警戒していたロックアップ解除。その月、株は3割上がっている
10日前、スペースXの決算について書いた。そのなかで、株価が下がっている理由のひとつとして、これから売れる株が増えることを挙げた。
最初のロックアップ解除のことだ。日経は「6日にも初解除」と報じていた。
その最初のひとつが、8月に入って失効した。結果は、いまのところ3割高だ。
ただし、この「3割」は8月に入ってからの数字だ。決算は解除より前の8月4日に出ている。上げのきっかけは、解除だけではない。
1. わたしが書いたことと、実際に起きたこと
まず、10日前に書いたことから。
株価が下がっている理由として、需給の問題もあると書いた
→ 報道でも「ロックアップ解除への警戒」とされていた
そして、実際にはこうなった。
その後、四半期決算と最初のロックアップ解除を受けて
→ 8月に入り、30%急伸
売り物が増える日が来て、上がった。直感とは逆だ。
なぜ、下がらなかったのか。調べてみて、思い当たったことが3つある。それと、同じ時期に起きていたことが、もうひとつあった。
2. そもそもロックアップとは
先に、言葉の確認から。
→ 上場した直後に、いっせいに売られるのを防ぐため
その期限が切れることを、ロックアップ解除という
上場したその日から売られたら、株価が崩れやすい。だから、期間を決めて縛っておく。
その縛りが、8月に入ってひとつ外れた。
ロイターは「複数あるうちの、最初の1つ」が失効した、と書いている。つまり、まだ先にも残っている。
3. 理由① もう、先に売られていた
いちばん大きいのは、これだと思う。
ロックアップがいつ外れるかは、上場のときから決まっていた。誰でも知っている日付だ。
→ その日を待たずに、先に売る人が出る
→ だから7月末までの下落には、その先回りの売りが入っていた可能性がある
株価は、先に織り込む。10日前の記事に、自分でこう書いていた。
株価は、これから起きると分かっていることを、先に織り込んで動く。
自分で書いておいて、それを当てはめて考えなかった。今回は、解除の日には、もう織り込まれていたのかもしれない。
4. 理由② 売れるようになっても、売るとはかぎらない
もうひとつ、見落としていたことがある。
「売れるようになる」と「売る」は、別だ。
だから、あえて売らないという判断もある
→ 身構えていたほどの売りが出なければ、警戒が解ける
ひとつ注意がいる。8月13日の届出でマスク氏の持ち株は48.4%だと報じられたが、これは6月30日時点の数字だ。ロックアップが外れたのは8月に入ってから。解除のあとで売ったかどうかは、この数字からは分からない。
5. 理由③ 売りに賭けていた人が、買い戻した
ここが、いちばん分かりにくいところだ。空売りという仕組みが関わってくる。
わたしは何度聞いてもこんがらがるので、順を追って書いてみる。
わたしが最初に引っかかったのは、「持っていない株を、どうやって売るのか」だった。
たとえ話で説明する。
② 売る その本を古本屋に100円で売る
③ 待つ 値下がりして、同じ本が60円になった
④ 買う 60円で買い直す
⑤ 返す ④で買った本を、友だちに返す(100円を返すのではない)
→ 手元に40円残る。これが空売りのもうけ
ふつうの取引と、順番が逆になっている。買ってから売るのではなく、売ってから買う。
ここまでは、下がった場合の話だ。問題は、逆に上がったときだ。
それでも本は返さないといけない
→ 140円で買い直すことになり、40円の損
→ 上がれば上がるほど、損は膨らんでいく
上がるほど苦しくなるので、急いで買い戻すことになる。その買いが、さらに株価を押し上げる。
「解除で下がる」と読んで空売りしていた人は、上がったところで買い戻すことになる。
ただし、今回の上げのうちどれだけが買い戻しだったのかは、外からは分からない。そういう力が働く仕組みになっている、というところまでだ。
6. 決算も、同じ時期に出ていた
ここは、正直に書いておきたい。ロックアップだけで3割上がったわけではない。
決算が出たのは8月4日。ロックアップの初解除は、日経が「6日にも」と報じていた。決算のほうが先だ。
ロイターはこう書いている。
四半期決算と、複数あるロックアップのうち最初の1つが失効したことを受け、8月に入り30%急伸
売上高は前年同期比90%超の増加
ただしAI投資で850億円の赤字
→ 設備投資も大幅に拡大していた
売上が9割増えて、同時に赤字も出た決算だった。それでも株は買われた。
どちらがどれだけ効いたのかは、切り分けられない。わたしにできるのは、両方が同じ時期に起きたと知っておくことまでだ。
7. 未来は読まない。でも、考えるのは面白い
3つとも、聞けばなるほどと思う。でも、書いているときは、そこまで頭がまわらなかった。
調べてみて、いちばん残ったのはこれだった。
決まっていた予定を知っていても、株価がどちらに動くかは別だった。
解除の日は誰でも知っていたし、その日に何が起きるかも分かっていた。それでも、上がるか下がるかは別のところで決まる。悪いと分かっていれば先に売られるし、その日が来て思ったほど売りが出なければ、こんどは買い戻される。
ニュースを見て「これは悪い話だ」と思ったとき、その悪さは、もう値段に入っているかもしれない。逆に「いい話だ」と思っても、すでに上がったあとかもしれない。
ニュースは考えるヒントであって、未来を教えてくれるものではない。読める人はいるのかもしれないけれど、わたしはそうではないし、そういう投資スタイルでもない。
実際にわたしは、オルカンを積み立てて、日本の高配当株を117銘柄持っている。積み立てているのはオルカンだけで、売り買いはほとんどしない。スペースXも、オルカンに入っているぶんを、勝手に持っているにすぎない。今回の3割高も、下がっていた7月も、わたしは何もしていない。
ただ、動かさないことと、考えないことは別だ。「なんでこうなったんだろう」と調べていったら、空売りの仕組みまでたどりついた。こういうのは、けっこう面白い。
未来は読まない。でも、考えるのはやめない。
8. おまけ 気になったことが、ひとつ残っている
本題はここまでだけれど、4章で触れた8月13日の届出に、もうひとつ目を引いた数字があった。
その保有株の評価額は9,000億ドル超(約142兆円、1ドル158円換算)
※株数は6月30日時点、評価額は報道時点(8月14日)の市場価格にもとづく
→ ところが議決権(会社の方針を決める投票の権利)は82%超
持ち株は半分に届いていないのに、投票の権利は8割を超えている。
気になるので、ここはまた別に調べてみようと思っている。
9. まとめ
- 10日前に「ロックアップ解除で、売れる株が増える」と書いた。ところが株価は下がらず、7月末までに33%近く下げたあと、8月に入ってから3割上がっている
- ロックアップとは、上場時にもとからいた株主がしばらく売れないという約束。その期限が切れることを解除という
- 理由① 解除日はみんなが知っていたので、待たずに先に売られていた。当日には、もう織り込まれていたのかもしれない
- 理由② 売れるようになっても、売るとはかぎらない。中の人が売れば「自信がないのか」と見られるので、あえて売らない判断もある(報じられた48.4%は6月30日時点の数字で、解除後の売りは分からない)
- 理由③ 空売り(借りた株を売って、あとで買い戻して返す取引)の買い戻し。上がると損が膨らむので急いで手じまいすることになり、その買いが、さらに上げを強める
- そして同じ時期に決算も出ていた(売上は前年同期比90%超増)。ロックアップだけで3割上がったとは言えない
- 33%下がってから30%上がっても、元の値段には戻らない(100→67→87)。下げを取り返したわけではない
- ニュースを見て「悪い話だ」と思ったとき、その悪さはもう値段に入っているかもしれない。ニュースは考えるヒントであって、未来を教えてくれるものではない。上がった今回も、下がっていた7月も、わたしは何もしていない
- 未来は読まない。でも、考えるのはやめない。動かさないことと、考えないことは別だ
・ロックアップの初解除:日本経済新聞「スペースX、ロックアップ6日にも初解除」
・決算の内容:日本経済新聞「スペースX初の決算発表、4〜6月9割増収 AI投資で850億円赤字」(2026年8月4日)
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わたしは相場を当てにいかないぶん、積み立てる場所だけ決めています。メイン口座はSBI証券で、8年以上使っています。月100円から積み立てられます。
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