1年前に買ったヤマハ発が1日で2割上がった。でも、うれしかったのは値上がりではなかった
「ヤマハ発動機、決算『ポジティブサプライズ』で株価上場来高値」というニュースを見た。
わたしが持っている株だ。日本の高配当株を業種で散らして100銘柄ほど持っているうちの、1社になる。
しかも買ったのは、ちょうど1年前の今日。2025年8月5日だった。
この記事は、その1年後の答え合わせだ。うれしかったのは、値上がりではなかったという話でもある。
1. 1年前の今日に買った株が、1日で2割上がった
まず、わたしの持ち分から。
1日で、+29,400円。 1年での含み益は7万7,700円になった。
場中には一時1,832円(前日比+321円、+21.24%)まで上がって、上場来高値を約2年ぶりに更新している。2024年7月につけた1,617円50銭を、株式分割を考えたうえで上回った。
2. なぜ、1日で2割も上がったのか
理由ははっきりしている。決算と同時に出た、通期予想の上方修正だ。
| 前の予想 | 新しい予想 | |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆7,000億円 | 2兆9,000億円 |
| 営業利益 | 1,800億円 | 2,600億円(+44.4%) |
| 最終利益 | 1,000億円 | 1,700億円(+70.0%) |
| 1株あたり利益 | 103.0円 | 175.2円 |
最終利益を7割も引き上げる。 これはたしかに、市場が驚く数字だと思う。
ただ、ここは正直に書いておきたい。前期(2025年12月期)の最終利益は161億円だった。今期予想の1,700億円は、その約11倍にあたる。
11倍という数字は、去年が落ちこんでいたことの裏返しでもある。 元が小さければ、倍率は大きく出る。そこは割り引いて見ておきたい。
とはいえ、営業利益2,600億円という水準そのものが大きく伸びているのは事実だ。戻っただけではなく、伸びている。
3. でも、総資産は0.05%しか増えていない
ここからが本題になる。
1日で2割。含み益は+7万7,700円。数字だけ見れば大きい。でも、わたしの資産全体に置くと、こうなる。
| 金額 | 総資産に対して | |
|---|---|---|
| ヤマハ発の評価額 | 180,500円 | 0.31% |
| この1日の値上がり | +29,400円 | +0.05% |
| 1年ぶんの含み益 | +77,700円 | +0.13% |
1銘柄が1日で2割上がっても、資産全体は0.05%しか動かない。
これが、100銘柄に散らすということだった。
ここは、あまり正直に書かれない部分だと思う。
分散は、損を小さくしてくれる。でも同時に、得も小さくする。 どちらか片方だけということはない。
先月の資産記録では、これの逆が起きていた。主力のインデックスが45万円のマイナスだったのに、高配当株が63万円ぶん増えて資産全体はプラスになった月だ。
あのときは、分散が助けてくれた。今回は、分散が薄めた。同じ設計の、表と裏でしかない。
そして、1銘柄が2割上がっても資産が0.05%しか動かないということは、1銘柄が倒れても資産は0.3%しか減らないということでもある。わたしが欲しかったのは、後者のほうだ。
4. いちばん大事なのは、配当が50円のままだったこと
ここが、この記事でいちばん書きたかったところになる。
これだけの上方修正をしておいて、配当の予想は50円のまま、変更なしだった。
高配当株を持っていていちばん困るのは、株価が下がることではなく、配当が減ることだ。株価は上下するものだけれど、減配は、もらえるお金そのものが減る。
その配当が、据え置かれた。100株なので、年5,000円。1年前に買ったときから変わっていない。
そしてここに、高配当株のいちばん面白いところが出てくる。
| 買った値段 | 配当50円の利回り | |
|---|---|---|
| いま買う人 | 1,805円 | 2.77% 利回りが下がったので「もう遅い」と言われる |
| 1年前のわたし | 1,028円 | 4.86% 買った値段は変わらないので、下がらない |
これを簿価利回りという。自分が買った値段に対して、いくらもらえるかという見方だ。
株価が上がると、いま買う人の利回りは下がる。でも、すでに持っている人の簿価利回りは動かない。1,028円で買ったという事実は、あとから変わらないからだ。
株価が2割上がったことで、わたしの配当が増えたわけでも減ったわけでもない。 そこがいい。
5. このまま進めば、簿価利回りは5%を超えるかもしれない
そして、ここからが楽しみな話になる。
配当は今回据え置かれたけれど、増える余地は十分にある。
→ つまり利益の28.5%を配当に回している計算
一方で会社の方針は「総還元性向は中期経営計画期間累計で40%以上」(2027年度まで)
→ 方針の水準まで、まだ距離がある
※総還元性向には自社株買いも含まれるので、この差がまるごと増配になるとは限らない。
そのうえで、もし増配があったら、わたしの簿価利回りはどうなるか。1,028円で買った100株で計算してみる。
| 1株あたり配当 | 簿価利回り | 100株での年間配当 |
|---|---|---|
| 50円(いまの予想) | 4.86% | 5,000円 |
| 52円 | 5.06% | 5,200円 |
| 60円 | 5.84% | 6,000円 |
| 70円 (配当だけで還元性向40%にした場合) |
6.81% | 7,000円 |
2円。それだけで5%を超える。
安く買えていると、増配の効きが大きくなる。 ここが、待って買うことのごほうびだと思う。
ここが、高配当株のいちばんの魅力だと思っている。
会社が伸びる → 配当が増える(もらえるお金が増える)
→ 買った値段は変わらないので、自分の簿価利回りだけが上がっていく
株価が上がると、いま買う人にとっては利回りが下がる。 だから「もう遅い」と言われる。
でもすでに持っている人にとっては、株価が上がっても利回りは下がらない。むしろ増配があれば、上がる一方になる。
値上がりと配当は、取り合いではない。 いい会社なら、両方が同時に育つ。それを1年かけて見せてくれたのが、今回のヤマハ発だった。
もちろん、増配は約束されていない。業績が落ちれば減配もある。それでも、業績が伸びれば自分の利回りが上がっていく形にしてあるというのは、持っていて気持ちがいい。
6. 円安が効いた。3日前の記事の、続きだった
もうひとつ、気づいたことがある。
今回の好決算を引っぱったのは、二輪車の販売増と、円安だった。
3日前に円買い介入の記事を書いたとき、わたしはこう書いている。
円安の日は、資産の7割を占める外貨建てが守ってくれる。円高の日は、資産こそ目減りするけれど、円で暮らしているわたしの生活費は痛まない
ここに、今回もうひとつ足りていなかったものが見えた。
円安で得をしていたのは、外貨建て資産だけではなかった。 日本の株にも、円安で稼ぐ会社がいる。ヤマハ発は、まさにそれだった。
正直に書くと、円安に強い会社を、狙って入れたわけではない。業種を散らして選んでいったら、結果としてそういう会社も入っていた、というだけだ。
でも、散らすというのは、こういうことなのだと思う。何が効くかを当てにいくのではなく、どれかが効く形にしておく。今回はたまたま、円安に強い会社が当たっただけだった。
7. もうひとつ。わたしは、この会社が好きだ
ここまで数字の話ばかりしてきたので、最後にひとつだけ書いておきたい。
わたしは、ヤマハ発動機という会社が好きだ。
配当が高かったから選んだ、というのはもちろんある。でもそれだけで選んだわけではない。
前に資産を全部公開した記事で書いたけれど、わたしの日本株には自分で調べて選んだ分と、学びの場で教わって選んだ分がある。ヤマハ発は、前者のほうだ。自分で決めて買った。
ブランドスローガン:Revs your Heart(レヴズ ユア ハート)
込めた想いは「Rev ― エンジンの回転を上げるように。心躍る瞬間、そして最高の経験を、YAMAHAと出会うすべての人へ」
「rev」というのは、もともとエンジンの回転数を上げるという意味の言葉だ。そこから転じて「わくわくさせる」という使い方をする。
エンジンの回転を上げるように、人の心の回転数も上げる。 それをスローガンに置いている会社だ。
そして、それが製品に出ていると思う。
バイクでも、ボートでも、電動アシスト自転車でも、「動けばいい」で止まっていない。そこに乗る人がどんな気持ちになるかまで作り込んである。モノ創りのこだわりが、外から見ていても伝わってくる。人生を豊かにする側の会社だと思っている。
そういう会社に、少しだけお金を預けている。そう思えるのは、けっこう気持ちがいい。
そして、これは投資としても意味があると思っている。
株価が下がったとき、あわてる前に理由を調べる気になる
→ つまり、持ち続けやすい
急落のときに何もしなかった話で、何もしないでいられる形にしておくことが大事だと書いた。好きかどうかは、その「いられるかどうか」に効いてくる。
もちろん、好きだから何でもいい、ではない。業績も配当も見るし、好きな会社が減配すれば、それは残念でも事実として受け止める。好きは、選ぶ理由のひとつであって、目をつぶる理由ではない。
100銘柄のうちの1社。資産の0.31%。それでも上場来高値のニュースを見て素直にうれしかったのは、たぶんそこに理由がある。
8. まとめ
- 1年前の今日(2025年8月5日)に1,028円で買ったヤマハ発動機が、決算の上方修正で1日に+294円(+19.46%)。株価は一時1,832円まで上がり、上場来高値を約2年ぶりに更新した
- わたしの100株は評価額180,500円、含み益+77,700円(+75.58%)
- 上げた理由は通期の上方修正。最終利益を1,000億円→1,700億円(+70%)、営業利益を1,800億円→2,600億円へ。牽引役は二輪車の販売増と円安
- ただし前期の最終利益は161億円で、今期予想はその約11倍。去年が落ちこんでいたことの裏返しでもあるので、倍率は割り引いて見ておきたい
- 1日で2割上がっても、総資産5,831万円に対しては+0.05%。1年ぶんの含み益でも+0.13%。分散は守ってくれるかわりに、当たりも薄める
- でもそれは、1銘柄が倒れても資産は0.3%しか減らないということでもある。欲しかったのは、そちらのほう
- いちばんよかったのは、配当が50円のまま据え置かれたこと。高配当株で困るのは株価の下落より減配だから
- 買値1,028円に対する利回り(簿価利回り)は4.86%。いま1,805円で買う人は2.77%。同じ配当でも受け取る側の利回りは1.75倍ちがう
- 増配の余地はある。今期の1株益予想175.2円に対し配当50円で配当性向28.5%、会社の方針は総還元性向40%以上(2027年度まで)
- たった2円の増配で、わたしの簿価利回りは5%を超える(52円で5.06%、70円なら6.81%)。決まった話ではないけれど、そういう形になっている
- 株価が上がっても、すでに持っている人の利回りは下がらない。増配があれば上がる。値上がりと配当は取り合いではなく、いい会社なら両方が育つ
- 円安が効いたのは外貨建て資産だけではなかった。日本株にも円安で稼ぐ会社がいた。狙ったわけではなく、散らしていた結果だった
- そして最後にもうひとつ。わたしはこの会社が好きだ。企業目的は「世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」、スローガンは「Revs your Heart」。エンジンの回転を上げるように、人の心の回転数も上げるという意味で、製品にもそのこだわりが出ている
- 好きかどうかは、持ち続けやすさに効く。決算を読むのが苦にならないし、下がったときもあわてる前に理由を調べる気になる。ただし好きは、選ぶ理由のひとつであって、目をつぶる理由ではない
・上方修正の内容:株探「ヤマハ発、今期最終を70%上方修正」
・配当・株主還元方針:ヤマハ発動機「配当・株主還元方針」
・決算資料:ヤマハ発動機「決算・発表資料」
・企業目的とブランドスローガン:ヤマハ発動機「企業理念」/ヤマハ発動機「Revs your Heart」
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