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金利を上げると、給料は上がるの? アベノミクスの師が「利上げしろ」と言い出した理由を調べてみた
ニュース2026-08-02📖 約12分で読めます

金利を上げると、給料は上がるの? アベノミクスの師が「利上げしろ」と言い出した理由を調べてみた

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ごまもち
🐾 ごまもち
きんりを 上げたら、おきゅうりょうは 上がるの?🐾
あずき
あずき
それがね、専門家でも意見が真っ二つに割れてるの。

日銀が次にいつ利上げするかに、注目が集まっている。

そんななか、ある見出しが目に入った。「4%に利上げを」アベノミクスの師が警鐘

え、と思った。アベノミクスは、金融緩和で円安に誘導した政策だ。その理論的支柱だった人が、なぜいま逆のことを言うのだろう。

そして、もうひとつ気になった。金利を上げると、わたしたちの給料は上がるのだろうか。

順番に調べてみたら、今週ずっと追いかけてきたニュースが、ぜんぶ1本につながった


1. 実質賃金は、いまプラスになっている

まず、前提から。

📌 実質賃金の推移(毎月勤労統計)
2025年まで:4年連続でマイナス。給料は増えても、物価の伸びに負けていた
2026年5月時点:前年同月比+1.4%で、5か月連続のプラス
ただし原油高が続けば、秋以降に再びマイナスに転じるリスクも指摘されている

2025年まで4年連続でマイナスだった実質賃金は、いま5か月連続でプラスになっている。これはニュースで見て知っていた。ただ、「大企業ががんばって給料を上げているからだろう」くらいの理解しかなかった。

調べてみたら、それだけではなかった。

ちなみに、安心はできない。プラスといっても1%台で、4年ぶんのマイナスを取り返したわけではない。しかも足元では原油が上がっている。


2. 実質賃金には、上げ方が2通りしかない

ごまもち
🐾 ごまもち
じっしつって、なに?🐾
あずき
あずき
もらった金額じゃなくて、それで何が買えるか、っていう見方だよ。

ここは、押さえておくと全部が読めるようになる。

💡 実質賃金の考え方
実質賃金 = もらう額 ÷ 物価
月30万円もらっていても、物価が10%上がれば、買えるものは減る
→ だから上げる方法は2つだけ分子(給料)を上げるか、分母(物価)を下げる

そして、いまプラスに転じた決め手は、分母のほうだった。

もちろん、賃上げは実際に起きている。春闘の賃上げ率は2年連続で5%台。満額回答のニュースも、たしかにたくさんあった。分子は、ちゃんと上がっている

でも、その5%台は2024年からずっと続いている。ここ5か月で急に変わったわけではない。

変わったのは、分母のほうだった。物価の伸びが鈍った。だから同じ賃上げでも、割り算の答えがプラスに反転した。

🔍 この5か月で、動いたのはどっち?
  ここまでの動き 動いた?
分子
もらう額
5%台の賃上げが
2年続いている
水準を維持
動いていない
分母
物価
伸びが鈍った ここが動いた
分母(物価)が小さくなれば、割り算の答えは大きくなる。プラス転換を作ったのは、こちら側だった。

わたしは「大企業ががんばっているから」だと思っていた。それも半分は合っている。でも、この5か月の反転を作ったのは、物価のほうだった。

だから、原油が上がって物価の伸びがまた大きくなれば、実質賃金は簡単にマイナスへ落ちる。賃上げをがんばっていても、だ。1章で「安心はできない」と書いたのは、そういう意味だった。

分母が効いている。 ここが、このあとの話につながる。


3. アベノミクスの生みの親が、逆のことを言い出した

さて、冒頭の見出しだ。

発言しているのは浜田宏一氏。イェール大学の名誉教授で、安倍政権では内閣官房参与を務めた、アベノミクスの理論的支柱そのものと言っていい人だ。

🗣 浜田宏一氏の主張
「日本もアメリカの政策金利の3.75%の水準まで金利を引き上げればいい
「植田日銀の金融政策は『臆病』だ

理屈は、こうだ。

日本とアメリカで金利差が大きいと、安い円を借りてドルで運用する取引が起きる(キャリートレードという)。それが円を売る力になり、円安が進む。円安は輸入品を高くするので、物価が上がる。

だったら、金利差そのものを消せばいい。

ごまもち
🐾 ごまもち
でも その人、まえは ぎゃくのこと 言ってたんでしょ?🐾
あずき
あずき
そこなの。でも調べたら、そんなに矛盾してなかったんだ。

アベノミクスは、大規模な金融緩和で円安に誘導する政策だった。円安は輸出企業を助け、物価を上げる。デフレを止めるための処方箋だった。

いまはどうか。物価はもう上がっていて、日銀が目標にしている2%に近づいてきている。植田総裁も「これまでとは違って上振れリスクは重視して見ないといけない」と言っている。

デフレのころは、物価を上げるために円安が必要だった。でもいまは、その円安が、物価を目標より上まで押し上げてしまうかもしれない薬だったものが、効きすぎる側に回りはじめている

つまり、意見が変わったのではなく、状況が変わった

同じ人が、同じ理屈で、逆の処方箋を出している。 これは調べていて、いちばん面白かったところだった。薬と毒は、体の状態で入れ替わる。


4. でも、専門家の意見は真っ二つに割れている

じゃあ利上げすればいいのか、というと、そう簡単でもなかった。

⚖ 利上げは物価に効くのか
立場 言い分
効かない いまの物価高は原材料やエネルギーのコスト由来で、これをコストプッシュ型という。買いたい人が増えすぎて起きるディマンドプル型ではないので、需要を冷やす利上げでは止まらない
効く 円安もインフレの原因のひとつ。そして円安に効く手段は利上げしかない

どちらも筋が通っている。ただ、よく読むとこの2つは、別の経路の話をしていた。

利上げから物価に届くまでには、道すじが2本ある

🛤 利上げが物価に届くまでの、2つの道すじ
① 需要を冷やす道
利上げ → お金を借りにくくなる → みんなが買い控える → 物価が下がる

② 円安を止める道
利上げ → 円安が止まる → 輸入品が安くなる → 物価が下がる

どちらの道も、理屈としては成り立つ。問題は、いまのインフレにどちらが効くかだ。

いまの物価高は、買いたい人が増えすぎて起きているのではない。原材料やエネルギーが高いから起きている。だから①の道は、今回はあまり効かない。「効かない」派が言っているのは、ここだ。

残るのは②。だから争点は、円安を止める道なら効くのかどうかに絞られる。

ここで、昨日書いた為替介入の記事がつながってくる。

政府は6兆円超を使って円買い介入をした。でも今年の4〜5月に過去最大の11.7兆円を使っても、2か月で163円台に戻っている。介入は流れを変える道具ではなく、時間を買う道具だった。根っこは日米の金利差にある。

利上げが効くとしたら、この「円安が止まる」道を通ってということになる。浜田氏の主張も、まさにそこを突いている。


5. ただし、副作用がある

ここが、いちばん考えさせられたところだった。

利上げには、はっきりした副作用がある。借りているお金のコストが上がることだ。

そして日本には、それがまともに効く層がいる。

⚠ 2026年春闘に出ていた差
全体の1次集計は5.26%。トヨタなど大手製造業では満額回答が相次いだ
でも従業員300人未満の企業だけで見ると、2年連続で5%に届いていない
理由は価格転嫁が進まず、賃上げの原資が細っていること

「大企業は好景気なのに、中小は苦しい」という感覚は、数字にはっきり出ている

そこに利上げが乗ると、どうなるか。

ごまもち
🐾 ごまもち
くすりなのに、べつのところが いたくなるんだ🐾
あずき
あずき
そう。しかも同じ実質賃金の、上と下に逆向きに効いちゃうの。

2章で書いた式を、もう一度出す。

実質賃金 = もらう額 ÷ 物価

利上げは、この上と下の両方に、逆向きに効く

🔀 利上げが実質賃金に効く2つの向き
分母(物価)には、下げる方向:円安が止まれば、輸入品が安くなる → 実質賃金にプラス
分子(給料)には、下げる方向:中小の借入コストが上がり、賃上げの原資がさらに細る → 実質賃金にマイナス

薬と毒が、同じ処方のなかに同居している。

だから専門家の意見が割れるのだと、ようやく腑に落ちた。どちらの向きが強く出るかは、やってみないと分からない。


6. どこまで上げる話なのか

そもそも「利上げ」といっても、想定している幅がまるで違う。

📏 「どこまで上げるか」の幅
誰の見方か 水準
いまの政策金利 1.0%(2026年6月に約31年ぶりの水準へ)
日銀が示した中立金利の推計 1.1〜2.5%(名目)
エコノミストの予想 1.25〜2%台が中心
浜田宏一氏 3.75%(アメリカと同水準)
同じ「利上げ」でも、1.25%と3.75%では、まったく別の話をしている。

7月31日の日銀の会合でも、高田創委員が1.25%への利上げを提案して否決されている。植田総裁は、「このままでは緩和的に過ぎると思えば、利上げのペースを速めることも十分あり得る」と述べ、9月以降の会合で議論するとした。

日銀が動くとしても、当面は1%台の話だ。浜田氏の3.75%は、いまの議論の枠からはかなり外にある。


7. で、わたしはどうするか

結論から書くと、何も変えない。予想では動かない。

ただ、ひとつはっきり分かったことがある。「利上げは good か bad か」という聞き方では、答えが出ないということだ。

🧭 利上げは、立場によって意味が変わる
立場 どう効くか 向き
預金が中心の人 利息が増え、物価が落ち着けば助かる 追い風
変動金利で住宅ローンがある人 毎月の返済が増える 逆風
中小企業で働く人 会社の借入コストが上がり、賃上げの原資が細る 逆風
外貨建て資産を持つ人 円高で、円建ての評価額が目減りする(わたし) 当面は逆風

答えがないのではない。「誰にとってか」が抜けているから、答えが決まらない。

これは為替の適正水準を調べたときとまったく同じ構造だった。輸出企業と家計で、適正な為替レートが逆を向いていたのと同じように、利上げの是非も立場で逆を向く

そして、調べていていちばん面白かったのは、ここだ。

バラバラに見えていたニュースが、1本の輪になっていた。

食料品減税の財源が長期金利に効き、日米の金利差が円安を生み、円安を止めようと介入し、円安が物価を上げ、物価が実質賃金を削り、そこにまた利上げの是非が戻ってくる。

全部を理解できたわけではない。専門家でも割れている話なので、答えが出るのはずっと先かもしれない。

でも、つながりが見えると、遠かったニュースが自分の生活の話になる。これは、思っていたよりずっと面白かった。


8. まとめ

  • 実質賃金は2025年まで4年連続マイナスだったが、2026年5月時点で+1.4%、5か月連続プラス。ただし原油高が続けば秋に再びマイナスのリスク
  • 実質賃金 = もらう額 ÷ 物価。上げ方は分子(給料)を上げるか、分母(物価)を下げるかの2つだけ。いまプラスなのは分母のおかげ
  • アベノミクスの理論的支柱だった浜田宏一氏が、「アメリカと同じ3.75%まで利上げを」と主張。「植田日銀は臆病だ」とも
  • ただし意見が変わったのではなく、状況が変わった。デフレ期の薬(円安)が、インフレ期には毒になる。同じ理屈で、逆の処方箋
  • 効くかどうかは専門家でも真っ二つ。「コスト由来の物価高に利上げは効かない」vs「円安もインフレの原因で、そこに効くのは利上げだけ」
  • 副作用は中小企業に出る。春闘の1次集計は5.26%だが、300人未満は2年連続で5%未満。価格転嫁が進まず原資が細っている
  • つまり利上げは、分母(物価)を下げつつ、分子(給料)も削る薬と毒が同じ処方に同居している
  • 想定する水準もバラバラ。いま1.0%、日銀の中立金利推計1.1〜2.5%、エコノミスト1.25〜2%台、浜田氏3.75%
  • 「利上げは good か bad か」という聞き方では、答えが出ない。預金中心の人、変動金利の人、中小で働く人、外貨建てを持つ人で、意味が正反対になるから
ごまもち
🐾 ごまもち
むずかしいけど、なんか つながってて おもしろいね🐾
あずき
あずき
でしょ。全部わからなくていいの。つながりが見えるだけで、ニュースが自分ごとになるから。
📚 参考にした情報源 ・浜田宏一氏の主張:デイリー新潮「日本もアメリカの政策金利の3.75%の水準まで金利を引き上げればいい」日本経済新聞「日本円沈没の危機 『4%に利上げを』アベノミクスの師が警鐘」
・実質賃金の動向:第一生命経済研究所「実質賃金は改善続くも、持続性は物価次第(26年5月毎月勤労統計)」伊藤忠総研「毎月勤労統計(2025年)実質賃金は4年連続でマイナス」
・春闘の大手と中小の差:時事通信「大手と中小、消えぬ賃上げ格差 価格転嫁進まず、細る原資」nippon.com「2026年春闘:1次集計の賃上げ率5.26%」
・日銀の決定と植田総裁の発言:日本経済新聞「日銀・植田総裁、利上げペース『加速もありうる』」
・中立金利の推計と利上げ予想:三井住友DSアセットマネジメント「日銀の利上げスタンスを読み解く(後編)」
⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の見解・体験のシェアであり、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨・勧誘するものではありません。また、特定の政党・政策・専門家の主張への賛否を示すものでもありません。金融政策や物価に関する説明は報道・公表資料にもとづく整理であり、将来の金利・為替・物価の動きを保証するものではありません。統計の数値は各調査時点のもので、その後変動します。投資は価格が変動し、元本を割り込む可能性があります。必ずご自身の判断と責任で行ってください。

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