バフェットが『みんなギャンブルに夢中だ』と警告。でも本人はグーグルに5兆円。どういうこと? を調べてみた
投資の神様と呼ばれる ウォーレン・バフェット(95歳)が、2026年7月15日、米CNBCのインタビューに登場した。昨年末にバークシャー・ハサウェイのCEOを退いてから、メディアに出ること自体が珍しい。
そのインタビューで、彼は2つのことを言った。
ひとつは、警告。「人々のギャンブルへの熱狂は、すさまじい」。いまの市場は投資ではなくギャンブルに傾いている、という苦言だ。
もうひとつは、告白。バークシャーが持つ グーグルの親会社アルファベットの株、約310億ドル(約5兆円)は「自分が始めた投資だ」 と明かした。
……あれ? と思った。ギャンブル熱を警告している本人が、AIの本丸に5兆円を賭けている。矛盾していないか。このブログにはもう3回目の登場になるバフェットおじいちゃんの真意、調べてみた。
1. インタビューでバフェットが言ったこと
警告と、5兆円の賭けと、「そんなに好きじゃない」発言。一見バラバラなこの3つ、順番にほどいていく。
2. 警告の中身:「ギャンブル」とは何を指しているのか
まず、バフェットの言う「ギャンブル」は、AIや株そのものを指しているわけではない。彼が昔から繰り返している、お金の使い方の区別 の話だ。
| 分類 | 見ているもの | 期待しているもの |
|---|---|---|
| 投資 | 会社(事業)の稼ぐ力 | 会社が長期で成長し、利益の分け前をくれること |
| ギャンブル | 短期の値動き・チャート | 次に、もっと高い値段で買ってくれる誰かが現れること |
AIブームで株価が急騰と急落を繰り返すいまの市場(先週のAIショックのような)は、値動きを当てて短期で儲けようとする人であふれている。バフェットの警告は、その 熱狂そのもの に向けられている。キオクシアの記事で書いた「当てにいくゲーム」と、同じものを指している。
彼はインタビューで、こうも言っている。「ギャンブラーを生み出す方が、投資家を生み出すより、ずっと儲かる」。売買が増えるほど手数料で儲かる金融業界は、人々を投資家ではなくギャンブラーにする方向へ誘い続ける。95歳の皮肉は、市場だけでなく、それを煽る側にも向いていた。
3. では、なぜ本人はグーグルに5兆円?
答えは、たぶんシンプルだ。彼は「値上がり」に賭けたのではなく、「事業」を買った。
バークシャーがアルファベット株を買い始めたのは2025年の秋。当時としても、AIブームの熱狂に飛び乗ったタイミングではない。バフェットが見ていたのは、検索と広告で毎年莫大な利益を生み出し続ける アルファベットという事業の稼ぐ力 で、それに対してお金を払った。さっきの区別で言えば、教科書どおりの「投資」だ。
実際、彼はインタビューでこうも語っている。「実績から見て、ウォール街で売り込まれている株の90〜95%よりも、勝者になる可能性がずっと高い」。
この「ウォール街で売り込まれている株」という言い方には、皮肉が込められている。証券会社が投資家にすすめる株は、良い会社だからというより、物語が魅力的で「売りやすい」から 選ばれていることが多い。それがバフェットの見方だ(「ウォール街の関心は、それが売れるかどうかだ」とも言っている)。
つまり彼は、「売りやすい物語」で選ばれた株の群れ と、検索と広告で何年も稼ぎ続けてきた実績のある事業 を、はっきり区別している。5兆円が払われたのは、後者に対してだ。
面白いのは、それでも彼が ベタ惚れではない ことだ。「うちが持つ少なくとも4〜5社ほどには、好きではない」と、買った本人が公言している。理由も明確で、アルファベットをはじめAI大手の 設備投資が、とんでもない金額になっている からだ。
アルファベット1社の今年の設備投資は、1,750億〜1,850億ドル(およそ28兆〜30兆円) に達する見込みと報じられている。今年1〜3月だけで約357億ドルと、前年同期の2倍以上 のペース。バフェットは「グーグルとその競合すべてにとっての本当の問題は、全員が数千億ドルを注ぎ込んでいることだ」と、買った会社への懸念を隠さなかった。
好きな会社と、買う会社は別。買った会社でも、心配なことは心配だと言う。この距離感が、いかにもバフェットらしい。
4. 「やりたくないゲーム」の正体
インタビューでいちばん印象的だったのが、この言葉だ。
彼らに選択肢はない。多くの場合、やりたくないゲームをやらされている。
どういう意味か。花火大会を想像すると分かりやすい。
AI投資も似た構図だ。1社が年30兆円を投じ始めたら、他社も追随しないと競争から脱落する。降りたら負け、続けても儲かる保証はない。だから「やりたくないゲーム」なのだ。
バフェットはこの文脈で、かつての巨人IBMの歴史にも触れている。技術の転換点で立ち止まった企業がどうなったかを、95歳の彼は現役でずっと見てきた。だから各社は、降りられない。
これは、Kimi K3の記事で書いた「年100兆円のAI投資は回収できるのか?」という市場の疑いと、まったく同じ問題だ。あのときは株価の急落がその疑いを語ったけれど、今回は 当事者に最も近い投資家が、自分の言葉で語った。それでも彼はアルファベットを持ち続けている。懸念と保有は、両立するのだ。
5. わたしが受け取った3つのこと
このインタビュー、個人投資家のわたしが受け取ったことは3つある。
①「何に対してお金を払うか」をいつも自分に聞く
同じ投資商品でも、「事業の稼ぐ力」に払うなら投資、「値動きの予想」に払うならギャンブル。わたしの積立(オルカン・S&P500)も高配当株も、買う理由を言葉にできるかどうかが、熱狂に飲まれない錨になる。
② 好きと買うを分け、買っても懸念は言う
「4〜5社ほど好きじゃない」と言いながら5兆円持つ。この距離感は真似したい。保有していることと、盲信することは別。わたしもオルカンを持ちながら、その偏りを記事にしたばかりだけど、方向としては間違っていなかったんだと思えた。
③ バフェットの懸念は、わたしの懸念でもある
アルファベットは、わたしのオルカンにもS&P500にも上位で入っている。AI設備投資の回収リスクは、つまり わたしの資産のリスク でもある。でも、だからといってやることは変わらない。個別の勝敗を当てにいかず、市場全体を持って、航路を守る。95歳の警告は「降りろ」ではなく「熱狂に飲まれるな」という意味だと、わたしは受け取った。
6. まとめ
- バフェットが久々のインタビューで 「人々のギャンブルへの熱狂は、すさまじい」 と市場に警告。一方で、アルファベットへの約5兆円の投資は「自分が始めた」 と告白した
- この2つは矛盾しない。彼が警告したのは 値動きを当てにいく熱狂、彼がやったのは 事業の稼ぐ力にお金を払う投資。同じ株でも「何に払うか」で別物になる
- ただしベタ惚れではなく、「4〜5社ほど好きではない」と明言。理由は AI設備投資の巨大さ(アルファベット1社で年28兆〜30兆円規模の見込み)
- AI大手は「やりたくないゲームをやらされている」。花火大会で全員が立ち上がる構図で、降りたら負け、続けても儲かる保証はない
- わたしが受け取ったのは、①何に対してお金を払うかを自分に聞く、②保有と盲信は別、③熱狂に飲まれず航路を守る、の3つ
・アルファベット投資の経緯・発言の報道:Fortune、Quartz
・設備投資の数字:各社報道(アルファベットの2026年通期見込み・四半期実績)
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