「ユーロ危機の再来」って本当? フランスの金利上昇と、ヨーロッパの銀行株の関係
10月3日の朝、日経にこんな見出しが出た。「フランス金利上昇、欧州金融株に波及 不安連鎖で『ユーロ危機を想起』」。フランスの国債が売られ、ドイツの国債との金利の差が大きく広がった。その不安が、ヨーロッパの銀行の株にも広がっている、という内容だ。
わたしは正直、なにも連想しなかった。ユーロ危機については、ギリシャから始まったやつ、というくらいの記憶しかない。そのころは、まだ投資を始めていない。
でも、内容を確認すると、わからないことだらけだ。
🤔「国債の不安が、なぜ銀行の株に広がるの?」
🕰️「ユーロ危機って何? 今回はあのときと同じなの?」
🌏「オルカンを持つわたしには、関係あるの?」
結論から言うと、フランスの金利が上がっているのは、国の借金が多いのに、政治が混乱していて、それを減らす道筋が見えないからだ。
銀行の株に広がるのは、銀行が自分の国の国債をたくさん持っているから。国債の値段が下がると、銀行はお金の面で力を失い、株まで売られる。
ユーロ危機は、2009年にギリシャから始まった、国の借金をめぐる危機だ。今回は形が似ているが、いまは2011年のころにはなかった、国債を無制限に買い支える仕組みがある。ただ、まだ一度も使われていない。
わたしが積み立てているオルカン(全世界の株に投資する投資信託)の中のフランスは2.0%。持ち物への影響は小さい。
順番に見ていく。
1. 何が起きたの?
まず、何が起きたのかを見ておく。
フランスとドイツの金利の差は、ふだんはもっと小さい。7月には0.8%ほどだった。それが、3か月で倍近くに広がっている。
金利の差が広がるというのは、「フランスにお金を貸すなら、ドイツより多く利息をもらわないと割に合わない」と考える人が増えた、ということだ。国債が売られると、値段が下がり、金利が上がる。もらえる利息の額は決まっているので、安く買えるほど、利息の割合(金利)は高くなるからだ。この関係は、10月3日の雇用統計の記事でも書いた。
一方、ドイツの国債は買われている。不安になったお金が、より安全だと思われる先へ逃げた形だ。
2. 同じユーロなのに、なぜフランスだけ金利が上がるの?
同じユーロを使っていても、国債を出すのはそれぞれの国だ。フランスの国債は、フランスという国の借金の借用書。だから、国ごとに信用の度合いがちがい、金利もちがう。
ここで、ひとつ疑問がわいた。それなら、ドイツの人がフランスの国債を買えば、金利は高いし、為替の心配もないのでは?
実際に、そう考えて買う人もいる。でも、高い金利は、危なさへのごほうびでもある。ユーロ危機のとき、ギリシャは国債の約束を守れず、2012年には、持っていた投資家が額面(返してもらう約束の金額)の半分以上を失った。いまのように金利が上がれば、持っている国債の値段も下がる。「この金利なら割に合う」と思う人と、そう思わない人の折り合いが、いまの差だ。
いま、フランスの金利は、イタリアやスペインより高い。ユーロ危機のとき、危ないと言われたのはイタリアやスペインの側だった。
理由は、大きく分けて2つある。
まずは、借金の多さだ。
フランスは、赤字(毎年の足りない分)が大きく、EUのルールの目安(GDP比3%)を上回っている。来年は、過去最大の3,400億ユーロの国債を出す計画だ。ヨーロッパ中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、9月30日のフランスの新聞のインタビューで、フランスの借金は「GDP比120%で、減らす道筋がなく深刻」だと話している。
日本と並べると、意外なことがわかる。日本の借金は、フランスの倍近い。格付けも、S&Pでは同じA+だ。それなのに、日本の金利のほうが低い。
理由としてよく挙げられるのは、国債の持ち主のちがいだ。フランスの国債は、半分以上を海外の投資家が持っている。日本の国債は、日銀や国内の銀行などが大半を持ち、海外は1割前後にとどまる。海外の投資家は、不安になると売って出ていきやすい。また、日本は自分の国の通貨の円で借りているが、ユーロは、フランスだけでは刷れない。自分で通貨を刷れる国は、返すお金に困りにくいと見られやすい。
ただ、日本も無関係ではない。日本の10年もの国債の金利も、9月1日に約30年ぶりに3%に達し、10月2日は3.09%だ。財務省も資料で、信用されているからといって借金を減らさなくていいわけではない、と注意している。
もう1つは、フランスの政治だ。いまのフランスの首相は、議会で過半数を持たない少数与党を率いている。前の首相2人は、予算を切りつめる案をめぐって退いた。10月1日には、首相が2027年の予算案を出した。節約と増税をあわせて540億ユーロ分の対策をとり、赤字は2026年にGDP比5.4%まで増える見込みで、それを2027年に5.0%へ減らす計画だ。でも、議会で通るかはわからない。2027年春には大統領選もある。
借金を減らすには、予算を切りつめる必要がある。でも、切りつめる案を出すと、政権が倒れる。この行き詰まりを、国債を売り買いする人たちが見ている。
資産運用会社フィデリティのマリオン・ル・モルエデック氏は、「市場は政治を試している。政治家に『予算に気をつけろ』と言っている」と話す。
3. 国債の不安が、なぜ銀行の株に広がるの?
2つ目の疑問。
銀行は、預かったお金の一部で、国債を買っている。安全で、すぐに売れるからだ。とくに、自分の国の国債を多く持ちやすい。
国債が売られて値段が下がると、銀行が持っている国債の値打ちも下がる。損に耐える力が減ると見られるので、銀行の株も売られやすい。もし銀行が本当に危なくなり、国が助けることになれば、国の借金がまた増える。そうなると、国債はさらに売られる。
国の不安が銀行に移り、銀行の不安がまた国に戻ってくる。この悪循環は、ユーロ危機のときに実際に起きた形だ。
ロイターによると、ヨーロッパの銀行が持つ国債は、2022年からの3年で約7,000億ユーロ増えた。そのうち約6割が、フランス、ドイツ、スペインの銀行だ。ヨーロッパの銀行の監督当局も、国と銀行の結びつきが強まっていることを心配している。
一方で、「フランスの銀行が持つフランス国債は、資産全体の5%に満たず、管理できる」という2024年末の分析もある。10月2日、ヨーロッパの銀行の株はほぼ横ばいで、前の日のような大きな下げは続かなかった。
4. ユーロ危機って何? 今回はあのときと同じなの?
3つ目の疑問。
ユーロ危機は、2009年の終わりに、ギリシャが財政赤字を実際より小さく見せていたとわかったことから始まった。不安は、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへと広がり、2011年から2012年にかけてがいちばん深刻だった。イタリアの10年もの国債の金利は、一時7%台まで上がっている。
流れが変わったのは、2012年7月だ。ECBのドラギ総裁(当時)が「ユーロを守るためなら、何でもする」と話し、そのあと、困った国の国債を買い支える仕組みを用意した。それで、ようやく落ち着いていく。
いまのECBには、TPI(伝達保護措置)という仕組みがある。金利が「理由なく、無秩序に」上がったときに、その国の国債を買い支える。TPIを使う条件の1つは、EUの財政のルールを守っていることだ。でもフランスは、赤字が大きすぎるとしてEUから是正を求められている。そこが壁になる、と報じられている。フランスの中央銀行(フランス銀行)の総裁も、ECBの助けを当てにしないよう注意している。
ラガルド総裁は、ヨーロッパの金融のしくみは、2008年(リーマン・ショック)や2011年の危機のときより頑丈になった、とも話している。似た形ではあるけれど、同じことが起きるとは限らない。
5. オルカンを持つわたしには、関係あるの?
4つ目の疑問。
わたしは、オルカンを積み立てている。先進国が入っていることは意識しているけれど、ふだんは、代表的な指数を月に1回見るくらいだ。今回、オルカンの中身を見てみた。
アメリカが6割をこえるなかで、フランスは2.0%、ドイツは1.9%。ヨーロッパの1つの国の比率は小さい。業種で見ると、銀行などの金融は16.6%ある。ただ、その中には、アメリカや日本の銀行も入っている。
もう1つ、為替がある。ユーロ円(1ユーロが何円か)は、9月1日の185円台から、10月2日には177円台まで下がった。ユーロに対して円が高くなったので、オルカンの中のヨーロッパの株は、円で見ると少し目減りしている。
フランスの国債が売られても、わたしの持ち物への影響は、いまのところ小さい。
6. わたしの見方
「2通りさ。だんだんと、そして突然に」
アーネスト・ヘミングウェイ『日はまた昇る』(1926年)
ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』に出てくる会話だ。破産は、少しずつ進んで、ある日いっきに来る。
国の借金も、似ていると思う。フランスの借金は、何年もかけて少しずつ増えてきた。2025年末にGDP比116%、2026年6月末には119%。9月に入ると、金利の差もじわじわと開きはじめた。それが10月1日には、その日1日だけで金利の差が0.14%広がった。2020年3月(コロナ・ショック)以来の広がり方だ。
調べてみてわかったのは、借金の多さそのものより、それを減らす道筋が見えないことに、市場は反応しているということだ。
フランスはいま、道筋の見えない暗闇の中を進んでいる。でも、きっと日はまた昇る。
7. まとめ
- 10月1日から2日にかけて、フランスの国債が売られ、ドイツとの金利の差が一時約1.5%と2012年以来の大きさに。ヨーロッパの銀行株も10月1日に4%近く下がった
- 同じユーロでも、国債は国ごとの借金。フランスの金利は、いまやイタリアより高い
- 理由は、借金の多さ(2026年6月末にGDP比119%)と、それを減らす予算が政治の混乱で通りにくいこと。市場が政治を試している
- 銀行は自分の国の国債を多く持つので、国債の不安が銀行に広がりやすい。ユーロ危機でも起きた悪循環
- いまはECBに買い支えの仕組みがあるが、一度も使われておらず、フランスに使えるかは壁がある
- オルカンの中のフランスは2.0%。わたしの持ち物への影響は、いまのところ小さい
・金利と銀行株:Euronews(10月1日)、Euronews(10月2日)、Saxo(10月2日)、みんかぶFX、同、Bloomberg、ロイター、BFM Bourse
・財政と格付け:INSEE(2026年5月29日。6月末の119%は第2四半期の速報)、Fortune(10月1日)、S&P(2025年10月17日)、Fitch(2026年8月28日)
・予算案:ロイターほか(2026年10月1日)
・ラガルド総裁:La Croix(2026年9月30日)のインタビューを伝える報道
・銀行の国債保有:ロイター(2026年3月4日)、Ostrum Asset Management(2024年12月)
・ECBの仕組み:ロイター(2026年10月1日)
・ギリシャの国債の削減:ユーロ圏財務相会合の声明(2012年2月21日)(額面の53.5%を削減。交換は2012年3月)
・日本との比較:IMF「World Economic Outlook」(2026年4月)、フランス国債庁(海外の割合)、日本経済新聞(日本の10年金利)、共同通信(9月1日の3%)、日本銀行「資金循環統計」(2026年6月末)、財務省「日本の財政関係資料」(令和8年4月)
・2011年の金利の差:The Local(2011年11月15日)
・オルカン:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」月次レポート(2026年8月31日現在)
・ユーロ円:七十七銀行 ユーロ仲値
・格言:Ernest Hemingway, The Sun Also Rises(1926年)




