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ニデックの「違法配当」。もらった配当を、株主は返さないといけない⁉︎
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ニデックの「違法配当」。もらった配当を、株主は返さないといけない⁉︎

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ごまもち
🐾 ごまもち
はいとうを、かえさなきゃいけないの?🐾
あずき
あずき
法律の上では、そうなるみたい。

10月16日の日本経済新聞に、「ニデック、5期連続の違法配当」という見出しが載った。

読んで、まず「返す義務」にびっくりした。配当を受け取った株主には、法律の上では、それを会社に払う義務があるという。

わたしは、ニデックの株は持っていない。でも、日本の高配当株を120銘柄以上持っている。知らないことが多いので、整理してみる。

先に答えを言うと
🏭「何が起きたの?」
→ 会計不正で過去の決算を直したら、5期続けて、配当と自社株買いが法律の上限をこえていたとわかった。上限をこえて払った額は、合わせて約2,400億円
💴「配当に、上限なんてあるの?」
→ ある。会社が単体でためてきたもうけなどの範囲(分配可能額)まで。ニデックは過去の決算を直したら、ニデック1社の帳簿では当時すでに損失が出ていたことになり、上限がさかのぼって下がった
↩️「もらった配当、返さないといけないの?」
→ 法律の上では、株主にも会社に払う義務がある。ただ、実際に求めることはほとんどなく、責任を問われやすいのは取締役のほう
📚「過去にもあったの?」
→ ある。三洋電機やオリンパスなど。最近では、2024年に力の源ホールディングスも
🔍「高配当株を持つわたしは、何を見ればいい?」
→ 分配可能額そのものは、ふつう公表されない。会社単体の数字、監査の意見、決算の訂正が手がかりになる
順番に見ていく。

1. 何が起きたの?

ニデックは、モーターなどをつくる京都の会社だ。

🕰️ ニデックで起きたこと
いつ
何があった
2023年6月
2022年度の中間配当と自社株買いが、上限をこえていたと発表(会計不正とは別の、計算のまちがい)。株主に返してもらうことは求めない、とした
2025年9月
会計不正の疑いで、第三者委員会を設置
2025年10月
東京証券取引所が「特別注意銘柄」に指定(会社の管理体制に、改善が必要とされた印)
2026年3月
第三者委員会の報告書を公表。不正の背景に、強すぎる業績のプレッシャーがあったとされた
2026年9月
個人の株主が、元取締役の永守重信氏と小部博志氏を相手に株主代表訴訟を起こしたと、ニデックが発表(10日)
2026年9月30日
過去の決算を直した結果、過去5期(5年分)の配当などが上限をこえていたと発表。同じ日の決算で、大きな損失(減損6,321億円)も出した。決算が正しいかを外からチェックする監査法人は、意見を出さなかった(意見不表明)
ニデックの発表資料(2023年6月2日、2026年3月3日、9月10日、9月30日)、東京証券取引所の発表(2025年10月27日)から。2023年に発表した分は、今回の5期のうちの2022年度にふくまれる。要約はわたし

始まりは、会計の不正だった。売れない在庫の損を出さない、資産の目減り(減損)を避ける、といった処理が、長いあいだ続いていた。第三者委員会は、その背景に、創業者の永守重信氏を起点とする、強すぎる業績のプレッシャーがあったとしている。永守氏が不正を指示した事実は見つかっていない。ただ、一部の不正は容認していた、とも書いている。

ニデックは、不正を正して、過去の決算を直した。すると、ニデック1社の帳簿では、当時すでに大きな損失が出ていたことになり、配当してよい上限も、さかのぼって下がった。実際に払った額は、その上限をこえていたことになる。

ニデックの株価は、第三者委員会を置く前の2025年8月末の3,211円から、2026年10月15日には1,819円まで下がっている。配当は、2025年6月の支払いを最後に、出ていない。


2. 配当に、上限なんてあるの?

ごまもち
🐾 ごまもち
はいとうは、すきなだけ だせないの?🐾
あずき
あずき
うん。出していいのは、会社がためてきた分までなんだ。

会社法という法律で、配当や自社株買い(会社が自分の株を買って、株主にお金を返すこと)に使ってよいお金は、「分配可能額」までと決まっている(461条)。

分配可能額は、ざっくり言うと、会社がこれまでにためてきたもうけの残りだ。貯金のうち「自由に使っていいお金」に近い(正確には、貸借対照表の「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」を足して、自分の会社の株(自己株式)などを引いて計算する)。

気をつけたいのは、この計算は、グループ全体ではなく、ニデック1社、単体で行う、という点だ。ニデックは、自分でもモーターの開発や販売をしながら、子会社(ニデックが株の半分より多くを持つなどして、経営をにぎっている会社)を340社ほどかかえる親会社でもある(2025年3月期の有価証券報告書では、連結子会社342社)。配当を払うのは、親会社のニデックだ。

そのニデック1社の純資産(会社の財産から借金を引いた残り)は、2025年3月末の2,030億円から、2026年3月末には189.8億円まで減った(監査法人がまだ「正しい」と認めていない数字なので、さらに変わるかもしれない)。1年で10分の1以下だ。グループ全体(連結)では、株主の分の純資産が7,942億円あっても、配当を払う財布は、ほとんど空になっている。

では、なぜ上限が、さかのぼって減ったのか。原因は、不正な会計で、グループの会社の損が、決算に出ていなかったことだ。過去の決算を正しく直すと、子会社の当時の成績は、見せていた数字より悪かった。そのため、直した決算では、ニデックに2つの損が出ている。1つは、ニデックが持つ子会社の株の値打ちが下がった分。もう1つは、借金のほうが財産より多くなっていた子会社について、足りない分をニデックがかぶるかもしれない分だ。2つを合わせた損は、2021年3月末の時点ですでに364億円あり、2025年3月末には1,315億円(1つ目が727億円、2つ目が588億円)にふくらんでいた(ニデックの2026年10月1日の説明資料から)。こうして、過去の各年度の、ニデック1社の「自由に使っていいお金」が減ったわけだ。

要は、こういうことだ。ニデックは、子会社の株をたくさん持つ大株主。その株の値打ちを高く見積もって、「財布にはこれだけある」と思い、配当を配っていた。ところが、子会社の成績はごまかされていて、株の本当の値打ちは見せていたより低く、借金だらけの子会社の穴うめに使う分も、数えていなかった。正しく数え直すと財布の中身は足りず、配ってはいけない額まで配っていた、というわけだ。

🔗 なぜ、配当の上限がさかのぼって下がったの?
子会社の本当の成績が見せていたより悪かった借金のほうが財産より多い子会社があった① ニデックが持つ子会社の株の値打ちが下がる727億円② 足りない分をニデックがかぶるかもしれない588億円親会社ニデック1社の損になる子会社は340社ほど。配当を払うのは親会社「自由に使っていいお金」(分配可能額)が減り、配当の上限が、過去の年度にさかのぼって下がった
金額は2025年3月末の時点。ニデックの説明資料(2026年10月1日)から。子会社の数は有価証券報告書(2025年3月期)から。図はわたし
📊 配当してよい上限と、実際に払った額
2021年度745億円926億円2022年度186億円940億円2023年度−579億円(マイナス)413億円2024年度193億円538億円2025年度146億円229億円
直したあとの上限(分配可能額) 実際に払った額
ニデックの説明資料(2026年10月1日)から。年度は、お金を払った年度(2021年度は2022年3月期)。上限は前の期末の数字で決まる。2025年度の229億円は、その前の期(2025年3月期)の期末配当を払ったもの。払った額は配当と自社株買いの合計。こえた額(赤から緑を引いた分。2023年度はマイナスの分もふくむ)を足すと約2,356億円。冒頭の約2,400億円は、上限をこえていた配当と自社株買いの金額そのものを足したもの

5年とも、実際に払った額(赤)が、直したあとの上限(緑)を上回っている。2023年度は、上限がマイナスだったのに、413億円を払っていた。


3. もらった配当、返さないといけないの?

↩️ だれが、だれに払うの?
だれが
だれに
何を
配当を受け取った株主
会社に
受け取った額を払う義務(会社法462条)
配当を決めた取締役など
会社に
株主と同じく、払う義務。注意を尽くしたと証明できれば、まぬがれる
上限をこえたと知らなかった株主
取締役に
取締役が会社に払ったあと、取締役から「株主も負担して」と言われても、応じなくてよい(463条)。1行目の、会社への義務とは別の話
e-Gov法令検索の会社法の条文から。要約はわたし。法律の上では、会社にお金を貸している人(債権者)も、株主に直接請求できる

法律の上では、上限をこえた配当を受け取った株主は、受け取った額を会社に払う義務がある(462条)。ただ、たくさんの株主に、一人ずつ返してもらうのは、手間もお金もかかる。そのため、会社が実際に株主に請求することは、ほとんどない。ニデックも、2023年にわかった分については、株主に返してもらうことは求めない、としている。今回わかった5期の分をどうするかは、10月16日の時点では、会社から発表されていない。

💭 可能性は低いが、もしも、返すことになったら?
返す対象
2022年6月〜2025年6月の
配当7回
1株あたり
7回の合計で130円
(今の株数で)
今の株で100株
7回の合計で13,000円
分割前から100株
(今は200株)
7回の合計で26,000円
ずっと持っていた人の場合。税金が引かれる前の額で計算。2024年10月に1株を2株に分けたので、分割前の株に払われた配当(2024年12月の分まで)は半分にして足した。2021年4月〜2022年3月に払った配当は、上限の内だったので入らない(この期間にこえたのは自社株買いだけ)。7回には、2023年に会社が「返してもらうことは求めない」とした2022年12月の分もふくむ。返すのは、上限をこえた分だけでなく、受け取った額の全部(会社法462条)。ニデックの有価証券報告書と配当の推移から計算

責任を問われやすいのは、配当を決めた取締役のほうだ。

会社が取締役の責任を問わない場合、株主が会社にかわって取締役を訴えることができる。これを「株主代表訴訟」という(847条)。ニデックでは、個人の株主が、元取締役の永守氏と小部氏に、約287億円を会社に払うよう求めて、京都地裁に訴えた(会社が2026年9月10日に発表)。2023年に見つかった分についての訴えだ。


4. 過去にもあったの?

📚 過去の例
会社
いつ
どうなった
三洋電機
2007年に判明
株主が旧経営陣を訴えたが、大阪地裁(2012年)・大阪高裁(2013年)とも、役員の責任は認めなかった
オリンパス
粉飾決算の事件
東京高裁(2019年)が旧経営陣3人に約594億円の支払いを命じ、2020年に確定
力の源ホールディングス
(一風堂)
2024年12月に発表
中間配当と自社株買いが、上限をこえていた。株主には返還を求めず、取締役が報酬の一部(1か月分の3割)を返すと申し出た
日本経済新聞(2026年10月16日)、弁護士ドットコム、アゴラ、力の源ホールディングスの発表資料(2024年12月、2025年2月)から。要約はわたし

結果は、ばらばらだ。三洋電機では、役員の責任は認められなかった。オリンパスでは、粉飾に関わった旧経営陣に、違法な配当などをふくめた約594億円の支払いが命じられている。

カギになるのは、当時の経営陣が問題に気づけたか、注意を尽くしていたか、だと日経は書いている。


5. 高配当株を持つわたしは、何を見ればいい?

分配可能額そのものは、ふつう公表されない。でも、手がかりはある。

🔍 個人の投資家が見られる手がかり
会社単体の数字
有価証券報告書の「単体」の貸借対照表にある、その他資本剰余金・その他利益剰余金・自己株式。分配可能額のもとになる
連結と単体の差
グループ全体(連結)では大きくても、親会社単体では小さいことがある
監査の意見
「意見不表明」「限定付き」などが出ていないか
決算の訂正
過去の決算を直していないか。直すと、上限がさかのぼって変わることがある
東証の印
「特別注意銘柄」などに指定されていないか
ニデックの決算短信(2026年9月30日)、ニデックの外部調査委員会の報告書(2023年6月16日)、EY新日本有限責任監査法人の解説などから。要約はわたし

じつは、ニデック自身も、2023年に発表した分(2022年度)は、決算を直す前の数字でも、すでに上限をこえていた。その原因の1つは、社内の会議で分配可能額ではなく、利益剰余金を目安にしていたことだとされている。分配可能額は、ためてきた利益などから、自社株買いに使ったお金を引いて計算する。ところが、ニデックの会議では、引く前の利益剰余金を見ていた。自社株買いに大きなお金を使っていたので、そのぶん、配ってよい額を多く見まちがえていたことになる。家計でいえば、カードで使った分を引かずに、通帳の残高だけを見て「まだ使える」と勘違いしてしまうようなイメージだ。力の源ホールディングスでも、原因の1つは担当者の計算の誤解だった。大きな会社でも、まちがえることがある数字だ。


6. わたしは、どう思う?

正しい道理の富でなければ、
その富は完全に永続することができぬ。
渋沢栄一『論語と算盤』

明治から大正にかけて、500ほどの会社の設立に関わったとされる、渋沢栄一の言葉だ。2024年からは、1万円札の顔にもなっている。

『論語と算盤』は、1916年(大正5年)に出た本で、渋沢が話したことをまとめたもの。『論語』は、人としての正しい生き方を説いた、孔子の言葉の本。「算盤」は、そろばん、つまり商売や利益のことだ。

この言葉は、「論語と算盤は、とても遠いようで、じつはとても近い」という話の中に出てくる。渋沢は、利益のもとになるのは、人として正しい道(仁義道徳)だと述べる。そのうえで、正しい道理にそった利益でなければ、その利益は長くは続かない、と言う。だから、論語と算盤という、かけ離れて見える2つを一致させることが、今の大切なつとめだ、と続けている。

ニデックでは、配当のもとになる利益の数字が、正しくなかった。配当をもらうのは、うれしい。でも、その配当が、正しい利益から払われているのか。今回、はじめてそこに目が向いた。

お金に色はない、とよく言われる。それでも、わたしは、クリーンな利益から払われる配当がいい。渋沢の言う「正しい道理の富」でなければ、配当も長くは続かないと思うからだ。

わたしは、配当を長くもらい続けたい。増配があれば、なおうれしい。配当は、会社から毎年届く手紙のようなものだ。どうせなら、正直に書かれた手紙を、長く受け取りたい。


7. まとめ

🐾 この記事のまとめ
  • ニデックは、会計不正で過去の決算を直した結果、5期続けて配当と自社株買いが法律の上限をこえていたと発表。上限をこえて払った額は約2,400億円
  • 配当は、会社単体でためてきたもうけなどの範囲(分配可能額)までしか払えない。過去の決算を直して、当時すでに損失が出ていたとわかると、さかのぼって上限が下がる
  • 法律の上では、配当を受け取った株主にも、会社に払う義務がある。ただ、実際に求められることはほとんどない
  • 責任を問われやすいのは取締役。ニデックでは、すでに株主代表訴訟も起きている
  • 個人が見られる手がかりは、会社単体の数字、連結と単体の差、監査の意見、決算の訂正など
  • お金に色はないが、配当は、クリーンな利益から払われるものがいい。長くもらい続けたいし、増配があればなおうれしい
📚 参考にした情報源 ・起点の記事:日本経済新聞「ニデック、5期連続の違法配当 取締役の責任問う訴訟に発展も」(2026年10月16日)
・ニデックの発表:過年度修正再表示に伴う分配可能額超過に関するお知らせ(2026年9月30日)、説明資料(2026年10月1日)、決算短信(2026年9月30日)、2023年6月2日のお知らせ、第三者委員会の報告書の公表(2026年3月3日)、株主代表訴訟の提起(2026年9月10日)、外部調査委員会の報告書(2023年6月16日)
・配当の額:有価証券報告書(2023年3月期)、有価証券報告書(2025年3月期)、配当金の推移、株式分割
・特別注意銘柄:日本取引所グループ(2025年10月27日)
・会社法:e-Gov法令検索「会社法」(461条・462条・463条・847条)、EY新日本有限責任監査法人の解説(分配可能額)
・過去の例:弁護士ドットコム(オリンパス)、アゴラ(三洋電機)、力の源ホールディングスのお知らせ(2024年12月)、力の源ホールディングス(第三者委員会の調査結果、2025年2月17日)
・格言:渋沢栄一『論語と算盤』
⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の考えと記録です。特定の会社の株の売買をすすめるものではありません。法律の説明は一般的なもので、個別の事情についての判断ではありません。

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