赤字のホンダの株が上がり、最高益のスズキの株が下がった。なぜ?
10月30日のニューズウィーク日本版に、「ホンダの株価はなぜ崩れない?」という記事が載った。日経平均が大きく下げた10月中旬も、ホンダの株は上がり続けている。21日には、今年いちばんの高値をつけたという。
ホンダの株を持っているわたしには、うれしいニュースだ。でも、少し前には、別のニュースも見ていた。2025年度の国内の乗用車の販売(軽自動車を含む)で、スズキがホンダを抜き、トヨタに次ぐ2位になったという話だ。
わたしは、トヨタもホンダもスズキも持っている。
調べてみると、もう1つ、面白いことに気づいた。前の年度(2025年度、2025年4月〜2026年3月)の成績と、この1年の株価が、逆になっている。
1. 3社とも、好きな会社
わたしにとって、自動車の会社は、ちょっと特別だ。
3社とも、少しずつ持っている。わたしが高配当株を選ぶときの目安は、配当利回り4%前後。その目安に届いているのはホンダの約4.0%だけで、トヨタは約3.2%、スズキは約2.4%だ(今年度の配当の予想と、10月29日の株価で計算)。配当だけで選んだわけではない。
トヨタは、日本を代表する会社だと思う。そして、自動車は、日本を代表する産業。だから、応援したい。理由は、それくらい単純だ。
それに、技術はワクワクする。自動運転、ロボット、EV。トヨタが静岡県裾野市でつくっている実験の街「ウーブン・シティ」には、住んでみたい。ああいう取り組みが、わたしは好きなのだと思う。そしてそれは、ホンダにもスズキにも、共通している。
ホンダを買ったのは、お金をたくさん持っていて、配当も多いから。でも、それと同じくらい、F1やホンダの車が好きだった。わたしにとってホンダは、「好きな会社」だ。街でホンダの車を見かけると、少しうれしくなる。
スズキは、たまたま読んだ記事がきっかけだった。アメリカの自動運転の乗り物の会社に、追加で出資したというニュース。面白いと思って、買ってみた。
そういえば、学生時代のバイト先の先輩が、「ジムニーに乗っている人に、悪い人はいない」と言っていた。嘘か本当かは、知らない。
株を持つことは、その会社を少しだけ応援することでもある。3社とも、そういう株だ。
2. 成績と株価が、逆になっている
まず、前の年度の成績を並べてみる。
ホンダは、4,239億円の赤字だった。いちばん大きな理由は、EVに関わる損失だ。この損失は、本業のもうけ(営業利益)を減らした分だけで1兆4,536億円。そのうち1兆1,864億円は、3月にEVの計画を見直したことによるものだ。この損失がなければ、ホンダの本業のもうけは1兆393億円あった。それを損失が上回り、赤字になった。
スズキは、最終の利益が4,393億円で、過去最高。
では、この1年(2025年10月末〜2026年10月末)の株価はどうか。
赤字だったホンダの株が11.3%上がり、最終の利益が過去最高だったスズキの株は8.4%下がっている。
3. なぜ、逆なの?
株価が見ているのは、過去の成績より、これから先だ。今年度の利益の予想を並べると、ずれの理由が見えてくる。
今年度のホンダは、黒字に戻る予想になっている。EVの損失は今年度も出る見込みだけれど、大半は前の年度に出している。
スズキは、過去最高だった前の年度より、今年度は利益が減る予想だ。5月の時点では、最終の利益が13.5%減る予想。8月に最終の利益の予想を上げたものの、それでも前の年度より少ない。
例えると、通知表の点数より、次の学期に伸びそうかどうかで見られているのに近い。前の学期に大きくつまずいた子が、次は持ち直しそうなら、期待が集まる。前の学期に最高点をとった子でも、次は少し下がりそうなら、期待はふくらみにくい。
もちろん、株価が動く理由は、これだけではない。トヨタも利益が減る予想なのに、株価の下げは2.2%にとどまっている。為替も、関税も、相場全体の空気もある。ただ、「成績がよいのに株価が下がる」「赤字なのに株価が上がる」は、めずらしいことではない。
4. ホンダには、2番手でいてほしかった
ここは、まったく個人の感想なのだけれど、スズキがホンダを抜いた、というニュースを読んだとき、なんとも言えない気持ちになった。
トヨタは、1番でいい。いちばん前を走っていてほしい。
でも、ホンダには、2番手でいてほしかった。
うまく言えないけれど、ホンダは、なんかかっこいい。ちょっとやんちゃな次男的な存在だ。商売では、1位にはならない。それでも、尖った技術があって、乗る人を楽しませるものがある。わたしの中のホンダは、そういう2番手だ。
その「かっこよさ」は、スズキにも、ヤマハ発動機にもある。だから、抜いたのがスズキだったことも、また、なんとも言えない。やんちゃな次男が、ひかえめな三男に抜かれたような、ちょっと切ない気持ちだ。
ただ、数字を見ていくと、ホンダの強みは、車だけではなかった。前の年度、バイクは販売台数も本業のもうけ(営業利益)も過去最高だった。インドやブラジルを中心に台数を伸ばし、今年度は過去最高の2,280万台を売る計画だという。2026年4〜6月の3か月でも、バイクの営業利益は2,339億円。売上に対する営業利益の割合は20.5%で、3か月ごとの成績として過去最高だ。
アメリカでは、ハイブリッド車が見直されている。充電の場所を気にせず乗れて、燃費もいい。ホンダは、2027年以降に次の世代のハイブリッドの新しい車を出し、2030年3月までに世界で15車種を展開する方針だ。
国内の販売の逆転には、ホンダが半導体不足で生産を止めた影響もある。世界の生産台数でも、2025年度はスズキがホンダを上回った。インドが好調なスズキと、半導体の問題で工場を止めたホンダで、明暗が分かれた形だ。
5. 決算で、どこを見るか
11月に、3社の決算が出る。4〜9月の半年の成績だ。
見るところは、多くても1社に2つまでにしぼった。まず3社に共通するのは、最終の利益の予想だ。3社とも、8月に今年度の予想を上げている。その予想が保たれるかどうか。
それに加えて、トヨタは、8月に始めた自社株買い(会社が自分の株を買い戻すこと。上限1兆円、2027年8月4日まで)が、どこまで進んだかを見る。スズキは、前の年度の売上の伸びを引っぱったインドの販売を見る。ホンダは、EVの損失がまだ続いていて、今年度は5,200億円を見込んでいる。この数字が増えないかを見る。
決算が出たら、この記事に追記する。株価の予想はしない。書いておくのは、どこを見るかだけだ。
6. わたしの見方
どの決算も、それほど気にしてはいない。決算だけで売り買いはしないし、専門家でもないので、正直、見てもよくわからない。外すことを考えるのは、配当が減るときくらい。3社とも、応援している。
それでも、答え合わせをしてみたいのは、ニュースと株価のずれが面白かったからだ。
日本には、こんなことわざがある。
本田宗一郎さんの本の題名にもなっている(『得手に帆あげて』)
「得手(えて)」は、得意なこと。得意なことを生かせる追い風が来たら、帆を揚げて一気に進む、という意味だ。江戸時代のはじめには、もう使われていた言葉で、ホンダをつくった本田宗一郎さんは、これを自分の本の題名にしている。
いまのホンダには、バイクとハイブリッド車に追い風が吹いている。スズキには、インドがある。トヨタには、ハイブリッド車と、何でもそろう総合力がある。3社とも、得手がちがう。
どの会社が勝つかを、わたしは当てにいかない。3社とも持っているから、どの得手に風が吹いても、少しうれしい。
7. まとめ
- ホンダの株は10月も下がりにくく、21日に今年いちばんの高値。国内の乗用車の販売では、2025年度にスズキがホンダを抜いて2位に
- 前の年度は、ホンダが4,239億円の赤字、スズキは最終の利益が過去最高。なのに1年の株価は、ホンダ+11.3%、スズキ−8.4%
- 株価は、過去の成績よりこれから先を見る。ホンダは今年度に黒字へ戻る予想で、スズキは減益の予想
- ホンダの強みはバイク。前の年度は販売台数も本業のもうけも過去最高
- 決算はトヨタが11月5日、スズキとホンダが11月10日。8月に上げた最終の利益の予想が保たれるかを見て、追記する
- わたしは何もしない。3社とも、得手がちがう。どれに風が吹いても、少しうれしい
・トヨタ:2026年3月期 決算要旨、2027年3月期 第1四半期決算要旨
・ホンダ:2026年3月期 決算説明会資料、2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料
・スズキ:2026年3月期 決算短信、2027年3月期 第1四半期決算短信
・決算の日:トヨタ 投資家情報、ホンダ IRカレンダー、スズキ IRカレンダー
・国内の販売:ベストカー「スズキが国内販売2位になれた秘密とは?」(2026年7月3日)
・世界の生産:MONOist「2025年度通期でもスズキがホンダを抜いて2位に、明暗分かれた日系自動車生産」(2026年5月21日)
・格言:コトバンク「得手に帆を揚げる」(精選版 日本国語大辞典・ことわざを知る辞典)、国立国会図書館サーチ「得手に帆あげて : 本田宗一郎の人生哲学」
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