都心で増える「定借マンション」は、期限つきの持ち家。家を買わないわたしが考えてみた
「定期借地権付きマンション」、略して「定借マンション」という言葉を、わたしは両学長の記事で初めて知った。両学長は、わたしも参加している、お金の勉強をするオンラインコミュニティ「リベシティ」を主宰している人だ。首都圏で、この定借マンションが急に増えているという朝日新聞のニュースを紹介した記事だった。
不動産経済研究所の調べでは、首都圏で売り出された定借マンションは、2024年の547戸から、2025年は1,502戸に増えた。2008年の1,281戸を超え、過去最多だ。同研究所は、2026年は年間2,000戸を超える可能性もある、と見ている。
わたしは、家を買わない賃貸暮らしだ。それでも、「土地を借りて住む家」と聞くと、気になることが出てくる。
🤔「なぜ、いま増えているの?」
😤「安いなら、お得なんじゃないの?」
🏠「住み続けたら、最後はどうなるの?」
結論から言うと、定借マンションは、土地を借りて建て、期限が来たら建物を壊して土地を返す家だ。いわば、期限つきの持ち家。値段を住める年数で割ると、ローンの利息まで入れても、1か月あたりの負担は同じ広さの家賃より安く見えることもある。ただ、それは70年住み切った場合の話だ。残りの年数が減るほど価値は下がり、最後はゼロになる。期限が来たら、必ず出ていかなければならない。そのうえ、ふつうに家を買うのと変わらないことが、ついてまわる。順番に見ていく。
1. ふつうのマンションと、何がちがうのか
1つ目の声、「定借マンションって、ふつうのマンションと何がちがうの?」。
ふつうのマンションは、部屋と一緒に、土地の持ち分も自分のものになる。建物が古くなっても、土地は残る。定借マンションは、その土地がない。
2. なぜ、いま増えているのか
2つ目の声、「なぜ、いま増えているの?」。
理由は、都心の土地の値段が上がりすぎたことだ。東京23区の住宅地の地価は、2026年の基準地価で前の年より8.7%上がった(朝日新聞)。ふつうのマンションは高すぎて、買える人が少なくなっている。土地を買わずに借りれば、そのぶん安く売り出せる。朝日新聞によると、ふつうのマンションより1〜2割ほど安い傾向がある。
読売新聞は、定借マンションを「三方よし」と紹介している。
一方で、両学長の記事は、ふつうの家とはちがうので気軽に買わないように、と注意していた。
3. 安いなら、お得なのか
3つ目の声、「安いなら、お得なんじゃないの?」。
定借マンションは、住める期間が決まっている。それなら、買った値段を住める年数で割れば、1か月あたりの住まい代として、家賃とくらべることができる。
読売新聞が紹介した渋谷区笹塚の物件は、期間が約70年、3LDK・約70㎡で1億6,000万円ほど。近くの同じくらいのマンションより、約2割安い。毎月の費用も、地代、壊すための積み立て、管理費、修繕積立金を合わせると、月3.2万円ほどかかる。
毎月の費用まで足すと、金利1.2%なら月26万円ほどで、同じ広さの家賃より安い。でも、金利3.46%なら月36万円ほどで、家賃とほぼ同じになる。しかも、これは70年でならした数字だ。ローンを返している35年間は、毎月の返済だけで約47万〜66万円になる。ちなみに、1億6,000万円は、わたしの家賃7万円なら約190年分だ。
ただし、毎月の負担は、70年ずっと同じとは限らない。地代の見直し方は物件ごとに決まる。笹塚の物件では、土地の税金に合わせて3年ごとに見直す予定だ。地価が上がって土地の税金が増えれば、地代も上がる。建物を壊すための積み立ても、工事費が上がれば、足りなくなって増えるかもしれない。管理費や修繕積立金も、あとから上がることがある。
それに、ここまでの計算は「70年、1度も引っ越さずに住み切る」場合の話だ。30歳で買えば100歳まで。不動産の調査会社、東京カンテイの研究員は、「10〜20年で住み替えを考える人は多い」と話している。途中で売るなら、そのときにいくらで売れるかが大事になる。
4. 住み続けたら、最後はどうなるのか
4つ目の声、「住み続けたら、最後はどうなるの?」。
定借マンションは、期限が来たら必ず出ていかなければならない。そして、資産としての価値は、後半になるほど減っていく。住み続ければ、最後は価値がなくなる。
土地を借りる権利の価値が、残りの年数とともにどう減るのか。国税庁が相続税の計算に使う考え方で、イメージを描いてみた。
20年後は84、50年たつと半分以下、60年で4分の1ほど、70年でゼロだ。
実際の中古の値段も、似た動きをしている。東京カンテイの調べでは、完成から20年前後で、残りの期間が値段に響き始める。まわりのマンションとくらべた値段が、中古になって新築のときより上がった物件は、2020年以降に完成したものでは4つに3つ(75.0%)。1990年代に完成したものでは、6つに1つほど(17.7%)しかない。同じ研究員は、残りが10〜20年を切ると売るのが難しくなる、とも話している(読売新聞、2025年6月24日)。
5. わたしの見方
差し出す人生の量のことだ
ヘンリー・D・ソロー『ウォールデン 森の生活』(1854年)
ソローは、19世紀のアメリカの思想家だ。森の小さな小屋で2年あまり暮らし、その記録を『ウォールデン』に書いた。この言葉のすぐあとで、ふつうの家を手に入れるには、働く人の人生の10年から15年ぶんがかかる、と続けている。
定借マンションは、値段だけを見れば、ふつうのマンションより1〜2割安く、家賃とくらべても安く見えることがある。
でも、ふつうの持ち家とくらべると、土地は残らない。期限が来たら必ず出ていき、住み続ければ価値はゼロになる。
賃貸とくらべると、期限つきとはいえ、持ち家は持ち家だ。転勤や離婚で住めなくなったら、売るのか、貸すのか。家を買うのと同じ、難しい判断がついてまわる。ローンを組めば、いまは金利が上がって返済が増える心配もある。
この家は、「期限つきの持ち家」と考えると分かりやすい。わたしは、いずれ生まれ故郷の十勝(北海道)に帰るつもりでいる。だからこそ、身軽でいたい。そんな賃貸派のわたしからすると、定借マンションには、賃貸にあるメリットがない。
安く見えても、高い買い物であることに変わりはない。買う前には、値段だけでなく、それと引きかえに差し出す人生の量まで計算しておきたい。
6. まとめ
- 定借マンションは、土地を借りて建て、期限が来たら建物を壊して土地を返す家。期間は50年以上で、最近は70〜80年ほど
- 首都圏の供給は2025年に1,502戸で過去最多。都心の地価が上がりすぎ、ふつうのマンションより1〜2割安いのが理由
- いわば期限つきの持ち家。値段を住める年数で割ると、ローンの利息を入れても、同じ広さの家賃より安く見えることがある
- ただし、それは70年住み切った場合の話。途中で売るなら、残りの年数が値段を左右する
- 価値は後半になるほど減り、最後はゼロ。期限が来たら、必ず出ていかなければならない
- 転勤や離婚で売るか貸すか、という家を買うのと同じ判断がついてまわる。身軽でいたい賃貸派のわたしには、賃貸にあるメリットがない
・ニュース:朝日新聞「広がる定借マンション『資産価値は急激に落ちる』警戒すべき理由は」(2026年9月15日)、読売新聞「価格上昇止まらぬ首都圏マンション、三方よしの『定期借地権付き』人気高まる」(2025年10月19日)、読売新聞(2025年6月24日)、 ・法律:借地借家法 22条
・供給戸数:不動産経済研究所(2024年のまとめ)、不動産経済研究所 首都圏マンション市場動向(2025年)、同(2026年上半期)
・地代と積み立ての例:三井不動産レジデンシャル 渋谷区笹塚の物件の定期借地権の説明、文京区の物件の販売情報(SUUMO、2026年9月30日閲覧)
・中古の値段:東京カンテイ 定期借地権付きマンションの相場比(2023年7月31日)、R.E.port(東京カンテイの分析)
・価値のイメージ:国税庁 タックスアンサー No.4612
・管理費と修繕積立金:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」概要編
・家賃:東京カンテイ 分譲マンション賃料(2026年8月)
・ソローの言葉:ヘンリー・D・ソロー『ウォールデン 森の生活』(1854年)第1章「経済」




