ダウが1,153ドル安から3営業日で最高値。急落のとき何もしなかった話の、答え合わせ
先週、市場はかなり荒れていた。
7月28日に日経平均が2,566円安。翌29日にはダウが1,153ドル安。1日の下げ幅としては、2025年4月の「解放の日」関税ショック以来の大きさだった。ナスダックは史上最高値から10%以上下げて、調整局面に入った。
わたしはその日に記事を書いて、「何もしない」と結論づけた。
そして8月3日。ダウは史上最高値を更新した。
ただ、この記事を「ほら、何もしなくてよかった」で終わらせるつもりはない。都合のいい答え合わせは、いちばん危ないと思うからだ。
3営業日で戻ったのは、運がいい。でも調べていくと、運とは別に、はっきり言えることもあった。
1. 3営業日で、記録的な下げから最高値へ
まず、何が起きたのかを並べる。
| 日付 | 終値 | 言われていたこと |
|---|---|---|
| 7月29日 | 51,594.14 −1,153ドル |
1日の下げ幅として、2025年4月以来いちばん大きかった。ナスダックは調整局面入り |
| 8月3日 | 53,178.41 +693ドル |
史上最高値を更新 |
※「2025年4月以来」というのは、トランプ大統領が「解放の日」として大規模な関税を発表し、世界の市場が急落したときのこと。あのとき以来の下げ幅だった、という意味。
きっかけは、トランプ大統領がイランへの攻撃を中止して交渉に入ると表明したこと。これで原油が5%急落し、中東への警戒がいっきに緩んだ。そこに大型テック企業の決算が一巡して、買い戻しが入った。
7月28日の下げの中身は、AI関連への不安だった。韓国発のAI株安に加え、中国が半導体の製造装置まで作りはじめたと報じられ、中国の格安AIが出てきた話の続きのような形で売られている。
その空気が、1週間で入れ替わった。
2. でも、全部が戻ったわけではない
ここが、いちばん見ておきたいところだった。
| 指数 | 8月3日の終値 | 最高値との距離 |
|---|---|---|
| ダウ | 53,178.41 | 最高値を更新 |
| S&P500 | 7,600.50 | あと約0.3% |
| ナスダック | 25,913.90 | まだ約4%下 6月1日の27,086.81が最高値 |
なぜこうなるのか。中身が違うからだ。
- ダウは30社。銀行や小売など、AIと関係の薄い会社も多い
- ナスダックはハイテク中心。今回の下げの震源地そのもの
つまり、AIへの不安で下げた指数は、まだ戻りきっていない。震源地から遠かった指数だけが、先に最高値をつけた。
「アメリカ株が最高値」というニュースを見て、自分の資産も戻っていると思うと、ずれる。何を持っているかで、答えが違う。
3. 同じ日、日本株は下がっていた
もうひとつ。8月3日、日経平均は607円安だった。一時は1,600円を超えて下げている。
理由は、8月2日に書いた円買い介入の続きだ。日米が協調して介入したことが正式に発表され、円高が一気に進んだ。円高は輸出企業の逆風になるので、日本株が売られた。
日本株:日経平均は607円安(一時1,600円超安)
→ 同じ日に、逆を向いた
わたしの資産は7割が外貨建てで、残りは日本の高配当株と現金だ。この日は、外貨建てが上がって日本株が下がった。
先月は逆だった。7月はインデックスが45万円のマイナス、日本の高配当株が63万円のプラスで、総資産はむしろ増えている。
片方が転んでも、もう片方が支える。 分散というのは、こういう地味な形でしか現れない。
4. 答え合わせを、都合よくやらない
ここからが、この記事を書いた理由だ。
7月29日の記事で、わたしは「何もしない」と書いた。そして3営業日後に最高値が来た。気持ちよく「だから正しかった」と書きたくなる。
でも、それは書かないでおく。
わからないこと:次も戻るのか。何か月かかるのか。そもそも戻るのか
何もしなかったから戻ったのではない。今回は、たまたま戻っただけだ。
過去の下げが、元の高値まで戻るのにどれくらいかかったかを並べてみる。
| できごと | かかった時間 |
|---|---|
| 今回の急落 2026年7〜8月・ダウ |
3営業日 |
| コロナショック 2020年・S&P500 |
約5か月 |
| リーマンショック 2007年〜・S&P500 |
約5年半 |
| バブル崩壊 1989年末〜・日経平均 |
30年以上 |
ただ、この表にはもうひとつの読み方がある。
3営業日でも、5か月でも、5年半でも、30年でも。どれも、最後には戻っている。
かかった時間はまるで違う。でも持ち続けていた人は、結局みんな報われた。戻る前に降りた人だけが、戻らなかった。
相場が荒れるたびに何かをしたくなるけれど、歴史が言っているのはいつも同じだ。市場にい続けた人が、いちばん報われている。
ここで、ひとつだけ注意がいる。これは指数の話だ。国や世界のまとめ買いだから、全体が育てば戻ってくる。個別の会社は、戻らないまま消えることもある。
だから今回学んだのは「何もしなければ戻る」ではなく、こうだ。
戻るかどうか分からない期間を、持ち続けられる形にしておく。
3営業日で戻るかもしれないし、30年かかるかもしれない。どちらでも生活が壊れない金額しか、リスクのあるところに置かない。
王道が王道である理由は、たぶんそこにある。 何もしないことが強いのではなく、何もしないでいられる形にしておいた人が、最後まで市場にいられる。
5. そして、買わなかったキオクシアは上がっている
もう一つ、正直に書いておきたいことがある。
4章の最後で「戻るのは指数の話で、個別の会社は戻らないこともある」と書いた。その個別株の話を、もう一つ。
わたしは8月1日に、キオクシアを買わないと決めた記事を書いた。決算はすごかったけれど、わたしには先が読めないから、という理由で。
その後、キオクシアは上がっている。 8月3日の東京市場では、日経平均が607円安のなかで逆行高。売買代金はトップだった。
わたしは「下がると思ったから買わなかった」のではない。上がるか下がるか、そもそも見当がつかなかったから買わなかった。
そして、見当がつかないことは、3日たっても変わらない。
それに、数日の値上がりで「買えばよかった」と思うなら、数日の値下がりでは「やめてよかった」と思うことになる。3日ごとに、自分の判断を採点しているようなものだ。
ちなみに、わたしも個別株は持っている。日本の高配当株を、業種を散らして100銘柄ほど。ただしそれは、一発当てるためではなく、自分で小さなパックを組んでいるようなものだ。1社が転んでも、残りが支えてくれる形にしてある。
そういう持ち方はする。でも、当てないと報われない持ち方はしない。 今回もそれだけだった。
6. まとめ
- 7月29日、ダウは1,153ドル安。1日の下げ幅としては、2025年4月の「解放の日」関税ショック以来の大きさだった。ナスダックは調整局面に入っていた
- それが8月3日、たった3営業日で+1,584ドル(+3.07%)戻り、史上最高値を更新(53,178.41ドル)
- きっかけはイラン攻撃の中止と原油の5%急落、そして大型テック決算の一巡
- ただし全部が戻ったわけではない。ダウは最高値、S&P500はあと0.3%、ナスダックはまだ約4%下(6月1日の27,086.81が最高値)
- 理由は中身の違い。ダウはAIと関係の薄い会社も多く、ナスダックは今回の震源地そのものだった
- 同じ8月3日、日本株は607円安。15年ぶりの日米協調介入による円高が理由で、アメリカ株と逆を向いた
- 「何もしなかったから戻った」のではない。今回はたまたま3営業日で戻っただけ。コロナは約5か月、リーマンは約5年半、日経のバブル高値は30年以上かかっている
- ただし表にはもうひとつの読み方がある。3営業日でも30年でも、どれも最後は戻っている。持ち続けた人は結局みんな報われ、戻る前に降りた人だけが戻らなかった(ただしこれは指数の話で、個別の会社は戻らないこともある)
- 学ぶべきは「何もしなければ戻る」ではなく、戻るかどうか分からない期間を、持ち続けられる形にしておくこと。何もしないことが強いのではなく、何もしないでいられる形にしておいた人が、最後まで市場にいられる
- 買わなかったキオクシアは、その後上がっている。でも買わなかったのは「下がると思ったから」ではなく「上がるか下がるか、そもそも見当がつかなかったから」。見当がつかないことは、3日たっても変わらない
- ちなみに個別株は持っている。日本の高配当株を業種を散らして100銘柄ほど。一発当てるためではなく、自分で小さなパックを組む形にしてあり、1社が転んでも残りが支える。そういう持ち方はする。でも、当てないと報われない持ち方はしない
・S&P500・ナスダックの水準:CNBC「Stock market news for Aug. 3, 2026」
・7月28日の日経平均:日本経済新聞「日経平均終値2566円安、韓国発AI株安再び キオクシアがストップ安」
・8月3日の東京市場:株探「日経平均 大引け|3日ぶり反落、円高を警戒し売り優勢」
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