韓国の株価指数は、たった2社で半分。『指数の偏り』が気になったので調べてみた
SKハイニックスの記事を書いてから、韓国の株のニュースが目に入るようになった。そこで見つけたのが、韓国の代表的な株価指数 「KOSPI(コスピ)」 の解説記事。読んで驚いた。
KOSPIには約830社が入っている。それなのに、サムスン電子とSKハイニックスの2社だけで、指数全体の5割強 を占めているという。
830社の詰め合わせのはずが、中身はほぼ「2社ファンド」。これって、分散と呼べるんだろうか?
もちろん、指数に偏りがあること自体は、なんとなく知っている。日経平均の偏りはよく指摘されるし、わたしのオルカンやS&P500も無縁ではないはずだ。ただ、数字でちゃんと確かめたことはなかった。いい機会なので、今日は「指数の偏り」をあらためて調べてみた。
1. KOSPIの中身は、ほぼ「2社ファンド」だった
上がるときはすごい。今年のKOSPIは日経平均もナスダックも置き去りにする上昇ぶりだ。でもその中身は、サムスンとSKハイニックスという半導体2社の成績表 とほぼ同じ。2社が跳ねれば指数ごと跳ね、2社が転べば指数ごと転ぶ。先週のAIショックのような半導体の急落が来たとき、その打撃を指数全体でまともに受けてしまう 構造だ。
ちなみに、お隣の台湾はもっと極端だ。代表指数の台湾加権指数は、TSMCたった1社で約3割 を占める。1社への集中度なら、サムスン(27.5%)を上回る。半導体の強い国ほど、指数はその会社の色に染まっていく。
2. なぜこんなに偏るのか:指数の「重み」の決まり方
「830社も入れて、なぜ2社で半分になるの?」と思うかもしれない。これは不正でもバグでもなく、指数の重みの決め方 から自然にそうなる。
世界の主要な指数の多くは 「時価総額加重」 という方式で作られている。ざっくり言えば、大きい会社ほど、指数の中で大きな場所をもらえる 方式だ。TOPIXの記事で書いた「会社の大きさで順番に足していく」のと同じ世界で、指数は「その国の株式市場の縮図」になるように設計されている。
つまりKOSPIの偏りは、韓国の株式市場そのものの姿 だ。韓国では、サムスン電子とSKハイニックスの2社が、他の800社あまりを全部合わせたのと同じくらい大きい。指数が偏っているのではなく、市場が偏っていて、指数はそれを正直に映しているだけ なのだ。
3. じゃあ、日本と米国と「全世界」はどうなのか
ここからが本題。わたしたちに身近な指数を、同じ目で見てみる。
日経平均:225社なのに、上位10銘柄で約4割。しかも「大きさ」ではなく「株価の高さ」で決まる
日経平均は、時価総額加重ですらない。「株価そのものが高い会社ほど重くなる」という価格加重(株価平均)方式 で、これは世界でも珍しい古い方式だ。会社の規模とは関係なく、1株の値段が高い 「値がさ(ねがさ)株」 が指数を支配する。
その結果、225社あるのに 上位10銘柄で全体の約4割。1位のアドバンテストは1社で約12%、ファーストリテイリング(ユニクロ)も約9%を占める(ファストリは一時11%を超えて、構成比率を強制的に下げる「上限ルール」が適用されたほどだ)。「日経平均が上がった」というニュースは、実はかなりの部分、この数銘柄が上がったという意味 だったりする。
S&P500:500社でも、上位10銘柄で約38%
米国の代表指数S&P500は時価総額加重だが、エヌビディア、アップル、マイクロソフトといった巨大ハイテクが膨らんだ結果、上位10銘柄で約38% を占める。2000年には23%だったので、この四半世紀で集中はかなり進んだ。500社に分散しているつもりで、4割近くは「上位10社の成績」 なのだ。
オルカン:2,463銘柄に散らしても、米国だけで約62%
じゃあ全世界に広げればいいのかというと、わたしのオルカンも例外ではない。公式の月次レポート(2026年5月末)で、実際の中身を見てみる。
数字にすると、こういうことだ。
- 中身の 約62%は米国株(2位の日本は5.0%)
- 2,463銘柄のうち、たった10銘柄で全体の約4分の1 を占める
- 上位10銘柄のうち 9つが米国企業。唯一の例外は台湾のTSMCで、顔ぶれはS&P500の上位とほぼ同じ
- ちなみにKOSPIの主役、サムスン電子とSKハイニックスは、オルカンでは 「韓国全体で2.7%」の中の一部 にすぎない
台湾加権指数:TSMCたった1社で約3割
日経平均:上位10銘柄で約4割(しかも株価の高さで決まる独特の癖つき)
S&P500:上位10銘柄で約38%(2000年は23%。集中が進行中)
オルカン:米国だけで約62%。上位10銘柄で約25%(顔ぶれはS&P500の上位とほぼ同じ)
どこまで広げても、「偏りゼロの指数」は存在しない。
調べてみて分かったのは、KOSPIが飛び抜けて特殊なわけではない、ということ。程度の差はあれ、どの指数も、その時代の勝者に偏っている。
4. 偏りは「悪」なのか
ここまで読むと「インデックスって危ないの?」と不安になるかもしれない。でも、偏りには合理的な面もある。
偏りは「市場の答え合わせの結果」でもある。時価総額加重の指数が米国ハイテクに偏っているのは、世界中の投資家がお金を投じた結果、それらの会社に高い値段がついているからだ。指数の偏りとは、「いまの時代の勝者を、自動的に多めに持つ仕組み」 とも言える。わたしがAIショックの記事で「インデックスは勝者を当てなくていい」と書いたのは、まさにこの性質のことだ。
そして、偏りは永遠ではない。バブル期の1989年、世界の株式市場に占める日本の比率は約4割もあったとされる。それが今は約5%。指数は日本の凋落を自動で織り込み、次の勝者(米国ハイテク)に乗り換えてきた。指数の中身は、時代とともに勝手に入れ替わる。これこそが、個別株にはないインデックスの強みだ。
ただしリスクも裏表で存在する。勝者に偏っているということは、その勝者が転ぶとき、指数ごと大きく転ぶ ということ。KOSPIでサーキットブレーカーが頻発するのも、S&P500がAIショックで大きく揺れるのも、同じ理屈だ。偏りは、上昇のエンジンであると同時に、下落の増幅装置でもある。
5. わたしはどう付き合うか
わたしの結論はシンプルだ。指数を買っているからといって、「完璧に分散できている」とは思わないようにする。それだけ。そのうえで、やることは3つある。
- 中身をたまに見る。オルカンは「全世界」という名前だけど、実態は「米国6割・上位はハイテク」。それを知って持つのと、知らずに持つのとでは、急落が来たときの落ち着きがぜんぜん違う
- それでも、オルカンより広い船は(個人には)ほぼない。2,463銘柄・世界数十カ国を数百円から買える手段は他にない。偏りがあるからダメ、ではなく、偏りを知ったうえで、いちばん広い船に乗る
- 株式の外にも、値動きの違う資産を持っておく。わたしの場合、債券(BND)と現金がそれにあたる。株式指数がハイテクに偏っている以上、株式と一緒に動かない資産 を少し持っておくことには意味があると、あらためて思った(日本の高配当株も持っているけれど、あれは分散のためではなく配当のためなので、ここには数えない)
KOSPIの記事を読んだときは「2社で半分なんて、極端な国だなあ」と思った。でも調べ終わったいまは、こう思っている。どの指数も、程度の差があるだけで、同じ性質を持っている。大事なのは偏りのない指数を探すことではなく、自分の乗っている船の形を知っておくことだ。
そして、指数の偏りをある程度調べた結論としては、結局 「シンプルにいくなら、オルカンがやっぱり現代の最適解」 ということ。改めて、よくできていると思う。
6. まとめ
- 韓国の代表指数KOSPIは、約830社入っているのに サムスン電子とSKハイニックスの2社で5割強。上昇も下落も、ほぼこの2社次第の構造
- 偏りの原因は 時価総額加重(大きい会社ほど重くなる方式)。指数が偏っているのではなく、市場の偏りを正直に映している
- 日本と米国も他人事ではない。日経平均は上位10銘柄で約4割(しかも株価の高さで決まる価格加重という独特の癖つき)、S&P500は上位10銘柄で約38%(2000年の23%から集中が進行)、オルカンも米国だけで約62%・上位10銘柄で約25%(2,463銘柄中)
- 偏りは悪ではなく、「時代の勝者を自動で多めに持つ仕組み」。1989年に約4割だった日本が今5%になったように、指数の中身は時代とともに入れ替わる
- ただし 勝者が転ぶときは、指数ごと大きく転ぶ。偏りは上昇のエンジンであり、下落の増幅装置でもある
- わたしの結論:「指数を買えば完璧に分散できている」とは思わない。そのうえで、中身を知って、いちばん広い船に乗り続ける。株式と値動きの違う資産(債券・現金)を少し持つことにも意味がある。シンプルにいくなら、オルカンがやっぱり現代の最適解
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