AIの借金は、返せるの? 「倒産保険」の値段が過去最高に
AIは、めちゃめちゃ便利だ。わたしは、もうAIなしの生活には戻りたくないぐらいだ。
でも、そのAIを動かすデータセンターには、とんでもないお金がかかっている。10月8日、ブルームバーグが、そのお金の集め方に異変が出ていると報じた。オラクル、ブロードコム、スペースXなどの大手が、AIのために今年だけで5,000億ドル(約79兆円)近い借金の条件を決め、お金を集めた。お金を貸す側の投資家は「本当に返せるのか」と見直しを始め、オラクルやブロードコムでは、倒産に備える保険の値段が過去最高になっている。
読んで、わたしが最初に思ったのは、こうだ。
🧮「投資したお金は、回収できる見込みがあるの?」
📈「金利も上がっているよね?」
🧺「わたしのBNDやオルカンに、AIの会社はどれくらい入っているの?」
先に、調べてわかったことを書いておく。本業で入ってくるお金だけでは、AIへの投資をまかないきれない会社が出てきている。ただ、借りている会社の多くは利益を出していて、いまのところ、返せなくなった会社があるわけではない。借金の申し込みが一度に集まりすぎて、お金を貸す側が「もっと金利をもらわないと割に合わない」と言い始めている、という段階だ。そしてわたしの持ち物では、BND(アメリカの債券をまとめて持てるETF)の中のAI関連の社債は1.7%程度。一方、オルカン(世界中の株をまとめて持てる投資信託)の中のAI関連株は21.9%と、ずっと大きい。
順番に見ていく。
1. どれくらい借りているの?
会社がお金を集める方法は、大きく2つある。株を出すか、借金をするか。借金のほうには、銀行から借りるだけでなく、「社債」という借用書を投資家に買ってもらう方法がある。
ブルームバーグによると、AI向けの借金は今年、オラクル、ブロードコム、スペースXなどで5,000億ドル近い。アメリカの信用の高い会社の社債で、250億ドル(約4兆円)を超える大型の案件は今年9件あり、過去最多になった。その大半がテック企業だ。
しかも、これで終わりではない。ブロードコムは今後数年で約6,000億ドルを集める可能性があると、ブルームバーグは見ている。スペースXも、エヌビディアの半導体を買うために400億ドルの資金集めを話し合っていると報じられた。
オラクルは6月の決算発表で、2026年中は、追加で社債を出す予定はない、と言っている。それでも半導体は買わなければならない。そこで取りざたされているのが、半導体を「借りて使う」形だ。投資家がお金を出して、別の会社をつくる。その会社が半導体を買い、オラクルは使用料を払って借りる。車をローンで買う代わりに、リースで借りるのに近い。オラクルが自分で借りるお金は、そのぶん少なくてすむ。
2. 本当に、返せるの?
1つ目と2つ目の疑問。返せるかどうかは、本業で入ってくるお金と、出ていくお金を比べるとわかりやすい。大手5社の決算を並べてみた。
マイクロソフト、アルファベット、メタは、本業で入ってくるお金のほうが、まだ多い。アマゾンとオラクルは、設備投資のほうが多くなっている。足りない分は、借金や手元のお金でまかなっていることになる。
オラクルは、とくに差が大きい。借金の合計は1,253億ドル(約20兆円)で、7月には格付け会社のS&Pグローバルが、格付け(借金を返す力を、AやBBBなどの記号で表したもの)をBBBからBBB-に1段下げた。BBB-は、「投資に向く」とされる格付けのいちばん下だ。
しかも各社とも、2026年の投資は、前の年よりさらに増える計画だ。JPモルガン・アセット・マネジメントの見立てでは、大手クラウド各社がAIの設備にかけるお金は、本業で入ってくるお金の33%(2023年)から、約93%(2026年)に上がる。
では、回収の見込みはあるのか。同じJPモルガン・アセット・マネジメントは、これまでの投資で毎年10%のもうけを出すには、AIで年6,500億ドル(約100兆円)の売上が要る、と計算している。データセンターに払われるお金は、最後はAIを使う会社や人から来る。AIを作る会社の売上は、いまのペースが1年続いたとして、OpenAIが約500億ドル、アンソロピックが約650億ドル。2社を合わせても約1,150億ドルで、6,500億ドルの2割ほどだ。AIの売上はほかの会社にもあるけれど、伸びは速くても、まだ距離がある。
そこに、中国のAIがある。2025年1月には、中国のDeepSeekの登場で、エヌビディアの株価が1日で17%下がった。同じ性能のAIを使う料金は、求める性能の水準によって、1年で9分の1から900分の1にまで下がっている、という調査もある。安くて性能のいいAIが出てくれば、高いお金をかけて作ったAIの値段も、下げざるをえない。
それでも、各社は投資を止めない。アルファベットのピチャイCEOは2024年に、「投資が足りないリスクのほうが、投資しすぎるリスクより、はるかに大きい」と話している。メタのザッカーバーグCEOも、同じ趣旨のことを言っている。止めたら負ける。だから、だれも止められない。
一方で、「需要は本物だ」という声もある。アマゾンのジャシーCEOは7月に、「2026年の需要をすべて満たすだけの設備がない。2027年も同じだと思う」と話した。
3. 金利も上がっているよね?
3つ目の疑問。借金をするなら、金利が気になる。
借金のコストは、1年前よりはっきり上がっている。ただ、その理由のほとんどは、国債の金利が上がったことだ。国債への上乗せ分は、社債全体で見ると、まだそれほど広がっていない。
広がっているのは、AIで大きく借りている一部の会社だ。それがいちばんよく見えるのが、倒産に備える保険の値段(CDS)になる。お金を貸した人が、「もし返ってこなかったら、その分を払ってもらう」ために払う保険料だ。返せなくなりそうだと思われるほど、保険料は高くなる。
オラクルの保険料は、1年あたり2.61%。この値段は、市場が「5年のうちに返せなくなる確率は2割を超える」と見ていることを表している。
たとえば、オラクルのような会社が100社あったら、そのうち20社以上は5年以内に返せなくなる、と市場は見ている、ということだ。
時価総額(株の値段で見た会社の大きさ)が世界一のエヌビディアでさえ、7%を超える。
ただ、これは実際に返せなくなる確率ではない。保険料には、不安の分の上乗せも入っている。だから、この2割や7%は、本当の確率というより、お金を貸している人たちがどれくらい心配しているかを表す数字、と読むほうが近い。
4. わたしのBNDやオルカンに、AIの会社はどれくらい入っているの?
4つ目の疑問。同じAIの会社でも、BNDとオルカンでは、入り方がちがう。BNDには、会社の借金(社債)として入っている。オルカンには、会社の株として入っている。
まずは借金の側から。わたしは、BNDを230口持っている。
BNDに入っている債券は、11,421本ある。そのうち半分ほどはアメリカの国債で、会社の社債は4分の1ほど。AI関連の大手8社の社債を、全部足してみた。
わたしは「1万ぐらいに分散されているので、小さいよね?」と思っていたが、そのとおりだった。230口のうち、AI関連の8社に当たるのは約4.4万円。オラクルは約9,100円だ。
次に、株の側。会社が借金で困ったとき、先に損をかぶるのは株を持っている人だ。会社がつぶれて、残ったお金を分けるときの順番は、お金を貸した人が先で、株主はいちばんあとになる。だから、AIの借金の話は、株を持っている人にも関係がある。わたしはオルカンのほかに、S&P500も持っている。
オルカンの中では、この8社だけで2割を超える。S&P500では、3割を超える。わたしがAIの会社に乗っている重さは、債券より株のほうが、ずっと大きい。
5. わたしの見方
借りた人よりも、よく覚えている。
アメリカ建国の父のひとり、フランクリンが、毎年出していた暦に書いた言葉だ。つけ(借金)で物を買うのをいましめる場面で、「買ったときは払うことを気にしなくても、貸した側は返す日をよく覚えている。その日は、思っているより早くやってくる」という流れで出てくる。
いまの社債の市場に、この言葉が重なる。借りる会社は、AIのために次々にお金を集める。貸す側の投資家は、その一つひとつに「本当に返せるのか」と、上乗せの金利を求め始めた。
AIは便利だ。でも、中国のAIも出てくるなかで、本当に回収できるのか。開発費や設備投資がふくらんで、チキンレースのようになっているんじゃないか。これは、一般的な感覚に近いと思う。
それでも、調べてみてわかったことはある。BNDの中のAIの借金は、1.7%。わたしがAIに乗っている重さは、株のほうにある。これは覚えておこうと思う。
6. まとめ
- AIのために、オラクルやブロードコムなどが今年だけで5,000億ドル近い借金の条件を決めた。250億ドル超の大型案件は過去最多
- 本業で入るお金より設備投資が多いのは、アマゾンとオラクル。オラクルは格付けも1段下がった
- 回収には年6,500億ドルの売上が要るという試算もあり、いまのAIの売上とはまだ距離がある。中国のAIで値下げの圧力も
- 借金のコストは上がったが、主な理由は国債の金利。上乗せが広がっているのは一部の会社
- オラクルの倒産に備える保険の値段からは「5年で2割超」という見方も出るが、実際の確率ではない
- わたしのBNDでは、AI関連8社の社債は1.7%、約4.4万円。オルカンでは8社で2割を超える
・各社の決算:マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ、オラクル(いずれもアメリカ証券取引委員会に出された資料)
・オラクルの「2026年中は追加で社債を出さない予定」:オラクル 決算発表(2026年6月)。格下げ:S&P Global
・設備投資と回収の見立て:J.P. Morgan Asset Management(2026年6月)、同(2026年1月)
・AIの売上:CNBC(10月8日)、CNBC(8月17日)
・中国のAIと料金:Bloomberg(2025年1月27日)、Epoch AI(2025年3月)
・発言:アルファベット 決算説明会(2024年7月)、Fortune(2025年9月、ザッカーバーグ氏)、Fortune(2026年7月、ジャシー氏)
・金利:FRED(10年国債)、FRED(投資適格社債の利回り)、FRED(上乗せ分)
・BNDの中身:Vanguard「BND」(保有銘柄は8月31日時点)
・オルカンとS&P500の中身:三菱UFJアセットマネジメント 月報(オルカン、9月30日時点)、同(S&P500、9月30日時点)、オラクルの比率:iShares MSCI ACWI ETF、iShares Core S&P 500 ETF(いずれも9月30日時点の保有銘柄)
・格言:Benjamin Franklin, "Poor Richard Improved"(1758年)の序文。のちに "The Way to Wealth" として出版。原文は「Creditors, Poor Richard tells us, have better Memories than Debtors; (…) Creditors are a superstitious Sect, great Observers of set Days and Times.」訳と要約はわたし




