「配当で社会保険料が上がる」は、わたしにいつ来るのか。決まったことと、まだ決まっていないこと
「金融所得が社会保険料に反映される」というニュースを見かけるようになった。株の配当や売却益を、健康保険料の計算に含めるという話だ。
わたしはフリーランスで国民健康保険に入っていて、2026年6月末時点で年間49.2万円の配当を受け取っている。まさに直撃しそうなテーマなので、自分のために調べた。
調べてみて、いちばん大事だと思ったのは「どこまでが決定で、どこからが検討中なのか」だった。ここを混ぜて読むと、必要以上に不安になる。順番に整理していく。
1. 決まったこと、まだ決まっていないこと
その前に、ひとつはっきりさせておきたい。この話は「配当に新しく税金がかかる」ではない。配当や売却益にかかる税金は、これまでどおり20.315%のままだ。変わるのは健康保険料の計算に、その金融所得を入れるかどうか。ここを取り違えると、話がまるごとわからなくなる。
そのうえで結論から。2026年5月29日に「健康保険法等の一部を改正する法律」が成立している。ただしこの法律で金融所得の反映が決まったのは、75歳以上の後期高齢者医療制度についてだ。
75歳以上の人に何が起きるのかというと、配当や売却益が多い人は①健康保険料が上がる ②病院の窓口負担の割合が上がることがある(いまは所得に応じて1〜3割)。税金が増えるのではなく、医療費の自己負担が増えるという形だ。
押さえておきたい線引きは、この3つだ。いま決まっているのは75歳以上のぶんだけ。国保はまだ検討中。NISAは対象外の見込み。
つまり34歳・国保のわたしは、いまの時点では対象外だ。ネットで「2028年から始まる」という書き方も見かけるけれど、正確には2028年度までに結論を出すという工程が決まっている段階で、国保にいつからどう適用されるかはこれからだ。
ここは慎重に読んだほうがいいと思う。制度の話は「検討する」が「決まった」に化けて伝わりやすい。わたし自身、前に別の制度改正で早とちりして書き直したことがある。
なぜ75歳以上からなのか
ここが気になって調べたのだけれど、「お金を持っている高齢者を狙い撃ちにした」という話ではなかった。厚生労働省の資料のタイトルは「金融所得の公平な反映」。直したいのは、いま現に起きているズレのほうだ。
後期高齢者医療には、もともと所得によって窓口負担の割合が変わる仕組みがある。
この判定に、いまは申告した配当だけが入っている。つまり同じだけ配当を受け取っていても、申告した人は3割負担になり、申告しなかった人は1割のままということが起こりうる。同じ状況なのに、手続きの選び方で負担が変わってしまう。
そこを揃えるのが今回の改正だ。だから基準になっているのは「富裕層かどうか」ではなく、もともとある課税所得のライン(145万円など)で、そこに金融所得も入れて判定しよう、という話になる。
75歳以上が先になったのは、この不公平がいちばんはっきり出ている場所だからだと思う。後期高齢者医療は現役世代の保険料からも支えられているので、「払える人には払ってもらう」という理屈も通しやすい。ただ、同じ理屈は国保にもそのまま当てはまる。だから次に来るのだろうな、と予測できる。
2. それでも、わたしがこの話を気にする理由
じゃあ関係ないかというと、そうは思わない。今回の改正にはひとつ、大きな転換が含まれているからだ。
これまで、源泉徴収ありの特定口座で受け取った配当は、確定申告をしなければ保険料の計算に入らなかった。申告するかどうかを自分で選べて、申告しなければ国保に響かない。この仕組みを前提に、わたしは配当を申告しないという判断をしてきた。
新しい流れは、そこを変える。マイナンバーで金融機関と自治体のデータがつながり、申告の有無にかかわらず金融所得を把握して反映するという設計だ。まず75歳以上から始まる。
わたしが気にしているのは、金額より設計思想の変化のほうだ。「選べる」から「自動で把握される」へ。そして仕組みをゼロから作るのは大変でも、いちどできた仕組みの対象を広げるのは簡単だ。だから75歳以上で動きだしたことを、他人事だと思えずにいる。
これは単発の改正ではなく、流れの一部だと思う
もうひとつ、この数年の動きを並べてみると、方向がはっきりしている。
税率そのものの引き上げ(20.315%を30%に、といった話)は今のところ実現していない。でも「金融所得からもっと負担してもらう」という方向自体は、税と社会保険の両側から動き続けている。ミニマムタックスは超富裕層限定だけれど、こういう仕組みは対象がだんだん広がるのが常だと思っておいたほうがいい。
3. 日本だけの話ではなかった
「日本だけ厳しくなっている」と感じていたのだけれど、調べてみて考えが変わった。投資の利益から社会保障の財源を取っている国は、すでにある。
とくに驚いたのがフランスだ。投資の利益に社会保障の負担が17.2%かかっていて、所得税の12.8%より重い。アメリカにも、投資所得に3.8%を上乗せする仕組みが2013年からある。名前は税だけれど、中身は医療保険の財源だ。
一方でイギリスのように、社会保険料は働いて得た収入にだけかけるという国もある。だから「世界共通のルール」というわけではない。それでも、日本がこれからやろうとしていることには、すでに前例がある。ゼロから作る話ではないぶん、この方向に進んでいくと見ておくほうが自然だと思った。
4. もし国保に来たら、わたしはいくら増えるのか
では、仮に国保にも同じ仕組みが来たとして、わたしの負担はどれくらい変わるのか。
国民健康保険料は、おおまかに所得の10%前後(自治体と年度で変わる)。この目安で計算すると、こうなる。
年5万円。覚悟していたより穏やかな数字だった。生活が壊れる額ではない。
ただし、これはいまの配当が49.2万円だからだ。わたしは月10万円・年120万円の配当を目標にしている。もし達成したら、上乗せは年12万円ほどになる。目標に近づくほど、この負担も一緒に育つ。
ちなみに国保には上限があって、2026年度は年110万円前後(自治体により異なる)。青天井ではないけれど、その水準に届くのはずっと先の話だ。
5. わたしの「申告しない」作戦は、いつまで使えるのか
ここで、過去に書いた記事の答えを更新しておきたい。
わたしは配当を確定申告すると国保が上がるという記事で、「特定口座の配当は申告しない」という判断を書いた。所得税の還付より、国保の増額のほうが大きかったからだ。
この判断は、いまも変わらない。ただし期限つきの正解になったと思っている。
②は見落としやすいところだと思う。保険料が自動で上がるなら、申告しないことのメリットはなくなる。いま最適な選択が、そのまま将来も最適とは限らない。
6. じゃあ、いま何ができるのか
制度が固まっていない段階でできることは、そう多くない。それでも整理するとこうなる。
①は、これまで新NISAを優先してきた方針が、そのまま守りにもなるという話だ。ただし「対象外の見込み」であって、未来永劫の保証ではない。そこは正直に書いておきたい。
なお、規模の大きい投資家だと法人を作って役員報酬ベースの社会保険に切り替えるという手も語られる。ただ法人は設立も維持もコストがかかるし、法人側の税金もある。年49.2万円の配当のわたしには、いまのところ現実的な話ではない。
7. あずきの考え
今回いちばん強く思ったのは、制度は変わる、という前提で設計しておくことの大切さだった。
わたしがサイドFIREの計画を立てたとき、いまの税率と保険料で計算していた。でもこの8年でも、国保は上がり続けてきたし、2026年には国保の負担がさらに重くなった。これから先も、増える方向に動くと考えておくほうが自然だと思う。
だからといって、悲観して投資をやめるのは違う。配当が増えるから保険料も増えるのであって、順番は逆ではない。年12万円の保険料が乗るのは、年120万円の配当を受け取れているときだ。
わたしにできるのは、制度の変化を早めに知って、そのつど自分の設計を調整することくらいだ。今回のように「決まったこと」と「検討中のこと」を分けて把握しておけば、必要以上に焦らずにすむ。それだけでも、調べた価値はあったと思っている。
まとめ
- 2026年5月29日に健康保険法などの改正法が成立。ただし金融所得の反映が決まったのは75歳以上の後期高齢者医療で、施行は2030年前後が目標とされる
- フリーランスの国民健康保険や介護保険への拡大は、まだ検討段階。2028年度までに結論を出す工程が閣議決定されている。「2028年から始まる」ではなく「2028年度までに決める」が正確
- 会社員の健康保険は対象外の見通し、NISA内の利益も算定対象外となる見込み
- 大きな転換は金額より仕組み。確定申告の有無にかかわらず、マイナンバーで金融所得を把握して反映する設計が現実に入った
- これは単発の改正ではなく流れの一部。2023年末に検討が閣議決定、2025年に「1億円の壁」対策のミニマムタックスが適用開始、2026年に後期高齢者医療で成立、と税と社会保険の両側から動き続けている
- 海外にも前例がある。フランスは投資の利益に社会保障の負担が17.2%(所得税12.8%より重い)、アメリカは2013年から3.8%。一方でイギリスのように働いて得た収入にしかかけない国もあり、世界共通のルールではない
- もし国保に来たら、配当49.2万円のわたしで年約5万円の上乗せ(所得の10%前後で試算)。月10万円の配当目標を達成すると年12万円ほどになる
- 「特定口座の配当は申告しない」というこれまでの判断は期限つきの正解。反映されるようになれば、むしろ申告して所得税の還付を受けたほうが得になる可能性がある
- いまできるのは、NISA枠を優先して使うこと、慌てて売らないこと、2028年度の結論を見てから申告方針を決め直すこと
- 制度は変わる前提で設計しておく。ただし保険料が増えるのは配当が増えたときなので、順番を取り違えないようにしたい
NISA内の利益は社会保険料の算定対象外となる見込みです。つみたて枠のオルカンも、成長投資枠の日本の高配当株も、SBI証券ひとつで完結します。制度が変わっていくなかで、まず埋めておきたい枠だと思っています。わたしが8年使っているメイン口座です。
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