景気敏感株とディフェンシブ株、18年でどっちが増えたのか。測りはじめを数か月ずらすだけで、答えが変わった【前編】
- ▶ 1. 景気敏感株とディフェンシブ株、18年でどっちが増えたのか。測りはじめを数か月ずらすだけで、答えが変わった【前編】
- 2. 景気敏感株を0%から100%まで増やしても、リターンは年1ポイントしか増えなかった。増えたのは揺れと、暴落の深さだけ【後編】
資産ページに、日本の高配当株の業種別の内訳を出せるようにした。117銘柄をひとつずつ業種に振り分けただけだ。
出てきた数字を見て、アレっと思った。
金額でみると景気敏感株が74.3%。ディフェンシブ株は25.7%しかない。
わたしが高配当株を持っている理由は、配当を受け取ることだ。それなら景気が悪くても配当を出し続けてくれる会社のほうがいいはずで、いまの中身は目的と方向が合っていないように見える。
ただ、慌てて直す前に知りたいことがあった。そもそもこの2つは、どれくらい違うのか。そしてどっちをどれだけ持つのが良いのか。
自分の持ち株だけで考えると、たまたま選んだ銘柄のクセが混ざる。なので市場全体で、リーマンショックの前から18年ぶんを調べた。
先に書いておくと、調べているあいだに結論が一度ひっくり返った。最初は暴落のあとから測っていて、そのときは景気敏感の圧勝に見えた。測る場所を暴落の前に戻したら、勝者が変わった。自分にとって耳の痛い数字のほうが多い。
長くなったので前後編に分けた。前編は「どっちが増えたのか」。値上がりを見て、そこで測り方そのものを疑い直し、最後に配当を見る。後編は「では何割持てばいいのか」。暴落でどこまで落ちるかと、わたしの74.3%をどうするかを書く。
1. まず、何がどう違うのか
景気敏感株は、景気の波で業績が大きく動く会社。素材・機械・自動車・商社・銀行・不動産など。景気が良くなると一気に儲かり、悪くなると一気に落ち込む。
ディフェンシブ株は、景気が悪くても需要があまり減らない会社。食品・医薬品・電力ガス・小売など。不況でもごはんは食べるし、薬は飲む。
問題はこの2つに公式な定義がないことだ。証券会社や書き手によって線引きが変わる。そこでこの記事では、東証が公表している業種分類を使って、次のように分けた。
エネルギー資源・建設資材・素材化学・自動車輸送機・鉄鋼非鉄・機械・電機精密・商社卸売・銀行・金融(除く銀行)・不動産
食品・医薬品・電力ガス・小売
そして、この15業種にはそれぞれ連動するETFが上場している。2008年から値動きが残っているので、リーマンショックもコロナも通り抜けた実データで比べられる。
ただし商社・卸売のETFだけは2009年1月からしか値がない。リーマンショックをまたげないので、値動きの計算は商社・卸売を除いた14業種で出している(社数と配当はETFの値が要らないので15業種)。そして商社・卸売はこの期間でいちばん伸びた業種のひとつなので、この除外は景気敏感に不利な方向に働いている。あとで「景気敏感は勝たなかった」と書くが、それはこの条件での話だと読んでほしい。
2. 18年の成績を、TOPIXと並べる
まずリターンから。分配金を含めた数字で、業種ETFの単純平均を出した。業種を選ばずに市場をまるごと持っていた場合(TOPIX)も並べる。これがあると、業種を選ぶことに意味があったのかが分かる。
この表、ひとつ引っかかるところがある。景気敏感は10年(+347.0%)より18年(+239.4%)のほうが少ない。18年は10年をまるごと含んでいるのに、だ。
これは最初の8年(2008年5月〜2016年7月)がマイナスだったということを意味している。リーマンショックで落ちて、そのあと元の水準に戻りきれないまま8年が過ぎた。
そしてディフェンシブだけは逆で、18年(+187.7%)のほうが10年(+113.3%)より多い。その8年を、落ちきらずに乗り切っている。
暴落を計算に入れると、順位が変わる。18年でいちばん増えたのはTOPIXの+278.2%。景気敏感(+239.4%)でも、ディフェンシブ(+187.7%)でもない。年率にならすとTOPIX7.6%・景気敏感7.0%・ディフェンシブ6.0%だった。
ただしTOPIXと景気敏感の差(年0.6ポイント)は、そのまま受け取れない。理由が2つある。
ひとつは手数料。業種別ETFの信託報酬は年0.352%で、TOPIXのETF(1305)は0.066%。年0.29ポイントの差が、はじめからついている。0.6ポイントの半分近くがこれだ。
もうひとつは商社・卸売を外していること(1章)。商社のデータがある2009年1月から測り直すと、戻したほうが景気敏感は年0.38ポイント高い。
つまりこの2つで、0.6ポイントは説明がついてしまう。だから「TOPIXが勝った」とは言えない。言えるのは「業種を選んだ見返りは、確かめられなかった」までだ。
ディフェンシブが最下位なのは、この2つを差し引いても変わらない。ただ年率の差は思ったより小さくて、TOPIXとの差は年1.6ポイント。それでも18年積むと、100万円が288万円と378万円という差になる。年1.6ポイントは、そういう大きさだ。
そのディフェンシブが低い理由も、ほぼ1つの業種にある。4業種の内訳は、小売+308.7%・食品+249.6%・医薬品+180.2%に対して、電力・ガスだけが+12.4%。原発の停止と燃料費の高騰をまたいだ期間だった。この1業種を外すと、残り3業種の平均は+246.2%まで上がる。
もっとも、これは景気敏感の側でも同じことができる。景気敏感10業種から最下位の不動産(+98.1%)を外すと+255.1%。そろえて外してもやはり景気敏感が上だ。電力・ガスがなければディフェンシブの勝ち、とまでは言えない。
※ディフェンシブは4業種しかないので、1つ外すと平均が大きく動きます。10業種ある景気敏感で同じことをしても、ここまでは動きません。また以降の章(揺れ・下落幅・比率の表)は、どちらも全業種を含んだまま計算しています。
なお、この「18年」も2008年5月という一点から測った結果でしかない。そこがどれくらい効くのかは、次の章で測り直す。
3. 起点をずらすと、勝者が変わった
順位が入れ替わるなら、どこから測るかで結論を作れてしまう。どれくらい変わるのか、起点を動かして測り直した。
最初、わたしはこの比較を2009年2月から測っていた。商社・卸売を含めた全業種のETFがそろうのがその月だったから、深く考えずにそこを起点にした(下の数字は、ほかの期間とそろえるため商社・卸売を除いて出し直したもの)。
出てきた数字はこうだった。景気敏感+623.2%、TOPIX+611.3%、ディフェンシブ+316.6%。景気敏感の勝ちで、ディフェンシブは市場平均のほぼ半分。分かりやすい結果だった。
でも2009年2月は、リーマンショックで下げきった底のすぐそばだ(実際の底は翌3月)。
底から数えると、深く落ちたものほど戻りが大きく出る。リーマンの下落幅は景気敏感−58.9%、ディフェンシブ−36.7%(後編でくわしく見る)。つまりこの起点は、はじめから景気敏感に有利な数え方だった。
10通り試して、TOPIXが8回いちばん上だった。景気敏感が上に来たのは、底のいちばん近くから測った2回だけ。しかもその2回は差が0.1ポイント以下で、2008年12月にいたってはほぼ同点だ。逆にTOPIXが上に来たときは、0.4〜0.6ポイント離すこともあった。
大事なのは、消えたのはTOPIXに対する強さのほうだけだということ。ディフェンシブに対しては、10通りのどの起点でも景気敏感が上だった。つまり景気敏感はディフェンシブには勝っていて、届かなかった相手は市場をまるごと持つやり方のほうだった。
これは自分にとって都合の悪い結果だった。わたしの持ち株は景気敏感が74.3%で、最初の数字はそれを肯定してくれるものだったから。
この記事が18年の主軸に2008年5月を選んだ理由も書いておく。表のとおり、ETFの値がある期間のなかで、いちばん数字が低く出る月がここだった。2008年3月から測れば景気敏感は8.0%に上がるし、9月まで待てば9.0%になる。上げようと思えば上げられたが、そうしなかった。
もちろんその2008年5月も、同じく1つの起点にすぎない。だからこの記事が根拠にしているのは、18年の数字そのものではなく、起点を動かしても消えなかったもののほうだ。「景気敏感がディフェンシブより上」は10通り全部で残った。「景気敏感がTOPIXより上」は、底の近くから測ったときだけ出てきて、あとは消えた。
※2008年3月より前はETFの値がないので、本当の高値(2007年)からは測れません。より正確に測れば下がり方の深いものほど数字が落ちるので、この欠けている期間は景気敏感に有利に働いています。
4. 高配当株として、配当はどうなのか
ここまでは値動きの話。でも配当が目的なら、配当が減らないかのほうが大事になる。
ETFの分配金では一社ずつの増減が分からないので、景気敏感の業種とディフェンシブの業種から、それぞれ170社をコード順に等間隔で抜き取って、配当履歴を調べた。対象になるのは、2017年と2025年の両方に配当があった会社だ。
2回以上減らした会社が50%と26%。ほぼ2倍の差がついた。
景気敏感は2社に1社が、8年のあいだに2回以上配当を減らしている。ここは予想どおりで、景気で業績が動く以上、配当も動く。
ところが、配当そのものの伸びを見ると話が変わる。
8年で配当が何倍になったかを、まん中の会社で見る。景気敏感2.00倍、ディフェンシブ1.96倍。ほとんど同じだった。
これは意外だった。景気敏感は減配が2倍起きやすいのに、8年後にたどり着く配当はほぼ同じ。減らす年があっても、そのぶん景気が良いときに増やしている。
つまり行き先はほぼ同じで、道のりが違う。景気敏感は上がったり下がったりしながら2倍になり、ディフェンシブは減らさずに2倍になる。
配当を目的にするなら、選ぶ基準は「どちらが増えるか」ではなく「途中で減っても持っていられるか」のほうだ、ということになる。
※これは8年後の1株あたり配当を比べたもので、途中で受け取った合計額ではありません。減らした年があるぶん、受け取り総額では差が出ます。また2025年に無配だった会社は、この倍率の計算からも外れています。無配まで落ちる会社は景気敏感側に多いと考えられるので、2.00倍は上振れしている可能性があります。「行き先はほぼ同じ」は、8年生き残って配当を出し続けた会社どうしで比べた場合の話です。
この数字の限界(前編ぶん)
とくに最初の2つが大事だと思っている。この記事が言えるのは「過去はこうだった」までで、しかもその「過去」は、どこから測るかで姿を変える。
まとめ(前編)
- 東証の業種別ETFで、リーマンショックの前から18年ぶん比べた。年率はTOPIX7.6%・景気敏感7.0%・ディフェンシブ6.0%
- ただしTOPIXとの差(0.6ポイント)は、手数料の差(年0.29ポイント)といちばん伸びた商社・卸売を外していることでほぼ説明がつく。言えるのは「業種を選んだ見返りは、確かめられなかった」まで
- 最初は暴落のあと(2009年2月)から測っていて、そのときは景気敏感の圧勝に見えた。でも底から数えると、深く落ちたものほど戻りが大きく出る
- 起点を10通り試すと、景気敏感がディフェンシブより上なのは10通り全部で残り、TOPIXより上なのは底の近くの2回だけで消えた。起点を動かして、残るものと消えるものがある
- ディフェンシブが最下位なのは変わらないが、その大半は電力・ガスが18年で+12.4%しか増えていないことによる。外した3業種の平均は年率7.1%で、景気敏感の7.0%とほぼ互角
- 配当は2回以上減配した会社が50%と26%で景気敏感のほうが2倍起きやすい。ところが8年でたどり着く配当は2.00倍と1.96倍でほぼ同じ。行き先は同じで、道のりが違う
→ 景気敏感株を0%から100%まで増やしても、リターンは年1ポイントしか増えなかった【後編】
関連記事
- 高配当株は何銘柄あれば足りる? 自分の117銘柄でリスクを計算したら、答えは「数」ではなかった
- 資産5,831万円の年率リスクを計算したら11.4%。分散が効いていたのは、思っていたところではなかった
- 高配当株の出口戦略。わたしは「売らない」を基本にしている
- 減配は必ず起きる。それでも高配当株を続ける理由



