ブラジルは世帯の8割が借金、リボ払いは年400%超。日本も人ごとじゃなかった
カードの「リボ払い」は、毎月決まった額だけ返して、残りに利息がつく払い方だ。
ブラジルの借金の話を、ブルームバーグの動画で見た。世帯の8割超が、何かしらの借金を抱えている。カードのリボ払いの金利は、年444.9%。スマホで簡単に借りられることと、ネットの賭けが重なって、借金が増えているという。
わたしは、基本は借金をしない。金利は味方にはするけれど、敵にはしない、と決めている。調べるうちに、疑問が出てきた。
📱「なぜ、そこまで借りてしまうの?」
🇯🇵「日本は、大丈夫なの?」
結論から言うと、ブラジルは、20年前の日本と似た道にいる。日本も、消費者金融など5社以上から借りている人が171万人いた国だ。法律で金利と借りられる額に上限をつけて、その人数を9割減らした。でも、その数はここ数年、また増えている。借金の入口が、お店の窓口からスマホに移ってきたからだ。順番に見ていく。
1. ブラジルで、何が起きているの?
まず、数字を並べておく。
セラーザが数える「返済が遅れて記録が残っている人」は8,398万人で、子どもも含めた人口(約2億1,300万人)の4割にあたる。世帯の調査の29.9%とは、数え方がちがう。
10月4日の大統領選挙では決着がつかず、10月25日に決選投票がある。借金は、選挙の大きな争点になっている。ルーラ大統領は9月25日、2つのことを決めた。1つは、返済が長く止まっている借金を国が安く買い取り、借りた人の借金を9割以上減らす仕組み。日本でいえば、昔の「徳政令」に近い。もう1つは、ネットの賭けの禁止だ。9月25日から新しくお金を入れられなくなり、サイトは10月6日に止まる。
徳政令は、借金をなかったことにする命令だ。日本でも、何度か出されている。
鎌倉時代と江戸時代の、ずいぶん古い例で、いまとは世の中の仕組みもちがう。それでも、どちらも借金は消えたのに、次に借りる道が細くなった。貸した分が取り返せないかもしれないなら、貸す側は貸さなくなる。
ブラジルの仕組みは、国が借金を入札(貸す側が、売りたい借金と値段を出し合う形)で買い取る。国の予算は最大150億レアル(レアルはブラジルのお金の単位、約4,500億円)で、買い取る借金は最大1,500億レアル。貸す側に戻るのは、多くても借金の1割になる計算だ。損はやはり大きい。ただ、対象は、返済が止まって2年から4年半ほどの、もとの額が1万レアル以下の借金で、貸す側にとっては、戻ってくる見込みが小さいお金でもある。入札に出すかどうかも、貸す側が決められる。昔の徳政令のように、ある日いきなり取り上げられるわけではない。
2. リボ払いで年400%って、どういうこと?
1つ目の疑問。ブラジルの年の金利は、毎月の利息にまた利息がつく計算で年に直した数字だ。だから年444.9%は、1か月にすると約15%になる。
1か月の利息は、日本のリボ払いの約12倍だ。
ブラジルも、手は打っている。2024年から、カードの支払いを先に延ばしたときにつく利息などは、合計でもとの借金の額までと上限が決まった(税金は別)。10万円なら、利息は合わせて最大10万円で、返す額は多くても20万円になる。年444.9%は、上限を考えずに年に直した金利だ。それでも、もとの額に届くまでは、利息がふくらんでいく。
では、貸している銀行は大丈夫なのか。いまのところ、びくともしていない。いちばん大きい銀行のイタウは、2026年4〜6月の利益が124億レアル(約3,700億円)だった。返ってこない分は、あらかじめ「引当金」として見込んで積んでいる。大手4行が4〜6月の3か月で新しく積んだ分だけで、約470億レアル(約1兆4,000億円)にのぼる。それでも利益が出るのは、金利が高いからだ。
年400%を超える金利には、返ってこない分の損も見込まれている。返せている人が、その分まで払っている形だ。返済が止まった借金は、話し合って減らして返してもらうか、回収の会社に安く売る。ただ、中央銀行が金融機関に聞いた調査でも、7〜9月の返済の遅れはさらに増えるという見方だった。
3. なぜ、そこまで借りてしまうの?
2つ目の疑問。理由は3つ重なっている。
1つ目、スマホで、すぐ借りられる。 ブラジルでは、ここ数年でネットの銀行や金融の会社が一気に広がった。国際通貨基金(IMF)によると、ブラジルの家計の借金を押し上げたのは、カードと、担保(返せないときに渡す財産)のいらないローンだ。その先頭にいるのが、ネットの金融の会社だ。お店に行かなくても、スマホの画面で借りられる。
2つ目、ネットの賭けが、追い打ちをかけた。 ブラジルは2025年から、ネットのスポーツの賭けやカジノを、国の登録制で正式に認めた。州の財務の担当者の集まりは、国の送金データから、家計が2025年に賭けで失ったお金を625億レアル(約1兆9,000億円)と計算している。国全体の家計で、自由に使えるお金の0.68%にあたる。
3つ目、もともと金利が高い。 ブラジルの中央銀行が決める基本の金利(政策金利)は13.75%。金利を高くして、お金を借りて使う動きを抑え、物価の上がりすぎを止めようとしている。お店や銀行が貸すときの金利は、そこにさらに上乗せされる。
暮らしに余裕のない家ほど、苦しい。最低賃金の3倍までの収入の世帯では、85.1%が借金を抱え、38.8%が返済に遅れている。
ブラジルでは、約1,640万人がファベーラ(都市の中で、正式な区画の外に広がった住宅地)で暮らしている。人口の8.1%にあたる(2022年の国勢調査)。
ネットの賭けは、暮らしに余裕のない家にも届いていた。中央銀行の調べでは、2024年8月の1か月で、約500万人が賭けの会社にスマホで送金している。国が低所得の家庭に配る手当(ボルサ・ファミリア)を受けている人たちで、送ったお金は合わせて30億レアル(約900億円)。半分の人は、100レアル(約3,000円)以下だった。
返せなくなった人の多くは、借金が消えないまま、信用情報(お金の借り方と返し方の記録)に最長5年、記録が残る。記録が残るうちは、カードやローンを作りにくくなる。日本の自己破産(裁判所に認めてもらい、借金を消してもらう手続き)に近い仕組みもあるけれど、手間がかかり、ほとんど使われていない。そのあいだ頼れるのが、もっと高い金利の貸し手だけ、ということも起きる。
4. 日本は、大丈夫なの?
3つ目の疑問。実は日本は、20年前に同じような道を通っている。
2000年代の前半、日本の消費者金融(個人に、担保なしでお金を貸す会社)の金利は、法律の上限が年29.2%だった。借金を返すために別の会社から借りる人が増え、何社もの借金が重なる「多重債務」が社会問題になった。自己破産は、2003年に24万件を超えている。
そこで国は、法律を変えた。2006年12月に改正貸金業法が全会一致で成立し、2010年6月18日にすべての決まりが始まった。
効き目は、数字にはっきり出ている。消費者金融などの5社以上から借りている人は、2007年3月の171万人から、2025年3月には14.4万人まで減った。9割以上の減り方だ。自己破産も、2024年は7万6,309件と、ピークの3分の1以下になっている。
ブラジルは、金利が年400%を超えるところまで来ている。日本は20年前に、年29.2%の時点でブレーキをかけた。
5. それでも、日本も人ごとじゃない
日本の数字も、ここ数年はまた動きはじめている。
5社以上から借りている人は、8年で1.7倍になった。20年前の171万人から見れば、まだ少ない。でも、向きは上に変わっている。
目を引いたのは、借金の入口が変わってきたことだ。
スマホの「後払い」。 ネットで買い物をして、支払いをあとにする仕組みだ。調査会社の推計では、使った額は2024年度に約1兆7,000億円で、2029年度には約2兆8,000億円になる。東京商工リサーチは、若い人を中心に後払いが広がり、借金がふくらむ理由の1つになっているようだ、と見ている。
ネットの賭け。 日本では、ネットの賭け(オンラインカジノ)は違法だ。それでも警察庁の調査では、使ったことのある人は約337万人と推計され、1年に賭けられたお金は約1兆2,423億円にのぼった。2025年9月からは、違法なサイトへ人を誘う広告や投稿も禁止されている。
ブラジルで借金を増やした2つ、スマホで借りることとネットの賭けは、日本にもすでにある。
それに、「月々いくら」で見せる買い方も増えた。月990円で新型iPhoneが持てる仕組みは、端末代の分割払いだ。2年後に端末を返せば、残りを払わなくてよい形にして、月々を小さく見せていた。残クレで家を買う住宅ローンは、月々を小さく見せるかわりに、最後に大きな支払いを残す。どちらも、月々の数字だけを見ると、借金に見えにくい。
6. 国の借金は、どうなの?
もう1つだけ。ブラジルの国の借金は、GDP(国の経済の大きさ)の82.9%。そして利払いだけで、直近の1年にGDPの8.86%を払っている。金利が高いからだ。
日本の国の借金は、国際通貨基金の計算でGDPの2倍を超える。ブラジルよりずっと多い。それでも、2026年度の予算の利払いは13兆円ほどで、GDPの約2%におさまっている。金利が低かったからだ。数え方は国によって少しちがうけれど、差は大きい。
その金利が、上がりはじめている。長期金利(10年の国債の金利)は30年ぶりに3%を超え、国の予算でも利払いがふくらんできた。借金が多い国ほど、金利が上がると利払いが大きくふくらむ。これも、人ごとではない。
7. わたしの見方
貸す者のしもべとなる。
旧約聖書『箴言』22章7節
旧約聖書におさめられた『箴言(しんげん)』の一節だ。箴言は、暮らしの知恵や教えを集めた書で、紀元前にまとめられている。お金を借りた人は、返し終わるまで、貸した人の都合に合わせて暮らすことになる。何千年も前から、そう言われてきた。
金利は、受け取る側にいれば味方になる。わたしが受け取っている高配当株の配当や、BND(アメリカの債券をまとめて持つETF)の利息は、こちら側のお金だ。でも、払う側に回ると、金利は敵になる。年15%でも年400%でも、払う側にいるかぎり、金利は敵だ。
だから、わたしは基本、借金をしない。ローンも組まないし、残クレも使わない。金利は味方にはするけれど、敵にはしない。
わたしは、貸す側、金利を受け取る側でいたい。そして、読んでくれる人みんなが、そちら側に立てるように、これからも調べたことをここに書いていく。
8. まとめ
- ブラジルでは世帯の82.0%が借金を抱え、返済が遅れている人は8,398万人で過去最多
- カードのリボ払いは年444.9%。10万円を借りると、1か月の利息は約1万5,000円で、日本のリボ払いの約12倍
- スマホで簡単に借りられることと、ネットの賭けが重なった。賭けは9月25日に禁止が決まり、10月6日にサイトが止まる
- 日本も20年前、5社以上から借りる人が171万人いた。法律で上限をつけて9割以上減らした
- でも日本も、ここ数年は多重債務と自己破産がまた増えている。入口は後払いやネットの賭け
- 国の借金は日本のほうがずっと多いが、金利が低くて利払いは小さかった。その金利が上がりはじめている
- わたしは基本、借金をしない。金利は味方にはするけれど、敵にはしない。貸す側、受け取る側でいたい
・返済が遅れている人:O Povo(セラーザ、2026年8月)
・金利:O Povo(ブラジル中央銀行、2026年8月の数字)、Agência Brasil(2026年9月)。政策金利はブラジル中央銀行(2026年9月16日)
・リボ払いの利息の上限:ブラジル法律第14.690号 第28条(「利息と手数料の合計は、もとの借金の額を超えてはならない」)、InfoMoney
・ブラジルの銀行:イタウ・ウニバンコ 2026年4〜6月期決算、The Rio Times(大手4行の引当金)、Seu Dinheiro(ブラジル中央銀行の金融機関調査)
・借金の買い取りと賭けの禁止:Agência Brasil(2026年9月)、同、Bloomberg(2026年9月25日)
・日本の徳政令:コトバンク「永仁の徳政令」、コトバンク「棄捐令」
・大統領選挙:ブラジル上院ニュース(2026年10月4日)
・ブラジルの人口:ブラジル地理統計院(IBGE)の2025年の推計(約2億1,300万人)
・ファベーラ:SBT News(ブラジル地理統計院 2022年国勢調査、2024年11月公表)
・ボルサ・ファミリアと賭け:O Povo(ブラジル中央銀行の資料、2024年9月)
・返せなくなった人の扱い:サンパウロ州裁判所「過剰債務法」の解説、Dizer o Direito(信用情報の記録は最長5年)、連邦直轄区裁判所「民事破産」
・ネットの金融と借金:ロイター「Some Brazilian voters are feeling burned by fintech revolution」(2026年9月18日、IMFの指摘)
・賭けで失ったお金:Agência Brasil(2026年8月6日、州財務長官の集まり Comsefaz の試算)。円はYahoo Financeのレアル円(1年の平均、約30円)で換算
・ブラジルの政府の借金と利払い:CNN Brasil(ブラジル中央銀行、2026年8月)、Agência Brasil
・日本の貸金業法:金融庁「貸金業法のキホン」
・5社以上から借りている人:日本貸金業協会(日本信用情報機構の数字)。3社以上は日本経済新聞
・自己破産:金融庁「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」資料(2025年10月1日、司法統計)、東京商工リサーチ(2025年の速報)
・リボ払いの金利:楽天カードなどのカード会社の案内
・後払い:矢野経済研究所
・オンラインカジノ:警察庁の調査(2025年3月公表)、神奈川県「ギャンブル等依存症対策基本法の改正」
・日本の政府の借金と利払い:IMF「Fiscal Monitor」(2026年4月)、nippon.com(2026年度予算)
・格言:旧約聖書『箴言』22章7節の後半(英文は欽定訳聖書、訳はわたし)




