家賃は過去最高、マンションは2,000万円値下げ。家を買わないわたしが、金利のある世界の流れを調べてみた
9月28日、住まいにまつわるニュースが2本並んだ。
1本は、家賃の話だ。不動産情報サイトのアットホームの調べで、東京23区の1人暮らし向けマンションの平均家賃が、8月に11万4,339円になった。前の年より10%高く、過去最高だ。
もう1本は、マンションの話だ。東京・港区の中古マンションが、1億7,990万円から2,000万円値下げしても、買い手が見つからない。記事は、その理由の1つに金利の上昇を挙げている。長期金利(10年国債の利回り)は30年ぶりに3%を超え、固定型の住宅ローンの金利も、今の制度で最高になった。
家賃は上がり、マンションは下がる。正反対の向きに見える。
わたしは東京で、家を買うつもりのない、家賃7万円の賃貸暮らしだ。その家賃は変わっていないし、値上げの話も来ていない。2本を並べて読むと、疑問がいくつも出てくる。
🤔「マンションは、なぜ値下げされているの?」
😤「金利が上がると、何が起きるの?」
🏠「家は、買ったほうがいいの?」
結論から言うと、「家賃10%上昇」は、これから借りる部屋の募集家賃の話だった。住み続けている人も含めた家賃は、東京23区で前の年より2.0%の上昇にとどまる。家賃は、あとから追いかけるように、ゆっくり上がっていく。一方でマンションは、金利が上がって買える人が減り、値下げが出始めている。どちらも、根っこは同じ物価の上昇だ。物価が上がって建築費が上がり、それが家賃に乗ってくる。物価を抑えるために日銀が利上げを重ね、ローンが重くなって、家が売れにくくなる。ほぼゼロだった金利が上がっていく「金利のある世界」に、日本が入ったということだ。順番に見ていく。
1. 家賃は、本当に10%も上がっているのか
1つ目の声、「家賃は、本当に10%も上がっているの?」。
10%上がったのは、いま空いていて、これから借りる人を探している部屋の家賃だ。同じ東京23区でも、住み続けている人まで含めると、上がり方は2.0%。全国では0.7%だった。
わたしの家賃が変わっていないのも、このちがいで説明がつく。家賃が大きく動くのは、新しく借りるときだ。
財務省の職員が広報誌「ファイナンス」に書いたコラム(2024年10月号)も、この「ずれ」を説明している。建築費が上がると、まず新しいマンションの値段と募集家賃が上がる。ただ、入居者が同じ部屋に住む期間は平均4年ほどと長く、更新のときは据え置きになりやすい。だから、家賃全体には、ゆっくりとしか届かない。同じコラムによると、アメリカでは、家の値段の上昇が1年ほど遅れて家賃に広がった。「家賃は上がるもの」という商慣習のもとで、住み続けている人の家賃も上がっている可能性がある、とコラムは見ている。日本は、それよりもずっと家賃が動きにくい。
わたしも、家賃は後追いの感覚で、ひとまず上がる流れにあるのかなと思っている。家賃は、建築費や物価といった実態と、わりとリンクしている印象がある。建築費は、東京のマンションで前の年より5%あまり上がっている(2026年8月、建設物価調査会)。家賃がある程度上がるのは、仕方がないようにも思う。
ただ、家賃が上がる流れに乗った便乗の値上げも、最近は多いように感じている。東京都は、2025年10月に「賃料値上げ特別相談窓口」をつくった。建物の持ち主が変わったあとに、急に大きな値上げを求められたという相談が多かったからだ。2026年2月末までに、約1,900件の相談が寄せられている。
2. マンションは、なぜ値下げされているのか
2つ目の声、「マンションは、なぜ値下げされているの?」。
家の値段は、ふつうの人の収入と合っていない。わたしは、そう感じていた。東京都の新築マンションは、平均年収の17倍。年収636万円の人が、17年分の収入をまるごと注ぎこんで、やっと買える値段だ。
その値段に、金利の上昇が重なった。買える人がさらに減り、売れ残りが増え、値下げが出始めている。不動産の専門家からは、「都心マンションも調整局面の気配」と題した寄稿も出ている。値上がりが止まり、下がり始めるかもしれない、という見方だ(オラガ総研の牧野知弘氏、2026年1月1日)。
3. 金利が上がると、何が起きるのか
3つ目の声、「金利が上がると、何が起きるの?」。日本が金利のある世界に入った。わたしがいちばん知りたかったのは、それが経済とどうつながっているのか、という流れだ。
金利が上がると、住宅ローンの返済がどれだけ変わるのか。5,000万円を35年で借りる場合で計算してみた。
1年前の金利とくらべて、毎月の返済は4万2,665円増える。35年の合計では、約1,790万円も多く払うことになる。同じ家なのに、金利が上がるだけで、これだけ重くなる。
つまり、流れはこうだ。物価が上がり、それを抑えるために日銀が利上げを重ねる。長期金利が上がり、住宅ローンの金利も上がる。毎月の返済が重くなり、買える人が減る。もともと収入と合っていなかった高い物件から、値下げが出始める。
一方で、これまでに建築費や家の値段が上がったぶんは、いまになって少しずつ家賃に乗ってくる。まず新しく借りる部屋の家賃が上がり、住み続けている人の家賃は、遅れてゆっくり上がる。
マンションの値下げと家賃の上昇は、反対の動きに見えて、どちらも物価と金利が上がる日本の姿だ。
4. 家は、買ったほうがいいのか
4つ目の声、「家は、買ったほうがいいの?」。
わたしは、家を買うつもりはない。いずれ生まれ故郷の十勝(北海道)に帰っても、買う予定はない。ただ、家を買いたい人もいる。買うなら、住みたいときに、無理のない範囲で買うしかないと思う。
「20代の持ち家率が過去最高」の記事では、「金利上昇で住宅購入を急ぐ若者」というニュースの中身を調べた。残クレ(最後にまとめて払う分を残して、月々を軽くするローン)の記事では、1億円の家を月々ではなく、全部でいくら払うかで考えた。金利が上がったいま、その「全部でいくら」は、さらに大きくなる。
TBSの記事には、去年家を買った人の「ニュース見るたびに怖い」という声も出てくる。変動型のローンなら、金利が上がるたびに、払う利息が増える。たとえば、5,000万円を35年、変動型の今の水準に近い金利1.2%で借りていると、毎月の返済は約14万6,000円。金利が0.1%上がるだけで、毎月約2,400円増える。0.5%なら約1万2,000円、1%なら約2万5,000円だ。
5. わたしの見方
資産の値段に働く
ウォーレン・バフェット(1999年)
ウォーレン・バフェットは、アメリカの投資家だ。この言葉は、1999年に経済誌フォーチュンに載った講演録の一節だ。金利が高くなるほど、資産の値段を下に引っぱる力は強くなる、と続く。
ただ、この重力は、下に引っぱるだけではない。お金を貸す側、預ける側にとっては、上向きの力になる。わたしの銀行の普通預金も、10月から金利が0.5%に上がる。同じ金利でも、立場によって向きが変わる。
6. まとめ
- 「東京23区の家賃10%上昇」は、これから借りる部屋の募集家賃の話。住み続けている人も含めると2.0%の上昇
- 家賃は後追いで、ゆっくり上がる。ただ、持ち主が変わったあとの急な値上げの相談も多い
- 東京都の新築マンションは平均年収の17倍。首都圏の新築は前年より5.4%下がり、23区の中古も3か月続けて下落
- 長期金利は30年ぶりに3%を超えた。5,000万円を35年で借りると、毎月の返済は1年前より約4万3,000円増える
- マンションの値下げと家賃の上昇は、根っこは同じ物価の上昇。どちらも、金利のある世界に入った日本の姿
- わたしは家を買わない。買いたい人は、住みたいときに無理のない範囲で買うしかないと思う
・募集家賃:アットホーム 募集家賃動向(2026年8月)
・民営家賃:総務省「消費者物価指数」
・家賃が遅れて上がるしくみ:財務省「ファイナンス」2024年10月号 コラム「我が国における家賃の動向」(大臣官房総合政策課 大村直人・伊藤祐嗣)、建築費は建設物価調査会「建設物価 建築費指数」(2026年8月)
・家賃の値上げの相談:東京都 賃料値上げ特別相談窓口、東京都の報道発表(2025年10月9日)
・新築マンション:不動産経済研究所(2026年9月17日)
・中古マンションと年収倍率:東京カンテイ 中古マンション70㎡価格、東京カンテイ 新築マンション価格の年収倍率
・専門家の見方:牧野知弘氏の寄稿(JBpress、2026年1月1日)。題の一部が「都心マンションも調整局面の気配」
・金利:日本銀行(2026年9月18日)、財務省 国債金利情報、三菱UFJ銀行 変動金利
・変動型の返済の増え方:5,000万円、35年、元利均等返済、ボーナス払いなしで、金利が変わった時点で返済額を計算し直した場合の概算。クロちゃんに計算してもらった。実際には、返済額の見直しの時期や上限に決まりがある銀行もある
・バフェットの言葉:Fortune誌(1999年11月22日)"Mr. Buffett on the Stock Market"(キャロル・ルーミスがまとめた講演録)




