わたしのS&P500の中身が、9月21日に変わる。1年前に入った会社が、株価8割減で出ていく
9月4日(日本時間5日の早朝)、S&P500の中身が9月21日に入れ替わる、と発表された。入るのが3社、出るのが3社。読んで、こう思った人もいるはずだ。
😟「入れ替えって、わたしに関係あるの?」
👀「トレードデスクって、聞いたこともない」
😊「入る会社を先に買っておけば、儲かるのでは」
わたしは、S&P500に連動する投資信託(投信)と、オルカン(世界中の株にまとめて投資する投信)を持っている。S&P500は積立を止めて持っているだけ、オルカンは毎月積み立てている。このうちS&P500は、9月21日に中身が変わる。手続きはいらない。
結論から言うと、わたしは何もしない。理由はあとで書くが、今回の発表には、S&P500の投信を長く持てる理由と、日本の高配当株119銘柄を自分で選んでいる理由が、両方入っていた。入れ替えは自動で起きる。そして、一度入った会社も、1年で出ていく。
順番に見ていく。
1. 何が入れ替わるか。3社が入り、3社が出る
まず、発表の中身から。S&P500という指数(株価の平均を出すために選ばれた会社のリスト)を作っている、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのプレスリリースを読んだ。
S&Pの指数には大きさの階級がある。上からS&P500(大型)、中型株400、小型株600。出る3社は、中型株400を飛ばして、いちばん下の小型株600へ移る。2階級降格だ。理由は、発表の言葉を借りると「それぞれの指数が、時価総額の範囲をより適切に反映するため」。つまり、3社の値段(時価総額)が、S&P500の会社としては小さくなりすぎた。
入る3社のうち、ブルーム・エナジーは指数の外から直接S&P500に入る。この会社は燃料電池でデータセンターなどに電気を届けていて、株価は3年で約24倍になっている(Yahoo Financeのデータで、2023年10月の10.4ドルから2026年9月の252.9ドル)。AIのデータセンターが電気をほしがっていることが、指数の顔ぶれまで変えた。そう読める採用だ。
2. わたしのS&P500に、何が起きるか
ここが、冒頭の「わたしに関係あるの?」への答えになる。
わたしが持っているのは、S&P500という指数に連動する投信だ。指数の中身が9月21日に変わるということは、投信の運用会社が、その日に合わせて中でトレードデスクを売り、ブルーム・エナジーを買う。わたしがやることは、ない。積立を止めて持っているだけでも、同じだ。
もう1本のオルカンは、今回は動かない。オルカンが連動しているのはMSCIという別の会社の指数で、S&P500とは選ぶ会社もルールも別だからだ。ただ、MSCIも年4回、自分のルールで中身を点検して入れ替える。指数の側が選び、指数の側が外す。その仕組みは、S&P500もオルカンも同じだ。
・投信の運用会社が、効力発生日に合わせて、出る会社を売り、入る会社を買う
・持っている人は、何もしない。売買の費用は投信の中で処理される
・入れ替えの対象になる会社は、指数の中では小さい会社。評価額(持っている投信のいまの値打ち)への影響はほとんど見えない
「S&P500って、ずっと同じ500社だと思ってた」という声には、こう返せる。同じ500社だったことは、一度もない。指数は年に4回、定期的に中身を点検する。会社の買収などがあれば、その間にも入れ替える。どれくらい入れ替わっているのか、いまの構成銘柄の「採用日」を数えてみた。
1957年3月の開始時から残っている会社 52社(約1割)
10年前はなかった会社(2016〜2025年に採用) 161社(約3割)
5年前はなかった会社(2021〜2025年に採用) 74社
今年(2026年)に採用された会社 13社
1年あたりの採用 10〜22社
いまの503銘柄のうち、10年前はなかった会社が161社。3社に1社は、この10年で入った会社だ。開始時からいる会社は1割しかない。
つまり、わたしが「S&P500を持っている」と言うとき、それは「米国の大きな会社500社を、いつも最新の顔ぶれで持っている」という意味だ。会社を選ぶ仕事も、落ちた会社を外す仕事も、指数の側がやる。その仕事を、年0.1%に満たない信託報酬(投信を持っている間にかかる手数料)で、指数と運用会社がやってくれている。わたしがこの商品を長期で持ち続けられる理由として、ここが大きい。
3. 一度入っても、安泰ではない。トレードデスクの14か月
出る3社の中で、トレードデスクだけ、少し立ち止まって見た。この会社がS&P500に入ったのは、2025年7月18日。14か月前だ。
2025年7月18日 S&P500に採用。買収で消える会社の穴を埋める形で、予定外の入れ替え。株価80.21ドル
2026年8月 四半期決算で売上の伸びが3%にとどまり、利益は市場の予想を下回る
2026年9月3日 全社員の15%を削減すると発表(約575人。費用3,900万〜5,100万ドル)
2026年9月4日 S&P500から除外が発表される。株価14.43ドル。採用のときから82%下、高値からは89%下
入ったときの株価は80ドル。そこから1年で82%下がり、会社の値段がS&P500の会社としては小さくなりすぎて、外される。人員削減の発表と除外の発表は、同じ週だった。
ここに、「入る会社を先に買っておけば儲かるのでは」への答えがある。難しい理由は3つ。
①発表の前に、確実に知ることはできない。採用の条件は公開されているので、次に入りそうな会社を予測する人はいる。でも決めるのは指数会社の委員会だ
②発表のあとでは、もう上がっている。みんなが同じことを考えるので、ブルーム・エナジーの株価は発表直後の時間外取引(取引所が閉まったあとの売買)で6%ほど上がっていた
③買えたとしても、入ったあとに下がり続けることがある。トレードデスクは、入ってから82%下がった
指数に入ることは、会社の値段がその時点で大きいという意味で、これから上がるという意味ではない。先回りは、手間に見合わない。だから、わたしはニュースで売買しない。この発表でも、同じだ。
4. 119銘柄に散らしている理由と、地続きだった
もうひとつ、この発表で見えたことがある。わたしが日本の高配当株を119銘柄で持っている理由と、地続きだった。
わたしの119銘柄は、S&P500がやっていることを、手動でやっているようなものだ。会社を選び、1社ずつ買い、様子を見て、悪いニュースがあれば外すことも検討する。指数会社の委員会がルールでやっている仕事を、わたしが自分の手でやっている。
違うのは、選ぶ基準だ。S&P500は、会社の値段(時価総額)が小さくなれば外す。わたしは配当を長く安定してもらうことが目的なので、見るのは配当が続きそうかどうかだ。何年減配(配当を減らすこと)していないか、コロナのような不況のときに配当を止めたり減らしたりしていないか、財務に余裕があるか。株価が下がっても、配当が続いていれば持ち続ける。逆に、減配や、それにつながる悪いニュースがあれば、外すことを考える。トレードデスクのような会社は、そもそも配当を出していないので、わたしのパック(119銘柄)には入ってこない。
1社ずつ手でやるぶん、1社の失敗が全体に響かないように、119に散らしている。指数が500に散らしているのと、考え方は同じだ。
5. わたしは、どう見ているか
結論は同じ、わたしは何もしない。理由は2つ。
会社を選ぶのも、外すのも、S&P500が勝手にやってくれる。わたしは持っているだけで、いつも最新の500社になる
今回も、入る3社を買うことも、出る3社を売ることもしない。先回りが手間に見合わない理由は、3章に書いた
冒頭の4つの声に、数字で返すと、こうなる。
答え いまの503銘柄のうち、この10年で入った会社が161社(3社に1社)。1957年の開始時から残るのは52社
答え ある。9月21日に、わたしのS&P500の中身が変わる。ただし、やることはない
答え ネット広告の取引システムの会社。14か月前に入り、それから株価が82%下がって出ていく
答え 発表直後の時間外で、ブルーム・エナジーはもう6%上がっていた。14か月前に入ったトレードデスクは、入ってから82%下がって出ていく
ヘラクレイトスは、古代ギリシャの哲学者で、「万物流転(すべては流れ、とどまるものはない)」を説いた人として知られている。川は同じ名前で同じ場所にあるが、流れている水はいつも別の水だ、という意味だ。
S&P500は、この川に似ている。名前も場所も変わらないのに、中の水は入れ替わり続ける。わたしが持っているのは、特定の500社ではなく、「いま米国でいちばん大きい500社」という川そのものだ。トレードデスクが流れ去っても、川は残る。だから、わたしは川を持ち続ける。水が替わっても、売り買いはしない。
指数の中身が変わっても、わたしのやることは変わりません。オルカンの積立も、S&P500も、日本の高配当株119銘柄も、8年以上SBI証券の口座で持っています。
SBI証券の公式サイトを見る →6. まとめ
- S&P500の中身が9月21日に入れ替わる。入るのは3社、出るのは3社で、出る側は小型株600へ2階級降格
- わたしのS&P500も、中で自動的に入れ替わる。やることはない。選ぶ仕事と外す仕事を、年0.1%未満の信託報酬でやってくれている。オルカンは別の指数で、今回は動かない
- いまの503銘柄のうち、この10年で入った会社が161社(3社に1社)。1957年の開始時から残るのは52社。同じ500社だったことは一度もない
- トレードデスクは2025年7月に入り、14か月で出ていく。入ってから株価は82%下。入ることは「いま大きい」の意味で、「上がる」の意味ではない
- わたしの119銘柄は、S&P500の「選ぶ・外す」を手動でやっているようなもの。基準は会社の値段ではなく、配当が長く安定して続くか
- わたしは何もしない。入れ替えは任せてあるので、ニュースで売買しない
・トレードデスクの採用:S&P Dow Jones Indices(2025年7月14日)。ANSYSがシノプシスに買収されるのに伴う入れ替えで、効力は2025年7月18日
・トレードデスクの人員削減:同社発表(全社員の約15%、費用3,900万〜5,100万ドル、Yahoo Finance)、PPC Land「Trade Desk loses S&P 500 seat the same day 575 jobs end」(約575人、売上の伸び3%)
・エバーピュア:Everpure to Change Ticker Symbol to "P"(2026年4月7日)。2026年2月にピュア・ストレージから社名変更
・ブルーム・エナジー:Yahoo Finance「Bloom Energy (BE) Set To Join The S&P 500」、Seeking Alpha(発表後の時間外取引で6.2%上昇)
・株価(トレードデスクの高値128.55ドル、採用日2025年7月18日の80.21ドル、9月4日14.43ドル、採用時から−82%・高値から−89%。ブルーム・エナジーの3年で約24倍):Yahoo Financeの月次・日次データからわたしが拾った値
・オルカンの指数(MSCI ACWI)の定期見直しは年4回(2月・5月・8月・11月):MSCI Index Review。S&P500の投信の信託報酬(eMAXIS Slim 米国株式 0.09372%など):5月の記事
・入れ替えの頻度:Wikipedia「List of S&P 500 companies」の「Date added」列を2026年9月6日にわたしが数えた(503銘柄、開始時から52社、2016〜2025年採用161社、2021〜2025年74社)。S&Pの2007年3月の発表(開始時の500社のうち86社が残存)、TKer(ゴールドマン・サックスの分析、1980年以降10年で約36%)
・S&P500の採用ルール(黒字・上場期間など):6月の記事
・ヘラクレイトスの言葉:本人の著作は残っておらず、プラトン『クラテュロス』402a に紹介された断片。訳はわたし




