日本の医療費が49.2兆円で過去最高。病院に行く回数は減っているのに、金額だけが増えていた
8月28日、厚生労働省が2025年度の医療費を発表した。49兆2,000億円。5年連続で、過去最高だ。
大きすぎて実感のない数字だけれど、わたしには他人事ではない。フリーランスのわたしは、国民健康保険(国保)を全額自分で払っている。月およそ4万円。その保険料の元をたどっていくと、この49.2兆円に行き着く。
そして発表をよく読むと、不思議なことが書いてあった。病院にかかった回数(延べ日数)は、前の年より減っている。回数は減ったのに、金額は増えた。なぜだろう。順番に見ていく。
1. 何が発表されたか
・伸び率は3年連続で縮んでいたのが、25年度は再び拡大に転じた
・いっぽう、受診した延べ日数は0.7%の減少。かかる回数は減っている
物価の記事なら「2.6%増」はそれほど驚く数字ではない。でも、これは量が減りながらの2.6%増だ。スーパーで買う品数を減らしたのに、レシートの合計が増えていた。そういう形をしている。
2. なぜ、回数が減って金額が増えるのか
答えは、内訳の分解にあった。
医療の高度化など +2.9% ←いちばん大きい
人口の減少 −0.5%
診療の公定価格(診療報酬)の見直し −0.39%
意外なことに、押し上げたのは高齢化ではない。高齢化の押し上げは0.6%で、「医療の高度化など」が+2.9%。つまり、1回の治療にかかるお金そのものが上がっている。厚労省の担当者は「抗がん剤など高額な薬剤の利用が増えたことが一因」と説明している。
これは、悪い話と言い切れないところが難しい。持ち株の武田薬品の記事で、ナルコレプシーに初めての治療薬が承認された話を書いた。薬のなかった病気に薬ができるのは、まっすぐに良いことだ。でも、新しい薬には値段がつく。値段がつけば、この「+2.9%」の側に加わっていく。医療の進歩は、うれしさと請求書が、同じ封筒で届く。
3. 誰が使っているのか
75歳未満 1人あたり年26.1万円
差は3.8倍
人口の2割弱の75歳以上が、医療費の4割を使っている。数字だけ見ると、ぎょっとするかもしれない。
でもこれは、誰かが悪い話ではなくて、順番の話だと思っている。年をとるほど体は医療を必要とする。いま98.9万円を使っている人たちは、かつて26.1万円の側で保険料を払っていた人たちで、いま26.1万円の側にいるわたしも、いずれ98.9万円の側へ行く。保険というのは、その順番を、みんなでならすための仕組みだ。
4. わたしの財布までの道のり
では、この49.2兆円は、どうやってわたしの財布までやってくるのか。
わたしが毎月払っている国民健康保険料(約4万円)は、ざっくり言えば、医療費の見込みから逆算して決まる。使うお金が増えれば、保険料と税金と窓口負担のどこかで、誰かが多く払うことになる。つまりこの統計は、来年以降の請求書の予告編だ。
そして、財布への影響は、もう始まっている。この8月から、医療費が高額になったときの自己負担の上限(高額療養費制度)が引き上げられた。物価統計は、家計が実際に払う値段を測るものなので、払う上限が上がれば、統計の上では値上がりになる。その影響は、今週発表された東京の物価統計に「診療代+3.2%」として、初めて現れている。
5. わたしに、できること
制度もマクロも、わたしには変えられない。それでも、この統計を読んで確かめられたことが2つある。
ひとつは、設計の前提。フリーランスの社会保険の記事で、社会保険は毎月確実にかかる固定費だと書いた。保険料が下がる未来は、この内訳からは見えない。だから、上がっても払い続けられる設計にしておく。
もうひとつは、いちばん確実な対策が、投資の外にあるということ。医療費の統計を財布側から読むと、答えはシンプルで、病院の世話になる日を、なるべく遠くに置くことに尽きる。
すでに病んだものを治すのではなく、
いまだ病まざるものを治す
2,000年前の医学書の言葉だ。医療にも、たぶん家計にも当てはまる。何かあったときのための現金(生活防衛資金)の300万円も、言ってみれば家計の「未病」対策で、倒れてから作ることはできない。
49兆円の統計を読んだ日くらい、ごまもちの散歩を少し長くして、早く寝ようと思う。
保険料が上がっても払い続けられる設計の土台は、収入の柱と資産の置き場所です。わたしはオルカンの積立も高配当株も、8年以上SBI証券の口座でやっています。
SBI証券の公式サイトを見る →6. まとめ
- 2025年度の医療費は49兆2,000億円で5年連続の過去最高。しかも受診した延べ日数は減っている。回数減×金額増
- 主因は高齢化(+0.6%)ではなく医療の高度化など(+2.9%)。抗がん剤など高額な薬の利用増が一因と厚労省。1回あたりが高くなっている
- 75歳以上が全体の41.3%、1人あたり年98.9万円。ただしこれは順番の話で、わたしもいずれそちら側へ行く
- 国保を全額自分で払うわたしには、これは来年以降の請求書の予告編。転嫁は始まっていて、東京の物価には「診療代+3.2%」が初登場した
- できることは2つ。保険料が上がっても払い続けられる設計と、病院の世話になる日をなるべく遠くに置くこと
・内訳の分解(高齢化+0.6%・高度化など+2.9%・人口減−0.5%・診療報酬改定−0.39%)、受診延べ日数−0.7%、75歳以上20.3兆円(41.3%)・1人あたり98.9万円と26.1万円:日本経済新聞(8月28日)
・高額療養費の自己負担上限の引き上げ(2026年8月から)と、東京都区部CPI(8月中旬速報)の「診療代+3.2%」:総務省統計局の速報および各社報道(8月28日)
・わたしの国民健康保険料(月約4万円):フリーランスの社会保険の記事のとおり、わたしの実際の支払いです
・『黄帝内経』の言葉:素問・四気調神大論の「聖人不治已病、治未病」。訳はわたし




