ジャックとジルの話とは?「大学に行くのは収入のため」を複利で考えてみた
投資の本やSNSで、ときどき出てくる「ジャックとジル」という話がある。複利の力、とくに「早く始めることの価値」を伝える古典的なたとえ話だ。
今日はまず、この話をちゃんと解説する。そして、この話を自分の数字で遊べるシミュレーターをブログ内に自作したので、それも紹介したい。
さらに後半では、この複利の考え方を使って、よく議論になるテーマを考えてみる。「大学に行くのは収入を上げるため」。それって、数字の上では本当なんだろうか?
1. ジャックとジルの話とは
設定はシンプルだ。同い年のふたりが、同じ年40万円ずつ積立投資をする。ちがうのは「いつ始めて、いつやめるか」だけ。なお、この話は紹介する本や人によって金額がまちまちなので(元の米国版は「年2,000ドル」が定番)、この記事では年40万円に置き換えて計算する。年齢の設定は定番のまま。金額を変えても、勝敗の構造は変わらない。
元本はジャックのほうが約5倍多い。ふつうに考えたらジャックの圧勝に見える。ところが、結果はこうなる。
利回り10%なら、元本が5分の1しかないジルが勝つ。8年分の積立が、39年という長い時間をかけて雪だるまになるからだ。これがこの話の有名なオチで、「早く始めることは、たくさん入金することに匹敵する」という複利の教訓としてよく引用される。
ただ、わたしはこの話のもうひとつの顔も大事だと思っている。表のとおり、利回り7%ならジャックが勝つ。つまりこの勝負、じつは利回りしだいで結果が入れ替わる。「早さ」も「継続」も、どちらか一方が絶対の正解ではない。そして言うまでもなく、いちばん強いのはジルのように早く始めて、ジャックのように長く続けることだ。
2. 自分の数字で遊べるシミュレーターを作った
この話、条件を変えるとどうなるんだろう?と気になって、ブログ内にシミュレーターを自作してみた。
自分の年齢と積立額を入れてみると、「いま始めた自分」と「10年後に始めた自分」の差も計算できる。ぜひ遊んでみてほしい。
3. 本題。「大学に行くのは収入のため」は本当か
さて、ここからが今日の本題だ。
進路の話でよく聞く意見に、「大学に行くのは、将来の収入を上げるため」というものがある。実際、データの上でも学歴によって生涯賃金には差がある。でも、複利を知ってしまったわたしたちは、こう考えたくなる。「その学費、もし18歳で投資に回したら、どっちが大きくなるの?」
まず、材料になる数字を並べてみる。
生涯賃金の差は、ざっくり5,000万〜6,000万円。学費410万円と比べると、「そりゃ大学に行ったほうが得でしょ」と思える差だ。でも、410万円には複利という魔法をかける時間が47年もある。
4. 対決。大学に行かないジル vs 大卒のジャック
ここからは、記事前半のふたりに「進路」を演じてもらう。設定はこうだ。
積み立てた元本は、ジャックのほうが2倍以上多い。65歳時点で勝つのは、どちらか。
※ただし、この表は「投資のレース」だけの比較。ジャックには、大卒の生涯賃金差(約5,000万〜6,000万円)という"別ポケット"があることを忘れずに読んでほしい。
利回りが年3.7%を超えると、ジルが勝つ。世界株の長期平均に近い5%なら約1,500万円差、7%なら7,000万円以上の差をつけて、元本半分以下のジルの勝ちだ。18歳の410万円と、20代の積立。「早いお金」の威力は、それほど大きい。
ただし、これで「大学はムダ」と結論づけるのは、雑すぎる。さっき注記したとおり、ジャックの給与口座には大卒の賃金差(約5,000万〜6,000万円)がまるごと上乗せされていく。5%のときの差(約1,500万円)はもちろん、7%の差ですら、賃金差の一部を積立に上乗せすれば十分にひっくり返せる範囲だ。投資のレースだけならジルが強い。でも人生の収支は、投資だけでは決まらない。
そしてもうひとつ。この思考実験そのものにも、大事な注意書きがある。
5. あずきの考え。この計算が本当に教えてくれること
じゃあ、この思考実験は無意味だったのか。わたしはそうは思わない。この計算が本当に教えてくれるのは、「大学か投資か」の答えではなくて、18歳のお金と時間には、すごく価値があるという事実だと思う。
元本半分以下のジルが勝ててしまうのは、ジルがすごいからではなく、18歳からの47年という時間があるからだ。そしてその時間は、大学に行く人にも行かない人にも、平等に流れている。だから本当の分かれ道は「進学するかどうか」ではない。
- 大学に行くなら、410万円と4年間を本気で使い倒すこと。出会い、学び、選択肢。収入だけでは測れない価値を、ちゃんと回収しにいく
- 行かないなら、浮いたお金と時間の計画を持つこと。何もしなければ、410万円の複利も、賃金の差も、どちらも手に入らない
いちばん高くつくのは、大学に行くことでも行かないことでもなく、目的を持たないままどちらかを選ぶことだと思う。
わたし自身は、大学で学んだことがいまの収入に直結しているかと聞かれると、はっきりとは答えられない。でも、あの時間がなければいまの仕事にも、投資を始めた2018年にも、たどり着いていなかった気はする。人生の投資は、リターンの出方が複利よりずっと読みにくい。
そして最後に、ジルの話に戻りたい。ジルの武器は、才能でも入金力でもなく「早さ」だった。これを読んでいるあなたが何歳でも、人生でいちばん若いのは今日だ。18歳の410万円ほどの爆発力はなくても、わたしが26歳で始めた5万円が8年で5,800万円の一部になったように、複利は始めた人の味方をしてくれる。
まとめ
- ジャックとジルの話とは、複利の力を伝えるたとえ話。8年しか積み立てないジル(元本320万)が、38年積み立てたジャック(元本1,520万)に高利回りだと勝ってしまう
- ただし勝敗は利回りしだいで入れ替わる(この設定の分岐点は約8.8%)。最強は「早く始めて、長く続ける」の両取り
- 条件を自由に変えられるシミュレーターをブログ内に自作した。自分の数字で試せる
- 「大学に行くのは収入のため」を検証: 大学に行かず学費410万円を18歳で一括+28歳まで年40万円積立のジル(元本850万)と、大卒22歳から65歳まで年40万円積立のジャック(元本1,760万)を比較。利回り3.7%を超えるとジルが勝ち、5%で約1,500万・7%で7,000万円以上の差がつく
- ただしジャックには大卒の生涯賃金差(約5,000万〜6,000万)がまるごと残っている。投資のレースだけならジルが強いが、人生の収支は投資だけでは決まらない
- ただし賃金差は平均の話で、47年持ち続ける難しさ・国立や奨学金の選択肢・大卒側の複利など、うのみにできない注意点も多い
- この計算の本当の教訓は「18歳のお金と時間には、すごく価値がある」。いちばん高くつくのは、目的を持たないままどちらかを選ぶこと
- 何歳でも、人生でいちばん若いのは今日。複利は始めた人の味方をする
ジルの武器は「早さ」でした。オルカン・S&P500の積立も、日本の高配当株も、SBI証券ひとつで始められます。金額は月100円からでも、雪だるまは転がり始めます。わたしが8年使っているメイン口座です。
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