、債券の値段は下がる。利回りが上がれば値段が下がる、この「シーソー」は国債の買い戻しの記事でも書いた。持っている債券の利息は変わらないのに、新しく出る債券のほうが高い利息をくれるなら、古い債券は値引きしないと売れないからだ。10年国債の利回りが去年末の4.16%から5.01%に上がったぶん、BNDは74ドルから71ドルになった。
ところが円で見ると、9月9日から16日で、252万円が254万円に増えた。BNDはドルで0.9%下がり、229口では約2万2,000円の目減り。でも円が2円55銭安くなったぶんで、約4万2,000円増えた。差し引き2万円のプラス。同じ利上げが、BNDの値段を下げて、ドルの値段を上げる。わたしの口座の中で、両方が同時に起きている。
オルカンも同じだ。9月9日の記事で、オルカン・S&P500・BNDをまとめたドル建ての持ち物(ドルの箱)は約4,251万円、1ドルが1円動くと約27万円動く、と書いた。8月末の159円75銭から153円57銭への円高で、約170万円縮んだ計算。それが156円13銭に戻ったので、1週間で約70万円戻った。8月末と比べれば、まだ約100万円のマイナス。円高の記事で「為替は読まない」と書いたとおり、1週間でこれだけ振れる数字を、わたしは当てにいかない。
4. 「日本も明日、利上げでしょ」
日銀の会合は今日と明日で、結果は明日18日の昼に出る。市場は利上げを見込んでいる。日本の10年国債の利回りは2.89%、5年は2.34%(9月15日)。9月3日の記事で「市場の5年金利が2.56%を超えた月に、また書く」と予告した。2.56%は、固定5年の個人向け国債が物価の上がり方に負けなくなる、と計算した線だ。明日、そこに届くかどうかを見る。日銀の話は、明日の記事で書く。
今日言えるのは1つだけ。為替は、片方の国の金利だけでは決まらない。
5. わたしは、どう見ているか
わたしの見方は3つ。
去年の暮れ、市場は「次は利下げ」と見ていた。3月に原油で「利上げかも」に変わり、9月に本当に上がった。FRBの中でさえ、7月は3人が利上げを主張し、9月は全員が賛成。半年で正反対になるものを、わたしが当てられるとは思わない
BNDはドルで下がり、円安で円では増えた。オルカンは円で70万円戻った。全部まとめて、動かさない
値段は下がった。でも、BNDが新しく買い足す債券は、前より高い利息をくれる。わたしがBNDを持っている理由は利息で、値段ではない。[残クレの記事](/blog/zankure-balloon-mortgage-monthly-vs-total)で書いた「利息は受け取る側でいたい」の、その利息が、少し増える方向になった
ウォーレン・バフェット、株主への手紙(1994年)
バフェットは、この手紙でこう続けている。30年前、ベトナム戦争の拡大も、2度の石油ショックも、大統領の辞任も、ソ連の解体も、短期国債の利回りが2.8%から17.4%のあいだで動くことも、誰にも予測できなかった、と。石油の値段で金利が動くのは、今回が初めてではない。わたしは予測の代わりに、自分の持ち物に何が起きたかを数える。BNDはドルで下がり、円では増えた。
金利は上がった。円は下がった。わたしの持ち物は、どちらの側にも座っている。だから動かない。積立は同じ日に同じ額。明日の日銀の発表も、同じ席で迎える。
BND(米国債券ETF)も、オルカンの積立も、日本の高配当株119銘柄も、8年以上SBI証券の口座です。利上げの日も、積立は同じ日に同じ額で続きます。
SBI証券の公式サイトを見る →6. まとめ
- FRBが政策金利を0.25%上げて3.75〜4.00%に。2023年以来3年ぶり、全員一致。理由はインフレ3.4%と、戦争で高い原油
- 市場の9割超が予想していたのに動いたのは、18人中16人が「年内にもう1回」と見通しを出したから
- 米10年国債の利回りは5.01%(終値で5%台は2007年以来)。ドル円は153円→156円、S&P500は1週間で−1.1%
- BNDは今年ドルで−4%。でも9月9日→16日は、ドルで−0.9%なのに円安で、円に直すと増えた(252万→254万円)
- オルカンなどドル建ての持ち物は、円安で約70万円戻った。8月末からはまだ約100万円のマイナス
- わたしは何もしない。金利は読まない。同じ利上げで持ち物の中で逆のことが起きるから、片方だけ見て動かない。明日の日銀は別の記事で
・会見と市場:CNBC「Fed meeting recap: Warsh says inflation is still too high」(2026年9月16日)(2023年7月以来、7月は3人が利上げ主張、原油の発言、ダウは1か月ぶりの下げ、10年国債は2007年以来の水準)、Bloomberg(9月14日、取引時間中に5%)、日本経済新聞「米欧の主要金融、9月FOMCの利上げ想定」(9月15日、市場では9割超が利上げを見込む)
・物価:米労働省 消費者物価指数(2026年8月分)。前年比3.4%、ガソリン+27.4%、燃料油+52%
・3月の見方の転換:JAPAN-REIT.COM(2026年3月27日)「これまで想定されていた米FRBの利下げは、利上げの可能性が生じるというネガティブサプライズへと変化」
・BNDの中身:Vanguard「Total Bond Market ETF」ファクトシート(2026年6月30日)。国債・政府機関債49.2%
・値動きの計算:Yahoo Financeの日次終値(BND、SPY、^TNX、JPY=X)からクロちゃん(Claude)に計算してもらった。日本の国債利回りは財務省(9月15日)。ドルの箱4,251万円・1円=27万円は9月9日の記事
・バフェットの言葉:Berkshire Hathaway, 1994年の株主への手紙(1995年公表)。訳はわたし




