「買わない」と決めたキオクシアを、1株ずつ買いはじめた。動いたのは、わたしの「ギャンブルごころ」だった
キオクシアは、スマホやデータセンターのデータをためておくメモリー(NAND)をつくる会社だ。8月、わたしはこの会社について2本の記事を書いた。決算で利益が大きく伸びたときも、5兆円の増産を発表したときも、結論は「買わない」。メモリーの値段がいつ上がりきるのか、わたしには読めない。「わたしがいま買えば、それは投資というよりギャンブルだ」。そう書いた。
その会社の株を、10月14日、NISA(投資のもうけに税金がかからない国の制度)で1株、14,690円で買った。翌15日も株価は大きく下げ、もう1株を13,000円で買い足している。
📉「株価は、どこまで下がっているの?」
🎲「下がったら買い増すって、何に賭けているの?」
1. 株価は、どこまで下がっているの?
まず、株価の動きから。キオクシアは10月1日に1株を3株に分けたので、ここでは分割に合わせて直した値段で見る。
6月22日の最高値は、分割に合わせて直すと36,233円(終値)。わたしが買った10月14日の終値は14,690円で、そこから6割近く下がっていた。翌15日の終値は12,880円で、前の日より12%安。最高値からは64.5%下がったことになる。
ここ数日の下げには、キオクシア自身の悪いニュースはない。
2. 買わないって言ってたのに、なぜ?
ひとつ目は、値動きの大きい株を、自分の持ち株の一覧に入れておきたくなったこと。持っていれば、値動きを定期的にチェックするようになるし、ニュースなども自分ごととして考えられる。
ふたつ目は、値段だ。キオクシアがメモリーの市場で持っている強い立場は、それほど損なわれていないはず。その前提で株価を見ると、割安とまでは言えないけれど、割高でもないところまで下がってきたのでは、と感じた。はっきりした根拠があるわけではない。正直、これはわたしのギャンブルごころだ。
8月の記事では、キオクシアを買うなら、3つのこと(メモリーの値段の天井、AIへの投資の行方、競合の増産)を当てないといけないと書いた。その3つが、いまどうなっているかも見ておく。
並べてみても、3つとも、わたしに当てられるようになったわけではない。どこが天井なのかは、8月と同じで、やっぱり読めない。
だから、これは「読めたから買った」のではない。読めないことを分かったうえで、小さく賭けた。
3. 下がったら買い増すって、何に賭けているの?
わたしの買い方は、こうするつもりだ。
下がったところで買い足すと、1株あたりの平均の買い値が下がる。わたしの場合、1株目は14,690円、2株目は13,000円だったので、2株の平均は13,845円になった。15日の終値12,880円で見ると、2株で1,930円のマイナスだ。
でも、これは「いずれ戻る」ことが前提の買い方だ。戻らなければ、下がるたびに損が広がる。相場には「落ちてくるナイフはつかむな」という言葉がある。勢いよく下がっている株に手を出すと、けがをしやすい、という戒めだ。わたしがしているのは、ナイフに手を伸ばすことでもある。
4. わたしの見方
わたしの土台は、これからもインデックスの積み立てと、日本の高配当株だ。キオクシアは、その外に置いた、小さな寄り道になる。
アメリカの作家マーク・トウェインは、1897年の旅行記『赤道に沿って』に、こんな一文を置いている。
余裕がないときと、余裕があるときだ。
マーク・トウェイン『赤道に沿って』第56章(1897年)
この言葉は、章のはじめに置かれた短い格言だ。トウェインは、別の小説『まぬけのウィルソン』の主人公ウィルソンの名前を借りて、「ウィルソンの新しい暦(格言集)より」という体裁で、この格言を書いた。皮肉の効いた冗談だ。余裕がないときも、あるときもダメなら、つまり、いつでもダメということになる。
この冗談には、トウェイン自身の苦い経験が重なっている。活字を自動で並べる新しい機械(植字機)の開発に大金を投じ、出版社の経営にもつまずいて、1894年に破産した。借金を返すために世界を回る講演旅行に出て、その旅をまとめたのが『赤道に沿って』だ。投機で痛い目にあった人の、自分に向けた言葉とも読める。
わたしは、トウェインの忠告を守れていない。自分がしているのはギャンブルだと思いながら、値動きを見ていく。自分が楽しめるなら、そういう寄り道もたまにはいいだろう。
5. まとめ
- 8月に「買わない」と書いたキオクシアを、10月14日にNISAで1株、14,690円で買った。翌日、もう1株を13,000円で買い足した
- 株価は6月の最高値から6割以上下がった。ここ数日は、会社に悪いニュースはなく、半導体やAIの株がまとめて売られた
- 買った理由は、値動きの大きい株を手元に置いて見たくなったことと、割高ではないところまで来たという、自分のギャンブルごころ
- 8月に挙げた「当てないといけない3つ」は、いまも当てられない。読めないと分かったうえでの、小さな賭けだ
- 買い方は、下がったら買い増し。5株が目安で、使うお金は合わせて10万円ほどまで。上がったら放っておく
- 土台はインデックスと高配当株のまま。キオクシアは、その外の小さな寄り道
・株式分割:キオクシアHD「株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更に関するお知らせ」(2026年7月31日)
・下げの背景:株探(MINKABU PRESS、2026年10月13日)、キオクシアHD(格付けの発表、2026年10月13日)、株探(MINKABU PRESS、2026年10月15日)、Korea JoongAng Daily(2026年10月13日)、Yahoo Financeの日次(フィラデルフィア半導体株指数)、The Motley Fool(2026年10月14日)
・3つの条件:TrendForce(NAND契約価格の見通し、クラウド大手の設備投資の見通し)、SKハイニックス(2026年8月7日の取締役会)、マイクロンの決算資料
・単元未満株:SBI証券「S株(単元未満株)」
・格言:Mark Twain『Following the Equator』(Project Gutenberg)(訳はわたし)




