実質賃金は上がっているのに、わたしの単価は2023年からそのまま
物価が上がると、気になるのは収入が追いついているかどうかだ。会社員なら給料、フリーランスなら仕事の報酬になる。
10月23日、その答えに近い統計が2つ発表された。9月の物価は、9か月ぶりに2%超え。8月の会社員の給料(給料の統計は1か月遅れで出る)は、物価の上がり方を上回った。
物価については、わたしも買い物をしていて、これがすごく上がったというよりか、全体的に、なんか上がってて負担が増えているなぁ、と感じている。一方で、わたしはフリーランスとして2023年に独立してから、自分の単価(1つの仕事でいただく金額)を上げていない。
💴「会社員の給料は、物価に追いついた?」
🧑💻「フリーランスの報酬は?」
💼「わたしの単価は、このままでいいの?」
1. 物価は、どれくらい上がった?
9月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いて、1年前より2.1%の上昇だった。野菜や魚などの生鮮食品は、天気で値段が大きく動くので、ふだんはそれを除いた数字を物差しにする。
日銀は、物価が年2%くらいで安定して上がることを目標にしている。今年の1月から8月までは1%台が続いていて、9月に、その2%を超えた。
この2.1%には、実際にお金を払わない「持ち家の家賃」が入っている。
例えると、クラスの平均点を出すときに、毎回ほとんど同じ点数をとる生徒が、6人に1人まざっているようなものだ。平均は、その分だけ動きにくくなる。
2. 会社員の給料は、物価に追いついた?
物価が上がるなら、給料はどうか。厚生労働省の8月の統計(確定した数字)を見てみた。
給料の伸びが物価を上回ったので、給料で買えるものの量(実質賃金)は増えた(引き算ではなく、割り算で出す)。
会社どうしの取引でも、値上げは進んでいる。中小企業庁が今年6月にまとめた調査では、中小企業は、去年10月から今年3月までに上がったコストのうち、平均で54.2%を、取引先への値段に上乗せできていた。
3. フリーランスの報酬は?
では、フリーランスはどうか。
連合(日本労働組合総連合会)が、本業でフリーランスとして働く1,000人に聞いた調査がある。去年の夏の調査だが、数字はかなりはっきりしている。
報酬を一方的に決められている人のうち、交渉を申し出なかった人に理由を聞くと、いちばん多かったのは「交渉する機会がないから」だった。
フリーランス協会の「フリーランス白書2026」でも、政府に急いで対策してほしいことの3位が「物価高」、4位が「報酬適正化」だった。
会社員の給料は、多くの会社で、毎年決まった時期に見直される。フリーランスの報酬には、そういう決まった場がない。自分から言い出さないかぎり、同じ金額のまま続いていく。
4. わたしの単価は、このままでいいの?
わたしは2023年に独立してから、自分の単価を上げていない。それでもやっていけているし、特に現状は困っていない。
ただ、その間に、物価は約1割上がっている。
たとえば、2023年に10万円だった仕事の代金は、いまの物価では約9万1,000円分の価値しかない。単価が同じでも、受け取るお金で買えるものは、少しずつ減っている。
仕事では、値上げをはっきり実感している。
わたしには、医療機器に付属するマニュアル動画のDVDをプレス(複製)して倉庫に納品する仕事がある。会社員のころから続く仕事で、在庫しだいで、年に数回、追加の発注がある。動画はウェブサイトでも見られるが、インターネットが使えない場面も想定して、DVDも用意されている。
この前の追加発注では、プレス工場で、ケースやディスクなどの単価が数円上がっていた。数千枚になるので、数円でも、全体ではそれなりの額になる。
こうした外注の費用は、都度、お客さんに相談して値上げしている。理由も説明しやすい。会社どうしで取り引きするものの値段(企業物価指数)を見ると、9月は1年前より、プラスチック製品が12.8%、電気・ガス・水道が10.5%上がっている。ものや電気の値上がりは、数字で示せる。人件費(人の手間の値段)の値上げと比べると、ずっと伝えやすい。
仕事道具も値上がりしている。パソコンもSDカードも、HDDもSSDも、ここ数年で大きく値上がりしている印象だ。物価の統計でも、SDカードなどのメモリーカードは、この1年で2.5倍になっている。
外注も、仕事道具も、値段が上がっている。それでも、わたし自身の作業の単価だけは、上げていない。
5. わたしの見方
京セラとKDDIをつくり、経営破綻した日本航空の再建も率いた稲盛和夫さんは、経営で大切にすることのひとつに、こう書いている。
稲盛さんは、経営の命運を左右するのは値決めだ、と言っている。利幅を小さくしてたくさん売るのか、数は少なくても利幅を大きくとるのか。値段のつけ方は、いくらでもある。そのなかで、自分の製品の価値を正しくわかったうえで、お客さんにとっても、自分たちにとっても、ともにうれしい一点を探す。その一点を、よく考え抜いて決めなければならないのだと。
その一点を、稲盛さんは「お客さんが喜んで買ってくれる、いちばん高い値段」とも言っている。安くすれば喜ばれる、という話ではない。そして、決めた値段のなかで利益が出るように、むだを省く努力を続ける。値決めは経営者の仕事で、そこには経営者の人格が、そのまま表れるとまで語っている。
物価の上昇は困るほどではなくても、じわりじわりと財布に効いているのは確かだ。わたしもそろそろ、自分の単価を上げる必要を感じている。もちろん、お客さんにとっても、自分にとっても、ともにうれしい一点を探して。
6. まとめ
- 9月の物価は、生鮮食品を除いて2.1%の上昇。2%を超えたのは9か月ぶり。実際に払うお金だけで見ると2.5%
- 8月は、会社員の給料が3.9%増えて、物価を上回った。会社どうしの取引でも、上がったコストの半分ほどは値段に上乗せできている
- 一方、フリーランスは約9割が「報酬が上がっていない」。半分以上は報酬を一方的に決められている
- わたしも2023年の独立から単価を上げていない。その間に物価は約1割上がった
- 2023年に10万円だった仕事の代金は、いまの物価では約9万1,000円分の価値。同じ価値にするには約10万9,700円が必要
- DVDのケースなども数円上がっていた。わたしもそろそろ単価を上げる必要を感じる
・給料と実質賃金:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年8月分結果確報」(2026年10月23日)
・会社どうしの取り引きの値段:日本銀行「企業物価指数(2026年9月速報)」
・会社どうしの価格転嫁:中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果」(2026年6月26日)
・フリーランスの報酬:連合「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025」(2025年10月1日)、フリーランス協会「フリーランス白書2026」
・格言:稲盛和夫オフィシャルサイト「値決めは経営である」、「経営12カ条 第6条 値決めは経営」
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