フリーランスが3ヶ月働けなくなったら。34歳独身女性のわたしが「保険より貯金」で備える理由
「フリーランスは働けなくなったらどうするの?」とよく聞かれる。会社員のように傷病手当金もないし、保険にも入っていないと話すと、心配されることも多い。
でもわたしは、保険ではなく貯金で備えている。
理由はシンプルで、自分の場合は保険より貯金の方が効率的だと判断したからだ。漠然と不安を抱えるより、制度と数字で分解して、自分に必要なものだけを残す。今日はそんなわたしの備え方を、正直に書いてみる。
まず、フリーランスが使える公的制度を整理する
不安の正体は、たいてい「知らない」ことだ。だから最初に、自分が使える制度をちゃんと把握しておくことから始めた。
健康保険と高額療養費制度
がんになっても、心臓の手術をしても、医療費が青天井になることはない。高額療養費制度があるからだ。所得にもよるけれど、月の自己負担は8〜9万円程度に抑えられる。
「がんは1,000万円かかる」みたいな話を見ると不安になるけれど、実際の自己負担は制度でかなり抑えられる。これを知っているかどうかだけで、見える景色がずいぶん違う。
ただし、会社員(とくに大企業の健保組合に加入している人)には「付加給付」という上乗せがある場合が多く、自己負担がさらに数万円まで圧縮されるケースもある。フリーランスの国民健康保険にはこの上乗せはなく、高額療養費制度の自己負担分はそのまま自分で備える必要がある。
ただし、すべての会社員が受けられるわけではない。協会けんぽ(中小企業に多い)には付加給付はなく、健保組合のある会社(主に大企業)に限った仕組みだ。給付の内容も組合ごとにバラバラなので、自分が加入している健保のサイトで一度確認しておくと安心。
フリーランスの国民健康保険には、この上乗せ自体が存在しない。だからこそ、自己負担分を自分で備えておくことが大事になる。
障害年金
フリーランスでも、障害年金は受け取れる。国民年金から「障害基礎年金」が支給される仕組みだ。ここは会社員もフリーランスも基本的な部分は同じ。
ただし会社員には「障害厚生年金」が上乗せされるので、トータルの金額では差が出る。
遺族年金
ここはフリーランスが不利になる部分のひとつかもしれない。
会社員には「遺族厚生年金」があって、子どもがいない配偶者や父母も対象になる。一方でフリーランスは「遺族基礎年金」のみで、これは原則として子どもがいる配偶者にしか支給されない。
つまり子どものいない夫婦の場合、フリーランスの夫が亡くなっても、妻に遺族年金は1円も支給されない。これは知っておくべきことだと思う。
ただわたしは独身なので、ここは大きな問題にならない。
傷病手当金
会社員の健康保険には「傷病手当金」がある。働けなくなった期間に給料の約3分の2が、最大1年半支給される制度だ。
国民健康保険には、原則これがない。 動けなくなった瞬間に無収入になるリスクがある。ここがフリーランスのいちばんの弱点だと思っている。
ここをどう補うか。民間の就業不能保険という選択肢はあるけれど、ここは後で詳しく書く。
失業給付
失業保険はフリーランスには原則ない。
わたしは退職時に受給したので、その制度のありがたさはよくわかっている。これがないのはフリーランスのつらいところだ。
退職前にこの制度を最大限活用したい人は、わたしが半年・約70万円を受給した体験をフリーランス転向前に知っておきたい失業保険にまとめているので、ぜひ参考にしてほしい。
介護保険
介護保険については、フリーランスも会社員も全く同じ条件だ。40歳になると自動的に全員が加入する。フリーランスは国民健康保険料に「介護保険料」が上乗せされる形で合算して支払う。
65歳以上で要介護認定を受けた場合、介護サービス費用の自己負担は原則1割(所得に応じて2〜3割)。ここに会社員との優劣はない。
制度を整理して、見えてきたこと
こうして並べてみると、自分にとって本当に補わなければいけないリスクが見えてくる。
わたしの場合はこうだ。
つまり、わたしが本当に備えるべきは「働けなくなったときの生活費」と「治療にかかる自己負担分」だ。そう絞ると、必要な備えの規模がはっきり見えてくる。
それでも保険ではなく、貯金で備える理由
ここが、この記事の核心だ。
たとえば月1万円の生命保険(就業不能保険の特約つき)に入ったとすると、支払う保険料はこうなる。
- 10年で120万円
- 20年で240万円
これだけのお金を「もしもの保証」のために払うことになる。
同じ金額を貯蓄で備えていれば、使わなかった場合はそのまま手元に残る。働けなくなった期間の生活費や医療費は、計画的に貯めれば備えられる金額だ。
保険料は戻ってこないけれど、貯金は手元に残り続ける。20年で240万円。けっして小さい金額ではない。
保険を選ばないもう一つの理由
就業不能保険を選ばない理由はもう一つある。多くの商品が精神障害を保障していないことだ。
体の不調はある程度予測ができるし、保険でカバーされる範囲も広い。でも心の病は違う。発症のタイミングも回復の期間も読みにくく、そして保険でも貯金でも「ある程度どうにかなる」と言いきれない領域だと思っている。
わたしは「心が元気であれば乗り越えられる部分が大きい」と思っているけれど、心の病はそれだけでは難しい。保険でも保障されにくいなら、結局は貯金で備えるしかない。それなら最初から貯金一本でいいというのが、わたしの結論だ。
保険を否定しているわけではない
念のため書いておくと、保険そのものを否定しているわけではない。家族構成や生活環境によって、必要な保険はもちろんある。
たとえば、
- 死亡保険(掛け捨て):扶養する家族がいる場合は必要だと思う。遺された家族の生活を守るためには、貯蓄では足りない金額が必要になる
- 自動車保険(対人・対物):車を持つなら必須。万が一の賠償額は数千万〜数億円規模になりうるので、貯金では到底カバーできない
- 火災保険:賃貸でも加入が一般的。実際わたしも入っている
つまり「貯金では絶対にカバーしきれないリスク」には保険が必要だ。一方で、「貯金で備えられる範囲のリスク」については、保険より貯金の方が効率的だと考えている。
わたしの場合、独身で扶養家族はおらず、車も持っていない。だから死亡保険も自動車保険も不要で、火災保険だけ加入している。この整理をすると、自分にとって本当に必要な保険が見えてくる。
わたしの具体的な備え:生活防衛資金300万円
実際にわたしがどう備えているか。
生活防衛資金として、銀行口座に300万円を常に置いている。
月の生活費が15万円程度なので、突然の出費を入れても1年以上は生活できる金額だ。これは投資資産とは別で、いつでも引き出せる普通預金で持っている。
フリーランス1年目の壁でも書いたけれど、この「現金クッション」があるかどうかで、精神的な余裕がまったく違う。お金で「試行錯誤できる時間」を買っている感覚だ。
加えて、配当金が毎月5万円ほど入ってくる。これもいざというときの支えになる。配当だけで生活費の3分の1がまかなえると思うと、心の安定度がぜんぜん違う。
そして最後の砦が、サイドFIRE資産そのものだ。500万→5,463万のロードマップで書いたように、わたしは34歳でこの金額に到達している。これがあるから、保険なしでも枕を高くして眠れる。実際わたしは寝つきがめちゃめちゃ良くて、これが特技です 笑
「働けない」前に、健康への投資
備えるだけでは足りない。そもそも「働けなくなる確率を下げる」のがいちばん効率がいい。
年1回の健康診断
健康診断は会社員時代と変わらず、毎年受けている。市や区が実施する定期検診なら、無料〜500円程度で基本的な検査が受けられる。
オプションで胃カメラや大腸カメラもできる。「元気があればなんでもできる」というのは本当で、健康チェックは絶対にしておいた方がいい。
ぎっくり背中で動けなくなった話
幸い、フリーランスになってから体調不良で仕事に大きな穴を開けたことは一度もない。
ただ、一度だけ「ぎっくり背中」で動けなくなったことがある。呼吸するだけで激痛が走って、病院にいくのがやっとだった。打ち合わせをずらしてもらい、1日安静にしていたら問題なく回復したけれど、撮影の現場だったら大変なことになっていたと思う。
クライアントに迷惑をかけるのも嫌だし、心配される側に回るのも避けたい。健康で明るく元気でいることそのものが、フリーランスの仕事の一部だと感じる出来事だった。
周りのフリーランスの工夫
仕事仲間を見ていても、体力管理は大きなテーマだ。
カメラマンの方で腰を悪くしたり、体力の衰えを感じている人は多い。1日中歩き回るようなロケを減らして、スタジオの三脚オペレーション中心にシフトしたり、自分の体調に合わせて仕事を選んでいる。
働けなくなる前に、働き方を変える。 これもひとつの備え方だと思う。
会社員時代の手術と、最近のヒヤッと体験
体は資本だと頭ではわかっていても、実感するのは何かあったときだ。
会社員時代の手術
数年前、会社員時代に手術を受けたことがある。数週間、出社せず入院+リモートで対応した。このときは有給だけで対応できたので、傷病手当金は受給していない。それでも「いざとなれば傷病手当金がある」という安心感は本当にありがたかった。制度があるだけで、心の余裕がまったく違う。
最近のヒヤッと
少し前に、当時の症状が再発したかもと思ったことがあった。気分がどんよりして、不安が頭から離れない。すぐに医者に行って検査してもらったところ、全く関係のない症状だとわかって、晴れ晴れとした気持ちで病院を後にした。スキップしたくなるほど体が軽かった。
「やっぱり体が資本、元気があればなんとかなる」と改めて肝に銘じた出来事だった。
そしてその足で歯医者も予約した。虫歯が見つかってしょんぼりしたけれど、治せるならラッキー、と思うことにした。今度は胃カメラも予定している。
5,000万円という、最大の保険
正直に書くと、5,000万円という資産は、生活を切り詰めれば一生なんとか生きていけるかもしれない金額だと思っている。
十勝の実家もあるし、両親も元気で、いざとなれば帰れる場所がある。そう考えると、今は「不安」というよりは「心地よい状態を模索している」という感じが近い。
もちろん、欲がないわけじゃない。もっと広い家にも住みたいし、行ったことのない場所にも、まだまだ行ってみたい。「もっと、もっと」と思う部分は正直ある。
でも「足るを知る」(今あるもので十分だと気づける境地、らしい)というほど悟ってはいないけれど、今の生活はけっこう気に入っている。食べたいものは食べられるし、温かい家もある、ごまもちもいる。
だからこそ「サイドFIRE」という曖昧な言葉だけれど、この選択ができたんだと思う。完全リタイアでもなく、消耗するフルタイムでもなく、ちょうど自分に合う場所を、これからも模索していきたい。
サイドFIRE3年のリアルでも書いたけれど、お金は自分の選択肢を広げてくれる道具だ。0円のフリーランスだったら、そもそもこの働き方を選べていなかったと思う。
まとめ:不安は、数字と制度で分解できる
漠然と不安に感じているとき、その正体はだいたい「知らないこと」だ。
- どんな制度があるか
- 自分にとって本当に必要な備えは何か
- どのくらいの金額があれば安心できるか
これを数字と制度で分解していくと、「自分にはこれだけあれば大丈夫」というラインが見えてくる。
そのためにも、日々の家計管理とライフプランをきちんと立てることが何より大事だと思っている。地味だけど、これがいちばんの安心材料になる。
保険に入る・入らないも、貯金額をいくらにするかも、答えは人それぞれ違う。ただ「漠然と不安」のままにしないこと。これだけは共通だと思う。
- わたしは民間の医療・就業不能保険に入らず、貯金で備えている。理由は、自分の場合は貯金の方が効率的だから
- 高額療養費制度・障害年金など、フリーランスでも使える公的制度を整理すると、補うべきリスクが見えてくる
- フリーランスの最大の弱点は「傷病手当金がない」こと。働けなくなった瞬間に無収入になる
- 多くの就業不能保険は精神障害を保障しない。だからこそ貯金で備える
- 月1万円の保険料は20年で240万円。同額を貯蓄で備えれば、使わなかった場合はそのまま手元に残る
- 「貯金で絶対にカバーしきれないリスク(家族の生活費・対人賠償など)」には保険、それ以外は貯金で備えるのが基本
- 生活防衛資金300万円を銀行口座に固定。月15万円の生活費で1年以上は持つ
- 配当金月5万円とサイドFIRE資産が、最後のセーフティネット
- 働けなくなる前に、健康への投資(年1回の健診・歯科検診)と「働き方を変える」発想も大事
- 不安は数字と制度で分解できる。漠然と不安のままにしないことが、いちばんの備え





