余命宣告の帰り道に2,200万円は、神様からの贈りものかもしれない
もし道で大金を拾ったら、どうするだろうか。
仙台市で今年3月、がんの再発がわかり、余命2〜3か月と告げられた男性がいた。病院からの帰り道、男性は路上で、現金2,200万円が入ったバッグを見つける。警備会社が、お金を運ぶ途中で落としたものだった。
10月19日の初公判で、男性はこう話したという。
神様からの贈り物だと思った
映画のような話だ。でも、お金の話として見ると、考えることがいくつもある。
⚖️「使ってしまったら、どうなる?」
🌏「余命がわかったら、わたしは何に使う?」
1. 何が起きたのか
報道をもとに、起きたことを順番に並べると、こうなる。
2. 届けていたら、いくらもらえた?
落とし物を警察に届けて、持ち主に返った場合、拾った人はお礼を受け取れる。遺失物法という法律で、お礼は落とし物の値打ちの「5%以上20%以下」と決まっている。
2,200万円なら、110万〜440万円になる。
例えると、落とし物を届けることは、「持ち主との、ちょっとした取り引き」に近い。持ち主はお金が戻ってきて、拾った人はその一部をお礼として受け取る。
ただし、条件がある。拾ってから1週間以内に届けないと、お礼を受け取る権利がなくなる。拾ったお金を自分のものにして罰を受けた場合も、同じく権利はなくなる。
3. 使ってしまったら、どうなる?
男性が問われているのは、遺失物横領という罪だ。落とし物を自分のものにする罪で、刑法では「1年以下の拘禁刑、または10万円以下の罰金か科料」と決まっている。罰金と科料は、どちらもお金を払う刑だ。拘禁刑は、刑務所に入る刑のことだ。検察が求めた拘禁刑1年は、この罪でいちばん重い刑にあたる。
お金も、返すことになる。警備会社の2,200万円は保険会社が穴埋めしたので、男性は保険会社に、毎月3万円ずつ返しているという。
2,200万円のうち、使ったのは約1,800万円。使った分だけでも、毎月3万円で返すと、どれくらいかかるか。1年で36万円なので、ちょうど50年になる。
4. わたしなら、どうする?
冷静に考えると、わたしは届けると思う。
でも、余命を告げられた人の気持ちは、想像はできても、本当にはわからない。宣告された帰り道に2,200万円が落ちていたら、本当に神様からの贈り物だと思ってしまうかもしれない。宣告された本人が、それくらいの気持ちになってもおかしくないと思う。
弁護側は、初公判でこう話している。
余命宣告を受けた帰り道に2200万円が落ちていたら、『神様が見ているのか』と考えるのも分からなくはない
この言葉を読んで、少し前に書いたAIと法律の記事を思い出した。法律は、条文や過去の判例といった知識に支えられている。だから、AIに向いている面もある、とそのときは思った。
でも、この裁判をAIはさばけるのだろうか、とちょっと考えた。わたしには、余命を告げられた帰り道に大金を見つけた人の気持ちが、なんとなく理解できてしまう。それが、人間なんじゃないかと思う。
5. 余命がわかったら、お金をどう使う?
もし余命が2〜3か月とわかったら、わたしはお金を何に使うだろう。
まず、ごまもちと、ゆっくり過ごしたい。もちろん、家族とも。
それから、行きたかった場所に行きたい。わたしの夢は、バルセロナのスタジアム、カンプ・ノウで、クラシコ(バルセロナとレアル・マドリードの試合)を観ることだ。ちょうど今週の日曜、10月25日に、カンプ・ノウでクラシコがある。
本当は、ごまもちと一緒に行きたい。でも、ごまもちはボストンテリアで、飛行機に弱い犬種なので、海外は無理だ。船なら、可能性はあるかもしれない。
そんなに行きたいなら、船でも飛行機でも行けばいいのに。お金もそれなりにあるんだし。わたしのブログを読んでくれている方は、そう思うかもしれない。でも、仕事が、ごまもちが、お金が、といろいろと理由をつけて、先延ばしにしてしまう。それが、わたしの本質なのかもしれない。
6. わたしの見方
アップルを創業したスティーブ・ジョブズは、2005年、アメリカのスタンフォード大学の卒業式で、こう話している。
今日やろうとしていることを、
わたしは本当にやりたいだろうか。
スティーブ・ジョブズ スタンフォード大学卒業式のスピーチ(2005年)
ジョブズは17歳のころから、毎朝、鏡に向かってこう問いかけてきたという。答えが「ノー」の日が続いたら、何かを変えるべきだと。
スピーチによると、ジョブズはこのスピーチの1年ほど前、すい臓がんと診断され、医師から「治らない種類のがんで、3〜6か月しか生きられないだろう」と告げられている。ところが、告げられたその日の夜の検査で、手術で治せる珍しいがんだとわかった。死を意識することが、人生の大きな選択をするときにいちばん役に立った、とジョブズは話している。
もし今日が人生最後の日だとしたら、わたしはやっぱり、ごまもちの口をひっぱったり、お腹をスリスリしたりしながら、ゆっくり過ごすことを選ぶかもしれない。ジョブズのような、かっこいい使命や役割や覚悟はない。でも、それがいまのわたしだ。
7. まとめ
- 余命2〜3か月と告げられた帰り道に、現金2,200万円入りのバッグを拾った男性の裁判が始まった。男性は「神様からの贈り物だと思った」と話している
- 届けていれば、法律で決まったお礼は5〜20%。2,200万円なら110万〜440万円だった
- 使ってしまうと罪に問われ、お金も返すことになる。使った約1,800万円を毎月3万円で返すと50年かかる
- わたしは届けると思う。でも、宣告された本人がそういう気持ちになるのも、おかしくないと思う
- 余命がわかったら、ごまもちと家族と過ごし、カンプ・ノウでクラシコを観たい
- ジョブズは毎朝「今日が人生最後の日なら、今日やることを本当にやりたいか」と問いかけていた。わたしの答えは、ごまもちとゆっくり過ごすこと
・クラシコの日程:FCバルセロナ公式(2026年9月1日)
・お礼の割合と、届ける期限:遺失物法 第28条・第34条
・罪と刑:刑法 第254条(遺失物等横領)
・格言:Stanford Report「'You've got to find what you love,' Jobs says」(2005年6月)(訳はわたし)
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