インデックスが、アクティブを逆転した。「増えすぎたら市場が壊れる」という3つの批判を調べてみた
9月15日、日本経済新聞が「株式投信、指数連動型が初の過半に」と伝えた。株に投資する日本の投資信託で、日経平均やS&P500のような指数(インデックス)に連動するインデックス型の残高が、指数を上回る成績を目指すアクティブ型を、初めて上回ったという。どちらも約78兆円で、インデックス型がほんのわずかに多い。20年前は、アクティブ型のほうがずっと大きかった。
9月24日の朝、リベシティ(わたしが入っている、お金の学びのオンラインコミュニティ)の両学長のライブで、このニュースがピックアップされていて、もう少し調べてみたいと思った。
🤔「なぜ、みんなが指数を買ったら、株の値段がおかしくなるのか」
😤「なぜ、黙って持っているだけの株主ばかりになるのか」
🏠「なぜ、暴落のとき、みんなが一緒に沈む危険があるのか」
自分が納得できるまで、調べてみる。
2つ目から4つ目のなぜは、「インデックスが増えすぎると、市場が壊れる」という3つの批判から来ている。
② 会社にものを言わない株主ばかりになる
③ 暴落のときに、みんなで一緒に沈む
どれも、わたしの持ち物にそのまま関わる。わたしが持っている株の投資信託は、オルカン(全世界の株に分散する投資信託)とS&P500で、どちらもインデックス型だ。アクティブ型の投資信託は、1本も持っていない。オルカンは、毎月積み立てている。
結論から言うと、3つの批判は、どれもゼロではない。研究者のあいだでも、意見が割れている。でも、そこまで心配はいらない、というのがわたしの答えだ。
調べてみると、3つの批判の根っこは同じだった。インデックスは、どの会社が高いか安いかを判断せず、全部を割合どおりに買う。①は、そのせいで値段がおかしくなるという批判だ。でも、会社ごとの値段を決めているのは、選んで売り買いする人たちだ。②は、選べないから、売って抗議できないという批判だ。でも、売れないぶん、票と対話で声を出している。③は、全部を一緒に買うから一緒に沈むという批判だ。一緒に動く面はあるが、大きな暴落は、インデックスが生まれる前からある。順番に見ていく。
1. 逆転の中身。長い目で見ると、インデックスが勝ってきた
1つ目のなぜ、「なぜ、インデックスが人気なのか」。いちばんの理由は、長い目で見ると、インデックスのほうが勝ってきたことだ。S&P500などの指数をつくっているS&P社は、アクティブ型のファンドが指数に負けた割合を、国や地域ごとに毎年数えている。日本で売られているファンドの、最新の数字がこれだ。
たとえば、日本の株に投資するアクティブ型は、100本あれば76本が、日本の株全体の指数に負けていた。世界の株に投資するアクティブ型は、1本も指数に勝てていない。
なぜ、勝てないのか。大きいのは手数料の差だ。アクティブ型は、どの会社を買うかをプロが選ぶ。そのぶん、手数料が高い。日経によると、手数料の平均はインデックス型が年0.39%、アクティブ型が年1.53%で、差は年1%あまり。アクティブ型は、毎年この差を取り返してから、やっと同じ成績になる。
平均では取り返せない理由は、9月20日の記事で、シャープという経済学者の「アクティブ運用の算数」として書いた。アクティブ型をまとめた平均は、手数料を引く前は市場と同じになり、差がつくのは手数料のぶんだけ、という話だ。
勝ってきたことのほかに、わたしはもう1つ、大きな理由があると思っている。インデックスの良さを、言い続けてきた人たちの力だ。1976年に最初のインデックス投資信託をつくったボーグルは、2019年に亡くなるまで、市場をまるごと持つことをすすめ続けた。バフェットは、2008年から10年間、S&P500のインデックスファンドとヘッジファンド(お金持ちや大口の投資家から集めたお金を、自由なやり方で運用するファンド)のどちらがもうかるかという賭けをして、インデックス側で勝っている。そして、それを自分の言葉で伝えてきた個人投資家やインフルエンサーがいる。ここは数字で確かめたわけではなく、わたしの実感だ。
2. 批判① なぜ、株の値段がおかしくなると言われるのか
2つ目のなぜ、批判①。これは、インデックスへの批判でいちばんよく聞くものだ。インデックスは、会社の中身を調べずに、指数の割合どおりに株を買う。業績が悪い会社でも、指数に入っていれば買われる。そんな買い手ばかりになったら、株に正しい値段がつかなくなる、という批判だ。
株の値段を決めるのは、持っている量ではなく、その日の売り買いだ。インデックスのファンドも、毎日売り買いはしている。積立のお金が入れば買い、解約されれば売る。ただ、そのときは全部の会社を、割合どおりにまとめて買い、まとめて売る。トヨタが割安だから多めに買う、ということはしない。だから、会社ごとの値段の差は動かさない。
インデックスが、どの会社を持つかを入れかえるのは、指数の中身が変わるとき(会社が指数に入ったり、外れたりするとき)だけだ。データがそろっているアメリカで見ると、こうなる。
株の約2割を持っていても、会社を入れかえる売り買いは、取引所全体の1%あまり。会社ごとの値段を決めているのは、「この会社は割安だ」と判断して、選んで売り買いする人たちだ。アクティブ型のファンド、ヘッジファンド、証券会社、それに自分で株を選ぶ個人が、そこにいる。
それでも、インデックスが増え続けたらどうなるか。1980年に、グロスマンとスティグリッツという2人の経済学者が、答えになる考え方を出している。値段がおかしくなると、それを見つけた人が儲けられるようになる。儲けられるなら、調べて売り買いする人がまた出てくる。だから、誰も調べない市場は長続きしない。インデックスを広めたボーグル自身も、2017年に「値段は少し正しくなくなる。でもそうなれば、大きく勝つプロも出てくるし、大きく負けるプロも出てくる」と話している。
ただ、影響がまったくないわけではない。ここは、研究者のあいだで意見が割れている。
つまり、正しい値段になるまで少し時間がかかるようになった、値段が少し動きやすくなった、という研究はある。でも、値段がつかなくなるほど壊れた、という研究は見当たらない。そして、遅れたぶんは、ボーグルの言う「大きく勝つプロ」が出てくる余地になる。
3. 批判② なぜ、黙って持っているだけの株主と言われるのか
3つ目のなぜ、批判②。アクティブ型なら、経営がひどい会社の株は売ればいい。インデックスは、指数に入っているかぎり売れない。「売るぞ」と言えない株主ばかりになったら、経営者は好き勝手をする、という批判だ。
でも、売れない株主にも、できることがある。株主総会で票を入れることと、経営者と直接話すことだ。売れないからこそ、こちらに力を入れる、という考え方になっている。
このように、インデックスの株主も、黙っているわけではない。ただ、逆の結果の研究もある。2022年のヒースほかの研究では、同じ会社の株を持っていても、インデックスのファンドは、アクティブと比べて経営者の議案に反対しにくかった。経営者と効果のある話し合いをしている証拠も、見つからなかったという。
なぜ、黙りがちになるのか。2019年に、法学者のベブチャックとハーストが、会社を見張ることにお金をかけにくい理由を2つ挙げている。
一方で、ボーグルは2018年、ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、インデックスのファンドがアメリカの株の半分を持つようになれば、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリートという大手の運用会社3社が、アメリカの株の3割以上を持つかもしれないと書いている。黙りすぎることより、少数の会社の声が大きくなりすぎることを心配していた。その対策として、いま大手の運用会社は、ファンドを持つ人が自分で投票の方針を選べるしくみを広げている。票を運用会社がまとめて入れるのではなく、持っている人に分けて返すしくみだ。
4. 批判③ なぜ、みんなで一緒に沈むと言われるのか
4つ目のなぜ、批判③。インデックスは、指数の中の株を、割合どおりに持つ。お金が入れば全部をまとめて買い、出ていけば全部をまとめて売る。だから、良い会社も悪い会社も、同じ日に一緒に上がり、一緒に下がるようになる。みんなが同じものを持っていたら、暴落のときに全員で沈む、という批判だ。
一緒に動く度合いが強まる、という研究は、たしかにある。上場投資信託(ETF。多くは指数に連動する)が多く持っている株ほど、値動きが大きくなる、という2018年の研究もある。一方で、インデックスファンドの運用会社バンガードは、インデックスの持ち分と市場の値動きの大きさに、はっきりした関係は見られないとしている。
では、みんなで一緒に沈むような大きな暴落は、インデックスが生んだのか。記録を見ると、そうではない。
暴落は、インデックスが生まれるずっと前からある。株を持つかぎり、どんな持ち方でも避けられない。
5. わたしの見方
ジョン・ボーグル(インデックスファンドを広めた人、2017年)
結論、わたしは、インデックスをやめるつもりはない。なぜなら値段のすきをついて儲けようとする人は、一定数いるからだ。そういう人がい続ける以上、そこまで心配はいらないと思っている。②の株主の声も、③の暴落も、調べたかぎり、インデックスをやめる理由になるほどではなかった。
個人的にはひとつ、ふしぎに思うことがある。長い目で見れば、インデックスがいちばん良いやり方だと思う。それなのに、なぜ、みんながそうしないのか。
答えは、わたし自身にあるのかもしれない。わたしは、配当がほしくて、日本の高配当株を持っているし、遊び枠ではあるがビットコインも持っているからだ。
今回の逆転で、インデックス型は、日本で売られている株式投信の半分を少し超えた。それでも、アクティブ型にはまだ約78兆円が残っている。わたしは、これからもアクティブ型ではなくインデックス型を積み立て続ける。
6. まとめ
- 日本の株の投資信託で、インデックス型が初めてアクティブ型を上回った。どちらも約78兆円
- 人気の理由は、長い目で見た勝率。世界の株のアクティブ型は、15年で1本も指数に勝てていない。言い続けてきた人たちの力も大きいと思う
- 3つの批判の根っこは同じ。インデックスは会社を選ばず、全部を割合どおりに買う
- ①値段への影響が少し出たという研究はあるが、壊れたという研究は見当たらない
- ②票と対話で声を出している。ただ、黙りがちだという研究もある
- ③大きな暴落は、インデックスが生まれる前からある
- オルカンの積立は続ける。みんながインデックスにしない理由のヒントは、配当がほしくて高配当株も持つわたし自身かもしれない
・バフェットの賭け:バークシャー・ハザウェイ「2017年 株主への手紙」(S&P500のインデックスファンドは10年で年8.5%、ヘッジファンドに投資する5本のファンドは年0.3〜6.5%)
・負けた割合:S&P Dow Jones Indices「SPIVA Japan Year-End 2025」(2026年3月9日)、数え方は「About SPIVA」(途中でなくなったファンドも含めて数える)
・持っている量と売り買いの量:ICI「2026 Investment Company Fact Book」、Vanguard「Setting the record straight: The truths about index fund investing」(2026年8月)
・値段の研究:Grossman & Stiglitz「On the Impossibility of Informationally Efficient Markets」(1980年)、Coles ほか(2022年)、Sammon(2025年)、Haddad ほか(2025年)
・株主としての研究とルール:Appel ほか(2016年)、Heath ほか「Do Index Funds Monitor?」(2022年)、Bebchuk & Hirst「Index Funds and the Future of Corporate Governance」Columbia Law Review(2019年)、金融庁「スチュワードシップ・コード(第三次改訂版)」(2025年6月)、BlackRock「Voting Choice」、Vanguard「Investor Choice」(ファンドを持つ人が投票の方針を選べるしくみ)、各社の議決権行使結果(野村、三井住友トラスト、アセットマネジメントOne)
・暴落の研究と記録:Federal Reserve History「Stock Market Crash of 1929」、「Stock Market Crash of 1987」、Ben-David, Franzoni & Moussawi「Do ETFs Increase Volatility?」Journal of Finance(2018年)、Da & Shive「Exchange traded funds and asset return correlations」European Financial Management(2018年)、John C. Bogle「The First Index Mutual Fund」(1997年)
・ボーグルの言葉:Yahoo Finance のインタビュー(2017年5月)、ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿「Bogle Sounds a Warning on Index Funds」(2018年11月29日)。訳はわたし




