「ドルも危ないのでは?」への答え。ユーロ・スイスフラン、持つならどの通貨がいい?
このブログでは「円だけで持つのは危ない」「外貨資産も持っておきたい」と何度か書いてきた。そうすると、こういう質問をいただくことがある。
「でも、そのドル自体の信任が揺らいでいるんじゃないですか?」
もっともな疑問だと思う。ドル安のニュースは続いているし、「基軸通貨の地位が終わる」という話も見かける。だったら外貨はユーロがいいのか、スイスフランがいいのか。
今日はこの質問に、データを調べながら答えてみたい。結論を先に書くと、わたしは、いまのドル中心でいいと思っている。実際、わたしの資産のほとんどはドル建てだ。矛盾しているようだけれど、そう考える理由を順番に書いていく。
1. たしかに「ドル一強」は崩れつつある
まず、質問の前提が正しいかどうかを確認する。ここは数字がはっきりしている。
各国の中央銀行が「いざというときのために」持っている外貨のうち、ドルの割合が25年かけて71%から57%前後まで下がっている。四半期ごとに上下はするけれど、長い目で見れば一方向に進んでいる。
背景には、ロシアへの制裁で外貨準備が凍結された経験から「ドルに頼りきりで大丈夫か」と考える国が増えたこと、そして単純にドル安が進んだことがある。質問の前提は、データの上では正しい。
2. では、代わりは誰か。ここで話が止まる
「ドルが下がっている」の次に来るのは、当然「じゃあ何を持てばいいのか」だ。ところが、ここで話が止まってしまう。
ドルの比率が減ったぶんを、どこかの通貨がまるごと引き継いだわけではない。順番に並べてみると、その理由がよくわかる。
こうして並べると、はっきりしている。ドルが弱っているのは事実だけれど、みんなが引っ越せる新しい家がまだ建っていない。ユーロですらドルの3分の1で、スイスフランにいたっては世界の外貨準備の0.2%しかない。「安全な通貨」と「世界のお金を受け止められる通貨」は、別ものなのだ。
だからわたしは、「どの通貨が次に強いか」を当てにいく発想そのものをやめた。この手の予想は、当たれば気持ちがいいけれど、外れたときに生活が揺れる。それはわたしの求めているものではない。
そしてもうひとつ、速さの話。25年かけて71%が57%前後になったペースを考えると、これがひっくり返るとしても、たぶん相当な時間がかかる。「ドルはもう終わり」と身構えるほどの速さでは、いまのところ動いていない。
3. わたしの資産は、約7割がドル建て
当てにいかない、慌てて乗り換えない。そう決めていても、資産はどこかの通貨で持たれている。予想はしなくても、いま自分が何を持っているかは知っておいたほうがいい。自分の資産を通貨で分け直すと、こうなっていた。
7割がドル。円は3割弱しかない。「外貨も持っておきたい」と書いてきたけれど、実際はかなりドルに寄っている。
ちなみにビットコインは、どこかの国の通貨というわけではない。ただ値段は世界的にドルでついているので、円で暮らすわたしから見ると、値動きはドル資産に近い。ここを足すと、実質のドル寄りは7割強ということになる。
理由ははっきりしていて、わたしは2018年からS&P500を積み立ててきたからだ。インデックス部分の約95%はいまもS&P500系で、オルカンは新NISAで積立先を変えてからのぶんなので、まだ5%ほどしかない。ドル比率が高いのは、8年間アメリカに積み立ててきた結果だ。
ちなみに、オルカン1本でもドルは3分の2
「じゃあオルカンだけにすれば通貨は分散できるのか」と思うかもしれない。ここも数字を見ておきたい。
オルカンは国別で見ると6割超がアメリカで、株はその国の通貨建てで持つ。だからオルカン1本に絞っても、通貨で見れば3分の2はドル建てになる。「全世界株なら通貨もバランスよく分散できている」というイメージとは、少しずれる。
これはオルカンの欠陥ではなく、世界の株式市場の6割超が米国だという事実がそのまま映っているだけだ。世界に分散した結果、いまはドルが多くなる。それだけのことだと思う。
4. それでも「いまはドルでいい」と思う理由
じゃあドルを減らしてユーロを買うのか。わたしはそうしない。理由は3つある。
②について、もう少し書きたい。わたしが外貨の資産を持つのは、円が弱くなったときの備えとしてだ。円安になると輸入品が値上がりして、暮らしは確実に苦しくなる。でもそのとき、ドル建ての資産は円に直すと増えている。生活で痛んだぶんを、資産のほうが埋めてくれる。わたしにとって外貨資産は、円安への保険のようなものだ。儲けるために持つのではなく、円安で暮らしが苦しくなったときに助けてくれる、そんな存在だ。
そして③が、いちばん現実的な理由だと思う。8年積み立てたS&P500の含み益は大きいので、売って別の通貨に移せば、その時点で利益の約20%が税金として消える。「ドルが危ないかもしれない」という不確かな予想のために、確実な損を出すことになる。それはやりたくない。
これから積み立てるぶんは、市場に配分を任せる
とはいえ、過去のぶんを動かさないというだけで、何もしていないわけではない。新しく積み立てるお金は、すでにオルカンに切り替えてある。
オルカンは、世界中の株式市場の大きさに合わせて中身の比率が自動で調整される。いまは米国が6割超だからドルが多いけれど、米国が縮んで他の国が伸びれば、比率のほうが勝手に入れ替わっていく。わたしが判断しなくても、市場がそのつど最適な配分に直してくれる、という考え方だ。
つまりわたしの設計はこうなっている。これまでのぶんは売らずに置いておく。これからのぶんは、通貨の判断ごと市場に預ける。ドルの時代が本当に終わるなら、新しく積み上がっていく資産のほうが、先に世界の変化についていってくれる。
だから「ドルが弱るのが心配」と言われたら、わたしの答えはこうなる。心配ではある。でも逃げ先がないし、いま売って乗り換えるほどの確信もない。そのかわり、これから増えるぶんの配分は市場に預けてある。いまはそれでもドルが6割だけれど、世界が変われば、比率のほうが動いてくれる。
5. 円もちゃんと持っている
もうひとつ大事なことを書いておきたい。ここまで外貨の話をしてきたけれど、わたしは円も持っている。生活防衛資金の300万円は、まるごと円の現金だ。
理由はシンプルで、生活費は円で出ていくから。家賃も、ごまもちのごはんも、円で払う。ここを外貨にしてしまうと、使うたびに為替を気にすることになる。日々の暮らしを支える通貨として、円はいちばん大事だと思っている。資産の大きさで見ればドルが7割だけれど、明日の食費を払うのは円だ。ここは代えがきかない。
つまりわたしの設計は、こうなっている。
円が強くなる時期も、弱くなる時期もある。どちらが来ても暮らしが続くように、両方に置いておく。わたしが「外貨も持っておきたい」と書くのは、そういう意味だ。
6. あずきの考え
「ドルも危ないのでは?」という質問に、わたしの答えをまとめるとこうなる。
ドルが弱っているのは事実。でも代わりの椅子はまだないし、いまも世界の外貨準備の半分以上はドルだ。だからわたしは、いまのドル中心の配分を変えない。
ここはごまかさずに書いておきたい。通貨としてのドルを選んだつもりはないけれど、アメリカの成長とS&P500には、はっきり賭けてきた。2018年から8年間、そこに積み立て続けた結果が、いまのドル7割だ。そしてその賭けは、これまでのところうまくいっている。
そのうえで、もうひとつ伝えたいのが「自分が何を持っているかは知っておく」ということ。わたしの場合、通貨で分け直したら7割がドルだった。オルカンだけを持っている人でも、通貨で見れば3分の2はドルになる。それを知らずに持っているのと、知って持っているのとでは、ドル安のニュースを見たときの落ち着き方がまるで違う。
わたしはこの比率を承知したうえで、それでも変えていない。知っていて選んでいるなら、それは思考停止ではない。中身を把握しておきたいのは、暴落が来たときに「こんなはずじゃなかった」とならないためだ。
未来がどうなるかは、正直わからない。ドルが基軸通貨のままかもしれないし、20年後には別の景色かもしれない。だからこれから積み上げるぶんは、当てにいかない置き方に変えている。過去の賭けは持ったまま、これからは市場に委ねる。いまのわたしは、その途中にいる。
まとめ
- 世界の外貨準備に占めるドルの比率は、2001年の約71%から57%前後まで低下(2025年6月末に56.32%と過去最低、9月末は56.92%)。「ドル一強が揺らいでいる」のはデータの上でも事実
- ただし「ドルの代わり」がいない。ユーロ20.33%・日本円約5.6%・英ポンド約4.6%・人民元1.93%・スイスフラン約0.2%。安全な通貨と、世界のお金を受け止められる通貨は別もの
- わたしの資産を通貨で分けると、ドル建てが約70%(約4,070万円)・円建てが約27%(約1,580万円)(2026年6月末の概算)。通貨としてのドルを選んだつもりはないが、アメリカの成長とS&P500には8年間はっきり賭けてきた結果だ
- オルカン1本に絞っても通貨比率は米ドル65.2%・日本円4.9%(2026年1月時点)。世界の株式市場の6割超が米国なので、「全世界株なら通貨もバランスよく分散」とはならない
- そのうえでわたしは「いまはドル中心のままでいい」と思っている。理由は3つ。①ほかに受け皿となる通貨がない②持っているのは通貨ではなく、世界で稼ぐ会社だから③8年ぶんの含み益に約20%課税されるので、乗り換えるコストが高すぎる
- ただし新しく積み立てるお金はオルカンに切り替えてある。世界の市場の大きさに合わせて比率が自動調整されるので、これまでのぶんは売らずに置き、これからのぶんは通貨の判断ごと市場に預けるという設計にしている
- 円も持っている。生活費は円で出ていくので、生活防衛資金300万円と日本の高配当株は円建て。円が「暮らしを支える側」、外貨が「円が弱ったときに支える側」
- 過去の賭けは持ったまま、これから積み上げるぶんは当てにいかない置き方へ変えている途中。そのうえで自分が何を持っているかは把握しておく。知っていて選んでいるなら、それは思考停止ではない
オルカン1本で、ドルもユーロもポンドも含めた世界中の会社をまとめて持てます。比率は市場が勝手に調整してくれるので、通貨の予想は不要です。月100円から積立設定ができる、わたしが8年使っているメイン口座です。
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