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景気拡大が「戦後最長」になった。実感がないのは、上がっているのが家計の数字ではなかったから
ニュース2026-09-08📖 約12分で読めます

景気拡大が「戦後最長」になった。実感がないのは、上がっているのが家計の数字ではなかったから

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ごまもち
🐾 ごまもち
いま、こうけいきなの?🐾
あずき
あずき
統計ではそうなの。でも、そう感じている人は少ないと思う。今日はその理由を見てみるね。

9月7日、内閣府が7月の景気動向指数を発表した。景気の判断は「改善」。そして、2020年6月から続く景気の拡大が7月で74か月になり、これまで戦後最長だった「いざなみ景気」の73か月を超えた。そういうニュースだ。読んで、こう思った人もいるはずだ。

😲「え、いま好景気だったの?」
😑「給料、そんなに上がってないけど」
📈「株は上がってるからね」
🤔「景気って、そもそも誰が決めてるの?」

わたしの実感は、半分ある。資産のほうは、この6年で相場が運んでくれて増えた。でも家計のほうは、家賃は変わらなくても、食べ物や光熱費は上がっている。

結論から言うと、実感がないのは、測っているものが違うからだ。元の統計を見たら、景気を測る10個の指標のうち、家計の数字は1つだけだった。そして、拡大が始まってからの73か月のうち、給料が物価に負けた月は50か月。

順番に見ていく。


1. 「戦後最長」とは、何が最長なのか

まず、言葉の中身から。景気には「山」と「谷」があって、谷から次の山までを「拡大」と数える。いまの拡大は、コロナで落ちた2020年5月の谷の翌月、2020年6月から始まった。7月で74か月。

💡 戦後の景気拡大、長い順
いまの拡大 2020年6月〜 74か月(2026年7月時点。まだ続いている)
いざなみ景気 2002年2月〜2008年2月 73か月(これまでの最長)
いざなぎ景気 1965年11月〜1970年7月 57か月
バブル景気 1986年12月〜1991年2月 51か月
内閣府「景気基準日付」から。いまの拡大が正式に「戦後最長」と認められるのは、内閣府の研究会があとから山と谷を決めてからで、1年以上先になる。いまは「超えた公算が大きい」という段階

では、その「景気」は誰が決めているのか。内閣府が毎月出す景気動向指数という統計だ。生産、雇用、売上など10個の指標をひとつに合成して、「改善」「足踏み」「悪化」を機械的に判定する。7月は指数が前月から1.7ポイント上がって120.6。判断は「改善」のまま。

ごまもち
🐾 ごまもち
けいきって、だれのきぶんできめるの?🐾
あずき
あずき
気分じゃなくて、10個の数字。内閣府が毎月合わせて決めてるの。

2. 元の統計を見る。10個の指標のうち、家計の数字は1つ

その10個の指標を、内閣府の発表資料からそのまま並べる。7月にどれが指数を押し上げたかも、資料に書いてある。

📊 景気動向指数を作る10個の指標と、7月の押し上げ
指標
誰の数字か
7月の押し上げ
投資財の出荷(機械など)
会社
+0.68
小売の売上(前年比)
家計
+0.47
生産財の出荷(部品や材料)
会社
+0.25
輸出の数量
会社
+0.22
営業利益(全産業)
会社
+0.12
鉱工業の生産
会社
+0.01
働く人の総労働時間
会社と家計
0.00
有効求人倍率
会社と家計
−0.01
耐久消費財の出荷(家電や車)
会社
−0.05
卸売の売上(前年比)
会社
−0.05
※表は横にスクロールできます
内閣府「景気動向指数(2026年7月分速報)結果の概要」から。「7月の押し上げ」は指数の前月差1.7ポイントに対する各指標の寄与度。指標の呼び方と「誰の数字か」の分け方はわたし。総労働時間と営業利益は7月分が未集計で、傾向からの推計値

10個のうち、家計の財布に直接つながるのは、小売の売上の1つだけ(労働時間と求人倍率は、会社と家計の両方にかかる)。しかも小売の売上は「値段×数量」なので、物価が上がれば、買う量が同じでも数字は増える。残りは、会社が機械を買ったか、部品を出荷したか、輸出したか、利益が出たか。7月に景気を押し上げた数字も、4分の3以上が会社の数字だった

つまり、「景気が良い」は「会社の側が動いている」という意味で、「家計が楽になった」という意味ではない。統計が間違っているのではなく、測っているものが違う。


3. 74か月のあいだ、家計に起きていたこと

では、家計の側の数字はどうだったか。いちばん近いのは実質賃金だ。給料の額(名目)から、物価の上がりぶんを引いた、「買えるものの量」で見た給料のこと。

⚠ 拡大が始まってからの実質賃金、月ごとの成績表
前の年の同じ月とくらべて、買えるものの量で見た給料が
減った月  増えた月  同じ
2020
6
7
8
9
10
11
12
2021
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2022
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2023
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2024
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2025
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2026
1
2
3
4
5
6
2020年6月〜2026年6月の73か月(実質賃金の数字は6月分まで)のうち 減った月 50 増えた月 21 同じ 2
いちばん長く減り続けたのは 2022年4月〜2024年5月の26か月。過去最長
2025年 1月から12月まで、全部の月で減少
2026年 1月から6月まで、6か月連続で増加。いまここ
年の平均で見ると 2020年を100として、2025年は98
厚生労働省「毎月勤労統計調査」の長期時系列表(実質賃金指数・現金給与総額・従業員5人以上・2020年平均=100)から、各月の前年同月比をわたしが数えた。実質賃金の数字は2026年6月分まで。ニュースで報じられる速報値と、少し違う月がある(6月は速報+1.6%、時系列表では+2.2%)

73か月のうち、給料が物価に負けた月は50か月。3か月のうち2か月は負けていた計算だ。給料の額は増えている。でも、物価のほうが速かった。年の平均で見ると、2020年を100として2025年は98。5年たって、買えるものの量は2%減っている。7月の消費者物価も食料を中心に前年比+1.9%で、上がり続けている。

NRIの木内登英さんは、この拡大を「歴史的な円安・物価高を大きな特徴とするもの」と書き、「戦後最長の景気拡大でも好況には遠い」と題している。景気が長く続いているのは、経済が大きく動く力を失い、上がりも下がりも小さくなったことの表れでもある、と。

ごまもち
🐾 ごまもち
おきゅうりょう、へったの?🐾
あずき
あずき
世の中の給料は、額は増えているの。でも、買えるものの量で見ると、73か月のうち50か月は減っていたの。

4. わたしの実感が「半分」の理由

ここで、自分の数字を置く。

📊 この拡大局面で、わたしの数字はどう動いたか
日経平均 2020年6月 21,710円 → 2026年8月 65,021円。3倍
わたしの総資産 2021年8月 1,301万円 → 2026年8月 6,067万円(記録が残っている範囲)
8月に増えた236万円の中身 運んでくれたのは、ほとんど相場
家賃 7万円のまま。食料品や光熱費は、上がっている
日経平均はYahoo Financeの月次終値。総資産は資産推移の記事と8月の月次レポートから。資産の増加には、この間の積立と入金も含まれる

資産の側では、実感がある。この拡大のあいだに、日経平均は3倍になった。わたしの資産が増えた理由も、自分の腕ではなく、相場が運んでくれたからだ。

家計の側では、実感がない。家賃は変わらないけれど、食料品や光熱費は上がっている。実質賃金は給料をもらう人の統計で、フリーランスのわたしには当てはまらない。当てはまるのは、物価のほうだ。

同じ人の中に、実感がある側とない側がある。そして、その境目は「株や投信(投資信託)を持っているかどうか」だ。持っていない人にとって、この74か月は、景気拡大ではなく物価高の74か月だったと思う。「戦後最長」という見出しと、多くの人の実感が合わないのは、当然だ。


5. わたしは、どう見ているか

ごまもち
🐾 ごまもち
で、さいちょうだと、なにかかわるの?🐾
あずき
あずき
変わらないの。最長でも、あと何か月続くかは誰にもわからないから。

「戦後最長」と聞いて、わたしがやることは変わらない。オルカン(全世界の株の投資信託)の積立は、同じ日に同じ額で続く。理由は2つ。

💡 わたしが何も変えない理由、2つ
① 「最長」は過去の話で、これからの話ではない
拡大が74か月続いた、は事実。でも、あと何か月続くかは誰にも分からない。長く続いたから終わりが近い、とも言えない
② 景気の判断で売買しない
拡大のあいだに日経平均は3倍になった。わたしが日本の株で持っているのは高配当株119銘柄で、景気が良いから買う、悪いから売る、はしていない。買い増すのは割安なときだけ。日経平均が3倍になるあいだも、高配当株でやったのはそれだけ

冒頭の4つの声に、数字で返すと、こうなる。

💬 4つの声と、数字の答え
「え、いま好景気だったの?」
答え 統計では2020年6月から74か月の拡大。ただし測る10個の指標のうち、家計の数字は1つだけ
「給料、そんなに上がってないけど」
答え 額は上がっている。買えるものの量で見ると、拡大が始まってからの73か月のうち50か月は、前の年より減った。増え続けているのは今年に入ってから
「株は上がってるからね」
答え そのとおり。日経平均はこの間に3倍。実感の境目は、株や投信を持っているかどうか
「景気って、そもそも誰が決めてるの?」
答え 内閣府が10個の指標を合成して、機械的に判定する。正式な山と谷は、1年以上あとに研究会が決める
株式市場は、過去5回の不況のうち、9回を予測した
The stock market has forecast nine of the last five recessions.
ポール・サミュエルソン(1966年、ニューズウィーク誌のコラム)

ノーベル賞をとった経済学者の、有名な皮肉だ。5回しか不況は来ていないのに、株式市場は9回も「不況が来る」と騒いだ。つまり、4回は空振り。世界中のプロが集まる株式市場でも、景気の先は当てられない、ということだ。

わたしは、なおさら当てられない。だから、当てにいかない。拡大が74か月で終わるのか、100か月まで続くのかは、誰にもわからない。8年前から積立を続けてこられたのも、景気を読んだからではない。10年、20年と市場にい続けた人がいちばん報われてきた、と歴史が言っているからだ。目の前の景気は読めなくても、それなら続けられる。

景気の見出しは、これからも変わる。「戦後最長」の次は「後退局面入り」かもしれない。そのときも、わたしがやることは変わらない


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景気が最長でも、わたしのやることは変わりません。オルカンの積立も、日本の高配当株119銘柄も、BNDも、8年以上SBI証券の口座です。積立は、同じ日に同じ額で続きます。

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6. まとめ

🐾 この記事のまとめ
  • 2020年6月から続く景気拡大が7月で74か月になり、戦後最長のいざなみ景気(73か月)を超えた公算。正式な認定は1年以上先
  • 景気は内閣府が10個の指標を合成して判定する。7月に押し上げたのは投資財の出荷など会社の数字。家計に直接つながる指標は小売の売上1つだけ
  • 家計側の実質賃金は、拡大の73か月のうち50か月が前の年より減少。2022年4月からの26か月連続の減少は過去最長。増え続けているのは2026年に入ってから
  • わたしの実感は半分。日経平均が3倍になった拡大で、資産は相場が運んでくれた。家計側は物価高の側にいる。境目は、株や投信を持っているかどうか
  • 「最長」は過去の話。わたしは何も変えない。積立は同じ日に同じ額で続く
  • プロが集まる株式市場でも、景気の先は当てられない。わたしはなおさら当てにいかない。次の見出しが「後退」でも、やることは同じ
📚 参考にした情報源 ・景気動向指数:内閣府経済社会総合研究所「景気動向指数(2026年7月分速報)結果の概要」(2026年9月7日)。一致指数120.6・前月差+1.7・2か月連続の上昇、基調判断「改善」、10指標の寄与度(投資財出荷+0.68、小売+0.47、生産財出荷+0.25、輸出+0.22など)はここから
・景気の山と谷:内閣府「景気基準日付」。第16循環の谷が2020年5月、いざなみ景気(第14循環)が2002年1月の谷から2008年2月の山まで73か月。いざなぎ景気57か月、バブル景気51か月
・「74か月で戦後最長を暫定的に上回った」「歴史的な円安・物価高」「好況には遠い」:NRI 木内登英「戦後最長の景気拡大でも好況には遠い」(2026年9月4日)NHK「景気拡大 戦後最長の見方も 7月景気動向指数『改善』維持」(9月7日)
・実質賃金:厚生労働省「毎月勤労統計調査」長期時系列表 実質賃金(現金給与総額)指数及び増減率(5人以上)。2020年6月〜2026年6月の各月の前年同月比をわたしが数えた(減った月50・増えた月21・同じ2)。年平均は2020年=100で2025年98.0。日本経済新聞「6月の実質賃金1.6%増、6カ月連続プラス」(2026年8月5日)日本経済新聞「実質賃金とは 過去最長の26カ月連続マイナス」(2024年7月)
・7月の消費者物価+1.9%:8月の記事
・日経平均の3倍(2020年6月21,710円→2026年8月65,021円):Yahoo Financeの月次終値からわたしが拾った値
・わたしの資産:資産推移の記事(2021年8月1,301万円)、8月の月次レポート(6,067万円、+236万円)。家賃7万円は隠れ債券の記事に記載
・サミュエルソンの言葉:Paul A. Samuelson, "Science and Stocks", Newsweek, 1966年9月19日号 p.92「The stock market has forecast nine of the last five recessions」。訳はわたし
⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の考えの記録であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。景気拡大の「戦後最長」は2026年9月時点の見方で、正式な景気基準日付は内閣府が後日決定します。指標の「誰の数字か」の分け方や、日経平均・資産の数字はわたしの整理と概算で、資産の増加には積立や入金も含まれます。投資の判断は、必ずご自身の判断と責任で行ってください。

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