スペースXが850億円の赤字。わたしもちょっとだけ株主です
スペースXが、上場してはじめての決算を発表した。結果は850億円の赤字。
見出しだけ読むと不安になるけれど、中身を開けたら思っていたのとかなり違った。
そしてもうひとつ。この決算は、ちょっとだけわたしの話でもある。
わたしは6月29日から、この会社の株主になっている。
自分で買ったわけではない。6月に予想した記事の答え合わせもかねて、順番に書いていく。
1. 赤字の中身が、思っていたのと違った
まず、出てきた数字から。
売上は倍近くに増えて、赤字は半分に減っている。 それでも赤字が残るのは、AIのモデル開発と、スターシップの研究開発にかかるお金が重いからだ。
さらにその外側で、データセンターなどへの設備投資が2兆9,000億円。この四半期の売上(約1兆2,000億円)の2倍以上にあたる。稼いだお金をはるかに超える金額を、未来に投じている。
2. 稼ぎ頭が、稼げない事業を養っている
事業ごとに分けると、構造がはっきり見える。
| 事業 | 中身 | もうけ |
|---|---|---|
| 通信 スターリンク |
売上42億9,100万ドル(+66%) 全体の半分超 |
営業利益16億5,600万ドル (+79%) |
| AI | モデルの開発、データセンターへの投資 | 営業赤字 |
| 宇宙 | 大型宇宙船「スターシップ」の研究開発 | 営業赤字 |
つまり、こういう会社だった。
空に飛ばしたインターネットで稼いだお金を、そのまま全部、AIとロケットに注ぎ込んでいる。
ロケットが稼いで宇宙に行っているのだと思っていたけれど、実際は逆だった。通信という地味な商売が、派手な事業を養っている。
赤字には、大きく2種類ある。商売がうまくいかなくて出る赤字と、先にお金を使いすぎて出る赤字だ。
スペースXは後者にあたる。稼ぐ力(スターリンク)はしっかり伸びていて、そのお金を未来に投げている。
ただし、後者なら安心というわけでもない。投げたお金が返ってくる保証は、どこにもないからだ。
3. わたしも、ちょっとだけ株主になっている
ここは、6月に書いた記事の答え合わせになる。
6月にわたしは、スペースXは各指数にいつ入るのかという記事を書いた。そのとき出した予想が、これだった。
QQQ(NASDAQ100):7月上旬ごろ
S&P500:数年先の可能性も
そして実際は、2026年6月29日にオルカンへ組み入れられた。日経にも「スペースX株7%高 『オルカン』組み入れ、指数買いが支え」という記事が出ている。QQQのほうも、7月7日に組み入れ。こちらも予想どおりだった。
2つとも、当たっていた。 そして意味するところは、こうだ。
わたしは6月29日から、スペースXの株主になっている。
自分で「買おう」と思ったことは一度もない。銘柄を選んでもいない。時価総額が大きくなったから、指数が勝手に入れた。組み入れの比率は、いまのところ0.1〜0.2%程度とみられている。
だから今回の850億円の赤字も、ちょっとだけ、わたしの話だった。
4. S&P500には、まだ入れない。しかも遠のいた
もう1本、6月にS&P500の判断について書いた記事がある。そこでは「最短でも2027年6月以降」と見ていた。
今回の決算で、それはさらに遠のいた。
さらに、発行済み株式の50%以上が市場で売買できる状態であること
そのうえで、上場から最低12か月は待つ必要がある
→ スペースXは年間の黒字を、まだ一度も達成していない(2025年通期は49億4,000万ドルの純損失)
年間で黒字になるのは2027年ごろという見方がある。そこに12か月の条件が乗るので、いまの計算では最短でも2028年の後半。2年以上、先の話になった。
つまり、同じ会社でも、どの指数を通して持つかで、入ってくる時期がまるで違う。
わたしはオルカンとS&P500を両方持っている。スペースXはオルカンのほうにはもう入っていて、S&P500のほうには2年以上入ってこない。
5. 売上9割増。なのに株価は、最高値から4割安
ここが、いちばん考えさせられたところだった。
上場してからの株価は、こう動いている。
6月16日:上場からわずか4日で高値をつける。以後は下げ続ける
7月16日:終値で初めて公開価格を割り、131.11ドル
7月28日:一時107.01ドル。公開価格の2割下
8月4日(決算発表日):終値114.53ドル。最高値から約43%安、公開価格からも約15%安
→ ピーク時からの時価総額の目減りは、約1.2兆ドル(約197兆円)
時価総額が、197兆円ぶん消えている。
そして忘れてはいけないのが、その間に出た決算が売上92%増だったということだ。
会社は倍近く伸びている。なのに株価は、最高値から4割安。
ここに、投資でいちばん間違えやすいものが入っていると思う。
| いい会社かどうか | いい投資先かどうか | |
|---|---|---|
| 何で決まるか | 事業が伸びているか。稼げるか | いくらで買ったか |
| 今回のスペースX | 売上+92%、契約数はほぼ倍増 | 最高値で買っていたら4割安 |
では、なぜ下がったのか。調べてみたら、理由はひとつではなかった。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| ① 値段が高すぎた | 高値では時価総額2兆ドル超。会社の中身より、値付けの問題 |
| ② これから売れる株が増える | 上場時に売れなかった株が、8月6日から売れるようになる(ロックアップ解除)。需給の問題 |
| ③ 試験の中止 | 7月16日、スターシップの打ち上げ試験が中止に |
| ④ 市場全体の地合い | 7月末はAI関連が総崩れ。スペースXだけの話ではない |
①と②は、会社の将来性とは関係がない。 値付けと需給の話だ。
ここで、②について補足がいる。ロックアップの解除は、まだ起きていない。 8月6日だ。7月の時点では、先の話だった。
それなのに、株価はもう下がっている。7月16日に公開価格を割ったときの報道も「ロックアップ解除への警戒」という書き方だった。
株価は、これから起きると分かっていることを、先に織り込んで動く。 起きてから動くわけではない。この話は、6章でくわしく書く。
④にいたっては、つい先日書いたばかりの話でもある。7月末は市場全体が下げていて、ダウは1日で1,153ドル安。そのダウは、3営業日で最高値まで戻った。
もちろん、AI部門の巨額赤字への警戒は実際に指摘されている。③の試験中止も、宇宙事業の進み方への不安といえる。「黄色信号」という読み方が完全に間違いというわけではない。
でも、4つのうち少なくとも2つは、会社の中身と関係がない。上場からたった4日でつけた高値は、買いたい人の熱がいちばん高かった瞬間でもある。その熱が冷めた、という部分がかなりある。
ちなみに、高値や初日の終値で買った人は、1割から4割前後の含み損を抱えている計算になる。史上最大のIPOでも、飛びついた人が報われるとは限らない。
6. ロックアップって何? 初解除は、8月6日
株価の話でもうひとつ、よく出てくる言葉がある。ロックアップだ。
さっきの表の②に出てきたものだ。まだ起きていないのに、すでに株価を動かしている。それがどういうことか、順番に書いていく。
理由は、上場した瞬間にみんなが一斉に売ると、株価が崩れてしまうから
→ つまり、市場に出回る株の数を、しばらく絞っておくためのもの
イメージとしては、ダムの水門が近い。上流にはたくさんの株がたまっている。一気に流すと下流(市場)があふれるので、しばらく閉めておく。
問題は、その水門が開く日だ。
解除の対象は、最大9億1,150万株
そもそも上場時に一般で取引できたのは、発行済みの5%未満という異例の少なさだった
ここが、けっこう大事なところだ。
上場したとき、市場に出回っていた株は5%未満しかなかった。 買いたい人はたくさんいるのに、売り物が少ない。だから値段が上がりやすかった。
つまり株価が高かったのは、会社がすごいからだけではなく、買える株が少なかったからでもある。これを希少性のプレミアムという。
そして8月6日、最大9億1,150万株が売れるようになる。売り物が一気に増えれば、その希少さは薄れる。この記事を書いているのは、その前日だ。
そして5章で見たとおり、株価はもう、この日に向けて動いている。7月に売られたのは、8月6日が来ると分かっていたからだ。
ここは、はっきりさせておきたい。ロックアップの解除は、会社の実力とは何の関係もない。
スターリンクの契約者が減ったわけでも、ロケットが飛ばなくなったわけでもない。ただ、売れる人が増えるだけだ。
それでも株価は動く。株の値段は「会社の良し悪し」だけでなく、「売りたい人と買いたい人の数」でも決まるからだ。
5章で「4つのうち2つは会社の中身と関係がない」と書いたのは、こういうことだった。
そしてもうひとつ。この話は、4章のS&P500ともつながっている。
S&P500に入るには、発行済み株式の50%以上が市場で売買できる状態である必要がある。スペースXはまだ5%未満だ。ロックアップが解けていくのは、その条件に近づく一歩でもある。
売り物が増えるのは、目先の株価には重い。でも指数に入るための条件としては、前進になる。同じできごとが、見る角度で逆に見える。
7. 選ばなくても、入ってくる
ここから先は、いつもの結論になる。
わたしはスペースXを選んでいない。宇宙にもAIにも詳しくない。それでも、6月29日から株主になっている。
しぼんでいけば、勝手に比重が減っていく
→ IPOに飛びつかなくても、育ったころには持っている
これはキオクシアのときにも書いたことだ。あのときも、買わないと決めた会社を、オルカン経由ですでに持っていた。
「参加しない」のではなく、「自分で選ぶゲームには参加しない」だけ。市場全体としては、ちゃんと乗っている。
ただし、その乗り方は指数によって違う。6月に調べたとおりだった。オルカンはもう入っていて、S&P500は2年以上先。両方を持っているから、その差もそのまま引き受けている。
どちらが正解かは分からない。ただ、選ばなくていい形にしてあるから、850億円の赤字を見ても、何もしなくてよかった。それで十分だと思っている。
8. まとめ
- スペースXの上場後はじめての決算は、売上78億1,400万ドル(+92%)、最終損益は5億4,100万ドル(約850億円)の赤字。ただし前年同期の赤字(10億800万ドル)からは半減
- 赤字が残る理由は、AIのモデル開発とスターシップの研究開発にかかるお金。さらにその外側で設備投資が約184億ドル(約2兆9,000億円)=前年同期の6倍超で、四半期の売上の2倍以上にあたる
- 中身を見ると、スターリンク(契約1,200万・営業利益16億5,600万ドル)が、AIと宇宙の赤字を養っている構造。通信という地味な商売が、派手な事業を支えている
- わたしは6月29日から株主になっている。オルカンに組み入れられたからで、自分で選んではいない(比率は0.1〜0.2%程度)。6月に予想した「オルカンは6月下旬、QQQは7月上旬」は、どちらも当たっていた(QQQは7月7日)
- 一方S&P500にはまだ入れない。条件は「直近4四半期の利益合計がプラスかつ直近も黒字」+「浮動株が50%以上」+「上場から12か月」。年間黒字はまだ一度もなく、いまの計算では最短でも2028年後半
- 株価は公開価格135ドルを割り、8月4日の終値は114.53ドル。最高値から約43%安、公開価格からも約15%安。ピークからの時価総額の目減りは約1.2兆ドル(約197兆円)
- 売上は92%増。なのに株価は最高値から4割安。ここが大事で、いい会社かどうかは「稼げるか」、いい投資先かどうかは「いくらで買ったか」で決まる。別の話だ
- 下がった理由は①値付けが高すぎた ②ロックアップ解除への警戒 ③試験中止 ④市場全体の地合いの4つ。①②は会社の中身と関係がない
- しかも②のロックアップ解除は、8月6日でまだ起きていない。それでも株価はもう下がっている。株価は、これから起きると分かっていることを先に織り込んで動く
- その8月6日に、最大9億1,150万株が初解除される。ロックアップは「上場してもしばらく売るな」という約束で、上場時に取引できたのは発行済みの5%未満だった。株価が高かったのは、買える株が少なかったからでもある(希少性のプレミアム)
- ロックアップ解除は会社の実力と無関係。それでも株価は動く。株の値段は「会社の良し悪し」だけでなく「売りたい人と買いたい人の数」でも決まる
- ただし解除は、S&P500の条件(浮動株50%以上)に近づく一歩でもある。目先の株価には重いが、指数入りには前進。同じできごとが、見る角度で逆に見える
- 史上最大のIPOでも、高値で飛びついた人は1割〜4割の含み損を抱えている
- 大きく育った会社は選ばなくても勝手に入ってくるし、しぼめば勝手に減る。IPOに飛びつかなくても、育ったころには持っている
・オルカンへの組み入れ:日本経済新聞「スペースX株7%高 『オルカン』組み入れ、指数買いが支え」
・株価の下落:日本経済新聞「スペースX株が公開価格割れ 打ち上げ試験中止、需給不安も強く」/Forbes JAPAN「スペースX株、初めて上場時の公開価格135ドル割れ」/Bloomberg「スペースX株、IPO価格を2割下回る-時価総額ピークから1.2兆ドル消失」
・ロックアップ解除:日本経済新聞「スペースX、ロックアップ6日にも初解除」/Forbes JAPAN(ロックアップ解除と浮動株の解説)
・S&P500の採用条件:Bloomberg「スペースXなど超大型IPO、S&P500採用まで数年待ちも-収益要件が壁に」/日本経済新聞「米S&P500、スペースXを早期採用せず 指数会社が基準緩和見送り」
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